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知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

一見外観が類似する単語を組み合わせた商標の類否判断事例

2012-07-22 23:40:20 | 商標法
事件番号 平成24(行ケ)10042
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年07月18日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 意匠権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 塩月秀平
商標法4条1項11号

 そこで,「POWERWEB」と「POWERWAVE」とを比較対照すると,両者は,語頭からの6文字「POWERW」を共通にする。しかし,両者を構成する文字数は8文字ないし9文字と比較的少なく,このうちの2文字ないし3文字は全く異なっている。
・・・
スポーツ関係の商品に使用される「POWER」の文字の自他商品識別力は,同じくスポーツ関係の商品に使用される「WEB」及び「WAVE」の文字の自他商品識別力よりも強いものとはいえない。
・・・
上記の諸点を勘案すると,「POWERWEB」と「POWERWAVE」の類否の判断において,両者がいずれも一般人にとって観念を容易に想起し得る単語を組み合わせた語であることや,スポーツ関係の商品に使用される「POWER」の自他商品識別力と「WEB」及び「WAVE」のそれとの相違を考慮することなく,それぞれを構成する文字の共通性のみを強調することは相当ではなく,「POWER」と組み合わされた「WEB」と「WAVE」の外観上の相違を軽視することはできないというべきである。そして,「POWER」と組み合わされた「WEB」と「WAVE」とは,語頭の「W」を共通にするのみであり,その他の文字及びその配列に共通性はない。
 以上によれば,「POWERWEB」と「POWERWAVE」とは,外観において相違するというべきである。
 ・・・
エ 両商標の類否
 以上のとおり,本願商標と引用商標とは,外観及び観念において相違し,称呼上類似はするものの,両商標を聞き分けることは必ずしも困難なことではないこと,また,取引の実情として,外観や観念よりも称呼によって商品の出所を識別しているなど,称呼上の識別性が外観及び観念上の識別性を上回っているような事情は認められないことに照らせば,両商標は,外観及び観念上の相違が称呼上の類似性を凌駕するものというべきである。
 したがって,両商標は類似しない。

著名商標を含む商標を付した商品の出所の混同のおそれ

2012-07-22 22:42:02 | 商標法
事件番号 平成23(行ケ)10436
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年07月18日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 塩月秀平
商標法商標法4条1項15号

(2) 上記認定の事実によれば,「BOSS/HUGO BOSS」商標は,フーゴ・ボスAGにかかる紳士服及び紳士用品について使用されるものとして,本件商標登録出願日及び現在において,海外及び我が国で著名となっているものと認められる。
 ここで,「BOSS」の欧文字は,2段に構成された「BOSS/HUGO BOSS」商標中で上段に顕著に表された部分であり,フーゴ・ボスAGが用いる多数のブランドの大部分で共通する部分であり,「BOSS/HUGO BOSS」商標の要部と認められる。「BOSS」の欧文字からは,「ボス」の称呼を生じ,「親分」「上司」の観念を生じる。

(3) 本件商標の取引の実情をみるに,・・・,被告は本件商標を付した小型ファン付き作業服を販売し,その開始は,本件商標の出願とほぼ同時期である。そのパンフレット(甲98)には,上方に大書された「クールボス」の文字の下方に,大きな文字で「涼しい」「作業服」との記載があり,・・・。「涼しい」を英語で「クール」と称することは一般的な認識であるから,この記載を見る者は,「クールボス」の文字中の「クール」の部分が「涼しい」に対応し,「ボス」の部分が「作業服」に対応するとの理解に誘導されることになる。「クール」の文字が説明的で出所表示機能を有しないのに対し,「ボス」の文字は,これから生じる「親分」「上司」の観念が作業服とは結び付かず,作業服を「ボス」と呼ぶこともないことからすると,本件商標からは,前記のように紳士服及び紳士用品の商品分野において著名な「BOSS/HUGO BOSS」商標を想起する可能性が高いといえる。

 このように,「BOSS/HUGO BOSS」商標がフーゴ・ボスAGにかかる紳士服及び紳士用品について使用されるものとして我が国において著名となっていること,作業服の購入者に男性が多いであろうことからからすると,「クールボス」の商標が付された作業服が販売されれば,その作業服がフーゴ・ボスAG又はこれと営業上何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,出所について混同を生じるおそれがあることになる。

(4) 被告は,「クールボス」の商標が付された作業服とフーゴ・ボスAGの紳士服及び紳士用品は,需要者及び販売経路が異なると主張するけれども,上記認定のとおり「BOSS/HUGO BOSS」商標はカジュアルウェアやスポーツウェアにも付されることからすれば,販売経路が接近する可能性を否定できない。上記認定にかかる「BOSS/HUGO BOSS」商標の著名性に鑑みると,本件商標を指定商品である「通気機能を備えた作業服,洋服,コート」に使用すると,「BOSS/HUGO BOSS」商標との間に混同を生じるおそれがあり,本件商標登録は,15号に違反してされたものと認められる。

