■ フィッシャーFRB副議長の退任 ■
FRBのスタンレー・フィッシャー副議長が任期を残して、個人的理由によって退任しました。
バーナンキ前議長の後を継いでFRB議長に就いたイエレン議長ですが、彼女の専門は失業問題です。彼女はFRBの利上げをコントロールする理由に労働市場の状況を重視していました。米雇用はここ数年は完全雇用に達していると言われ、労働市場は一進一退を繰り返しています。それを上手く利上げや、利上げ先伸ばしの理由に使っていたと私は考えます。
ちなみに、完全雇用とは失業率0%ではありません。アメリカでは失業率5%前後が完全雇用状態です。日本では4%前後でしょうか。転職など自主的理由で失業している人を考慮すると、この程度の失業率が完全雇用となる様です。
イエレン議長の裏で事実上のFRBの舵取りをしていたのはフィッシャー副議長でしょう。彼はイスラエルの中央銀行の総裁も務めた人物で、金融政策のエキスパートです。フィッシャー氏は資産市場の過熱状況を見ながらFRBの金融政策の舵取りをしていると思われ、雇用を重視するのは利上げ先延ばしの方便だったのでは無いかと私は妄想しています。
■ ウォール街支配が強まるトランプ政権 ■
トランプ大統領は選挙戦の時には「金融緩和の継続は経済の悪影響を与える」として、FRBの緩和的金融政策を批判していました。
しかし、財務長官にゴールドマン出身のムニューチン氏を起用するなど、現在のトランプ政権はウォール街の影響を強く受けています。ボルガー・ルールの撤廃を検討するなど、金融の規制緩和にも積極的です。
選挙戦の頃こそ「金融緩和の継続は悪」と言っていたトランプですが、就任後は緩和を継続するFRBと表立っての対立は起こしていません。ウォール街としては現在の金融緩和の継続条件がFRBの緩和的金融政策の継続なのですから、利上げに慎重的なイエレンーフィッシャー体制に特に不満な無いはずです。
FRBは最近は利上げに慎重で、資産売却によってバランスシートをリバランスする政策に切り替えた様に見えます。米実体経済は拡大期のピークアウトを過ぎた様で、経済指標も弱含みなものが増えています。FRBが利上げに慎重になる理由としては十分ですが、市場はこれを好感してダウなどはバブルを絶賛拡大中です。
■ 全力で逃げろ!! ■
フィッシャー氏は最後まで2%の物価上昇を目標としていましたが、景気のピークを越えた現状ではそれは難しく、FRBは日銀同様にバブル抑制の手立てを失っています。
フィッシャー氏は専門家ですから、現在のFRBの利上げペースでは米バブルの拡大を抑制する事が不可能である事に自覚的です。本来ならば、ここら辺で利上げして株価や債券価格に冷や水を浴びせる必要が有りますが、市場が過熱しているので下手をすればFRBが暴落の原因を作ってしまいます。
今後、利上のタイミングやペースが難しくなる中で、「逃げるなら今のうち」とばかりにトンズラこいたというのが、今回のフィシャー氏の辞任でしょう。「イエレン、後は任せた」とばかりに・・。
メディアは「トランプ政権の財政政策の先読みが困難な事が」辞任の理由の一つではと見ていますが、債務のシーリング問題など、混乱の芽が膨らむ状況での退任はある意味無責任にも思えます。
■ 利上げペースの鈍化でバブルは継続するが、崩壊の破壊力は拡大する ■
市場はFRBの利上げは年内0~1回と予測しています。フィッシャー氏の退任で、0回になる可能性が増えました。
トランプ政権は3人のFRBの理事の任命権を持っていますが、学者では無くウォール街の人材を送り込むだろうと市場を予測しています。彼らは金融緩和の継続を望むはずです。
今回のフィッシャー副議長の退任を市場は好感するはずですが、その先にバブルの崩壊が待ち受けている事は、市場参加者の多くが感づいています。
ジム・ロジャースは米株市場が10月に大きく下落すると予測していますが、彼の発言はポジショントークですから、ショートのポジションを組んでいるのでしょう。仮に、10月に調整が入るとしても、FRBの利上げが遠のけば、市場はスルスルと回復するでしょう。
バブル末期は希望的観測によって延命しますが、最期はブラックスワンが現れて大崩壊する・・・そして、ブラックスワンは意外な所から現れる。
まあ、目先の利く人は、とっくに利確して、フィッシャー氏同様にオサラバしているのでしょうが・・・。残るは鉄火場で遊ぶ人達。
日本の完全失業率は6月で、ついに2.8%に。
4%というのは、高すぎませんか?
ちなみに、三橋氏が
「失業率が下がったのは、アベノミクスのおかげではない。
人口構造の変化により雇用環境が改善している風に「見えるだけ」
と言ってるのは、まさにその通りだと思います。
(三橋氏の言を信用しない私も、これは正しいと思う)
しかしマスコミは(日経新聞さえ)、経済政策で失業率が下がったなどと
おかしなことを言ってるんですよね。
Wikipediaの記述から日本の完全雇用の失業率を飲用し
ました。(4.0+0.3%)
ただ、現状の失業率を鑑みるに、この数字は確かに少し
高すぎというのは私も同意です。3%程度が妥当では無
いかと。
私はいつも三橋氏を批判しますが、彼は結構まともな事
を言っています。ただ、最後の財政拡大の結果見込みが
甘すぎるのでは無いかと・・・。これも一つのポピュリ
ズムだと思います。
アメリカも日本も失業率は下がっていますが、雇用の質
が同時に低下しているので消費が回復せず、景気が好転
しません。賃金によるお金の循環が損なわれる事で、お
金は富める者と高齢者に滞留し、金融市場を通して海外
で運用されてしまいます。世界の経営としては正しいd
すが、国単位では損をする国民が居る・・・。