The Game is Afoot

ミステリ関連を中心に 海外ドラマ、映画、小説等々思いつくまま書いています。

『ヴィクトリアン・ホテル』下村敦史著

2021-08-04 | ブックレヴュー&情報

実業之日本社ー2021/2/26

内容紹介(出版社より)
事件、誘惑、秘密の関係……すべてを見ているのは、このホテルだけ。
張り巡らされた伏線、交錯する善意と悪意に一気読み&二度読み必至!

伝統ある超高級ホテル「ヴィクトリアン・ホテル」は明日、その歴史にいったん幕を下ろす。ホテル
を訪れた宿泊客それぞれの運命の行方はーー? 
『闇に香る嘘』『黙過』『同姓同名』など、話題作を次々発表する社会派ミステリの旗手がエンター
テインメントを極めた、感動の長編ホテルミステリー!!

~ ~ ~ ~ ~ ~

タイトルに惹かれ何となく軽い気持ちで読み始めた作品。

都心にある超高級ホテル『ヴィクトリアン・ホテル』が改修の為、長い歴史に一旦幕をひき一時
休業する前夜。
このホテルにそれぞれの思いを持つ客が集まる。
悩みを持つ人気女優、社会に不満を持つ自暴自棄なスリ、作家、敏腕宣伝マン、弁当屋夫婦、
そこにベテランのベルマン岡野が少しからみます。

それぞれの登場人物に視点を当て章立てて話が進行しますが、読み進めるうちにそれらの人間
関係が次第に繋がっていきます。
しかし、途中から「ん? あれ?」と言う何とも云えない違和感を持ち始めます。

時代設定、時間軸に惑わされ始め、混乱する事も。

超高級ホテルを舞台にした人間ドラマ?、群像劇?なのかな・・・と悩みながら読み進め、最後に
辿り着いた事実で途中抱いた違和感の正体に気づかされます。
成程ね~、そういう事でしたか。
『二度読み必至!』と言ううたい文句は正しくその通りだと思います。
途中に敷かれていた伏線の数々は人間の思い込みの心理を鮮やかに突いたものでした。

ミステリとしては何とも言えない部分もあると思いつつ、様々な視点からの「人間の優しさ」とは、
「思いやり」とは…についての議論は興味深く読みました。

メインの登場人物ではないのですが、小説家の三鷹コウさん、ベテランベルマンの岡野さんの
キャラクターが興味深く、彼等の言葉が記憶に残ります。
又、新人賞受賞作家に対するベテラン作家達の言葉も面白く興味深い点です。

そして、最後はホッとさせられる結末。

ネタバレは避けるつもりなので、意味不明の点もあるかと思いますが、ただ一点
注意すべき事柄、単語にはルビで強調されているので、この点に注目です。

100年余り続いた超高級ホテル「ヴィクトリアン・ホテル」の様子は、大好きで馴染み深かった帝国
ホテルやホテルオークラの雰囲気を思い起こさせられ、歴史あるホテル大好き人間としてはこの点も
注目点でした。

又、この作品の設定は、以前読んだミッシェル・ビュッシ「黒い睡蓮」も彷彿とさせられます。
(そう言えば、拙過去記事の「黒い睡蓮」何故かこの所お訪ね下さる方が増えています。古い記
事にも拘らず有難いと感謝しております)



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