習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『ソワレ』

2023-05-31 14:16:48 | 映画
劇場公開時に見たかったけど見逃した映画が配信されたのを発見するとうれしい。さっそく見る。公開時は小泉今日子がプロデュースした映画だということが大々的に報じられ宣伝されていたけど、本編を見るとプロデューサーとして豊原功補の名前が一番に出ていた。調べると、「豊原功補、小泉今日子、外山監督らが立ち上げた映画制作会社・新世界合同会社の第1回プロデュース作品」とある。俳優が主体となり、自らが出演するわけでは . . . 本文を読む
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『最後まで行く』

2023-05-31 14:06:11 | 映画
これを見れば藤井映画はかなり苦心して作ったことがよくわかる。シリアスになりつつも、無茶は通す。この映画のよさをちゃんと受け継いで、その上をいくために工夫を凝らした。2本見て正解だった。先日藤井道人監督による新作を見たが、何だか、の出来だったので比較するためにそのオリジナル版の韓国映画も見てみた。もちろん比較する必要はないし、目的はそこじゃないけど、オリジナルはどんな映画になっているのか、やはり気に . . . 本文を読む
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真下みこと『わたしの結び目』

2023-05-31 10:41:36 | その他
真下みことはいつも嫌な気分にさせる。今回もそうだ。中学生の女の子が主人公。虐めの話。自殺した少女のいるクラスに転校してきた里香。いじめから逃れるように転校してきた新しい場所で、「ぼっち」の彩名と出会う。このふたりの話が交互にそれぞれの視点から描かれる。ただこの小説のラストは明るい。相手を信じることで、道が開ける。嫌な小説ではなく、この救いは嬉しい。多かれ少なかれどこにでもある教室での上下関係。(ス . . . 本文を読む
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『なぎさ』

2023-05-31 10:39:10 | 映画
古川原壮志監督の長編デビュー作。彼はCMで活躍する新鋭らしい。短編映画で評価されて今回の劇場用長編デビューに至る。この作品も、もとになっている短編映画をセルフリメイクしたもののようだ。 フィックスの長回しを何度となく繰り返してそれを作品のベースにする。だがそこでは何も起きないからイライラさせられる。観客をわざと挑発しているのか。最初は新鮮だったが、しつこいから、腹立たしくなってくる。そのくせ、何 . . . 本文を読む
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『セールス・ガールの考現学』

2023-05-31 10:10:03 | 映画
なんとモンゴル映画である。だからといって草原とかゲルとか、ではない。都会が舞台で、主人公の女の子は大人のおもちゃ屋でバイトしている。最初あまりにおぼこいので、彼女が大学生には見えない。もっと子どもに見えた。なのに彼女の醒めた反応や対応はチグハグでそのギャップが不思議な感触を抱かせる。アダルトグッズショップに何のためらいもなく入って店番をする。恥ずかしがらずにお客に商品の紹介もする。当たり前だけど、 . . . 本文を読む
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小野寺史宜『君に光射す』

2023-05-31 06:36:00 | その他
安定した面白さで読みやすいし、気持ちのいい作品を提示してくれる小野寺史宜の新作は小学校の教師から警備員に転職する32歳の男が主人公。大学卒業後すぐ22歳で小学校の教員になった彼が辞職するまでの経緯となる出来事を描いた28から29歳までの話と警備員をする現在を描く32歳から33歳までの時間を交互に描いていく。 辞職はあくまでも自分の問題で事件の責任を負ったわけではないが、今小学校で働くことの困難が . . . 本文を読む
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青波杏『楊花の歌』

2023-05-29 15:54:00 | その他
第35回小説すばる新人賞を取った作品。1941年廈門を舞台にしたふたりの女たちの物語。読んでいてだんだん韓国映画の歴史大作を見てる気分になる。激動の時代を背景にして運命に翻弄されるふたりの女スパイ。日本人の元娼婦と謎の中国人の女。これはエンタメである。ふたりは敵対する関係なのに惹かれ合う。日本人の要人暗殺を巡る諜報機関の暗躍。暗殺はどうなるか。ハラハラドキドキする展開のはずなのに、なんだか少し違う . . . 本文を読む
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くじら企画『黄昏ワルツ』

2023-05-29 09:44:00 | 演劇
くじら企画の第1回作品を再演する。これは先行する配信によるリーディング作品を受けての本公演だ。今回、演出のクレジットが初めて後藤小寿枝になった。これまでも実質は彼女が演出を担当してきたのだが、あくまでも大竹野正典演出、あるいは「くじら企画」演出という表記に拘ってきた。どういう心境の変化か。少し気になった。25年の歳月を経ての再演。しかもオリジナルキャストの3人が揃った。30代だった彼らは60代にな . . . 本文を読む
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劇団未来『梅子の梅根性』

