■ ネトウヨとお花畑左翼の争いからは距離を取りたい ■
本ブログは世間の様々な「報道の裏を妄想して楽しむ陰謀論ブログ」なので、政治的にはニュートラルの立場を貫きたい。
モリカケ問題については、若干安倍政権に批判的なスタンスとなっていますが、本当の興味は「誰が安倍降ろしを主導し、その目的は何か」という点にあり、「首相のご意向」などというイマサラな政治的な問題には関心は有りません。
ただ、「工事費水増し」の可能性に関しては、仕事柄興味深々ですが・・・。
■ 地方における若年人口を支える大学誘致 ■
本日は陰謀論から少し離れて、「なぜ地方自治体が補助金を提供してまで大学を誘致するのか」という問題を真剣に考えたい。
銚子の前市長の自治省出身の野平匡邦氏の主張を彼のホームぺージで見て、じっくり考えてみようと思いいたりました。
彼の主張は雑にまとめると次の様なものでしょう。
1) 地方において若年人口の減少は顕著である
2) 若年人口を獲得する手段として大学誘致は最適である
3) 企業誘致の場合、工場の汚染など問題点もあるが大学はクリーンである
4) 大学誘致で若年人口を獲得した地方自治体は勝ち組である
5) 大学誘致で行政は経営リスクを負わない
自治省の役人らしい考え方です。
実際に東京都は大学の定員を増やす事を禁じられています。小池知事はこれを拡大する様に要求していますが、東京の大学の定員が増えた分だけ、地方の大学の定員割れが増える事は確実です。文科省が東京の定員増に規制を掛ける背景には、「地方に大学を誘致する」という国の基本方針が優先されているからに違いありません。
地方へ大学を誘致して、地方の若年人口を増やす事は国としての施策なのです。
■ 公共事業としての大学誘致 ■
地方自治体は「無駄な箱物」を作り続けて財政がひっ迫してきました。
公民館、図書館、美術館、郷土資料館、劇場・・・確かに公共性は有るかも知れませんが、収益性は乏しい。これらの施設の利用料金と維持コストを秤に掛ければ、赤字になるのは当然です。
そこで国が目を付けたのが大学です。
地方に大学を誘致し、自治体が土地を無償で提供したり、補助金を出せば色々と都合が良い。
1)地方には遊休地が沢山ある
2)大学誘致は若年人口獲得に繋がる
3)大学入学時に生活用品を買い、車やスクーターを買い、アパートに入居する。
4)日用品や食料品購入、外食などで地元にお金を落とす
5)アルバイトとして地元の労働力を提供する
6)卒業後、地方に残って就職する人も一定割合いる(かも・・・)
7)大学用地の整備で土木業者が潤う
8)大学校舎の建設で、地元の建築業者が儲かる
9)アパート建設などで、建設業者が儲かり、地元の地主が儲かる
10)周辺のローカル鉄道の乗客が増える
11)経営責任は大学に有り、自治体は保守費などの負担が無い
12)大学誘致の経済効果によって、補助金はペイ出来る・・・多分
7~9は、公共事業と同様の効果ですが、その後の出費が自治体負担とならないので、大学誘致は確かに自治体にとっては魅力的です。特に、学生は消費者であると同時にアルバイトとして労働者としても重要です。
■ 学生は労働力として不可欠 ■
私の娘も千葉県の鴨川市という田舎で学生生活を送っていますが、彼女は近所の旅館でバイトをしたり、スーパーのレジ打ちのバイトをしています。
旅館は夜遅くなるので、実習が増えた3年生になって辞めさせて頂きましたが、それでも長期休暇の繁忙期にはヘルプの電話が掛かって来て、スーパーと掛け持ちでバイトをしています。
学生達は、バイト先でミッチリとシフトを入れられているらしく、学業が疎かになる程、長時間勤務をこなしています。
これは地方に限った事では無く、都内の大学に通う知り合いの子供は、バイト先で責任ある役割を担わされ、学業そっちのけで責務を果たし、しっかり留年してしまいした。
■ 補助金の採算性 ■
