山口県周防大島町で行方不明になっていた藤本理稀ちゃん(2才)が、ボランティアで捜索に加わっていた尾畠春夫さん(78才)によって3日ぶりに発見され、無事家族のもとへ戻った。この奇跡的な救出劇の立役者となった尾畠さんの経歴や人となりなどについてテレビ各局が一斉に報道した。そんな番組のひとつを見ながら、ふと僕は「まれびと」という言葉が頭に浮かんだ。「まれびと」とは、折口信夫が「翁の発生」等において使った用語で、古来、日本には「まれびと信仰」が存在するとし、異界から来訪する霊的存在のことをいう。画面から見える尾畠さんはとても人間臭く、霊的存在などというイメージにはほど遠いが、その廉潔な尾畠さんの行動を見ると、その心の在り方に尋常ならざるものを感じてしまう。古の人々が「神のもどき」の存在として信仰した「まれびと」は、きっとこの様な老人(翁)を擬していたに違いない。さらにそんな思いを強くしたのは尾畠さんの住まいが、古来より神仏が習合した神と仏の里と伝わる大分県国東半島の根っこ、日出町と聞いた時だった。

能楽の最高位に位置づけられる「翁(式三番)」の白色尉の舞

能楽の最高位に位置づけられる「翁(式三番)」の白色尉の舞
教科書には載ってませんが、たまに、自身を捨てて世のため人のために尽くした人をTV番組で放映しているのを見ることがあります。感動しますが、その度に、その人は神様が乗り移っている、と感じます。
初めて耳にした「まれびと」とはそういう事なんでしょうね。