では,いよいよ裏街道に入ります。
第2 実際のお金の動き(裏街道)
1 基本は国と同じ
では,実際はどうでしょうか。基本的には国と同じ「夢のキャッシュバックシステム」となります。しかし,受け取り先が政党ではなく「首長」という場合が多い,という点が違う位でしょうか。
一昨年,知事が相次いで収賄罪で逮捕起訴されましたが,これはまさにこの「夢のキャッシュバックシステム」が政治献金という枠を超えてしまった結果によるものです(ちなみに,首長の場合,政党が受け取る政治献金と異なり,相当な制約があるため,実際は業者からの献金は表面的にはありません。)。
したがって,地方自治体では首長はかなりおいしいポストとなるのです。
もちろん,地方議会議員もこのシステムに加わる場合がありますし,政党(都道府県連)なども実際はこのシステムに加わっています。
2 補助金のもらい方
補助金は,本来は法律に基づいて交付されるものであり,それをもらうためには補助金申請を出して,それが所管で認められるかどうかで決まってきます。
ところが,補助金申請をしてその後ゆっくりあぐらをかいている首長がいたとしたら,その人はよほどの大物か,よほどの政策通か,よほどのアホのいずれかです。
実際は,「要望」を必死に行うという作業が加わってきます。つまり,霞が関に足繁く通わなければなりません。かの宮崎県知事でさえ,テレビ出演の合間に必ずと言っていいほど霞が関で要望活動をしていきます。
この要望は,単に事業を売り込むという意味だけではなく,「官僚に対する付け届け」の意味もあります。要望の際,手ぶらで行く人はいません。合法的付け届けを持っていきます。これが菓子折程度ならかわいいものですが,ビール券,商品券,日本酒等という現物出資,時には接待ゴルフも日常茶飯事なのです。
さらに,とどめとして地元国会議員がだめ押しに加わります。もちろん,この議員が動くのは「夢のキャッシュバックシステム」の恩恵にあずかれるからです。そのためにも,議員は必死に官僚を口説くのです。
ちなみに,これが道路族議員であれば,「よろしく頼むよ」の一言ですべて解決です。これは官僚側も人事などでおいしい思いができるという見返りが期待できるからです。
こうして,税金の固まりである補助金の割り振りが決まります。事業申請書に幾らうまいことを書いても,「そんなの関係ねぇ!ハイ,オッパッピー」なのです。
3 業者の決め方
地方自治体の工事では,大手企業というよりも地元の企業が事業主体となる場合が多いです。国の例で説明した「下請け企業」です。
そして,かつては「指名競争入札」を採用していました。もちろん,今でもこの制度自体は違法ではありませんので,引き続き採用している自治体もあります。
ところが,指名競争入札とは,結局のところ「息のかかった業者だけ入札できる」というシステムなので,選挙の際に首長の応援をした業者だけが参加できるという不透明な入札制度となってしまいやすいのです。事実,指名競争入札で指名されなかったのは不透明な手続きであるとして地方自治体を訴えた業者が出た位です。
そこで,最近では「一般競争入札」を採用している自治体が増えてきました。これは,「基本的」に業者は誰でも入札に参加できるというシステムなので,手続きが公正に見えるというものです。
ところが,ここに実はからくりがあるのです。一般競争入札は,誰でもとはいいながら,一方では「事業が完成しないと困る」という観点から,「確実に仕事ができる業者に限る」という制約が必要となります。そこで,通常は「参加資格」を定めており,その要件を満たした業者のみが入札に参加できるというシステムとなっているのです。
と,ここまでは建前の話で,実際は,この参加資格,いかようにでも調整できるのです。すなわち,業者については過去の作業実績に基づいた格付けがされており,多くの事業の場合,格付け上位に限っているのです。っていうことは,過去の実績がない企業が入札に新規参入することは結構大変なのです。
逆に言うと,政党や首長べったりの業者の場合,発注実績も多くなりますから,必然的に格付けが上位となります。とすると,入札に参加しやすいということになります。
まして,地方の場合,その格付けにより入札ができる業者は実質的に数社に限られてきます。したがって,「実質的指名競争入札」となってしまい,談合も簡単に行えるとことになり,首長の意のままに業者を選べるということになるのです。もっといえば,ここで業者を2,3社程度に絞り込めば,事実上の随意契約として思いのままの契約になるのです。
4 裏切れない業者,裏切れない議員
