知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

商標の類否判断に当たり考慮すべき取引の実情

2009-01-02 22:21:39 | 商標法
事件番号 平成19(行ケ)10425
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成20年12月25日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 飯村敏明

3 原告の主張に対して
 これに対して,原告は,本願商標に係る取引の実情として,①原告が指定商品に関する特許を有すること,②引用商標の商標権者は,本願商標の指定商品を製造していないこと,③原告は,本願商標に係る指定商品について,全世界で30.8%のシエアを占めており,そのうちの80%が本願商標を付したものであること等の取引の実情が存するので,これらの実情を併せ考慮すると,本願商標と引用商標とは出所に誤認混同を生ずることなく,両者は類似するとはいえないと主張する

 しかし,原告の主張は失当である。

 すなわち,商標の類否判断に当たり考慮すべき取引の実情は,当該商標が現に,当該指定商品に使用されている特殊的,限定的な実情に限定して理解されるべきではなく,当該指定商品についてのより一般的,恒常的な実情,例えば,取引方法,流通経路,需要者層,商標の使用状況等を総合した取引の実情を含めて理解されるべきである(最高裁判 第一小法廷昭和49年4月25日判決・昭和47年(行ツ)第33号参照)。
 原告主張に係る取引の実情は,いずれも,現在の取引の実情の一側面を今後も変化する余地のないものとして挙げているにとどまるものであって,採用の余地はない

 本願商標は,引用商標と比較して,類似性の程度が高い点をも考慮するならば,本願商標をその指定商品(類似商品を含む。)に使用した場合には引用商標との間で出所に混同混同を生ずるおそれがあることは明らかである。原告の上記主張は,採用できない。

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