来年秋に始まるNHK朝ドラはラフカディオ・ハーン(小泉八雲)と妻のセツをモデルにした『ばけばけ』と発表された。ハーンが五高に勤務した熊本時代のエピソードも描かれるようなので楽しみだ。なかでもハーンの「夏の日の夢(THE DREAM OF A SUMMER DAY)」に描かれている真夏の長崎行は映像化を期待したい。
1893年7月、ハーンは坪井川河口の百貫港から小舟で沖へ出、散々待たされた蒸気船に乗り換えて長崎へ渡る。ところが長崎のあまりの暑さにほうほうの体で帰ってくるのだが、途中、三角港のホテルでの体験が「夏の日の夢」の題材となった。この時の経緯を友人の東京帝大教授バジル・ホール・チェンバレン宛の手紙で次のように書き送っている。
三角には、西洋式に建築され、内装された浦島屋というホテルがありますが、――太陽が蝋燭よりも良いように、長崎のホテルよりもはるかに良いものです。また、とても美人で――蜻蛉のような優雅さがあり――ガラスの風鈴の音のような――声をした女主人が世話をしてくれました。車屋を雇ってくれたり、素晴らしい朝食を整えたりしてくれて、これら全部ひっくるめてわずか四〇銭でした。彼女は、私の日本語を理解しましたし、私に話しかけたりもしました。私は極楽浄土の大きな蓮の花の中心で突然生まれ変わったような気がしました。このホテルの女中たちもみな天女のように思えました――それというのも、世界中で最も恐るべき場所から、ちょうど逃れて来たばかりだったからでしょう。それに、夏の海霧が、海や丘それに遠くにあるあらゆるものを包み込んでいました――神々しく柔らかな青色、そして真珠貝の中心の色たる青色でした。空には夢見るような、わずかに白い雲が浮かんでいて、海面に白く輝く長い影を投げかけています。そして、私は浦島太郎の夢を見たのです。
ハーンが赴任した頃の熊本は、西南戦争からの戦後復興と近代化が推し進められていた。古来の日本伝統文化に興味を抱いていたハーンはそんな熊本に失望することが多かったという。そんな中でこの浦島屋での体験は美しい思い出の一つだったのかもしれない。
遠く雲仙岳を望む坪井川河口の百貫港
百貫港のシンボル、百貫港灯台
三角西港
「夏の日の夢」の舞台となった三角西港の浦島屋
1893年7月、ハーンは坪井川河口の百貫港から小舟で沖へ出、散々待たされた蒸気船に乗り換えて長崎へ渡る。ところが長崎のあまりの暑さにほうほうの体で帰ってくるのだが、途中、三角港のホテルでの体験が「夏の日の夢」の題材となった。この時の経緯を友人の東京帝大教授バジル・ホール・チェンバレン宛の手紙で次のように書き送っている。
三角には、西洋式に建築され、内装された浦島屋というホテルがありますが、――太陽が蝋燭よりも良いように、長崎のホテルよりもはるかに良いものです。また、とても美人で――蜻蛉のような優雅さがあり――ガラスの風鈴の音のような――声をした女主人が世話をしてくれました。車屋を雇ってくれたり、素晴らしい朝食を整えたりしてくれて、これら全部ひっくるめてわずか四〇銭でした。彼女は、私の日本語を理解しましたし、私に話しかけたりもしました。私は極楽浄土の大きな蓮の花の中心で突然生まれ変わったような気がしました。このホテルの女中たちもみな天女のように思えました――それというのも、世界中で最も恐るべき場所から、ちょうど逃れて来たばかりだったからでしょう。それに、夏の海霧が、海や丘それに遠くにあるあらゆるものを包み込んでいました――神々しく柔らかな青色、そして真珠貝の中心の色たる青色でした。空には夢見るような、わずかに白い雲が浮かんでいて、海面に白く輝く長い影を投げかけています。そして、私は浦島太郎の夢を見たのです。
ハーンが赴任した頃の熊本は、西南戦争からの戦後復興と近代化が推し進められていた。古来の日本伝統文化に興味を抱いていたハーンはそんな熊本に失望することが多かったという。そんな中でこの浦島屋での体験は美しい思い出の一つだったのかもしれない。
遠く雲仙岳を望む坪井川河口の百貫港
百貫港のシンボル、百貫港灯台
三角西港
「夏の日の夢」の舞台となった三角西港の浦島屋
待ってました!(笑)。またFUSAさんの解説が読めると期待しております。
>小舟で沖へ出、散々待たされた蒸気船に乗り換えて長崎へ渡る。
そんなことがあったんですか。
>ガラスの風鈴の音のような――声をした女主人が世話をしてくれ・・・私は極楽浄土の大きな蓮の花の中心で突然生まれ変わったような気が・・・
大満足だったんですね。
ラフカディオ・ハーンの文って素敵ですね。
>古来の日本伝統文化に興味を抱いていたハーンはそんな熊本に失望することが多かったという。
そうでしたか。
このような予備知識をいただいてテレビを観るのが楽しみになりました。
雲仙岳も三角なんですね。
私は高2の春に一人でヒッチハイクで普賢岳の雪の残ったゴルフ場に行き、どこかのご主人にスキーの板を履かせてもらって遊んだことを思い出します。
>百貫港のシンボル、百貫港灯台
なんだか、もう朝ドラを観ているみたいです(笑)
>「夏の日の夢」の舞台となった三角西港の浦島屋
うわっ、これは脚本家さん、是非入れて下さいね。
有難うございました。
今回は「ばけばけ」という題名からしてハーンが再話した怪談がモチーフになりそうな気がしますが、ハーン=怪談というような底の浅いとらえ方はしてほしくないですね。
浦島屋のエピソードがもし描かれるとすればどういう風に映像化されるのか見ものですね。
普賢岳は一度登ったことがあります。大火砕流の翌年に高校へのリクルートで行った時は島原の街中に火山灰が積もっていて大変でした。