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補助金ビジネス・・・大学誘致は地元リスクは無いのか?

2017-09-07 09:10:00 | 時事/金融危機
 

■ ネトウヨとお花畑左翼の争いからは距離を取りたい ■

本ブログは世間の様々な「報道の裏を妄想して楽しむ陰謀論ブログ」なので、政治的にはニュートラルの立場を貫きたい。

モリカケ問題については、若干安倍政権に批判的なスタンスとなっていますが、本当の興味は「誰が安倍降ろしを主導し、その目的は何か」という点にあり、「首相のご意向」などというイマサラな政治的な問題には関心は有りません。

ただ、「工事費水増し」の可能性に関しては、仕事柄興味深々ですが・・・。


■ 地方における若年人口を支える大学誘致 ■

本日は陰謀論から少し離れて、「なぜ地方自治体が補助金を提供してまで大学を誘致するのか」という問題を真剣に考えたい。

銚子の前市長の自治省出身の野平匡邦氏の主張を彼のホームぺージで見て、じっくり考えてみようと思いいたりました。

彼の主張は雑にまとめると次の様なものでしょう。

1) 地方において若年人口の減少は顕著である
2) 若年人口を獲得する手段として大学誘致は最適である
3) 企業誘致の場合、工場の汚染など問題点もあるが大学はクリーンである
4) 大学誘致で若年人口を獲得した地方自治体は勝ち組である
5) 大学誘致で行政は経営リスクを負わない

自治省の役人らしい考え方です。

実際に東京都は大学の定員を増やす事を禁じられています。小池知事はこれを拡大する様に要求していますが、東京の大学の定員が増えた分だけ、地方の大学の定員割れが増える事は確実です。文科省が東京の定員増に規制を掛ける背景には、「地方に大学を誘致する」という国の基本方針が優先されているからに違いありません。

地方へ大学を誘致して、地方の若年人口を増やす事は国としての施策なのです。

■ 公共事業としての大学誘致 ■

地方自治体は「無駄な箱物」を作り続けて財政がひっ迫してきました。

公民館、図書館、美術館、郷土資料館、劇場・・・確かに公共性は有るかも知れませんが、収益性は乏しい。これらの施設の利用料金と維持コストを秤に掛ければ、赤字になるのは当然です。

そこで国が目を付けたのが大学です。

地方に大学を誘致し、自治体が土地を無償で提供したり、補助金を出せば色々と都合が良い。

1)地方には遊休地が沢山ある

2)大学誘致は若年人口獲得に繋がる
3)大学入学時に生活用品を買い、車やスクーターを買い、アパートに入居する。
4)日用品や食料品購入、外食などで地元にお金を落とす
5)アルバイトとして地元の労働力を提供する
6)卒業後、地方に残って就職する人も一定割合いる(かも・・・)

7)大学用地の整備で土木業者が潤う
8)大学校舎の建設で、地元の建築業者が儲かる
9)アパート建設などで、建設業者が儲かり、地元の地主が儲かる

10)周辺のローカル鉄道の乗客が増える

11)経営責任は大学に有り、自治体は保守費などの負担が無い
12)大学誘致の経済効果によって、補助金はペイ出来る・・・多分

7~9は、公共事業と同様の効果ですが、その後の出費が自治体負担とならないので、大学誘致は確かに自治体にとっては魅力的です。特に、学生は消費者であると同時にアルバイトとして労働者としても重要です。

■ 学生は労働力として不可欠 ■

私の娘も千葉県の鴨川市という田舎で学生生活を送っていますが、彼女は近所の旅館でバイトをしたり、スーパーのレジ打ちのバイトをしています。

旅館は夜遅くなるので、実習が増えた3年生になって辞めさせて頂きましたが、それでも長期休暇の繁忙期にはヘルプの電話が掛かって来て、スーパーと掛け持ちでバイトをしています。

学生達は、バイト先でミッチリとシフトを入れられているらしく、学業が疎かになる程、長時間勤務をこなしています。

これは地方に限った事では無く、都内の大学に通う知り合いの子供は、バイト先で責任ある役割を担わされ、学業そっちのけで責務を果たし、しっかり留年してしまいした。

■ 補助金の採算性 ■

千葉科学大学の銚子市や、岡山理科大学獣医学部の今治市を観ても、自治体側は大学の誘致にかなり積極的です。90億円を上回る補助金を、市債を発行しても、大学誘致のメリットが上回ると議会も判断している様です。(銚子市はディスカウントしていますが・・)

