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作られたポピィリズムとファシズム・・・国家社会主義の復権

2017-02-24 05:09:00 | 時事/金融危機
 

■ トランプの主張は「リベラル」だ ■

一見、保守的に見えるトランプですが、彼の主張の多くは彼を嫌悪するリべリストの目標に近いものがあります。リベラリストの目標とは「誰もが豊に平等に生活できること」。

ところが、リベラリストは「誰もが」という枠を「世界の人類が」と捉えており、それが資本家の目的である事に気付きません。

1) 国境を越えて安い労働力の国で生産する
2) 途上国を発展させて生産力と市場を拡大する
3) 労働市場を開放し、移民による安い労働力を確保する
4) 金融の発達により、途上国や新興国の富を吸い上げる

最後の金融の発展の効果にはリベラリストも抵抗を示しますが、しかしユーロの様な「富の簒奪システム」を一つのヨーロッパの象徴として彼らは看過しています。

最近になってさすがにリベラリスト達も「過度のグロー張りゼーション」の弊害に気付き、多国籍企業を非難していますが、それでもトランプの移民排斥には条件反射のごとく反対の意を唱えてしまいます。

トランプは「誰もが」の定義を「アメリカ国民が」に縮小した事で多くの不満を持つアメリカ人の心を掴みました。これ、中韓を非難する事で若者の心を掴んだ三橋貴明氏に似ています。彼は「保守主義」的が言動をする一方で、彼の思考は民進党よりもある意味「リベラル」です。財政を拡大して豊かさと平等を実現しろと言っているのですから、これは社会主義者の発言です。トランプも公共事業を拡大するという点で彼と同質です。

■ トランプは独裁者では無いが、ファシストだ ■

トランプにヒットラーの姿を重ねて批判するリベラリストも多く見かけますが、彼らは「独裁者」と「ナチズム」、或いは「ファシズム」の違いすらも理解していません。

「ナチズム」とはドイツの『国家社会主義』=『Nationalsozialismus』の蔑称から世界に広がった言葉です。
『ファシズム』はイタリアの「ファシスト党」を語源としていますが、「ファッショ」の語源はラテン語の「束ねる」で、「三本の矢」同様に「国民の力を束ねる」という意味を持ちます。「ファシズム=全体主義」というのが正しい解釈で、決して「独裁主義」では無い。

『ナチズム』も『ファシズム』も日本の戦前の『翼賛体制』も目指していたのは『国家社会主義です』

『国家社会主義』と『ソビエト型社会主義(共産主義)』の違いは何かと言えば、「私有財産権」を認めるかどうかです。

『ソビエト型社会主義』は原則的には私有財産を認めません。生産設備や農地、家屋や土地も国家のものである、貯蓄も認めません。家電品ですら国家が支給したという立場を取ります。

一方、『国家社会主義』は私有財産を認めています。企業が生産設備を私有する事も、国民が土地や家屋を保有して貯蓄する事も認めています。ただ、統制経済によって経済活動を政府の管理下に置く事により、物資や人や財の利用効率を最大化する事を目的としています。

イタリアにおいてはムッソリーニは巨大な力を持つ財閥を否定して政権を維持する事は出来ず、日本においても翼賛体制は政治家と官僚と財閥の合作であったといえます。

その思想に背景には「バカな国民に勝手をさせるより、エリートが国家を統制した方が良い」という官僚の優越意識が働いていたと思われます。

就任以降のトランプの言動や、企業との距離感はファシスト的とも言えます。独裁者という意味では無く、国家社会主義者的という意味において。彼は企業を「統制」してアメリカの利益を最大化しようとする一方で、TPPやFTAの交渉においてはアメリカ企業の利益を最大化しようとしています。

選挙中、彼はグローバル企業やウォール街を口撃していましたが、政権発足後は2人3脚で国家運営を行っている様に感じられます。

■ トランプを大統領に仕立て上げたコンサル会社 ■

実は選挙戦機関、トランプの選挙戦略を担当していたのは「ケンブリッジ・アナリティカ(Cambridge Analytica)」というイギリスの新興のコンサル会社だそうです。

「ケンブリッジ・アナリティカ(Cambridge Analytica)」はビックデータを駆使して社会動向や世論を分析する会社で、実際にトランプの選挙戦ではフェイスブックなどのSNS企業から情報を買っていた様です。

フェイスブックの「いいね!」は、人々の興味や評価の基準として世論調査よりも正確に又迅速に人々の意思を集める事が出来ます。トランプのTwitterなどでの発言は、フェースブックの「いいいね」やTwitterの「いいね」によって瞬時に反応が吸い上げられ、有権者がトランプのどんな発言に強く共感するのか分析され、次のTwitterの発信やスピーチの内容にフィードバックされます。これがポジティブ・フィードバックを生み、トランプ現象を生み出していったのです。

「ケンブリッジ・アナリティカ」はブレグジットにおいてもバックアップをしていた様で、まさにネット時代の世論操作が機能した結果が、イギリスのEU離脱という国民投票の結果に繋がったとも言えます。

■ 台頭させられるポピィリズム ■

ここまで書いてきて、私はふと疑問を感じます。

「ポピィリズムは作られたものでは無いか?」・・・・・。

三橋貴明氏に代表される「ネトウヨ」的ポピィリズムは、チーム世耕を発端とする自民党のネット対策部隊が生み出したムーブメントです。同様に海外のポピュリズムもネットに先導されて広がった感が強い。

確かに国民の間に漠然とした不満は溜まっていましたが、そのはけ口の方向性を決定してうるのはネット言論による誘導の様に思えてなりません。

その結果が何を生み出したかと言えば、安部政権であり、トランプ政権であり、イギリスのEU離脱であり、ヨーロッパにおける一つのヨーロッパへの反発では無いのか・・・。

■ ポピィリズムの目的 ■

日本では既に国会は機能していません。野党はお飾りであり、その気になれば自民党はどんな法案でも強硬採決可能です。

アメリカにおいてもトランプは大統領令を乱発して議会の機能を半ば無視しています。

有権者の多くは選挙によって「民意が反映されている」と錯覚していますが、選挙によって有権者は白紙の委任状を提出した事になります。これ、一種の『国家社会主義』が実現したとも言えます。

「トランプはファシストだ」という批判は、ある意味間違いでも在り、深い所では正解とも言えます。

問題はなぜ今、世界が強い指導者を求めるかという点。「無理が通れば道理が引っ込む」様な事態が起きる予兆なのか・・・。

日本では既に日銀が新発国債の全量を買っているので、「統制経済」がスタートしたとも見る事が出来ます。日銀が長期金利までコントロールしようとしています。