知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

無効審決された商標の指定商品を異ならせた再出願

2011-11-13 21:51:31 | 商標法
事件番号 平成23(行ケ)10188
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成23年10月20日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 滝澤孝臣

 被告は,先願商標について商標登録を受けたが,・・・,その商標登録を無効にすべき旨の審決を受け,・・・,これに対し,・・・被告が本件商標について登録出願をしたのは,この審決を受けてから確定するまでの間・・・である。

(2) 原告は,以上の経緯を前提に,先願商標に対する無効審決の効力が本件商標には及ばないとした本件審決の判断は,商標法56条1項において準用する特許法167条に違反する旨主張するが,そもそも,特許法167条は,・・・,特許無効審判等について無効審判の確定の登録があったときは,同一の事実等に基づいて審判の請求をすることを禁止したものにとどまるものであって,無効と判断された登録商標と構成を同じくする商標について,指定商品を異なるものとした上で再度出願することそれ自体を禁止するものではない

 もっとも,原告が本件において特許法167条違反をいうのは,併せて,信義則違反と権利の濫用とに言及していることに鑑みると,本件商標の登録出願は,先願商標を無効にすべき旨の審決を受けた後であることから,本件商標の出願は無効と判断された先願商標の再生と無効審決を潜脱する不正な目的でされたものであって,そのような商標の登録は認められるべきでないという趣旨に解されなくもない

 しかしながら,先願商標の商標登録を無効と判断した審決の理由(甲1)は,普通名称であるという「堤人形」の文字を含む先願商標をその指定商品中,「堤人形」以外の「土人形」及び「陶器製の人形」について使用するときは,これに接する需要者は,該商品があたかも堤人形であるかのように,商品の品質について誤認を生ずるおそれがあるとして,商標法4条1項16号に該当するというのである。
 その出願人である原告において,先願商標の指定商品を「堤人形」に限定した上で,先願商標と同じ構成に係る本件商標の登録出願をすることそれ自体は,止むを得ない措置であったというべきであって,それが当該商標登録の無効理由に当たる場合は格別,そうでない以上,本件商標の登録出願を直ちに不正な行為であるということはできないし,原告に対する関係でみても,これを信義則違反や権利の濫用に当たるものということもできない

最新の画像もっと見る