
ようやく出たシリーズ第2作。『海が見える家』4部作に続くシリーズ。前作からかなり間隔が開いたのはなかなか書けなかったからだろう。本作を読みながら作者も迷走していることが伝わってくる。何をこの先に求めるのかが明確にならないからもどかしい。作者も主人公である史哉も。山の家に手を入れて、なんとか農業で生きていく。だけどその先には何があるのかが見えない。
ついに山の家でふたり生活を始めることになったのだが、初めての農業に戸惑いを隠せない。わからないことだらけだ。しかも他所者だから、なかなか地域に受け入れられない。凪子に至っては人と付き合うことすら困難である。彼女を守りながら、自分だって何もわからない状態から農家を始める。不安しかない。
そんな日々が続いていく。やがて凪子が去っていく。ふたりでここで新しい暮らしをスタートさせるはずだったのに1年を待たずに挫折する。しかし、それでも史哉は少しずつ歩み始める。サブタイトルにあるように迷い道をふらふら歩く日々である。素人に農業は簡単ではない。生活は苦しい。海が見える家に帰りたい。だけど彼はここで生きる。
この先2冊でどこに着地できるのか。先は見えないけど、見つめ続けたい。