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トランプ・マジック・・・発言と逆の効果を生み出す

2017-02-09 08:30:00 | 分類なし
 

■ トランプが動揺させた日本国債市場 ■

トランプが日本は円安に誘導していると非難していますが、この発言で動揺したのが日本国債市場。

日銀が異次元緩和と金利目標でコントロールしていましたが、2月3日に10年債金利が0.15%まで上昇(国債価格は下落)。慌てた日銀は10年債で指値オペを実施。

昨年の11月の金利上昇をけん制する中期債の指値オペでは、指値よりも国債の市場価格が高かった為に応札は無く「空砲」に終わりましたが、今回は市場価格よりも日銀の指値は高かったので、7239億円分の国債を買い入れました。

日本国債の金利が上昇した背景にはアメリカの金利が上昇している事も原因の一つですが、トランプが日銀の異次元緩和を「為替操作」だと婉曲に非難した事で、異次元緩和が将来的に縮小されるかも知れないとの不安が市場に広がった事も確かです。

■ 「市場との対話」に失敗しつつある日銀 ■

実は2月3日の指値オペに先立って、1月25日の買い入れで市場が予測していた中期ゾーンの国債買い入れをスッキップしており、市場には日銀が「こっそりテーパリングを始めたのでのでは無いか?」との疑心暗鬼が広がっていました。

3日の10年債の金利上昇の原因も、市場が予測していた買い入れ額より少なかった事が原因と言われており、日銀は「市場との対話」に失敗し始めたとも言えます。

そもそも、黒田総裁は「対話」を軽視し、「サプライズ」で国債金利を動かして来ましたが、日銀が保有する国債が増える一方で、来年度の国債発行額が減るなど、「追加緩和」というサプライズは既に打てない状況です。

昨年末より日銀はマイナス金利を導入するなど、国債買い入れの「量」から「金利」にコントロールの目標移していますが、金融機関の反発により長期金利の金利を引き上げる修正を迫られました。

■ そもそも出口が存在しない「異次元緩和」 ■

日銀は異次元緩和の目標を、「安定的にインフレ率2%を達成するまで」としていますが、成長力の落ちた日本で2%のインフレは当分達成できそうにはありません。

そもそも異次元緩和は「隠れ財政ファイナンス」ですから、一度始めたら止める事は不可能です。

「日銀がテーパリングを始めるかも知れない」という微かな気配だけで動揺する日本国債市場ですから、黒田総裁が記者会見を開いて「日銀はテーパリングに踏み切ります」なんて発表した日には、それこそサプライズで日本国債が暴落します。

■ 国債のロールオーバーを止めるFRB ■

一方、利上げに踏み切ったFRBですが、今までは償還期限を迎えた国債やMBSなどの債券を同額買い入れるロールオーバーを続けていました。しかし、1月末にイエレン議長は資産買い入れを止め、FRBのバランスシートを縮小する事の検討を始めると発言しています。条件として金利上昇が順調に進む事を上げています。

これ、実は巧妙な「言い換え」で、トランプ政権の政策が成功してアメリカの市中金利が高まった場合、FRBの当座預金にブタ積されている金融機関の資金が流出して、FRBが資産買い入れを継続出来ない状況になる事を憂慮しているのです。

バランスシートの縮小は米国債やMBSの金利上昇(価格下落)圧力になりますから、FRBとしては景気回復が本格化して、国債市場やMBS市場が安定するまでは行わないハズです。その為には米国債やMBSが民間の投資対象として魅力的である必要が在ります。

米国債やMBSの買い手は米国内だけではありません。海外の投資家達にも需要が高い。特に米国債は流動性が高いのでドルと同様の価値を持っています。

■ ドル高を示唆するFRBのバランスシートの縮小 ■

FRBがバランスシートを縮小するまでには、まだしばらく間がありますが、それを実現するにはアメリカのドル高と金利上昇が不可欠です。内外実質金利差を拡大する事で、海外の資金を引き込む必要があるからです。

日銀はFRBのテーパリングの開始に際して異次元緩和と追加緩和で円安誘導を行い、米国債を間接的に支援して来ました。

昨年の円高局面で、日本の金融機関は米国債を売却して資金を国内に引き上げています。中国も外貨準備も大幅に減らしていますので、米国債を売却しています。

トランプショック以降の円安で日本の資金は再び米国債へと向かったと予測されますが、トランプがドル安政策を取ると、世界の資金が米国債やMBS市場から流出してしまいます。

そうなると米国債金利やMBSの金利が需給バランスの悪化によって上昇を始め、金利コントロールが難しくなり、アメリカ経済の足を引っ張ります。

■ ドット・フランク法が廃止されたらFRBのブタ済みは解消する ■

ウォール街はトランプ政権にドット・フランク法の廃止や規制緩和を求めていますが、銀行の自己資本の積み増しを求めた同法案が緩和されれば、銀行はFRBの当座預金や米国債から資金を引き上げて、もっと儲かる投資を始めるでしょう。

FRBのバランスシートを支えているFRBの当座預金が減れば、FRBは否応無くバランスシートの縮小に着手せざるを得ません。

FRBがバランスシートの縮小を口にし出した理由を勘ぐると、その裏には銀行規制の緩和が薄っすらと透けて見えます。

■ 下手をすると日銀は全量買い取りに追い込まれる ■

借りに米国債の金利をFRBがコントロール出来ない状況が発生したら、彼らは躊躇無く円やユーロを攻撃して資金を米国に誘導するでしょう。

ユーロはいつでもギリシャ問題を蒸し返す事が出来ますし、ヨーロッパの不健全な銀行を攻める事も出来ます。

日本は異次元緩和を為替操作だと非難すれば、結果的に日本国債からの逃避を招き、日本の資金は安全資産としての米国債に向かうはずです。こうなると日銀は指値オペを連発して、国債の買い入れペースを増やしてゆかざるを得ません。

気づけば、日本国債の7割を日銀が保有していたなんて事態にも成りかねず、さすがにここまで来れば円の信用にも傷が付きます。

本来、そうなる前に日本政府と日銀はドル売り、円買いで円を防衛しなければなりませんが、政府保有の米国債は売却出来ません。(多分、既に担保にされて安部政権の海外援助に使われているのでは?・・・これは妄想ですが)


まあ、こんな最悪な妄想が現実化するとは思えませんが・・・トランプのドル安誘導の発言はドル高をもたらす・・・・その可能性は否定出来ない。