商標法4条1項11号該当性の判断事例-支配的な印象を与えない部分の抽出

2012-07-22 20:08:02 | 商標法
事件番号 平成23(行ケ)10373
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年07月12日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 芝田俊文

 上記のとおり,引用商標の構成中,「fantasy LIFE」の部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認めることはできず,他方,「mabinogi/マビノギ」の部分から出所識別標識として固有の称呼を生じ,観念を生じ得るのであるから,引用商標の構成中「fantasy LIFE」の部分だけを抽出して本願商標と対比することは許されないというべきである。

 そして,本願商標と引用商標の構成部分全体を対比すると,両者は外観において著しく異なり,観念,称呼において一部共通するものの,取引の実情を考慮するならば,類似するとはいえない。したがって,本願商標と引用商標の類否について,外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して,具体的な取引状況に基づいて全体的に考察すると,本願商標と引用商標が,役務における出所の誤認混同を生じるおそれはなく,両商標は類似しないから,本願商標が商標法4条1項11号に該当するとした審決の判断には誤りがある。

国際信義に反し公序良俗に反するとして、商標法4条1項7号に該当するとした事例

2012-07-08 23:06:06 | 商標法
事件番号 平成23(行ケ)10400
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年06月27日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 塩月秀平

(2) しかしながら,日本では広く知られていないものの,独特の造語になる「ターザン」は,具体的な人物像を持つ架空の人物の名称として,小説ないし映画,ドラマで米国を中心に世界的に一貫して描写されていて,「ターザン」の語からは,日本語においても他の言語においても他の観念を想起するものとは認められないことからすると,我が国で「ターザン」の語のみから成る本件商標登録を維持することは,たとえその指定商品の関係で「ターザン」の語に顧客吸引力がないとしても,国際信義に反するものというべきである。

 「ターザン(Tarzan)」の語は,米国の作家バローズの手になる小説シリーズ「ターザン・シリーズ」に登場する主人公の名前であり,本件商標登録査定時(平成22年7月6日)の時点において,日本におけるその著作権は存続していたし,派生的著作物にはなお著作権が存続し続けていたものである。
 バローズから「ターザン・シリーズ」のすべての書籍に関する権利を譲り受けた原告は,オフィシャル・ウェブサイトを通じ,ターザンに関する諸々の作品及びバローズの業績を伝承・解説するとともに,「ターザン・シリーズ」を含めたバローズに関する小説,パルプ雑誌,映画,ラジオ放送作品,テレビ放送作品,コミックスなどのあらゆる作品を収蔵したオンラインアーカイブを作成・提供するなど,「ターザン」の原作小説及びその派生作品の価値の保存・維持に努めるとともに,米国のみならず世界各国において「ターザン」に関する商標を登録して所有したり,ライセンス契約の締結・管理に関わることによって,その商業的な価値の維持管理にも努めてきた。このように一定の価値を有する標章やキャラクターを生み出した原作小説の著作権が存続し,かつその文化的・経済的価値の維持・管理に努力を払ってきた団体が存在する状況の中で,上記著作権管理団体等と関わりのない第三者が最先の商標出願を行った結果,特定の指定商品又は指定役務との関係で当該商標を独占的に利用できるようになり,上記著作権管理団体による利用を排除できる結果となることは,商標登録の更新が容易に認められており,その権利を半永久的に継続することも可能であることなども考慮すると,公正な取引秩序の維持の観点からみても相当とはいい難い

 被告は,「Tarzan」の語の文化的・商業的価値の維持に何ら関わってきたものではないから,指定商品という限定された商品との関係においてではあっても「Tarzan」の語の利用の独占を許すことは相当ではなく,本件商標登録は,公正な取引秩序を乱し,公序良俗を害する行為ということができる。

(3) 当裁判所は,以上の点を総合して勘案し,本件商標は商標法4条1項7号に該当すると判断するものである。

商品・役務リストの分類を機能に照らして認定した事例(商標法50条2項)

2012-06-10 22:23:47 | 商標法
事件番号 平成24(行ケ)10011
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年06月06日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 塩月秀平

第4 取消事由に対する被告の反論
1 特許庁の商品・役務リストの分類では,ネオンランプ,ネオン封入放電ランプ,ネオン灯あるいは放電ランプ,放電灯,アーク灯はいずれも電球類や照明器具と同様の類似群11A02に分類されているし,放電管のうち照明用のものもこの類似群11A02に分類されている(照明用以外の放電管は11C01)。
 類似群をまたがって機能を有する商品の場合,主たる用途がいずれであるかでその分類が定まるところ,ネオンランプの主たる用途は照明にあり,電球類等と同じ類似群に分類されるべきであるから,定電圧機能等を併せ持つとしても類似群が異なる「電子応用機械器具及びその部品」には当たらない。原告のカタログ(甲8の3)でも,「ネオン交換電球」の項目に「ネオンランプ」が記載されているから(21頁),原告の「ネオンランプ」も電球の類として用いられていることは明らかである。

