嵯峨御流の伝書には「菊水生方の心得」として次のように記させています。
「菊水の挿方と云ふは、嵯峨院の御庭大沢池中菊が島の古事に依れるものとして、
広口に嵯峨菊又は、しほらしき優雅なる菊を株分に挿く。
尤一二本は流して水を潜らすもよし
巨勢金岡の立てたる庭湖石を形どり石を置くなり
此挿方は菊水中に影ずる気分をありありと現はす事肝要なり・・・」
手持ちの本にはこの菊水についての解説とともにその作例が紹介してあります。
やや大きめの水盤に石をひとつ置き
その後方から野生菊のような茎の細いものが数本あるのみ
シンプルの極致です。
庭の野生菊(野路菊)を使って本の作例を参考にしながらいけてみることにしましたが
正直なところはたしてこれがいけばなとして観る側に受け入れてもらえるものか
少々不安に感じながら・・・
暴れるというほどではないにしても気ままに枝を伸ばしているといった感じのこの菊
意外と形にするのは難しく四苦八苦
それでも次第に本にあるような姿に近づいていくにつれ
『嵯峨天皇が菊が島の菊を手折られて殿上の瓶においけになり、
その枝振り、花姿が優雅で美しく天地の理法に適っていたと伝えられ、
「これを花を挿る者の範とせよ」とのお言葉に従って御流は生まれた』
その嵯峨御流のお花をいけているんだということに
いけたお花のできばえはどうあれ、満たされた気持ちになりました。