【ストーリー】
刑事裁判所を定年退職したベンハミンは、仕事も家族もない孤独な時間と向き合っていた。残りの人生で、25年前の殺人事件を題材に小説を書こうと決意し、久しぶりに当時の職場を訪ねる。
出迎えたのは、彼の元上司イレーネ。
変わらずに美しく聡明な彼女は、今や検事に昇格し、2人の子供の母親となっていた。彼が題材にした事件は1974年にブエノスアイレスで発生したもの。幸せな新婚生活を送っていた銀行員リカルドの妻で23歳の女性教師が、自宅で暴行を受けて殺害されたのだ。現場に到着したベンハミンは、その無残な遺体に衝撃を受ける。やがて、捜査線上に1人の男が容疑者として浮上。その男はリリアナの幼なじみ。古い写真に写った、彼女を見つめる彼の瞳には暗い情熱が宿っていた…。
ベンハミンはようやく容疑者逮捕の糸口を掴み、事件の真相に辿り着くが…。
2009年8月に本国アルゼンチンで公開され、歴史的な大ヒットを記録したという本作。アルゼンチン・アカデミー賞では13部門で受賞を果たすとともに、第82回アカデミー賞外国語映画賞を受賞した話題作。
アルゼンチンの名監督、フアン・ホセ・カンパネラが、70年代の祖国の情勢を背景に、過去の記憶に支配され苦悩する男の姿を描くサスペンス・ドラマ。
過去と現在を巧みに交差させ、一人の人間の罪と罰や祖国の軌跡を浮き彫りにする構成が巧み。
軍事政権下の不穏な空気に包まれるアルゼンチンの政情、そして衝撃的な秘密が暴かれる興味深いラスト。
「瞳の奥」が語る真実を追い、人と時間と謎の織り成す独特な気配。
とてもコクのある大人のサスペンス映画です