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映画・演劇のレビュー

金蘭会高校『農業少女』

2023-03-31 11:21:01 | 演劇
毎年恒例の「大阪私立中学校高等学校、芸文祭演劇部門公演」の一作だけど、これは結果的に金蘭の山本篤先生の引退公演になる。この最後を飾る作品が、金蘭座でも上演した『農業少女』だったのもうれしい。野田秀樹の名作を金蘭ならではのテイストに練り上げ自家薬籠中の物にした作品をもう一度新しいメンバーで再演する。古い作品が今の作品として甦る。いや、これは古典にはなろうとも古い作品なんかにはならない傑作だ。それを若 . . . 本文を読む
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菰野江名『つぎはぐ、さんかく』

2023-03-31 09:43:41 | その他
新人作家のデビュー作が続く。そこで描かれるのは未来の不安だ。もちろん不安なら誰しも抱えているだろう。こんな危うい日々の中で、先は見えないし。そして、不安とどう向き合うかは人それぞれだけど、彼らの姿を見て、それを通して見えてくるものに縋りたい。だからこの手の小説を読んでしまう。ある種の答えを求めている。それくらい僕だって不安なのだ。そして、もちろん作者も、であろう。   この小説の三兄 . . . 本文を読む
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大谷朝子『がらんどう』

2023-03-31 09:17:00 | その他
46回すばる文学賞受賞作品。なんでもない話なのに、魂を揺さぶられる。いや、そんな大袈裟なことではない。あまりにさりげなくて心が震える。ふたりの女性が同居して暮らす日々のスケッチだ。42歳と38歳。結婚はしないだろう。もう諦めた。いや、最初から男には興味がない。怖くて。同性愛ではない。趣味があう(同じアイドルグループの熱烈なファン同士)気の置けないふたりだ。お互い恋人が出来たらルームシェアを解消して . . . 本文を読む
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『雑魚どもよ、大志を抱け!』

2023-03-30 12:18:55 | 映画
こんな内容なのになんと2時間25分の長編映画だ。主人公は小学6年生の男の子たちだけど、それに一見『スタンド・バイ・ミー』だけど、これはただの甘い懐古映画ではなく、なかなかのハードボイルドなのだ。前半の悪ガキぶりは少しえげつないけど、後半の虐めも含めて、描写はいささか極端でリアルではないから、反対にそれがリアルな真実に迫る映画になる。 時代は1988年、飛騨市。地獄トンネルの前に佇む4人の少年たち . . . 本文を読む
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高森美由紀『藍色ちくちく 魔女の菱刺し工房』

2023-03-30 11:17:07 | その他
高森美由紀の『山の上のランチタイム』『山のふもとのブレイクタイム』の2部作で彼女の本に出会った。2作目の『山のふもとのブレイクタイム』を先に読んだ。もし、『山の上のランチタイム』を先に読んでいたなら、僕はそれだけで彼女の本を湯まなかったかもしれない。2作目の前半はすごくよかった。だから、この作家を信じようと思えたのだ。 お話は定番のハートウォーミングでそれはそれでなかなか面白いのだけど、実は読み . . . 本文を読む
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演劇強制収容所 旦煙草吸『ぽコ人』

2023-03-27 20:35:20 | 演劇
前作の『そっか』は刺激的で確かに「猟奇的エンターテイメント」だったと思う。あれもまたウイングカップ参加作品だった。今週はなんだかウイングカップがらみの芝居ばかり見ている。 今回も前作同様また同じように刺激的なビジュアルだ。だが、お話があまりに直線的でストーリーに展開がないのがつらい。だから見ていて、ついていけなくなる。何がしたいのやらよくわからないから退屈してくる。確かに耽美で猟奇的な世界がそこ . . . 本文を読む
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ヨルノサンポ団『オーバーラップ』

2023-03-27 19:57:36 | 演劇
2021年度ウイングカップ参加劇団の新作だ。ヨルノサンポ団は2020年に続いてウイングカップに連続で参加した。コロナ禍の参加で、2020年は公演自体は中止になったのだが、別番組の短編で登場した。配信だけの公演になったが、僕は収録のための舞台を見させてもらえたのが印象深い。そして昨年の公演である。それが僕にとっては初めての本格的なヨルノサンポ団の芝居となった。 さて、今回2回目となるのだが、前作か . . . 本文を読む
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浮狼舎『堕ちる月 砕ける花』