千葉科学大学の銚子市や、岡山理科大学獣医学部の今治市を観ても、自治体側は大学の誘致にかなり積極的です。90億円を上回る補助金を、市債を発行しても、大学誘致のメリットが上回ると議会も判断している様です。(銚子市はディスカウントしていますが・・)
銚子市は利息を合わせて84億円を、年4億円ずつ返済しています。市民一人当たり4万円、4人家族で16万円の負担となりますが、21年で割れば、年間の市民一人当たりの負担は2000円程度。これで、市に若者が増えて、消費が活性化するならば悪くは無い。ただ、その恩恵に預かるのは、土建業者や、大学周辺の商店や、アパートの経営者に限られます。
こう考えると「補助金=税金」であり、再分配に不公平が生じる。
■ 最大の受益者は私大の経営者 ■
「所得再分配」の上でも問題の在る補助金ですが、最大の受益者は大学の経営者です。
補助金は「借り入れ」では無く「頂けるお金」ですから、タダで経営資金が手に入る。確かに経営者、経営リスクを負う訳ですから、リスクに見合った補助金を誘致自治体に要求したいという気持ちも分からないでも無い・・。
■ 補助金ビジネスは結局は破綻する ■
ただ、補助金を当てにしている時点で、事業計画自体に最初から問題が有るとも言えます。現に地方に進出した私大の多くが赤字経営です。2018年以降は18歳人口が急速に少なくなり始めますから、赤字は拡大するはず。2030年には高率大学も学生不足で統廃合が始まる日本で、地方の下位の大学が生き残れるとは思えません。
結局、地方に進出した大学の多くが、近い将来「経営破綻」に陥る可能性が有る。これは補助金事業に良くあるパターンで、「補助金有りき」のビジネスは結局は収益性を伴わないので破綻する。
■ 教育国債による高等教育の無償化は、地方の大学崩壊を防ぐ手段 ■
「教育国債を発行して、高等教育を無償化する」という意見が最近にわかに注目を集めています。
大学教育が無償化されれば、経済的に進学をあきらめていた子供達の大学に行くので、18歳人口問題の解決にはなります。但し、「学力を伴わない大卒」を大量生産するので、日本の国力アップには全く繋がりません。
ただ、大学を誘致した自治体は、大学が撤退すれば経済効果も失われ、若年人口も失います。これは大学の地方移転を推進した自治省としても、文科省としても面白く無い。下手をすれば、財政破綻する自治体が続出するかも知れない。
「元々が公共事業的な地方への大学誘致なのだから、税金でそれを支える事に何の問題が有るのか?」・・・・役人の思考はこうなのかも知れません。
■ 教育国債を可能にするゼロ金利国債 ■
そもそも教育国債などと言う発想がどうして出て来るかと言えば・・・国債金利がゼロ近傍で、国債発行コストが極端に低いから。
中央銀行の国債の買い入れは、財政モラルを崩壊させますが、日本においても「教育国債」などという発想が出て来る時点で、財政モラルは既に崩壊しています。
「教育国債」などというポピュリズムが実現するのなら、この国はそう遠く無い未来に「国家が財政破綻」するでしょう。
■ 外国人労働者の隠れ蓑ビジネスに堕ちるであろう地方の私大 ■
確かに地方への大学誘致は、一見「WIN WIN」の関係に見えます。誰も損をしない様に見える。
しかし、その実、「補助金ビジネス」と考えるならば、将来性の無い事業に地方や国の税金がつぎ込まれ、経営者が税金を美味しく頂いている。
短期的に見れば地方は若年人口を手に入れで潤うが、長期的に見れば学生数の減少でビジネスが根本的に破綻する。その解決策は外国人留学生の受け入れですが、教育のレベルが伴わなければ学生は集まりません。
その先は、一部の大学が既にそうなっている様に、名前だけの留学生受け入れで、実体は外国人労働者の受け入れビジネスに堕ちる。
これから大学を誘致する自治体は、実は「負け組」になる可能性が高い。その事に今治市は気づいているのだろうか・・・・。