2 回路基板のうち汎用のプリント回路基板のみが「電子応用機械器具及びその部品」と同じ類似群11C01に分類されるところ,原告の「センサー用LED基板」は照明用器具としての用途に用いられる回路基板であって,類似群11C01に分類されるべきものではない


第5 当裁判所の判断
 ・・・
 ここで,ネオンブラケットが用いられるパイロットランプは,これが取り付けられた機器の状態(例えばスイッチのオン,オフ)を示す表示灯としての機能を果たすものであるが,甲第25,第44号証によれば,ネオンランプ(ネオンブラケット)をその定電圧特性を活かして回路保護のために用いることがあることが認められるから,上記カタログにおける使用商標1,2の使用をもって,「電子応用機械器具及び部品」についての使用と評価することが可能である。
 ・・・

 上記「センサー用LED基板Assy」は基板上に複数のLED(発光ダイオード)を並べて実装したもの(甲10),・・・であるが,これらは顧客が画像解析装置を製造するために,注文を受けた原告においてその構成部品(装置)を設計,製造したものである(弁論の全趣旨)。
 ここで,上記「センサー用LED基板Assy」等が画像解析を行うために,対象となる物に光を照射する機能を果たすものであるとしても,日常生活において光を照らして空間を明るくする目的とは程遠いことは明らかである。そして,上記「センサー用LED基板Assy」等は,電子部品であるLEDやダイオード等を使用して構成されており,その機能に照らせば,電子の作用を応用し,その電子の作用が当該機械器具にとっての構成要素となっているということができる

 そうすると,原告は,「電子応用機械器具及びその部品」につき,取引書類である納品書や納入仕様書に使用商標1を使用したということができる。

「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする」(法3条1項)の趣旨と立証責任

2012-06-10 10:00:35 | 商標法
事件番号 平成24(行ケ)10019
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年05月31日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 芝田俊文

(1) 商標法3条1項柱書は,商標登録要件として,「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」であることを規定するところ,「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」とは,少なくとも登録査定時において,現に自己の業務に係る商品又は役務に使用をしている商標,あるいは将来自己の業務に係る商品又は役務に使用する意思のある商標と解される

 これを本件についてみるに,上記認定事実によれば,
○1 原告は,・・・原告使用商標を使用して本件店舗の宣伝,広告を行っていたこと,
○2 原告は,・・・,原告使用商標を使用し,飲食物の提供を業とする本件店舗を開店したこと,
○3 被告は,・・・にその登録を受けたが,現在に至るまで本件商標を指定役務である「飲食物の提供」やその他の業務に使用したことはないこと,
○4 本件商標と原告使用商標(1)は,類似すること,
○5 原告使用商標は,・・・造語で,特徴的なものである上,本件店舗の宣伝,広告及び開店と本件商標の登録出願日が近接していることからすれば,被告は,原告使用商標を認識した上で,原告使用商標(1)と類似する本件商標を出願したものと考え得ること,
○6 被告は,・・・短期間に,本件商標以外にも44件もの商標登録出願をし,その登録を受けているところ,現在に至るまでこれらの商標についても指定役務やその他の業務に使用したとはうかがわれない上,その指定役務は広い範囲に及び,一貫性もなく,このうち30件の商標については,被告とは無関係に類似の商標や商号を使用している店舗ないし会社が存在し,確認できているだけでも,そのうち10件については,被告の商標登録出願が類似する他者の商標ないし商号の使用に後れるものであることが認められる。

 上記事情を総合すると,被告は,他者の使用する商標ないし商号について,別紙2のとおり多岐にわたる指定役務について商標登録出願をし,登録された商標を収集しているにすぎないというべきであって,本件商標は,登録査定時において,被告が現に自己の業務に係る商品又は役務に使用をしている商標に当たらない上,被告に将来自己の業務に係る商品又は役務に使用する意思があったとも認め難い
 ・・・
 したがって,本件商標は,その登録査定時において,被告が現に自己の業務に係る商品又は役務に使用をしている商標にも,将来自己の業務に係る商品又は役務に使用する意思のある商標にも当たらず,本件商標登録は,「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」に関して行われたものとは認められず,商標法3条1項柱書に違反するというべきである。

(2) この点について,審決は,上記事情をもってしても,被告の本件商標に係る使用の意思について合理的な疑義があるとはいえないと認定,判断する
 しかし,登録商標が,その登録査定時において「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」に当たることについては,権利者側において立証すべきところ,本件商標についてこれを認めるに足りる証拠はなく,むしろ,上記認定事実によれば,本件商標登録は,被告が現に自己の業務に係る商品又は役務に使用していない商標について,将来自己の業務に係る商品又は役務に使用する意思もなく行われたものというべきであって,上記審決の認定,判断は失当である。
 ・・・
 付言するに,上記認定の事実関係に照らすと,本件商標は,原告使用商標を剽窃するという不正な目的をもって登録出願されたものとして,商標法4条1項7号(公序良俗に反するおそれのある商標)に該当する余地もあるが,本件においては,同法3条1項柱書該当性の判断で足りるものと解する。