2023-03-27 17:29:32 | 演劇
コロナをものともせずに快進撃を続ける神原さんの新作。2020年以降も年4本のペースを崩すことなく新作を上演し続けてきた。そして今年もこの後7月、9月、11月と公演が決まっている。パンフにも書かれているが、「5年以内に亡くなると明記された心臓の難病を発症してから去年の8月で丸5年を超え」たという神原さんは今、悲壮感なんかなくコンスタントに芝居を続けている。命を削って芝居をして、芝居によって生かされて . . . 本文を読む
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『ロストケア』

2023-03-27 11:31:00 | 映画
殺すことで救われる命がある。法律が犯す殺人と人間が守る殺人。どちらも正義だから、という結論は甘いか、正しいか。生まれてきてくれてありがとう、という父親の言葉が胸に沁みる。殺して欲しいと願うことも。検事、長澤まさみ。殺人犯、松山ケンイチ。ふたりが向き合う正義をめぐる物語。介護士が42人の老人を殺した。彼はなぜそんなことをしたのか。自分がしたのは「殺人」ではなく「救い」であると主張する。そして、親を殺 . . . 本文を読む
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プロトテアトル『フェスティバル#3  Match pomp』

2023-03-26 06:34:26 | 演劇
先週の猟奇的ピンクに続いて今週はプロトテアトルである。ここウイングフィールドで旅立ってきた2劇団が、ここに帰って来た。ウイングカップの最優秀劇団の記念碑的公演。前者(優秀賞だったみたい)は今回が解散公演で、後者は10周年。いずれも仕切り直してこの先に向かう為の大事な公演だ。だからここで作る。   12年続くウイングカップの後夜祭が3月30日にあり、その直前2週の芝居だ。1年の締めくく . . . 本文を読む
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『ひとりぼっちじゃない』

2023-03-25 09:30:02 | 映画
伊藤ちひろの監督デビュー作。行定勲の脚本家として活躍した彼女が行定監督プロデュースで、監督業に挑んだ。苦節10年、ようやく念願がかなったようだ。しかも彼女は来月公開の第二作(先の大阪アジアン映画祭ではクロージングに選ばれた)まで控えている。怒濤の快進撃だろう。今回の作品、ポスターのデザインもいいし、なんだか期待できる、と思ったが、批評家からはかなり厳しい評価を受けているみたいだ。だから反対に僕の期 . . . 本文を読む
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小路幸也『三兄弟の僕らは』

2023-03-25 08:43:59 | その他
2020年刊行の作品が文庫化されたので電車の中で読んだ。単行本が出た時には気づかなかった。まぁ、小路幸也だから頻繁に新刊が出ているし、細切れでも読みやすい。前半は面白いけど、後半がつまらない。両親の秘密がありきたりの話で、肝心の3兄弟の話がお座なりになっている。彼らが両親亡き後、3人でどう生きるのかがこの小説の描くべき本来のお話ではないか。祖母が来て彼らの面倒をみるなら、この設定に意味はない。男た . . . 本文を読む
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『シン・仮面ライダー』

2023-03-24 09:55:08 | 映画
なかなか公開日が決まらなかったけど、3月に入ってからやっと17日公開と決まる。ふつうそんなことってないだろう。2023年3月公開という告知は早かったけど正式に初日が決まるまでが異常に長かった。『シン・エヴァンゲリオン』の時もなかなか完成しないし、直前まで公開日が決まらなかったという前歴がある。庵野秀明っていろいろお騒がせだ。 ようやく映画を見てきた。待ちに待ったかいがある作品だった、と言えたなら . . . 本文を読む
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青年団『コントロールオフィサー』+『百メートル』

2023-03-24 08:51:42 | 演劇
福島に出来た新しい小劇場、聖天通劇場のこけら落としシリーズとして上演された青年団第97回公演。番外公演ではないのだ。なんかそういうところが好きかも。平田オリザさんの姿勢が好きだ。今回劇団員の永井さんが大阪にこの小さな劇場をオープンした。それを受けて劇団がちゃんと小さな芝居を持ってきてさっそく上演する。 小さな芝居、小さな劇場、小さな出来事(オリンピックの最終選考だけど)をさらりと描く短編連作2本 . . . 本文を読む
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『わたしの幸せな結婚』

2023-03-23 12:16:00 | 映画
このタイトルで目黒蓮、今田美桜主演の映画なら青春恋愛映画だろうとたぶん思うはず。だがフライヤーや予告編を見ると、少し想像してたイメージとは違う。なんだか予想がつかない映画で少し気になった。今田美桜は先日見た『カランコエの花』で主人公を演じていた女の子だ。目黒蓮は言わずと知れたスノーマンの人。今絶賛ブレイク中。 映画はなんと『帝都物語』風のSF時代劇アクションだった。時代背景は大正ロマン風で架空の . . . 本文を読む
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