2023-05-28 10:53:52 | 演劇
久々に野江の未来ワーク・スタジオを飛び出しての劇場公演。東大阪市文化創造館小ホールだ。小ホールだけどキャパは300席はありそうだ。勝負作ということになるだろう。脚本を南出謙吾に依頼した。彼による書下ろし新作をいつも通り、しまよしみち演出で贈る。しまが劇団未来の演出を担当するようになり、もうすぐ10年になる。最初は様々なジャンルに挑戦して研鑽を積んできたが、その変わり目となったのは南出による『ずぶ濡 . . . 本文を読む
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『波紋』

2023-05-28 10:11:27 | 映画
荻上直子が監督・脚本を手がけた最新作。主演は小林聡美ではなく、『よこがお』の筒井真理子。そして扱うのは「震災、介護、新興宗教、障害者差別」といった様々な現代社会が抱える問題。そのてんこ盛り。それらに翻弄されるある家族の姿を描いた作品なのである。これは彼女の新境地だろう。 描かれるのは、従来のハートフルな世界ではなく、リアルで過酷な現実社会の出来事。前作『川っぺりムコリッタ』が今までの優しい世界の . . . 本文を読む
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『アンテベラム』『ドント・ブリーズ2』

2023-05-28 09:59:12 | 映画
ホラー映画を2本見た。ホラーと書いたが、僕はホラーだとは思わないけど。Amazonプライム・ビデオの分類がそうなっていた。前者は『ゲット・アウト』『アス』のプロデューサーが仕掛けた作品で、後者はサム・ライミのプロデュース。2本とも新人監督を起用した。 『アンテベラム』は腹立たしい映画かも知れない。仕掛けがなかなか巧妙で驚くけど、不親切だし、リアリティはない。だけど、こういう悪意はなんとなく想像で . . . 本文を読む
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真紀涼介『勿忘草をさがして』

2023-05-28 08:37:00 | その他
新人作家の第1作を読むのは、ワクワクする行為だ。それは初めて見る劇団の芝居を見る時と同じだ。そして、新人監督のデビュー作も同じ。要するにそこにある『初めて』。それがすべての理由。新しいてあい。知らなかった世界が広がる。  ミステリーは好きではないけど、ミステリータッチは大丈夫だ。植物を巡るお話というのも新鮮でいい。最初のエピソード(『春の匂い』)がとてもよかった。高校2年の男の子が主人 . . . 本文を読む
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一穂ミチ『うたかたモザイク』

2023-05-24 11:48:00 | その他
これは最新短編集。今人気爆発中の一穂ミチ。どんどん新刊が出る。初めて読んだ時は、まさかこんはふうにブレイクするとは思わなかった。あれ(『きょうの日はさようなら』)はYA小説だったけど、とてもよく出来ていて、夢中になった。続けて出版された彼女初の一般書『スモールワールズ』を読む。それからは出るたびにすぐ読んでいる。だけど、最近は少し不発気味。連打しすぎてネタが尽きたのか。今回はまるで普通。最後まで読 . . . 本文を読む
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缶々の階『だから君はここにいるのか【舞台編】リニューアルver.』

2023-05-24 11:43:00 | 演劇
昨年の6月に上演された【舞台編】をさらに進化して再演する。これは来週からの「東京ツアー」に向けた試演会だ。東京では今年1月に上演した【客席編】と合わせて上演される。 今回の芸術創造館の空間を生かしての公演はとても新鮮だった。この芝居は既に何度となく見ているが毎回初めてのように思える。空間の数だけこの芝居があるからだ。そして役者の数だけ、ね。今回新たに田宮ヨシノリを新キャストとして迎えた。相方の「 . . . 本文を読む
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小池昌代『くたかけ』

2023-05-24 08:53:00 | その他
三世代の女たちが3人で、一緒に暮らすことになる。父が亡くなってひとりになった母が認知症になる。自分もずっと前にだが、夫を亡くしている。だから娘とふたり暮らしだった。そんな彼女が母を引き取り、女3人の新生活を始める。父が懇意にしていた指圧師が彼女たちの家に頻繁にやってくる。母も娘もその男を受け入れるが、彼女は胡散臭いと思う。だが気がつくと彼はどんどん彼女たちの生活に関わってくる。 何かが壊れていく . . . 本文を読む
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