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映画・演劇のレビュー

満塁鳥王一座『エレクトラ』

2008-03-31 22:12:32 | 演劇
 登場人物がそれぞれの立場から証言していくことを通して見えてくる事実を描く。このアプローチはとてもおもしろい。普通の芝居の作り方はしない。役者たちの会話や、対立というからみあいはほとんどない。それぞれのモノローグが、絡み合って1本の芝居を構成していくことになる。福島県からやって来た満塁鳥王一座の大阪初上陸作品である。  作、演出の大信ペリカンさんを中心とするこの集団は、前述の方法で既に3本の作品 . . . 本文を読む
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『実録 阿部定』

2008-03-31 21:25:20 | 映画
 今から33年前に作られた日活ロマンポルノの大傑作をついに見る。しかも、劇場の大スクリーンで、である。大阪の最後の昔ながらの映画館である千日前国際劇場。その「さよなら上映」で特別公開された。  ロマンポルノがこの世から消えて久しい。80年代ずっとコンスタントに劇場通いを続けた。そこで、思いもかけない凄い映画に何度も出遭った。ポルノを見るなんていうのはとても恥ずかしい行為だが、おもしろい映画に出逢 . . . 本文を読む
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金蘭会高校演劇部『眠りの切り札』

2008-03-31 20:08:18 | 演劇
 初期Ugly ducklingの代表作を金蘭がどうアレンジして見せてくれるのか、と期待していたのに、なんと台本はそのままに、正攻法で見せる。これには驚いた。いつもならどんな作品でもある種過剰な演出によってメリハリのあるスペクタクルとして見せるのが金襴ワールドのやり方なのに、今回はとても静かな芝居として、見せてくれる。その徹底振りは、アグリーのオリジナル以上である。  アグリーによるこの作品を見 . . . 本文を読む
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月曜劇団『背骨と灯台』

2008-03-30 22:55:55 | 演劇
 小説家の見た妄想が綴られていく、とでも言ったほうがわかりやすいだろう。頭の中で現実と空想がごっちゃになってしまい、どこまでが本当のことで、どこからが自分の創作だったのか、すらわからなくなっていき、繰り返される出来事は、いつも微妙にずれていき、煮詰まってしまい、ぐちゃぐちゃになり、またそれを反故にして、一から書き直していくうちに、何が何だかわからなくなっていく。  夢の中の出来事すら、それに混ざ . . . 本文を読む
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あうん堂『うえん内談はたムエン』

2008-03-30 21:50:50 | 演劇
 あうん堂の作品は最近とても優しい。それまでの社会的な視点とか、メッセージ性なんかが、薄まり、それよりもまず、目の前に居る人たち、彼らの姿を等身大に見せていくことを第一に考える。そこに暮らす人たちの哀歓を描くことで、社会とか時代とかいうものも背景から浮かび上がる。アプローチが少し変わっただけでしていることは一貫している。  昔ながらの商店街。そこで暮らす面々が主人公だ。彼らは夜ごと集まっては、百 . . . 本文を読む
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『死神の精度』

2008-03-30 21:24:24 | 映画
 抜群のアイデアで引っ張って見せた自主映画『美女缶』(タイトルそのままで、缶詰に入った美女の話だ。水につけると人間になる。)で、デビューした筧昌也監督の待望の劇場用デビュー作である。1本目からこんなにも完成度の高い作品を簡単に作ってしまうなんて、凄い。しかも何の気負いもなくである。(少なくとも僕にはそう見えた。)  深い霧に包まれたモノレールの線路の上を歩く黒い犬と黒い服の男。このイメージシーン . . . 本文を読む
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浪花グランドロマン『そこまではとおい夜』

2008-03-25 23:08:42 | 演劇
 本町に新しいスタジオを構えたNGRが、その杮落としとして発表したのがこの作品だ。ここはキャパ30席のミニシアターだ。しかし、舞台と客席のバランスがいい。何よりもこの小空間が、きちんと劇場として機能している、という当たり前のことに感動した。これからもこの空間を有効利用して面白い企画を実践してもらいたい。  さて、芝居の方だが、きちんとこの空間用の芝居を作っている。NGRはテントでの . . . 本文を読む
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空の驛舎<fragment>「スピードに真夜中あげる」

