習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

金蘭会高校『ハルメリ』

2010-07-29 22:12:56 | 演劇
 ハルメリという言葉がこの2時間10分の芝居の中で何度交わされたことだろうか。100回や200回では足りない。もう無限大にハルメリが増殖していく。この無意味で、だからこそ、それにすがりつきたいという願望。現代人の孤独をこの壮大な茶番劇は根底に持つ。黒川陽子さんの台本のすごさは過剰であることに抑制をかけないところにある。限りなく暴走するハルメリを実に醒めた目でみつめている。こんなこと茶番であることは . . . 本文を読む
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『インセプション』

2010-07-29 22:11:48 | 映画
 この映画がつまらなかったことに衝撃を受けた。クリストファー・ノーランの『メメント』を見たときと同じくらいにショックだった。というか、この作品もノーラン監督作品である。  期待が大きすぎた、ということもあったかもしれない。アイディアの凄さに映画がついていけない。2本ともそのストーリーの斬新さ、映像のすばらしさに圧倒され、作品自体がそこを越えられない。企画倒れになっているというという意味でこれらは . . . 本文を読む
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咲くやこの花高校『おとなも子供もかいだんとゼリーを』

2010-07-29 22:08:35 | 演劇
 この淡々としたタッチは好きだけどストーリーにまるで仕掛けが無くてガッカリする。7つのシーンからなる70分ほどの芝居だ。リビングと姉のバイト先である喫茶店のシーンが交互に描かれる。ワンシーンは10分。几帳面に繰り返される。ドラマにメリハリをつけないのは確信犯的行為で、その心意気は確かに伝わる。だが、あまりにスタイリッシュになりすぎて、そこだけが突出して、肝心のハートが伝わらない。  姉と弟の2人 . . . 本文を読む
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信愛『おもちゃ箱革命2010』、近大附属『おもいで』

2010-07-29 22:06:13 | 演劇
 これはもうひとつの『トイストーリー』だ。顧みられなくなったおもちゃが、それでも彼らとの絆を断ちがたく、彼らと関わりを持とうとする。おもちゃの孤独のほうに話をシフトさせているのがいい。  15年程前に上演された台本を、今もう一度取り上げ、新生信愛演劇部は中学1年生2名、3年1名、高校生は1名というキャストで、HPFに挑む。  これはたぶん今回の23作品の中で一番小さな作品である。そして、その小ささ . . . 本文を読む
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sunday『サンプリングデイ』

2010-07-29 22:04:33 | 演劇
 とてもおもしろい発想の芝居(というか、パフォーマンス)だと思う。テンポよくいくつものエピソードをコラージュさせる。10から20くらいのエピソードをバラバラにして、組み合わせる。繰り返しを多用してリズムを作る。マイクと肉声を併用し変化をつける。ひとつひとつのエピソードはウォーリー木下さんが日々の生活の中でサンプリングしてきたどうでもいいようなお話(あるいはお話以下のもの)で、そこには明確なストーリ . . . 本文を読む
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『川の底からこんにちは』

2010-07-29 22:01:43 | 映画
「私は中の下の女だから」と開き直るヒロインに共感ができない。その違和感がこの映画を引っ張っていく。  まだ23歳の女が、自分のことをこんなにも安く見ていいのか、と思う。(しかも演じるのはあの満島ひかりである!)18歳でつまらない男でしかないテニス部の先輩と駆け落ちして東京にやってきた。男には1カ月で棄てられ、それから5年。ずっと最悪な毎日を生きてきた彼女は卑屈になるのではなく、今ある現実を等身大 . . . 本文を読む
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『無防備』

2010-07-29 21:58:49 | 映画
 自主映画として製作され、PFFでグランプリを受賞、さらにはプサン国際映画祭でもグランプリを受け、日本でも劇場公開され、絶賛された作品。こういう前評判を受けて見たにもかかわらず、この映画は事前の予想を遥に上回る衝撃を僕に与える。昨年公開されたすべての映画の中でも、ベストの1本だと断言してもよい。充分な制作費もなく、自主制作された新人監督の映画が、これだけのものになるなんて、驚きだ。この世界では時に . . . 本文を読む
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大谷高校『恋来い!?』