印刷物上の商標の表示と指定役務についての本件商標の使用(商標法50条)

2012-06-10 09:15:32 | 商標法
事件番号 平成23(行ケ)10348
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年05月31日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 飯村敏明

2 審決の理由
 ・・・
(3) サイエントロジー東京における使用について
 ・・・サイエントロジー東京は,ポスター・・・であり,表題を「THE BRIDGE TO TOTAL FREEDOM」とする印刷物(甲17・審決乙17)(判決注 甲17の1ないし3を総称して,「甲17」という。)を,販売するために輸入し,平成21年12月末に所有したが,印刷物(甲17・審決乙17)は,宗教哲学に関する知識の教授に付随してその生徒に譲渡等されるものとはいえず,独立して商取引の対象となるものというのが相当であり,ほかに,印刷物がかかる役務の提供に付随するものとみるべき証拠はない。したがって,上記印刷物は,商標法上の商品に該当するというべきものであり,これに本件商標が表示されているとしても,そのことをもって請求に係る指定役務についての本件商標の使用とはいえない


第4 当裁判所の判断
・・・
(2) 判断
 上記(1)イ(ア) 認定の事実によれば,甲17の印刷物には「THE BRIDGE」,「The Bridge(R) 」,「The Bridge」との記載があり,「The Bridge」については原告の商標であることが明確に注記されているから,甲17における「TheBridge」は,原告の出所を識別するものとして使用されていることが認められる。
 「The Bridge」と本件商標とは,文字の外観(大文字と小文字において若干の相違がある。),称呼及び観念において共通し,両者は,社会通念上同一の商標である。

 また,上記(1)イ(イ) 認定の事実によれば,甲17の印刷物は,サイエントロジー哲学を学習する者,又は,その学習を始めようとする者に対し,・・・,人間の回復と精神的な人の能力とパワーの究極的な拡張への道筋を説明し,その過程で受けることのできるサービスやトレーニングを紹介し,もしくは,自己の学習の進行状況を確認させることを目的として作成されたものと解される。さらに,甲17は,サイエントロジー東京の生徒向けの資料として輸入し,保有され,その部数も限られていることに照らすならば,同印刷物は,サイエントロジー哲学を学習する者,又は,その学習を始めようとする者に対して,供与されるものであって,不特定多数の者に対する販売することを目的としたものではないと解される。

 そうすると,甲17の印刷物は,サイエントロジー哲学の教授という役務の提供を受ける者の利用に供する物であるというべきであるから,これに本件商標と社会通念上同一の商標を付する行為は,本件商標の指定役務である「哲学の教授その他の技芸・スポーツ又は知識の教授」中,「哲学の教授」について本件商標を使用したものと評価すべきである(商標法2条3項3号)。

商標法56条1項が準用する特許法134条1項の趣旨

2012-03-18 11:03:48 | 商標法
事件番号 平成23(行ケ)10184
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年03月08日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 飯村敏明

1 本件審判手続における手続違背(取消事由4)について
(1) 本件審判手続の経緯
 原告らは,平成22年6月25日,本件審判を請求した。

 原告ハッピーに対し,特許庁長官は,同年7月8日ころ,本件審判事件の審判番号並びに本件審判事件の審判官及び審判書記官の氏名を(甲32,33),審判長は,同年9月17日,本件審判の審理は書面審理にする旨を(甲34),特許庁長官は,平成23年3月1日ころ,審判官及び審判書記官の変更を(甲35),審判長は,同月30日ころ,審理の終結を(甲36),それぞれ通知した。
 また,原告京都産業に対しては,審判長は,平成23年4月21日ころ,本件審判の審理は書面審理にする旨を(甲37),同月22日ころ,審理の終結を(甲38)それぞれ通知したが,特許庁長官は,本件審判事件の審判番号,本件審判事件の審判官及び審判書記官の氏名,審判官及び審判書記官の変更については,通知しなかった(弁論の全趣旨)。
 被告は,平成22年9月6日ころ,特許庁に答弁書を提出した(甲31)。特許庁は,平成23年5月6日付けで審決をし,同月13日,原告らに対し,審決書謄本と共に答弁書の副本が発送された(甲39の1,39の2,40の1,40の2)。

(2) 判断
 商標法56条1項が準用する特許法134条3項は,審判長は,答弁書を受理したときは,その副本を請求人に送達しなければならないと規定する。同規定は,審判請求手続において,答弁書が提出された場合には,その副本を請求人に送達して,請求人に被請求人の主張の内容を知らせ,請求人にこれに対応する機会を付与するなど,適正な審判手続を実現する趣旨で設けられた規定といえる。
 同項が設けられた上記の趣旨に照らし,本件審判手続の当否を検討すると,平成22年9月6日には被告から答弁書が出されていたにもかかわらず,答弁書副本が原告らに発送されたのは,答弁書提出から8か月を経過した後である平成23年5月13日であり,しかも,審決書謄本と共に発送されている。このような手続は,特許法が答弁書副本の送達を義務づけた上記の趣旨に著しく反した措置というべきであり,同法134条3項に違反する