2008-03-25 22:32:10 | 演劇
 当然のように公演タイトルは『真夜中にスピードをあげる』だと思っていた。だが、ある時気付く。ありえへん、と思う。このやけくそのようなタイトルのもとで描かれるこの芝居は、「真夜中」と「スピード」が逆転したところで生じる。このタイトルには確かな作者のねらいがあるのだが、それに気付かないまま、過ごす人もいるだろう。それもまたよしとする。それにしても、日本語としてこれはありえない。意味をなさない。  混 . . . 本文を読む
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オリゴ党『愛と勇気だけが友達』

2008-03-25 21:50:31 | 演劇
 とてもよくできた短編集だ。きれいにオチがついていて、すっきりした気分で見終えることが出来る。いい気分にしてくれる。  よくわからない世界に迷い込み、その物語の中を旅して、現実世界に戻ってくる。お話の醍醐味を満喫させてくれる。一切美術も装置は使わない素舞台だ。役者たちの肉体と作者の想像力だけを武器にして世界を作り上げる。中途半端な妥協のないプロの仕事を見せてくれる。と、ここまで書いて、ちょっと褒 . . . 本文を読む
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j.a.m.Dance Theatre『忘れてしまえ、すべてはすんだ話だ』

2008-03-25 21:23:43 | 演劇
 ホールの中に一歩足を踏み入れる。そこには使い古され、くたびれた古い箪笥や水屋が並んでいる。その箪笥や水屋によって出来た壁の裏側に客席がある。入り口に並んだ箪笥による壁の背中は舞台の背景になる。コンクリによりコーティングされている。客席の椅子はすべて別の形状だ。そこにはあらゆるタイプの椅子が並んでいる。2人、3人掛けのソファーもある。もっと早くに来ていたならふかふかのソファーを占用できたのに残念だ . . . 本文を読む
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墨谷渉『パワー系181』

2008-03-25 20:35:00 | その他
 このへんてこな話って何だ?それをこんなにもあっさり見せて、さらりと終わらせる。それってとても面白い。(『ダージリン急行』よりずっと凄い)  この短さもいい。全体が130ページしかない。(本編が80ページで、外伝50ページ)これ以上やったらきっとぼろが出てくるか、しつこくなる。あれっ?って思わせといて、すぐひいていく。何が描かれていたのかよくわからないくらいに。そこがいい。  一瞬の出来事とし . . . 本文を読む
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『ダージリン急行』

2008-03-25 19:47:08 | 映画
 ウエス・アンダーソン監督の作品はおもしろいのだが、かなり微妙だ。おもしろいと思ったなら、確かにおもしろいのだが、何も感じないで終わらせたなら、何が何だかよくわからない、ということにもなりかねない。それはわかる人にはわかる、なんていうちょっとスノッブな感じ方ではなく、人様々なんで、感じない場合は何も思わない、という実に単純なことなのである。わからない人は鈍感だ、なんていうわけではない。現に僕も今回 . . . 本文を読む
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, Art Project Sy-company 『生きてるきもち』

2008-03-24 12:07:37 | 演劇
 とても真面目で、一生懸命な作品である。見ていて応援したくなるそんな作品だ。作者たちの芝居に対する素直な想いがストレートに溢れているのがいい。好感の持てる小品である。  植物人間になってしまった娘を甦らせるため、母親である植物学者は、植物の中にある命を娘の体につなぎ、生き返らせる。だが、彼女は植物の意思を持って目を覚ますから、本来の彼女ではない。なんだか、荒唐無稽なお話だが、作者たちの真剣さゆえ . . . 本文を読む
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藍田マリンプロデュース(Yellow LOVE Marine)『宮城野』

2008-03-24 11:02:37 | 演劇
 何度か『宮城野』は見たことがあるが、今回のようなアプローチは初めてだ。とても個性的で興味深い。藍田マリンさんのこの作品に対する読み込みが反映されているのだろう。それを演出の猪岡千亮さんがきちんと手助けして、見せてくれる。  主人公である宮城野という娼婦の造形がいい。自分勝手で思い込みが激しく、一歩間違うと、ただの勘違い女にすら成りかねないという、とてもあやうい女性として、設定されてある。彼女は . . . 本文を読む
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『泪壺』

2008-03-24 10:03:37 | 映画
 瀬々敬久監督の『雷魚』を見た時の感動は生涯忘れられない。映画というものがこんなにも凄いものなのだということを今更ながら認識させられた。しかもそれがピンク映画の枠内で作られたものだったという事実もその衝撃をさらに大きいものにした。あまりのことに、その後何度もビデオでも見た。その度にこれが傑作であるという事実を再認識させられることになった。これほど繰り返し見た映画はない。きっと10回近く見たはずだ。 . . . 本文を読む
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