知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

消滅ブランドをイメージキャラクターとして採択し市場に浸透させた企業努力を保護すべきか

2012-09-02 22:47:16 | 商標法
事件番号 平成24(行ケ)10173
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年08月29日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 塩月秀平、裁判官 真辺朋子,田邉実
商標法4条1項7号

 新インディアン社は,法的には旧インディアン社との連続性は何らない会社である上,・・・,原告は,何ら旧インディアン社と関係がない第三者であるとの評価を免れず,このような原告が旧インディアン社と共通の「Indian Motocycle(インディアン モトサイクル)」との部分を含む商号を採択し,旧インディアン社の商標と同一又は類似のものである原告表示を使用しても,旧インディアン社と離れて,「Indian Motocycle」ないし原告表示が,原告の略称として,ないしはその被服等の商品の出所が原告であることを示すものとして,需要者,取引者の間に知られるようになっていたということはできない。そうであれば,同様の第三者である被告が,同様に旧インディアン社の商標と類似のものである本件商標を出願しても,旧インディアン社との関係ではともかく,原告表示により展開されている原告の「Indian」商標のビジネスを妨害するものとはいえないことも明らかである。
・・・
 また,原告は,かつて存在したが長きにわたり消滅したブランドを何人かが自らのブランドのイメージキャラクターとして採択する行為は,何人かが採択するまでは自由競争の範囲内であって,何ら非難する余地のない行為であるが,何人かがこれを自己のブランドイメージキャラクターとして採択した後は自由競争ですますことはできず,そのかつて存在したが消滅したブランドをイメージキャラクターとして採択し,その企業努力を傾注して市場に浸透させたときは,その企業努力の成果は保護すべきものであって,その成果にただ乗りし,収奪し,企業努力を妨害する行為は,反社会的な行為であり許されないと主張する。

 しかし,原告が旧インディアン社に依拠した事業展開をしていたことは前記のとおりであり,原告も,旧インディアン社の有する潜在的な周知性に訴えてその営業上の信用を利用していたものである。原告は,自らのブランドのイメージキャラクターとしてかつてはオートバイのブランドとして周知であった「Indian」ブランドを採択したと主張するが,原告は,・・・,旧インディアン社の営業上の信用を利用していたものであって,自らのブランドのイメージキャラクターとして「Indian」ブランドを採択したとは到底認められない。原告の主張はその前提を欠くものである。。

 そうすると,本件商標により,原告が原告表示を使用した「Indian」商標のビジネスに事実上の影響を被っているとしても,それは,原告があえて旧インディアン社に依拠したビジネス展開を行ったことが招いた結果であり,原告に対する関係でみれば,被告の行為は自由競争の範囲内にとどまり,原告のビジネス展開を被告が妨害したものということはできず,本件商標の出願をもって,原告の業務の遂行を阻害し業務を妨害する意図でなされたものということもできない。

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