事件番号 平成23(ネ)10056
事件名 特許権侵害差止等請求控訴事件
裁判年月日 平成24年01月16日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 阿部正幸
(2) 被告各役務は,本件指定役務である「各戸に対する広告物の配布,広告」と同一又は類似の役務であるといえるか(争点1-1)
・・・
ア 本件指定役務である「各戸に対する広告物の配布,広告」の意義について
(ア) 「配布」とは,ひろくくばること(・・・),広く行き渡るように配ること(・・・)である。したがって,「各戸に対する広告物の配布」とは,広告物を広く行き渡るように家々に配ることを意味する。
なお,「配達」とは,くばりとどけること(・・・),家々に配り届けること(甲27)である。
(イ) 「広告」とは,商品,役務(サービス),情報等をその提供者を明示して,第三者に告知し,その入手,使用等を勧誘する活動をいう(当事者間に争いがない)。
イ ・・・したがって,被告役務1の配達の対象が広告物であるときは,被告役務1は,利用者が指定した荷受人の住所又は居所に広告物を配達する,すなわち,広告物を配り届ける役務である。
これに対して,本件指定役務の「各戸に対する広告物の配布」とは,広告物を広く行き渡るように家々に配ることを意味するから,配達の対象が広告物であるときの被告役務1とは,「広告物を配る」という点において共通し,両役務は類似する関係にあるといえる。さらに,被告役務1の利用者が,多数の家々に広告物を配る際に被告役務1を利用すると,被告役務1は,広告物を広く家々に配り届ける役務となる。このような場合において,本件指定役務と被告役務1とは,ほぼ同一の内容となる。
以上検討したところによれば,被告役務1の配達の対象が広告物である場合には,被告役務1と本件指定役務の「各戸に対する広告物の配布」とは,少なくとも類似の関係にあるといえる。
・・・
エ 被告の主張について
(ア) 被告は,配布と配達は本質的に異なる概念であり,「商品及び役務の区分」でも,配布と配達は,第35類と第39類で異なる役務として扱われている旨主張する。
しかし,そもそも配布と配達は類語の関係にあり(甲27,28,乙35),また,「商品及び役務の区分」は,商品又は役務の類似の範囲を定めるものではない(法6条3項)から,被告が主張する第35類と第39類の関係が,直ちに本件指定役務である「各戸に対する広告物の配布」と被告各役務が類似するか否かの判断に影響を及ぼすものではない。そして,被告各役務の具体的内容と本件指定役務の「各戸に対する広告物の配布」の意義から両役務の類似性について検討すると,上記ウで説示したとおりとなる。
(イ) また,被告は,被告各役務は,荷物の運送役務であり,本件指定役務である「各戸に対する広告物の配布,広告」とは類似しない旨主張する。
しかし,上記イ,ウで説示したとおり,被告自身,広告物が被告各役務の対象となることを宣伝しており,被告各役務において配達の対象が広告物である場合には,被告各役務と本件指定役務の「各戸に対する広告物の配布」とは少なくとも類似する関係にあるから,被告の上記主張は失当である。
(3) 本件商標と被告各標章は同一又は類似の商標であるか(争点1-2)
ア 本件商標と被告標章1について
本件商標は,標準文字の「ゆうメール」であり,被告標章1は,「ゆうメール」という標章であって,外観,称呼,観念において同一であるから,両者は,同一の商標である。
イ 本件商標と被告標章2について
本件商標は,標準文字の「ゆうメール」であり,被告標章2は,「配達地域指定ゆうメール」という標章である。この点,被告標章2の「配達地域指定」の語は,役務の質(荷物が配達される地域が指定されること)を表示する部分であり,出所識別機能を有しないものというべきであるから,被告標章2の要部は,「ゆうメール」であると認められる。そうすると,本件商標と被告標章2の要部は,外観,称呼,観念において同一であるから,本件商標と被告標章2は,類似の商標である。
・・・,取引の実情において需要者に混同が生じることは否定されないというべきである。