 もっとも,審判長は,請求人に対し,答弁書に対する再反論等の機会を与えなければならないものではない(商標法56条1項が準用する特許法134条1項参照)。しかし,その点を考慮に入れたとしてもなお,審決書謄本とともに答弁書副本を送達した本件の措置が適法として許されるものとはいえない

除斥期間(商標法47条1項)の経過と権利濫用の成否

2012-03-10 10:05:43 | 商標法
事件番号 平成22(ワ)11604
事件名 損害賠償
裁判年月日 平成24年02月28日
裁判所名 東京地方裁判所  
権利種別 商標権
裁判長裁判官 大鷹一郎

(2) 権利濫用の成否について
ア 上記(1)で述べたとおり,本件商標は,その商標登録当時,出願人たる原告において,自己の業務に現に使用していたとは認められず,かつ,自己の業務に使用する意思があったとも認められないものであって,その商標登録に商標法3条1項柱書きに違反する無効理由があることは明らかである。
 加えて,前記(1)イ(イ)で検討したところによれば,本件商標の商標登録後においても,原告が,本件商標を「墓地又は納骨堂の提供」の役務に係る業務において現に使用した事実は認められず,また,将来において本件商標を使用する具体的な計画があることも認められないものであるから,本件商標には,原告の信用が化体されているとはいえない

 これらの事情に鑑みれば,原告の本件商標権に基づく損害賠償請求権の行使を容認することは,商標法の趣旨・目的,とりわけ,いわゆる登録主義の法制下においての濫用的な商標登録を排除し,登録商標制度の健全な運営を確保するという同法3条1項柱書きの規定趣旨に反する結果をもたらすものといえるから,原告の被告らに対する本件商標権に基づく損害賠償請求権の行使は,権利の濫用に当たるものとして許されないというべきである。

イ これに対し,原告は,本件商標については,商標法47条1項所定の除斥期間の経過により商標登録無効審判の請求をすることができず,したがって,被告らは,本件商標の商標登録が無効であることを理由とする権利行使制限の抗弁(商標法39条,特許法104条の3第1項)を主張することができないにもかかわらず,本件商標の商標登録に無効理由があることを根拠として権利濫用の主張を認めることは,上記除斥期間を定めた商標法47条1項の趣旨を没却することとなり,許されない旨を主張する。
 しかしながら,商標法47条1項の規定は,商標登録を対世的かつ遡及的に無効とするための無効審判請求との関係において,その請求のないまま一定の期間が平穏に経過した場合に,現存の法律状態を尊重し維持するために,商標登録についての瑕疵が消滅したものと扱う趣旨の規定であると解されるところ,商標権者の特定の相手方に対する具体的な商標権の行使が権利の濫用に当たるか否かの判断は,商標法47条1項の規定が対象とする無効審判請求の可否の問題とは異なる場面の問題である。上記権利濫用の成否は,当事者間において具体的に認められる諸般の事情を考慮して,当該権利行使を認めることが正義に反するか否かの観点から総合的に判断されるべきものであって,ここで考慮され得る事情については,特段の制限が加えられるべきものではない

 したがって,商標権の行使が権利濫用に当たるか否かの判断に当たっては,当該商標の商標登録に無効理由が存在するとの事情を考慮し得るというべきであり,当該無効理由につき商標法47条1項の除斥期間が経過しているからといって,このような考慮が許されないものとされるべき理由はなく,このことが同項の趣旨を没却するなどといえないことは明らかであるから,原告の上記主張は理由がない。

不使用商標登録取消審判における商標の使用(商標法50条1項)

2012-02-28 23:03:21 | 商標法
事件番号 平成23(行ケ)10243
事件名 審決取消請求事件(商標)
裁判年月日 平成24年02月21日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 中野哲弘

 本件商標の通常使用権者であるフルーツキングミズノ(梅田店)は,「ももいちご」「百壱五」の文字が入った商品タグ(甲33,66の写真参照)を用いていたところ,同商品タグでは,「百壱五」の文字が「ももいちご」の文字に比べて小さい上,他の文字(「登録第4323578号」等)も使われるなど,本件商標において「ももいちご」「百壱五」の文字をほぼ同じ大きさで二段に並べたものとは,使用態様が異なる
 しかし,不使用商標登録取消審判における商標の使用とは,商標法50条1項が明示するように,必ずしも登録された商標と同一の商標の使用でなくても社会通念上同一と認められる商標の使用であれば足りると解されている。これは,現実の社会では,願書添付の商標見本と厳密な意味での同一の商標を,営業上絶えず同じ態様で固定して用いることはむしろまれであり,登録商標の使用の解釈を社会通念に合致するように行う必要があるためである。

