知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

指定商品名に含まれる略語の識別力

2011-10-16 11:15:46 | 商標法
平成23年09月20日 平成23年(行ケ)10085号
審決取消請求事件
商標権、行政訴訟
裁判長 塩月秀平
(別観点から再掲)

(2) 被告の主張に対する判断
・・・
イ 被告は,本願商標の観念及び称呼について,本願商標中「TV」部分は,指定商品「電気通信機械器具」に含まれる「テレビジョン受信機」を意味する略語であるから,当該指定商品に使用する場合には出所識別機能を有しないが,「プロテクタ」部分については,商品の品質等を直ちに表示するものではなく,出所識別機能を有するから,本願商標中「プロテクタ」部分が要部として認識され,この部分からも観念及び称呼が生じると主張する。

 確かに,本願商標中「TV」部分は,指定商品「電気通信機械器具」に含まれる「テレビジョン受信機」を意味する略語であるから,これを指定商品「テレビジョン受信機」に使用する場合には出所識別機能を有しないといい得る。しかしながら,テレビジョン受信機は「電気通信機械器具」の一部にすぎないし,他方において,本願商標中「プロテクタ」部分についても,当該部分は「保護する装置」との意味を有する英単語の片仮名表記と解されるところ,指定商品「電気通信機械器具」に含まれる「電気通信機械器具の部品及び附属品」には,その性質上,電気通信機械器具を静電気,電波,磁気,衝撃等から保護するための装置が包含されると解される(特に,「電気通信機械器具の部品及び附属品」に含まれる「保安器」は,雷から電気通信機械器具を「保護する装置」である。)から,「プロテクタ」部分を指定商品「電気通信機械器具」に使用するか,少なくともこれに含まれる「保安器」に使用する場合には,出所識別機能は極めて低いものといえる。

 そもそも「TV」も「プロテクタ」も普通名詞として一般に通用している語であることも踏まえ,上記の検討にかんがみると,本願商標中「TV」部分と「プロテクタ」部分は,それぞれ異なる指定商品との関係において出所識別標識としての機能がないか,極めて低いものであって,出所識別標識としての機能に差異があるとはいえない。したがって,本願商標においては,「TVプロテクタ」全体が一体のものとして把握されると理解するのが自然であり,本願商標中「プロテクタ」部分のみを要部として抽出することは不相当というべきであり,この部分からも称呼及び観念が生じるとする被告の上記主張は採用することができない。

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