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映画・演劇のレビュー

『バーニング・ダウン 爆発都市』

2022-04-29 12:56:28 | 映画
昨年中国で大ヒットしたアクション巨編だ。でも、日本では(というか、大阪では)ミニシアターで2週間、1日1回上映という扱いである。ハーマン・ヤウは今もなお精力的に新作を作る。このアンディ・ラウ主演のド派手な映画は、在りし日の香港映画最盛期の輝きを留める。アンディは今なおこうして悲壮感なく、体を張った映画に挑む。凄いとしかいいようがない。それはジャッキー・チェンとは違う生き方だ。(もちろん、ジャッキー . . . 本文を読む
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瀧羽麻子『博士の長靴』

2022-04-29 12:23:00 | その他
1958年立春から始まる。(別にこの小説とは関係何けど、なんと、僕が生まれる前年だ。)そして、2022年立春までの60年間のお話だ。1975年処暑、88年秋分、99年夏至、2010年穀雨、22年立春。6つの短編連作というスタイルだ。ある家族(藤巻家)の4世代にわたる物語。そこには6人の人生のある局面が綴られてある。6つのお話で、主人公は6人。でも、ここに描かれるのは彼らだけではなく、彼らと、その周 . . . 本文を読む
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瀬尾まいこ『夏の体温』

2022-04-29 11:51:27 | その他
今回の瀬尾まいこの新刊は中編小説2作と短編1作の3本立。タイトルの『夏の体温』は分類すると児童文学の範疇に入る作品だろう。小学3年生の男の子のひと夏のお話だ。彼は「血小板が少ない病気」で入院している。毎日退屈すぎる彼のもとに同じ3年生の男の子が検査入院で3日間やってくる。そんな2人の短い夏の日々が描かれる。たった3日だけど、そのささやかな時間がとても愛おしい。長編では描けない時間がここにはある。一 . . . 本文を読む
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『ぼけますから、よろしくお願いします。 〜おかえりお母さん〜』

2022-04-28 10:59:52 | 映画
4年前の映画『ぼけますから、よろしくお願いします』の続編。前作は見ていない。今回も見る予定ではなかった。そんな勇気はない。予告編を見ただけで泣いてしまった。だから、本編を見るなんて、ありえない。でも、たまたま時間の関係で見ることにしてしまった。 昨年母を亡くして、もうすぐ1年になる。認知症になり、ある日、倒れて、入院した。脳梗塞から半身不随状態になり、肺炎で亡くなった。 とてもじゃないけど、この . . . 本文を読む
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『パリ13区』

2022-04-28 10:30:49 | 映画
なんだかまるで共感できない男女4人のお話。舞台となるパリ13区は高層住宅が並ぶ再開発地域で、絵に描いたような「ザ・パリ」という光景ではない。アジア系移民がたくさん暮らす地域らしい。主人公の女性も中国からの移民。祖母の住んでいたマンションで一人暮らしをしている。(祖母は今は施設に入っている)ルームシェアにやってきたカミーユが男性で、最初はさすがに知らない男との同居はなんだかなぁ、と断るけど、強引な彼 . . . 本文を読む
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津村記久子『現代生活独習ノート』

2022-04-28 09:59:33 | その他
久しぶりで津村記久子を読む。嫌いではないけど、あまり好きでもないから、ついつい新刊が出ても読むこともなく過ぎていく。今回はたまたま手に取ってしまったのだが、読んでよかった。とても不思議な小説で楽しかったので。 8話からなる短編集だ。タイトルのあるように「現代生活」が描かれる。(近未来も含むけど)最初の2編がとてもいい。『レコーダー定置網漁』は偶然録画していたどうでもいいような番組を見る話。『台所 . . . 本文を読む
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『ベルイマン島にて』

2022-04-28 09:28:58 | 映画
こんなマニアックな映画が劇場公開される、って凄いことだ。ミア・ハンセン=ラブの新作だから、かもしれないけど、それにしてもここまで観客を選ぶ映画なのに。スウェーデンの巨匠、イングマル・ベルイマンの暮らした島にやってきた映画監督夫婦のお話だ。風光明媚な島を舞台にした観光映画、のはずはない。でも、見終えたときの、虚脱感は半端ではない。これは一体何だったのか、と理解に苦しむ。だから、これは観光映画なんだ、 . . . 本文を読む
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角田光代『タラント』