事件名 特許権侵害差止等請求控訴事件
裁判年月日 平成24年01月16日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 阿部正幸
(2) 被告各役務は,本件指定役務である「各戸に対する広告物の配布,広告」と同一又は類似の役務であるといえるか(争点1-1)
・・・
ア 本件指定役務である「各戸に対する広告物の配布,広告」の意義について
(ア) 「配布」とは,ひろくくばること(・・・),広く行き渡るように配ること(・・・)である。したがって,「各戸に対する広告物の配布」とは,広告物を広く行き渡るように家々に配ることを意味する。
なお,「配達」とは,くばりとどけること(・・・),家々に配り届けること(甲27)である。
(イ) 「広告」とは,商品,役務(サービス),情報等をその提供者を明示して,第三者に告知し,その入手,使用等を勧誘する活動をいう(当事者間に争いがない)。
イ ・・・したがって,被告役務1の配達の対象が広告物であるときは,被告役務1は,利用者が指定した荷受人の住所又は居所に広告物を配達する,すなわち,広告物を配り届ける役務である。
これに対して,本件指定役務の「各戸に対する広告物の配布」とは,広告物を広く行き渡るように家々に配ることを意味するから,配達の対象が広告物であるときの被告役務1とは,「広告物を配る」という点において共通し,両役務は類似する関係にあるといえる。さらに,被告役務1の利用者が,多数の家々に広告物を配る際に被告役務1を利用すると,被告役務1は,広告物を広く家々に配り届ける役務となる。このような場合において,本件指定役務と被告役務1とは,ほぼ同一の内容となる。
以上検討したところによれば,被告役務1の配達の対象が広告物である場合には,被告役務1と本件指定役務の「各戸に対する広告物の配布」とは,少なくとも類似の関係にあるといえる。
・・・
エ 被告の主張について
(ア) 被告は,配布と配達は本質的に異なる概念であり,「商品及び役務の区分」でも,配布と配達は,第35類と第39類で異なる役務として扱われている旨主張する。
しかし,そもそも配布と配達は類語の関係にあり(甲27,28,乙35),また,「商品及び役務の区分」は,商品又は役務の類似の範囲を定めるものではない(法6条3項)から,被告が主張する第35類と第39類の関係が,直ちに本件指定役務である「各戸に対する広告物の配布」と被告各役務が類似するか否かの判断に影響を及ぼすものではない。そして,被告各役務の具体的内容と本件指定役務の「各戸に対する広告物の配布」の意義から両役務の類似性について検討すると,上記ウで説示したとおりとなる。
(イ) また,被告は,被告各役務は,荷物の運送役務であり,本件指定役務である「各戸に対する広告物の配布,広告」とは類似しない旨主張する。
しかし,上記イ,ウで説示したとおり,被告自身,広告物が被告各役務の対象となることを宣伝しており,被告各役務において配達の対象が広告物である場合には,被告各役務と本件指定役務の「各戸に対する広告物の配布」とは少なくとも類似する関係にあるから,被告の上記主張は失当である。
(3) 本件商標と被告各標章は同一又は類似の商標であるか(争点1-2)
ア 本件商標と被告標章1について
本件商標は,標準文字の「ゆうメール」であり,被告標章1は,「ゆうメール」という標章であって,外観,称呼,観念において同一であるから,両者は,同一の商標である。
イ 本件商標と被告標章2について
本件商標は,標準文字の「ゆうメール」であり,被告標章2は,「配達地域指定ゆうメール」という標章である。この点,被告標章2の「配達地域指定」の語は,役務の質(荷物が配達される地域が指定されること)を表示する部分であり,出所識別機能を有しないものというべきであるから,被告標章2の要部は,「ゆうメール」であると認められる。そうすると,本件商標と被告標章2の要部は,外観,称呼,観念において同一であるから,本件商標と被告標章2は,類似の商標である。
・・・,取引の実情において需要者に混同が生じることは否定されないというべきである。