
短編まつりの5作目。毎回さまざまな切り口を見せてくれるから、今回も楽しみにしていた。なんと今回は座長の南田吉信と伊地知克介、ナカタアカネの2人がコラボする。しかも3人は別々の話を書くのではなく、同じお話を3人の切り口から好きなように書いて結果的に続き物の1本の長編に仕立てたのだ。
短編連作スタイルは固持しながらもやはり自由に30分ほどでそれぞれが好きなことをしている。この企画は毎回観客からいただいたお題を使って作品を仕上げる。今回のお題は「たてとよこ、かものはし、観光地(聖地)」の3題。
冒頭の南田作品が作品世界のベースを作り、伊地知がその世界を引き継いで、ラストはナカタアカネが強引にまとめ上げる。3人が楽しそうに自分勝手な世界を体現するのを大阪新撰組のメンバーたちが必死になって(一丸となって)ひとつの世界にしていく。
だけど、バカバカしいお話はどんどん横滑りしていき、ラストではなんと『時をかける少女』の世界を再現した。阿矢さんがセーラー服姿で可憐に原田知世(芳山和子だけど)を演じ、栖三蔵は深町くんを。久しぶりに栖三蔵が爽やか二枚目を演じるのを見て、やはり男前は二枚目が似合うなぁと感心する。あげくは幻の映画の世界が現実を侵食してくるのをタイムパトロールが食い止めるなんていうお話になっちゃった!
SFからホラーになり、再びSFに戻る。最初のエピソードがいきなりヒーローものになった時の古川智子! 彼女のエイリアンが凄い。さらには栖三蔵の怪しい男の存在も。次のお話はなんだかわけのわからない悲恋もので、道ならぬ恋の逃避行みたいな感じ。南田吉信がしっかり戸惑いながら演じた。最後は先にも書いたが阿矢のセーラー服!
ゲストたちとのコラボを劇団員がしっかり全体を締めて100分のとんでもないおバカな世界を作り上げた。とても楽しい。
また、毎回ていねいなご感想も、ありがとうございます。
今回は、外部の作家さんをお招きしての、作品制作でしたので、特に戯曲の作成については、3つのキーワードと1つのセリフの縛り以外は特に揃えようということはありませんでした。
ただ、全ての本が出来上がってから、そのキーワード以外のとこで重ねられるとこがあったらおもしろいのでは、という発想から、後付けで、名称などを改変したり、加えたりした所もいくつかあります。
たとえば、『長い眠り』の役所の女性は、当初あの名前ではありませんでした。『あの場所』の女性の名前と重ねてみたらおもしろいのではと考えて、改変しました。
また、上演順も、本が上がってから考えたものですので、ご感想にお書きいただいたように観ていただけたのであれば、またそのように楽しんでいただけたのであれば、『短編祭り』という一作品としては、成功したということかと思い、嬉しく思います。
ありがとうございました。
これからも、よろしくお願いいたします。