2022-04-28 08:42:43 | その他
今年読んだ100冊ほどの小説の中で、これが一番心に沁みた。4月なのに早々に今年のベストワンに暫定で決定。400ページ以上の長編で、パラリンピックの話みたいなのに、なかなかその本題には入らない。それどころか、クライマックスはパラリンピックではない。東京五輪が1年延期になり、パラも同様に。スポーツものなんか、というミスリードだったのだ。もちろん、作者にはそんな気は一切なかったのだろう。2020年7月か . . . 本文を読む
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一穂ミチ『砂嵐に星屑』

2022-04-24 10:02:34 | その他
平成の終わり、特別な事件もなく、過ぎ去っていく日々。この後、令和がちゃんと4月1日から始まって、でもその後まさかのコロナの時代が始まるとは、思いもしなかったはずの頃。10年間の東京暮らしから再び大阪に戻り、新生活をスタートさせることになった40代の女性アナが1話目の主人公だ。2018年春、彼女のお話からスタートして、大阪のTV局を舞台にして、4人の主人公たちによる4つの季節をタイトルに冠した4話か . . . 本文を読む
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伊与原新『オオルリ流星群』

2022-04-23 09:37:57 | その他
高校3年生の文化祭で空き缶タペストリーを作った。幅10メートル、高さ8メートル。1万個の350ミリ缶をつないだ。あれからもうすぐ30年になる。40代後半になり、人生の折り返しを過ぎた。思ったような人生にはならない。あの時の仲間たちが故郷に戻ってくる。東京で暮らしていた者、ここでずっといた者。東京に出たけど、19歳で自殺した者、仕事を辞めて実家に戻り、3年間、引きこもりしている者。国立天文台の研究員 . . . 本文を読む
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『ふたつの部屋、ふたりの暮らし』

2022-04-22 13:48:19 | 映画
冒頭のふたりの少女が並木道でかくれんぼをするシーンが美しい。ふたりの着る白と黒のワンピースが象徴的だ。さらには、消えた少女を探し、叫ぶもうひとりの少女の声がカラスの鳴き声になる不気味さ。映画全体を象徴する悲しいプロローグである。このシーンの後、すぐに本編に入る。ふたりの少女ではなく老女の日々を描く映画が始まる。 だが、ここからの展開は意外だった。僕は勝手にもっと穏やかで静かな映画なのだと思ってい . . . 本文を読む
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澤大知『眼球達磨式』

2022-04-22 12:14:30 | その他
こんな小説ありなのか、と思った。作者の目の付けどころに驚く。「狭いアパートの一室から、地上2cmの世界を踏破する冒険」とはよく言ったものだ。これは小さな世界の大きな冒険だ。ドキドキさせられる大冒険なのだ。 たった100ページほどの中編小説で、文藝賞を受賞した作品なのだが、この中途半端な長さが実は心地よく、不安。ここにあるのは短編の切れ味ではなく、長編の満足感でもない。中途半端な空虚感だ。最初は自 . . . 本文を読む
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『素晴らしき哉、人生!』

2022-04-22 11:41:06 | 映画
この映画史に残る名作をなんと初めて見た。たまたまBSで放送していたので、見たのだが、やはり凄い映画だった。昔の「名作」といわれる映画は、時に今見ると古くて、通用しないものも多々あるけど、これは今なお新鮮で、感動的な作品だ。時代を経ても色褪せることのない秀作だと思う。2時間10分と少し長いのに、まるでそんな長さを感じさせない。あっという間だった。1946年公開のフランク・キャプラの傑作。 冒頭から . . . 本文を読む
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『オートクチュール』

2022-04-22 11:11:28 | 映画
公開最終日、駆け込みで見てきた。平日の朝1回だけの上映になっていたのだが、劇場はとてもよく入っていて驚く。服飾関係の専門学校の生徒たちであろうか、若い女の子でいっぱいの劇場で見る。見てよかった。予想以上の秀作で、これを見逃す手はない。 退職間近のお針子と、彼女がたまたま出会った女の子。そんなふたりのお話だ。ディオールのオートクチュール部門のアトリエ責任者エステル(ナタリー・バイ)は次のコレクショ . . . 本文を読む
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藤谷治『ニコデモ』

2022-04-22 10:39:02 | その他
壮大なドラマである。戦争の時代を含む100年に及ぶ大河ドラマだ。それって先日までやっていた朝ドラ『カムカムエブリデイ』と一緒じゃないか、とも思う。あれは3世代に及ぶお話だが、実はこれも同じなのだ。主人公はニコデモという一人の音楽家。彼のたどった100年以上に及ぶ人生に奇跡(軌跡)を描くのだが、一筋縄ではいかない。 2部作構成で、第1部はニコデモを主人公にしているのだが、彼が出会う正太郎という男の . . . 本文を読む
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