知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

不正競争防止法2条1項3号の不正競争と民法709条の不法行為

2011-07-03 11:08:54 | 不正競争防止法
事件番号 平成22(ワ)13602
事件名 損害賠償請求事件
裁判年月日 平成23年06月23日
裁判所名 大阪地方裁判所
裁判長裁判官 森崎英二

(1) 原告は,被告による「はる風」(半懐紙版,半紙版)の製造販売が,不正競争防止法2条1項1号の不正競争に該当しないとしても,被告が,他の被告商品も含めて製造販売した行為が,民法709条の不法行為を構成する旨主張する

 確かに,被告商品を構成する個々の書道用和紙は,いずれも原告商品をスキャナーでコンピュータに取り込んで製造されたものであるため,その模様(ぼかしを使った配置のされ方も含む。)は全く同じであり,色彩も若干色合いが異なるものの,同じものが用いられている上,被告商品は,いずれも対応する大きさの原告商品と同じく,五通りの色彩及び模様の組合せの書道用和紙を同じ枚数組み合わせて販売されているのであるから,被告商品は,原告商品のいわゆるデッドコピー品で,「他人の商品の形態を模倣した」(不正競争防止法2条1項3号)商に当たり,その製造販売行為は,同号の不正競争に該当し得る。 しかしながら,原告商品を模倣する被告商品の製造販売行為が開始されたのは,「一葉」が最初に販売されてから約18年が経過した後であることから,不正競争防止法19条1項5号イにより,上記行為は同法3条1項に基づく差止請求権はもとより,同法4条に基づく損害賠償請求権の対象とはならないものである。

 ところで,不正競争防止法が,商品形態の模倣行為を不正競争として違法と評価する一方,不正競争防止法上の救済手段を与える期間を限定している立法趣旨は,もともと同法2条1項3号による規制の目的が,先行開発者の成果を模倣者がデッドコピーすることにより生じる競争上の不公正を是正することにあり,より具体的には,先行開発者が投下した資本の回収機会をその開発者に確保させることにあると解され,その反面として,投下資本の回収を終了し,通常期待し得る利益をあげた後については,デッドコピー品の製造販売行為であっても,競争上の不公正が直ちに生じるものではないから違法とは評価できないとの考えによっているものと解される。

 このように,不正競争防止法という特別法によって,商品形態の模倣行為について違法評価をした上で,その救済手段を与える期間を限定していることからすると,上記期間経過後については,商品形態の模倣行為がされたとしても,それが不正競争防止法における類型的な違法評価を超えるような違法評価がされるべきもの,たとえば著しく不公正な手段を用いて他人の営業活動上の利益をことさらに侵害し,その結果看過できない損害を与えたというような公正な自由競争秩序を著しく害するような特段の事情が認められるものでない限り,一般不法行為法上も違法とは評価できないものと解するのが相当である。

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