では,仮に業者が裏切ってキャッシュバックを止めてしまったどうなるでしょうか。答えは簡単で,「仕事が来ない」ことになります。具体的には,「指名停止処分」の悪用です。これは,過去の入札に違法行為があった場合,一定期間入札を停止できるという規定があるため,これを悪用するのです。些細な記載ミスや要件ミスを捜し出し,それを盾に指名停止としてしまうのです。一度指名停止となれば過去の実績が下がるため,格付けが下がります。すると,次回以降入札参加資格が得られないということになりうるのです。
だから,業者は政党や首長を裏切れないのです。
逆に,議員や首長が業者を裏切って「自由な入札」などという競争制度を始めてしまったらどうなるでしょうか。これまた答えは簡単で,「次の選挙で一切応援をしない」という報復措置に出ます。選挙は「人力と金」がものをいいます。このいずれも用意してくれるのが,こういった業者ですから,逆に業者を裏切るような行為をしようものなら,選挙における協力を一切しません。つまり,人も金も出しませんから,一気に選挙は不利になります。まして,対立候補に業者が鞍替えしてしまったら,もはや勝ち目はなく,首長や議員は「ただの人」になってしまうのです。
だから,首長や議員も業者を裏切れないのです。
第3 本日のまとめ
地方の場合も「夢のキャッシュバックシステム」がフル稼働します。しかし,その財源として「補助金」が加わるため,補助金を巡る争奪戦が始まるのです。しかし,この補助金も,結局「キャッシュバック」の原資となるにすぎないため,国の事業と同じ結果となるのです。
また,一般競争入札で透明にして安く発注できると思われるこの制度も,参加資格を限定することで実質的に参加者を制限して,自分の支持者を優先するようにし向けることもできるのです。
いうなれば,「業者の議員の蜜月関係」により,両者だけがおいしい思いができるという構造になっているわけです。当然,これはすべて税金が原資なのです。
したがって,無駄を減らすためには,キャッシュバックシステムもさることながら,補助金申請から結論に至までのプロセスの透明性や,入札参加資格選定自体の方に透明性が働くようなシステムを構築することが求められるのです。
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第2 実際のお金の動き(裏街道)
1 基本は国と同じ
では,実際はどうでしょうか。基本的には国と同じ「夢のキャッシュバックシステム」となります。しかし,受け取り先が政党ではなく「首長」という場合が多い,という点が違う位でしょうか。
一昨年,知事が相次いで収賄罪で逮捕起訴されましたが,これはまさにこの「夢のキャッシュバックシステム」が政治献金という枠を超えてしまった結果によるものです(ちなみに,首長の場合,政党が受け取る政治献金と異なり,相当な制約があるため,実際は業者からの献金は表面的にはありません。)。
したがって,地方自治体では首長はかなりおいしいポストとなるのです。
もちろん,地方議会議員もこのシステムに加わる場合がありますし,政党(都道府県連)なども実際はこのシステムに加わっています。
2 補助金のもらい方
補助金は,本来は法律に基づいて交付されるものであり,それをもらうためには補助金申請を出して,それが所管で認められるかどうかで決まってきます。
ところが,補助金申請をしてその後ゆっくりあぐらをかいている首長がいたとしたら,その人はよほどの大物か,よほどの政策通か,よほどのアホのいずれかです。
実際は,「要望」を必死に行うという作業が加わってきます。つまり,霞が関に足繁く通わなければなりません。かの宮崎県知事でさえ,テレビ出演の合間に必ずと言っていいほど霞が関で要望活動をしていきます。
この要望は,単に事業を売り込むという意味だけではなく,「官僚に対する付け届け」の意味もあります。要望の際,手ぶらで行く人はいません。合法的付け届けを持っていきます。これが菓子折程度ならかわいいものですが,ビール券,商品券,日本酒等という現物出資,時には接待ゴルフも日常茶飯事なのです。
さらに,とどめとして地元国会議員がだめ押しに加わります。もちろん,この議員が動くのは「夢のキャッシュバックシステム」の恩恵にあずかれるからです。そのためにも,議員は必死に官僚を口説くのです。
ちなみに,これが道路族議員であれば,「よろしく頼むよ」の一言ですべて解決です。これは官僚側も人事などでおいしい思いができるという見返りが期待できるからです。
こうして,税金の固まりである補助金の割り振りが決まります。事業申請書に幾らうまいことを書いても,「そんなの関係ねぇ!ハイ,オッパッピー」なのです。
