父が他界して20年。今でも、生前、あそこに連れて行ってやればよかったなぁと思うことがある。僕が熊本に帰ってきた頃はもう外出もままならない状態になっていた。そうなる前は、2年前に他界した義兄が時々連れて行ってくれたらしい。よく行きたがったのはやはり幼い頃や教職時代の思い出の地だったそうだ。
最近、僕自身がそんな父の思い出の地へ行きたくなることがよくある。僕の中に内在する父が行かせているような気もする。
▼泰勝寺跡
今から100余年前、幼い頃の父が日参した泰勝寺。長岡家のお坊ちゃまの遊び相手としてお屋敷へ通った。幼い父にとって山門前の石段を登るのも大変だったかもしれない。謡曲の稽古がある時は父も末席に座らせられたという。

泰勝寺山門
▼河内川沿いの山道
母の生家がある玉名市大浜町からの帰りは河内川沿いの山越えの道(県道101号)がことのほか好きだった。途中の天ヶ庄には鮎帰の滝があり、その上に水車がポツンと1基。昔は河内川沿いに80基ほどの水車があり、米や雑穀をつく動力としていたらしい。

河内町の鮎帰の滝
▼旧松尾小学校
昭和6年9月、父が初任地として赴任した松尾小学校(後の松尾東小学校)。児童数の減少により、小島小学校に統合され、廃校となった。父はこの学校に最も愛着が強かったようだ。父は、この学校が廃校になったことは知らない。

旧松尾小学校前から金峰山を望む