銚子市は利息を合わせて84億円を、年4億円ずつ返済しています。市民一人当たり4万円、4人家族で16万円の負担となりますが、21年で割れば、年間の市民一人当たりの負担は2000円程度。これで、市に若者が増えて、消費が活性化するならば悪くは無い。ただ、その恩恵に預かるのは、土建業者や、大学周辺の商店や、アパートの経営者に限られます。

こう考えると「補助金=税金」であり、再分配に不公平が生じる。

■ 最大の受益者は私大の経営者 ■

「所得再分配」の上でも問題の在る補助金ですが、最大の受益者は大学の経営者です。

補助金は「借り入れ」では無く「頂けるお金」ですから、タダで経営資金が手に入る。確かに経営者、経営リスクを負う訳ですから、リスクに見合った補助金を誘致自治体に要求したいという気持ちも分からないでも無い・・。

■ 補助金ビジネスは結局は破綻する ■

ただ、補助金を当てにしている時点で、事業計画自体に最初から問題が有るとも言えます。現に地方に進出した私大の多くが赤字経営です。2018年以降は18歳人口が急速に少なくなり始めますから、赤字は拡大するはず。2030年には高率大学も学生不足で統廃合が始まる日本で、地方の下位の大学が生き残れるとは思えません。

結局、地方に進出した大学の多くが、近い将来「経営破綻」に陥る可能性が有る。これは補助金事業に良くあるパターンで、「補助金有りき」のビジネスは結局は収益性を伴わないので破綻する。

■ 教育国債による高等教育の無償化は、地方の大学崩壊を防ぐ手段 ■

「教育国債を発行して、高等教育を無償化する」という意見が最近にわかに注目を集めています。

大学教育が無償化されれば、経済的に進学をあきらめていた子供達の大学に行くので、18歳人口問題の解決にはなります。但し、「学力を伴わない大卒」を大量生産するので、日本の国力アップには全く繋がりません。

ただ、大学を誘致した自治体は、大学が撤退すれば経済効果も失われ、若年人口も失います。これは大学の地方移転を推進した自治省としても、文科省としても面白く無い。下手をすれば、財政破綻する自治体が続出するかも知れない。

「元々が公共事業的な地方への大学誘致なのだから、税金でそれを支える事に何の問題が有るのか?」・・・・役人の思考はこうなのかも知れません。

■ 教育国債を可能にするゼロ金利国債 ■

そもそも教育国債などと言う発想がどうして出て来るかと言えば・・・国債金利がゼロ近傍で、国債発行コストが極端に低いから。

中央銀行の国債の買い入れは、財政モラルを崩壊させますが、日本においても「教育国債」などという発想が出て来る時点で、財政モラルは既に崩壊しています。

「教育国債」などというポピュリズムが実現するのなら、この国はそう遠く無い未来に「国家が財政破綻」するでしょう。


■ 外国人労働者の隠れ蓑ビジネスに堕ちるであろう地方の私大 ■

確かに地方への大学誘致は、一見「WIN WIN」の関係に見えます。誰も損をしない様に見える。

しかし、その実、「補助金ビジネス」と考えるならば、将来性の無い事業に地方や国の税金がつぎ込まれ、経営者が税金を美味しく頂いている。

短期的に見れば地方は若年人口を手に入れで潤うが、長期的に見れば学生数の減少でビジネスが根本的に破綻する。その解決策は外国人留学生の受け入れですが、教育のレベルが伴わなければ学生は集まりません。

その先は、一部の大学が既にそうなっている様に、名前だけの留学生受け入れで、実体は外国人労働者の受け入れビジネスに堕ちる。


これから大学を誘致する自治体は、実は「負け組」になる可能性が高い。その事に今治市は気づいているのだろうか・・・・。


今が逃げ時?・・・フィッシャーFRB副議長の退任

2017-09-07 05:29:00 | 時事/金融危機
 
■ フィッシャーFRB副議長の退任 ■

FRBのスタンレー・フィッシャー副議長が任期を残して、個人的理由によって退任しました。

バーナンキ前議長の後を継いでFRB議長に就いたイエレン議長ですが、彼女の専門は失業問題です。彼女はFRBの利上げをコントロールする理由に労働市場の状況を重視していました。米雇用はここ数年は完全雇用に達していると言われ、労働市場は一進一退を繰り返しています。それを上手く利上げや、利上げ先伸ばしの理由に使っていたと私は考えます。