 そこで検討するに,上記商品タグにおいて,文字の色や大きさから,「ももいちご」の部分が最も大きな自他識別能力を有することは明らかであり,「佐那河内の」の部分は,それに次いで自他識別能力を有するといえる。他方で,文字の大きさや内容からすれば,「登録第4323578号」「平成10年商標登録願第30450号」「百壱五」の部分は,いずれも自他識別能力は非常に小さいといえる。
 しかし,原告は,「百壱五」の部分につき,単に登録要件を充足するために本件商標に付加したものであり,客観的にみても,本件商標において漢数字である「百壱五」の部分は,「ひゃくいちご」のほか「ももいちご」とも一応読み得るものであり,ここから,数字の100と1と5,又は何らかの「いちご」との観念が生じ得るものの,あくまで平仮名の「ももいちご」を補足する部分であり,「百壱五」の部分自体が顕著な自他識別能力を有することは期待されていないと解されることからすれば,「ももいちご」「百壱五」の両方の文言が,文字の変更や欠落などなく,共に用いられていれば,字体や字の大きさに違いがあるとしても,本件商標を表す「登録第4323578号」「平成10年商標登録願第30450号」も表示されていることも併せ考慮すると,社会通念上,本件商標と同一の商標が使用されていると解すべきである
 そして,本件での商品タグ(甲33,66参照)において,「百壱五」の文字が小さいとしても,判読できないほど小さいわけではなく,他の文言が入っていても,「ももいちご」「百壱五」の両方の文言が上下二段に並べて用いられているものである。

 以上からすれば,甲33(写真)の赤丸で囲まれた商品タグにおいて,本件商標と社会通念上同一の商標が使用されているものと認めるのが相当である(なお,その写真内容からして,本件商標の指定商品である第31類「いちご」について使用されていることは明らかである。)。

ウェブモール出店者による商標権侵害があった場合のウェブモール管理者への権利行使

2012-02-26 19:47:50 | 商標法
事件番号 平成22(ネ)10076
事件名 商標権侵害差止等請求控訴事件
裁判年月日 平成24年02月14日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 商標権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 中野哲弘

(3) 検討
ア 本件における被告サイトのように,ウェブサイトにおいて複数の出店者が各々のウェブページ(出店ページ)を開設してその出店ページ上の店舗(仮想店舗)で商品を展示し,これを閲覧した購入者が所定の手続を経て出店者から商品を購入することができる場合において,上記ウェブページに展示された商品が第三者の商標権を侵害しているときは,商標権者は,直接に上記展示を行っている出店者に対し,商標権侵害を理由に,ウェブページからの削除等の差止請求と損害賠償請求をすることができることは明らかであるが,そのほかに,ウェブページの運営者が,単に出店者によるウェブページの開設のための環境等を整備するにとどまらず,運営システムの提供・出店者からの出店申込みの許否・出店者へのサービスの一時停止や出店停止等の管理・支配を行い,出店者からの基本出店料やシステム利用料の受領等の利益を受けている者であって,その者が出店者による商標権侵害があることを知ったとき又は知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるに至ったときは,その後の合理的期間内に侵害内容のウェブページからの削除がなされない限り,上記期間経過後から商標権者はウェブページの運営者に対し,商標権侵害を理由に,出店者に対するのと同様の差止請求と損害賠償請求をすることができると解するのが相当である。

 けだし,
 (1) 本件における被告サイト(楽天市場)のように,ウェブページを利用して多くの出店者からインターネットショッピングをすることができる販売方法は,販売者・購入者の双方にとって便利であり,社会的にも有益な方法である上,ウェブページに表示される商品の多くは,第三者の商標権を侵害するものではないから,本件のような商品の販売方法は,基本的には商標権侵害を惹起する危険は少ないものであること,
 (2) 仮に出店者によるウェブページ上の出品が既存の商標権の内容と抵触する可能性があるものであったとしても,出店者が先使用権者であったり,商標権者から使用許諾を受けていたり,並行輸入品であったりすること等もあり得ることから,上記出品がなされたからといって,ウェブページの運営者が直ちに商標権侵害の蓋然性が高いと認識すべきとはいえないこと,
 (3) しかし,商標権を侵害する行為は商標法違反として刑罰法規にも触れる犯罪行為であり,ウェブページの運営者であっても,出店者による出品が第三者の商標権を侵害するものであることを具体的に認識,認容するに至ったときは,同法違反の幇助犯となる可能性があること,
 (4) ウェブページの運営者は,出店者との間で出店契約を締結していて,上記ウェブページの運営により,出店料やシステム利用料という営業上の利益を得ているものであること,
 (5) さらにウェブページの運営者は,商標権侵害行為の存在を認識できたときは,出店者との契約により,コンテンツの削除,出店停止等の結果回避措置を執ることができること等
の事情があり,これらを併せ考えれば,ウェブページの運営者は,商標権者等から商標法違反の指摘を受けたときは,出店者に対しその意見を聴くなどして,その侵害の有無を速やかに調査すべきであり,これを履行している限りは,商標権侵害を理由として差止めや損害賠償の責任を負うことはないが,これを怠ったときは,出店者と同様,これらの責任を負うものと解されるからである。

