農作業が終わる頃、東の空を見上げたら、赤みを帯びた大きな夕月が出ていた。そろそろ満月かなというほどの丸さだった。綺麗だなと思った。1日を締め括る最高のシチュエイションだった。短い時間だったが,今日も土いじりが出来たことを感謝した。種から蒔いて発芽して、双葉の次の段階に入ったところで、畑に移植した。胡瓜型の緑ズッキーニとテニスボール型黄色ズッキーニとを3株ずつ植え付けた。虫がもう新芽を囓っていた。殺虫剤を散布してから植え付けた。油断が成らない。
農作業が終わる頃、東の空を見上げたら、赤みを帯びた大きな夕月が出ていた。そろそろ満月かなというほどの丸さだった。綺麗だなと思った。1日を締め括る最高のシチュエイションだった。短い時間だったが,今日も土いじりが出来たことを感謝した。種から蒔いて発芽して、双葉の次の段階に入ったところで、畑に移植した。胡瓜型の緑ズッキーニとテニスボール型黄色ズッキーニとを3株ずつ植え付けた。虫がもう新芽を囓っていた。殺虫剤を散布してから植え付けた。油断が成らない。
明日から友人と一緒に旅に出て来る。2~3日。長崎県の離れ島、上五島まで。佐世保から高速船に乗って、青い海に出て、上五島の有川港までの船旅を楽しみたい。1時間20分掛かる。電車、船、観光地を巡る車、宿、観光地情報などの手配をすませた。宿は民宿に泊まる。予約時に、魚料理を出してくれるように頼んだ。友人が釣りを得意とするから、釣りをする時間を造りたい。さっき、着替えなどを用意した。これからコンビニに行ってお金を調達する。
友人がやって来た。長靴を借りに来た。3足貸した。明日は大潮、有明海の潮干狩りに、男女の中国人留学生グループを連れて行くのだという。潮干狩りには長靴が要る。自宅に揃えている分では足りないというから、たくさん来るようだ。
彼は市の日中友好協会の仕事をしている。で、自宅に学生達を呼んでいる。毎年の恒例行事だ。偉い。
とても、こういう慈善事業は僕にはできない。せいぜい長靴を貸してあげるくらいなことだ。潮干狩りが終われば、自宅で接待をするようだ。奥さんがこれを手助けしている。奥さんも偉いなあと思う。お金も要るだろうになあと、僕なんかは心配をする。我が家の畑の不断草を、野菜料理の足しにと、差し上げた。
10
そして、いままでには袖にして来たこういうおいしい新しい飲み物、新しい食べ物を楽しんでみる。
おれは人間様だからそんなことはするもんか、などと肩肘を張らずに。
そうすれば、これまでは楽しくも何ともなかったことが、次々に楽しみに追加されて来る。
*
だったら、楽しんでみることがまだまだいっぱいいっぱい残されていそうに思えて来たのである。
9
また例えばこれ。
虫になってみる。虫だったらこういう楽しみを楽しんでいるだろうと考えて、そうしてみる。
ふふふとほくそ笑んでみる。なあんだ、意外と簡単だったじゃないかと相好を崩す。
蝶になってみる。蝶だったらこういう楽しみを楽しんでいられるだろうと考えて、その真似をして見る。
えへへへと会心の笑みを笑んでみる。なんだ、簡単だったじゃないかと思う。
8
たとえば一例。
わたしは日頃、晩酌をしている。暑い日にはビールを飲む。寒い日には焼酎を飲む。量は限られているが、それでもおいしい。それぞれのコップに注いでそれを飲む。それだけが晩酌だと限定してものを考えている。
そのコップに光を満たしてぐいいと飲む。風を注いで、これに香草の香りを落として、うまそうに飲む。そういう晩酌もあたんじゃないか。これだったら、晩ではなく、昼でも朝でもできたんじゃないか。
7
それを手元に引き寄せてみると、これが意外と簡単で、それこそ片手間にでもできることだったりして。これだったら、もっと早くからやっておくべきだった、と臍を噛むような。
<見落とし>というのは、案外見落とされたままになっていることが多い。人生がもうすぐお終いになりそうな処へ差し掛かって来ていて、それにふっと行き当たる。靴先がそれに躓(つまず)く。<ああ、そうだった>とそこで思う。
6
で、ふっと、<おれは大事なことを見落としてきたんじゃなかったか>という思いに捕らわれた。
<おれはこんなことにも気付いていなかったのか>という見落とし。それが百も千もあったんじゃなかったのか。
5
わが両手に握られるものは僅かである。そしてそれでいい。それでいいけれど、別のものも燦然と光り輝いている。その輝きをも礼賛しておきたくなる。
これで視界がうんと広くなる。窮屈偏屈の縛りが切れる。ひろびろとした空間を味わう。この広々としたところで息をしているという感覚はいいものだ。
4
あれもこれもはもちろんできるはずもない。いまやっていることで、それで十分間に合っているはず。だから、単に、<よそ見をして来なかった>だけなのかもしれない。なるほど、よそ見は危ない。そして欲張りはよくない。