ちなみに、完全雇用とは失業率0%ではありません。アメリカでは失業率5%前後が完全雇用状態です。日本では4%前後でしょうか。転職など自主的理由で失業している人を考慮すると、この程度の失業率が完全雇用となる様です。

イエレン議長の裏で事実上のFRBの舵取りをしていたのはフィッシャー副議長でしょう。彼はイスラエルの中央銀行の総裁も務めた人物で、金融政策のエキスパートです。フィッシャー氏は資産市場の過熱状況を見ながらFRBの金融政策の舵取りをしていると思われ、雇用を重視するのは利上げ先延ばしの方便だったのでは無いかと私は妄想しています。

■ ウォール街支配が強まるトランプ政権 ■

トランプ大統領は選挙戦の時には「金融緩和の継続は経済の悪影響を与える」として、FRBの緩和的金融政策を批判していました。

しかし、財務長官にゴールドマン出身のムニューチン氏を起用するなど、現在のトランプ政権はウォール街の影響を強く受けています。ボルガー・ルールの撤廃を検討するなど、金融の規制緩和にも積極的です。

選挙戦の頃こそ「金融緩和の継続は悪」と言っていたトランプですが、就任後は緩和を継続するFRBと表立っての対立は起こしていません。ウォール街としては現在の金融緩和の継続条件がFRBの緩和的金融政策の継続なのですから、利上げに慎重的なイエレンーフィッシャー体制に特に不満な無いはずです。

FRBは最近は利上げに慎重で、資産売却によってバランスシートをリバランスする政策に切り替えた様に見えます。米実体経済は拡大期のピークアウトを過ぎた様で、経済指標も弱含みなものが増えています。FRBが利上げに慎重になる理由としては十分ですが、市場はこれを好感してダウなどはバブルを絶賛拡大中です。

■ 全力で逃げろ!! ■

フィッシャー氏は最後まで2%の物価上昇を目標としていましたが、景気のピークを越えた現状ではそれは難しく、FRBは日銀同様にバブル抑制の手立てを失っています。

フィッシャー氏は専門家ですから、現在のFRBの利上げペースでは米バブルの拡大を抑制する事が不可能である事に自覚的です。本来ならば、ここら辺で利上げして株価や債券価格に冷や水を浴びせる必要が有りますが、市場が過熱しているので下手をすればFRBが暴落の原因を作ってしまいます。

今後、利上のタイミングやペースが難しくなる中で、「逃げるなら今のうち」とばかりにトンズラこいたというのが、今回のフィシャー氏の辞任でしょう。「イエレン、後は任せた」とばかりに・・。

メディアは「トランプ政権の財政政策の先読みが困難な事が」辞任の理由の一つではと見ていますが、債務のシーリング問題など、混乱の芽が膨らむ状況での退任はある意味無責任にも思えます。

■ 利上げペースの鈍化でバブルは継続するが、崩壊の破壊力は拡大する ■

市場はFRBの利上げは年内0~1回と予測しています。フィッシャー氏の退任で、0回になる可能性が増えました。

トランプ政権は3人のFRBの理事の任命権を持っていますが、学者では無くウォール街の人材を送り込むだろうと市場を予測しています。彼らは金融緩和の継続を望むはずです。

今回のフィッシャー副議長の退任を市場は好感するはずですが、その先にバブルの崩壊が待ち受けている事は、市場参加者の多くが感づいています。

ジム・ロジャースは米株市場が10月に大きく下落すると予測していますが、彼の発言はポジショントークですから、ショートのポジションを組んでいるのでしょう。仮に、10月に調整が入るとしても、FRBの利上げが遠のけば、市場はスルスルと回復するでしょう。

バブル末期は希望的観測によって延命しますが、最期はブラックスワンが現れて大崩壊する・・・そして、ブラックスワンは意外な所から現れる。

まあ、目先の利く人は、とっくに利確して、フィッシャー氏同様にオサラバしているのでしょうが・・・。残るは鉄火場で遊ぶ人達。