 もっとも商標法は,その第37条で侵害とみなす行為を法定しているが,商標権は「指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する」権利であり(同法25条),商標権者は「自己の商標権・・・を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し,その侵害の停止又は予防を請求することができる」(同法36条1項)のであるから,侵害者が商標法2条3項に規定する「使用」をしている場合に限らず,社会的・経済的な観点から行為の主体を検討することも可能というべきであり,商標法が,間接侵害に関する上記明文規定(同法37条)を置いているからといって,商標権侵害となるのは上記明文規定に該当する場合に限られるとまで解する必要はないというべきである。

イ そこで以上の見地に立って本件をみるに,・・・。以上によれば,ウェブサイトを運営する一審被告としては,商標権侵害の事実を知ったときから8日以内という合理的期間内にこれを是正したと認めるのが相当である。
(4) 以上によれば,本件の事実関係の下では,一審被告による「楽天市場」の運営が一審原告の本件商標権を違法に侵害したとまでいうことはできないということになる。

商標法4条1項8号の解釈

2012-02-12 22:34:54 | 商標法
事件番号 平成23(行ケ)10190
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年01月30日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 塩月秀平

(3) 本件商標は,その構成中に引用商標3,5の「メルク」の文字を包含するものである。
 しかし,8号が,他人の肖像又は他人の氏名,名称,著名な略称等を含む商標はその他人の承諾を得ているものを除き商標登録を受けることができないと規定した趣旨は,人の肖像,氏名,名称等に対する人格的利益を保護すること,すなわち,人(法人等の団体を含む)は,自らの承諾なしにその氏名,名称等を商標に使われることがない利益を保護することにあるところ(最高裁平成17年7月22日第二小法廷判決裁判集民事217号595頁),問題となる商標に他人の略称等が存在すると客観的に把握できず,当該他人を想起,連想できないのであれば,他人の人格的利益が毀損されるおそれはない。そうすると,他人の氏名や略称等を「含む」商標に該当するかどうかを判断するに当たっては,単に物理的に「含む」状態をもって足りるとするのではなく,その部分が他人の略称等として客観的に把握され,当該他人を想起・連想させるものであることを要する

 かかる見地から見るに,本件商標の片仮名文字部分「メルクス」は需要者に一体として看取されると見るのが相当であり,「メルク」を独立して看取することはできないことは前記のとおりである。そうすると,「メルク」,「MERCK」,「Merck」が原告の名称の略称として,医薬品や化学製品の需要者のみならず,一般消費者の間において周知・著名であるとしても(その点において審決の認定には誤りがある),本件商標はそれを含む商標ではないとして8号に該当しないとした審決はその結論において誤りはない

標章にまつわる事情に商標権行使の目的を併せ考慮して商標権の行使を権利の濫用とした事例

2012-02-12 19:33:56 | 商標法
事件番号 平成22(ワ)32483
事件名 商標権侵害差止等請求事件
裁判年月日 平成24年01月26日
裁判所名 東京地方裁判所  
権利種別 商標権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 阿部正幸

3 争点4(原告の本件商標権の行使が権利の濫用に当たり許されないか)について
 被告標章4及び5について,被告に法32条1項の先使用権が認められないことは,上記2説示のとおりである。
 しかしながら,
(1) 社会通念上同一の標章と認められる「KAMUI」の標章をゴルフクラブ及びその関連用品であるキャディバッグへ使用することについては,上記2のとおり,被告に法32条1項の先使用権が認められ,また,上記2(1)の認定事実によれば,
(2) 原告と被告は,カムイクラフトの共同事業を解消した後は,原告は「KAMUITOUR」(カムイツアー),「ASIRI」(アシリ),被告は「KAMUIPRO」(カムイプロ),「TYPHOONPRO」(タイフーンプロ),「KAMUI」(カムイ)の名称でそれぞれゴルフクラブを販売し,日本国内では互いの名称について異議を述べたことは認められないこと,
(3) 被告が卑弥呼からCAMUI商標について使用許諾を得て,平成12年ころから被告のゴルフクラブに「KAMUI」の標章を使用し始め,被告のゴルフクラブに被告標章1,3等の「KAMUI」単独の標章を付すようになったこと,
(4) 原告は,被告が「KAMUI」単独の標章を使用していることをその使用開始から程なくして認識していたものの,本件商標が登録されるまで,その使用について特段異議を述べることはなかったこと,
(5) 原告は,本件商標が登録されるまで,日本国内で製造・販売するゴルフクラブに「KAMUI」単独の標章を使用することはなかったこと,
(6) 雑誌等においても,原告のゴルフクラブを「カムイ」のゴルフクラブとして扱うものは平成9年から平成11年までのものがほとんどで,「KAMUI」や「カムイ」の単独の表記が原告の標章として浸透していなかったこと
が認められる。
 そして,・・・総合すれば,原告が被告による「KAMUI」単独の標章の使用の事実を知りながら,あえて卑弥呼のCAMUI商標の取消審判を得た上で,本件商標を登録し,被告に対し本件商標権を行使したのは,韓国で被告が原告の「KAMUITOUR」の商標を付したゴルフクラブの取扱いの中止を各販売店に要請したことに報復する目的があったためであることが認められる。

