NOHEA 'ILIO

僭越ながら、屋号犬神屋を名乗らさせていただいております。
19年春、ホノルルからラスベガスに転居してまいりました。

光りのオーヴ

2010年01月11日 | Weblog
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みなさんこんばんは。
「~人に歴史あり~モノクロ大河写真館」
へ、ようこそおいでくだされました。

そうです。
この犬は、「コロさん」です。
ええ。
何もかもが鮮明に、目の前にくっきりと浮かんでくるので、自分でも怖いくらいに不思議です。
あの日。
あの運命の日。
コロさんが庭に迷い込んできたときには、赤いボロボロに擦り切れた、皮製の首輪をしていました。
そして少女は、狂喜したのです。

しかし数日後。
動物嫌いのお父さんは、行政のヒトに連絡したようです。
檻を積んだ、「野良犬狩り」の小型トラックが家の前に停まったかと思うと、手に捕獲網と棍棒のようなものを手にした「保健所のおじさん」が現れました。

少女はその瞬間
あらん限りの胆力を振り絞って
日本の国土、大地も割れよ!!!
とばかりに、大音声で、爆発的に、絶叫号泣し始めました。

その絶叫は、空に黒雲を集め、みるみるあたりが不気味な薄暗闇に包まれたかと思うと
あらゆる野鳥が、群れなしてざわめきながら、西の方角へいっせいに飛び去っていきました。
そして誰の耳にも、甲高い金属的な嫌な音が響き渡り、人々は眩暈を感じてその場にうずくまりました。
そのときとうとう、御近所一帯の家屋の、窓ガラスが粉々に割れ落ちて、地面に亀裂が走ったのです。

野犬狩りのおじさんは青息吐息で、驚きを隠せないでいるお父さんに、やっとの思いでこう言ったのでした。
「…旦那さん…この犬なかなか可愛い賢そうな顔をしているじゃありませんか。
お嬢ちゃんのためです。飼ってさしあげたらいかがです…?」
と。

少女はそれから、十年近い年月を、このコロさんと過ごしていくことになりました。
結局、折れたお父さんは、不器用な人だったにも関わらず、古机をばらして、犬小屋を手作りしてくれました。
少女は、その犬小屋でコロさんと昼寝し、おやつも分け合って食べました。
コロさんと、片時も離れ難くて、幼稚園に入園するさいも、さんざん駄々こねたくらいです。

近所で火事があったとき
「コロさんを、いち早く逃がさねば!」
と、犬の鎖を片手に、大号泣。
近所の、仲の良かったお姉さんが、必死で宥めるのも耳に入らずに大号泣。
少女の嘆きの勢いか、火事はほどなく消し止められ、このたびは、大地に裂傷を走らすこともなく、そこらの立ち木を生木に裂いた程度で済みました。
その晩の地元のニュース番組に
「火事騒ぎのさなか、犬を護って大号泣する女の子」の映像が、つづうらうらまで放映されたくらいです。

コロさん。
犬ばかを、丹精こめて育んだ、偉大な犬神。
少女は時を経て海を越え、異国の住人となった今でも忘れません。
コロさん。
私は確かに、あなたに育てていただきました。
暖かく晴れた日の、あなたの背中の毛のにおいが、ぽかぽかの陽だまりのようだったことを、今も鮮明に覚えています。
通り雨が終わったときの、あなたの背中のにおいが、雨に濡れた草々のようだったことを、今もこの鼻先に想い出すことができます。

ほれ見てみ。
幼少時のモノクロ写真さえ
犬といる、あまりの幸せのせいか、満面の笑顔すらも発光し
明暗深くくっきりと
「犬ばかオーヴ」を、光り輝かせているではないかいさ。

コロさん。
私の犬ばかオーヴは、透明に美しい光りを、今でも燦然と放っておりますでしょうか?
このオーヴ輝きは、今も褪せず、陽や月のように、あなたさまの偉大な足跡を、怠ることなく照らしているのでしょうか。
コロさん。
どうぞ御安心を。
光りの犬ばかオーヴは、今次世代に、しっかりと引き継がれていることだけは確かです。
コロさん。
その節は大変お世話になりました。
あの日のあなたが、そこにいてくれたからこそ
今の日の私が、こうしてここにおりますです。

コメント (2)
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