3 業者の決め方
地方自治体の工事では,大手企業というよりも地元の企業が事業主体となる場合が多いです。国の例で説明した「下請け企業」です。
そして,かつては「指名競争入札」を採用していました。もちろん,今でもこの制度自体は違法ではありませんので,引き続き採用している自治体もあります。
ところが,指名競争入札とは,結局のところ「息のかかった業者だけ入札できる」というシステムなので,選挙の際に首長の応援をした業者だけが参加できるという不透明な入札制度となってしまいやすいのです。事実,指名競争入札で指名されなかったのは不透明な手続きであるとして地方自治体を訴えた業者が出た位です。
そこで,最近では「一般競争入札」を採用している自治体が増えてきました。これは,「基本的」に業者は誰でも入札に参加できるというシステムなので,手続きが公正に見えるというものです。
ところが,ここに実はからくりがあるのです。一般競争入札は,誰でもとはいいながら,一方では「事業が完成しないと困る」という観点から,「確実に仕事ができる業者に限る」という制約が必要となります。そこで,通常は「参加資格」を定めており,その要件を満たした業者のみが入札に参加できるというシステムとなっているのです。
と,ここまでは建前の話で,実際は,この参加資格,いかようにでも調整できるのです。すなわち,業者については過去の作業実績に基づいた格付けがされており,多くの事業の場合,格付け上位に限っているのです。っていうことは,過去の実績がない企業が入札に新規参入することは結構大変なのです。
逆に言うと,政党や首長べったりの業者の場合,発注実績も多くなりますから,必然的に格付けが上位となります。とすると,入札に参加しやすいということになります。
まして,地方の場合,その格付けにより入札ができる業者は実質的に数社に限られてきます。したがって,「実質的指名競争入札」となってしまい,談合も簡単に行えるとことになり,首長の意のままに業者を選べるということになるのです。もっといえば,ここで業者を2,3社程度に絞り込めば,事実上の随意契約として思いのままの契約になるのです。
4 裏切れない業者,裏切れない議員
では,仮に業者が裏切ってキャッシュバックを止めてしまったどうなるでしょうか。答えは簡単で,「仕事が来ない」ことになります。具体的には,「指名停止処分」の悪用です。これは,過去の入札に違法行為があった場合,一定期間入札を停止できるという規定があるため,これを悪用するのです。些細な記載ミスや要件ミスを捜し出し,それを盾に指名停止としてしまうのです。一度指名停止となれば過去の実績が下がるため,格付けが下がります。すると,次回以降入札参加資格が得られないということになりうるのです。
だから,業者は政党や首長を裏切れないのです。
逆に,議員や首長が業者を裏切って「自由な入札」などという競争制度を始めてしまったらどうなるでしょうか。これまた答えは簡単で,「次の選挙で一切応援をしない」という報復措置に出ます。選挙は「人力と金」がものをいいます。このいずれも用意してくれるのが,こういった業者ですから,逆に業者を裏切るような行為をしようものなら,選挙における協力を一切しません。つまり,人も金も出しませんから,一気に選挙は不利になります。まして,対立候補に業者が鞍替えしてしまったら,もはや勝ち目はなく,首長や議員は「ただの人」になってしまうのです。
だから,首長や議員も業者を裏切れないのです。
第3 本日のまとめ
地方の場合も「夢のキャッシュバックシステム」がフル稼働します。しかし,その財源として「補助金」が加わるため,補助金を巡る争奪戦が始まるのです。しかし,この補助金も,結局「キャッシュバック」の原資となるにすぎないため,国の事業と同じ結果となるのです。
また,一般競争入札で透明にして安く発注できると思われるこの制度も,参加資格を限定することで実質的に参加者を制限して,自分の支持者を優先するようにし向けることもできるのです。
いうなれば,「業者の議員の蜜月関係」により,両者だけがおいしい思いができるという構造になっているわけです。当然,これはすべて税金が原資なのです。
したがって,無駄を減らすためには,キャッシュバックシステムもさることながら,補助金申請から結論に至までのプロセスの透明性や,入札参加資格選定自体の方に透明性が働くようなシステムを構築することが求められるのです。
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