有馬温泉は含鉄強食塩泉。噴出するときには透明で、酸素に触れると赤くなる。これを金泉と呼んであるようだ。湯の温度は96℃。熱湯だ。口に入ると塩辛い。傷口があると、ひりひり痛む。熱いので長湯は出来なかった。この温泉郷には幾つかの泉源があるらしい。歴史は古く、奈良時代にまで遡るようだ。行基菩薩がこの地を訪れて温泉効果を広めたとも。豊臣秀吉が千利休とともにたびたび湯を楽しんだとも説明書きには書いてあった。いやはや個性豊かな温泉である。明日も温泉三昧をして過ごしたい。
新神戸駅から神亀バスに乗って約40分。山間の有馬温泉に到着しました。ホテルのバスに迎えに来てもらって、16時のチェックイン。この時間の到着なら、余裕だ。硫黄泉の臭いが鼻を突く。これから湯に入る。週末のホテルは満室らしい。簡易ベッドが1個運びこまれている。やや寒い。枝垂れ桜が咲いている。
今日もよく歩いた。摩耶山ケーブル山頂から、様々な香草を育てているハーブ園の中を中間地点まで歩いた。だらだらの七曲がり山阪を降りて来た。香草がこんなにたくさんあるとはしらなかった。勉強になった。小さい子どもを引いた外国人の家族連れが目立った。
新神戸駅の真裏にある摩耶山にケーブルに15分乗って登ってきた。ハーブ園で下車した。風にゆらゆら揺れた。青い港と瀬戸内海が一望できた。ハーブ園内部で匂いの科学についての説明を受けています。何種類かの匂いを嗅ぎました。香りの効果というのはこんなにも実生活の中で取り入れられていたのですね。山頂は寒い。山桜の花片が花吹雪をして散っています。
神戸は楠が明るい。新緑が空に映える。こんもりこんもりしている。それを見ているだけでこころがおだやかに、平和になる。で、ホテルの窓からそれを見ている。年齢を忘れる。二十歳くらいになる。自分を鏡に映してみなければ、皺は見えないのだから。こころだけだと、何歳であってもいいことになる。10代と思い込ませてもいい。行動に移すとしかしすぐにバレてしまう。よろよろしているからだ。よぼよぼと歩くからだ。だから、座っている。じっとしている。これで高校生を装う。偽装だけど。見せる偽装ではないから、許してもらう。こころというのは生涯、自由自在を楽しむためにあるのかもしれない。
おはようございます。いい天気です。ゆっくりやすめました。これから朝ご飯に行きます。今日は摩耶山ケーブルに乗る予定です。その後で有馬温泉に行きます。そこで泊まります。温泉を楽しみます。
何処まで歩いてきたら、もういいということになるのかしらん。風景を見尽くしたということになるのかしらん。もう戻ろうということになるのかしらん。
何処まで生きたら、ああよく生きたということになるのかしらん。もう十分ということになるのかしらん。欲が深い。がめついようにも思う。生きても生きても生きようとしている。今日を生きてさらに明日をも生きようとしている。
さ、また寝よう。目を瞑ろう。
目に蓋が付いている。瞼だ。これを瞑ると、すると何にも見えない。その代わり内なる世界が広がる。内なる世界でも生きている。そういうことが分かる。外なる世界で生きたことを此処で反芻することができる。すると深々となる。内と外の両方を兼備している贅沢に、溶ける。一人で酔い痴れる。
目が覚めてしまった。ただいま午前1時40分。三つあるベッドにそれぞれ人がいて寝ている。寝息を聞く。灯りがぼんやり灯っている。家族で旅に出て来ているんだということが分かる。神戸三宮駅を山の手に上がった北野町のホテルは静かだ。行き交う車の音もしていない。足の脹ら脛(はぎ)、脛(すね)のあたりが強張っている。膝から下の筋がぴりりと張っている。神戸は坂の街。そこを久し振りに長く歩いたからだ。杖を突きつつだから、のろのろとしか歩けなかったのに、それでもこの通りだ。日頃の運動不足が祟る。近くに異人の館跡があるらしい。少しばかり朝の散歩をしてみようかしらん。