2010-07-26 21:18:29 | 演劇
 この子たちは、本当に「おバカ」だと思う。ここまでハイテンションにくだらない女子高生の恋バナを、わざわざ芝居にして語らなくてもいいではないか、と思う。だが、このくだらなさがこの芝居の魅力である。彼女たちは確信犯的にこの芝居を作る。  女子高生のある日の出来事のスケッチとして、それを冷静なタッチで描くことはなかなか出来そうに見えて出来ないことだ。惜しむらくはこれがもう少しスマートに作れたならよかっ . . . 本文を読む
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箕面東高校『さんすうとけものたち』

2010-07-26 21:14:51 | 演劇
 2時間に及ぶ超大作である。往年の金蘭会や追手門に迫るような作品世界をオリジナル戯曲で提示するって、凄くないか。20人に及ばんとするキャストたちが、応典院のタッパを生かした舞台空間の中で、立体的なドラマを紡ぎ上げていく。無駄のない悠々たるタッチで壮大なドラマが綴られていく。  この世界にはあまりに覚えることがたくさんありすぎて、どうでもいいことを記憶に止めておく力を持たない女(数式のことにしか興 . . . 本文を読む
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『必死剣 鳥刺し』

2010-07-23 07:38:19 | 映画
 平山秀幸監督による本格時代劇巨編。藤沢周平原作。例によって海坂藩を舞台にした下級武士のストイックな生き方を描く。どうしても山田洋次の3部作がある以上、あれらの作品を越えることが期待される。だが、それは難しい。あれとは別のアプローチをしない限り勝算はない。  もちろん映画は勝ち負けではないのだから、独立してそれぞれが評価を受けてしかるべきなのは重々承知のうえだ。だが、厳然とそこには『たそがれ清兵 . . . 本文を読む
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『特攻野郎 Aチーム  THE MOVIE』

2010-07-23 04:30:40 | 映画
 かなり疲れていたから、元気になれる映画が見たいと思っていたので、迷わずこのバカっぽい映画にした。(というか、疲れてるのなら、さっさと家に帰って寝ろ、とも思うのだが)      オリジナルのTVシリーズは当然見たことがない。(だいたい僕は基本的にはTVは見ない人だ)ただ、何も考えることなく、バカずら下げて見ていたら楽しめる映画、のはずだった。そう期待して劇場に行ったのだが。  それなのに、なんで . . . 本文を読む
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角田光代『何も持たずに存在するということ』

2010-07-23 03:54:38 | その他
 2冊のエッセイを読む。基本的にはこのブログでは、取り上げる本は小説だけに限定して書いている(でなくては収拾がつかない)のだが、今回は例外だ。角田さんと内田さんというとてもわかりやすい2人の素直な意見が、今の僕にはとても心に沁みてきた。だからその話をほんの少しここに書きとどめておきたかったのだ。  帯に「ヘラヘラした大人になりたい」と書かれてある。ドキッとする。50歳にもなって、いつもヘラヘラ生 . . . 本文を読む
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『サイドウェイズ』

2010-07-23 03:34:09 | 映画
 あの秀作『サイドウエイ』のリメイクである。アレクサンダー・ペイン監督のあの作品では、舞台はヨーロッパだったが、今回はアメリカに移して、日本人キャストで映画化した純粋日本映画だ。だが、20世紀FOXが配給し、監督もアメリカ人( チェリン・グラック)という異色の組み合わせ。まるでアメリカ映画みたいな印象を与える。(スタッフもほとんどアメリカ人だし)  映画全体のテイストはオリジナルとは全く違う。ス . . . 本文を読む
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箕面高校『marble 硝子のムコウ』

2010-07-23 02:58:52 | 演劇
 芝居の後、講評係のメンバーとしゃべっていたら、客出しを終えた箕面高校のチームがやってきて、「アドバイスをお願いします」と言われてしまった。本当はこういうのって苦手なのだが、なんだか彼らが初々しく、嬉しい気分にさせられた。  僕たち4人で、順に簡単なコメントをする。本番の講評会は後日あるのだが、終演後の昂揚した気分のなかで彼らと向きあえて楽しかった。  本番直後の幸福感に包まれた彼らを前にして . . . 本文を読む
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『 MONGA 』

2010-07-18 23:05:50 | 映画
 正月に台湾に行った時、『艋舺(MONGA)』(イーサン・ルアンとマーク・チャオ主演)が大々的に宣伝されていたが、春節公開だったので、残念ながら見れなかった。その後、この映画はすごいヒットとなり、さらにはこの夏の台北映画祭コンペにも登場したようだ。ようやくDVDで見ることが出来た。  台北市、龍山寺周辺のモンガと呼ばれる地域を舞台にして、5人の少年たちが、ヤクザの世界 . . . 本文を読む
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