 上記(1)ないし(6)の事情に原告の本件商標権の行使の目的を併せて考慮すれば,原告が被告に対し,本件商標(KAMUI)と類似すると認められる被告標章4(「KAMUI TyphoonPro」の標章)及び5(「KAMUI」と「PRO」から成る二段表記の標章)をゴルフクラブに使用する行為について,本件商標権を行使することは,正当な権利行使とは認められず,権利の濫用として認められないというべきである。

商標法53条の2所定の「当該商標登録出願の日前1年以内に代理人若しくは代表者であった者」

2012-02-12 10:50:54 | 商標法
事件番号 平成23(行ケ)10194
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年01月19日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 飯村敏明

 被告は,世界貿易機関の加盟国である台湾において,別紙のとおりの構成からなる被告商標を有する。
 本件商標の指定商品は,被告商標の指定商品に含まれるから,被告商標の指定商品と同一又は類似の商品と認められ,本件商標と被告商標は,本件商標を付した商品と被告商標を付した商品との間で,商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがあり,両商標は類似する商標である。
 原告ないし原告代表者が,本件商標の登録出願の日前1年以内に,被告ないし被告との間で日本における輸入代理店契約を締結している者から,日本における独占販売権を付与されていたわけでいないものの,原告及び原告代表者と被告との間には,継続的な取引により慣行が形成され,原告及び原告代表者は,日本国内における被告の商品の販売体系に組み込まれるような関係にあった者とみることができるから,商標法53条の2所定の「当該商標登録出願の日前1年以内に代理人若しくは代表者であった者」に該当する
 本件商標の登録出願は,被告の承諾を得ないで本件商標の登録出願の日前1年以内に代理人若しくは代表者であった者と同等の地位にあった商標権者によってされた。
・・・

 原告は,本件商標出願をした「正当理由」に係る事情として,「本件商標の価値を高めるため,宣伝活動を行い,多額の宣伝広告費用を投じて,これにより,日本国内における本件商標の価値が高まったこと」のみを挙げている。証拠(・・・)及び弁論の全趣旨によれば,・・・,原告がその費用として負担した金額,規模及び上記宣伝広告活動によって,本件商標が,上記ゴルフボールを表示するものとして,商標の価値を高めた事実は認定できない。
 そうすると,原告は,日本における輸入代理店契約を締結している者から,日本における独占販売権を付与されていたわけではなく,原告及び原告代表者が,被告との間で,継続的な取引を続けていたとの事実があるにすぎないこと等の諸事実を総合すると,本件商標登録は,「正当な理由がないのに,その商標に関する権利を有する者の承諾を得ないで」されたものであると認定するのが相当である。

商号の表示が商標の使用とされた事例

2012-02-08 22:18:39 | 商標法
事件番号 平成23(行ケ)10281
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年01月18日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 滝澤孝臣

 甲4裏面下部には,「事例紹介」と題して「三菱地所リアルエステートサービス様の事例」として,同社のインターネットによる広告用ホームページの設計,作成,運用及びその結果分析を実施している旨を示す図解が記載されている。

 ・・甲6は,・・・三菱地所リアルエステートサービス株式会社宛てに作成された,・・・書面であり,その1丁に標準文字で「株式会社NTTデータ」との記載があるものである・・・。
 そして,甲6に付記された校正案を反映した同社のホームページ画面が存在すること(甲7)及び当該画面のうち甲6の2丁及び3丁に対応する部分が前記の甲4裏面の図解にも掲載されているから,甲4は,補助参加人による本件役務に関する広告であるといえる。

(4) さらに,甲4の体裁,その裏面に「掲載内容は2008年8月現在のものです。」との記載があること及び平成20年7月3日に制作が発注されて(甲8)同年8月22日にその業務の完了が確認されている(甲9)ことから,補助参加人は,そのころ,本件役務に関する広告(甲4)に本件商標と社会通念上同一と認められる「NTTデータ」との記載を付して日本国内において頒布したものと認められる(甲10)。

(6) 以上に対して,原告は,補助参加人による「NTTデータ」との標章の前記使用が本件商標を本件役務について使用したものではなく,役務提供の主体である補助参加人の商号の使用であるにすぎない旨を主張する。

 しかしながら,甲4は,いずれも本件役務の提供に関して,その主体である補助参加人の商号を一部英文字で表示しているものであるが,当該表示が本件商標と社会通念上同一のものである以上,いずれも本件役務の提供に当たり本件商標を使用したものとみることができるというべきである
 したがって,原告の上記主張は,採用できない。