虫干し映画MEMO

映画と本の備忘録みたいなものです
映画も本もクラシックが多いです

ピエロの赤い鼻 (2003/フランス)

2005年06月30日 | 映画感想は行
EFFROYABLES JARDINS
監督: ジャン・ベッケル
出演: ジャック・ヴィルレ  ジャック
    アンドレ・デュソリエ  アンドレ
    ティエリー・レルミット  ティエリー
   ブノワ・マジメル  エミール
   シュザンヌ・フロン  マリー

 1960年代のフランスの田舎町の小学校教師のジャックは、毎週日曜日になると、赤い鼻をつけたピエロとなり、人々を笑わせていた。息子のリュシアンはそんな父が理解できず、怒りのこもった目で彼にとっては「馬鹿なこと」をしている父を見ている。ジャックの古い友人アンドレは、リュシアンにジャックがピエロになるわけを話して聞かせる。
 それは第2次世界大戦中…

 映画途中から、めちゃめちゃ泣いてしまった。フランスではレジスタンスは特別な地位を持っているように思うのだけれど、今までの礼賛昂揚的なだけでなく、レジスタンスに参加するまでは行かないけどドイツは癪にさわるフランス人の行動の喜劇と悲劇が表裏に張り付いて、どちらの側が次に見せられるのかわからない映画。普通の人々の勇気と優しさに思い切り打ちのめされる感じ。
 ドイツ占領下のフランスで、ジャックとアンドレはルイーズにいいところを見せたくて列車のポイントを爆破する。しかし傷ついたのはフランス人。そして真犯人が出ないならば射殺されるはずの人質に選ばれてしまう。人質はほかに調子のいい保険屋とジャックの教え子の青年。そして死を目前にした極限状況の中でのあるドイツ兵との交流。
 それは「戦場のピアニスト」を想起させるものであった。あの映画でも、自らの意思に関係なく状況に押し流されて悲痛な最期を遂げるドイツ軍人が物語で主人公と対となるが、ここでも、命を懸けて自分の人間性を守り通し、死んでいったドイツ人に、そして自分の命と人生を他人に与えたフランス人の夫婦に無条件で泣かずにはいられない。そしてジャックは死者への誓いを守り通し、与えられた自分の命に光を宿すのである。

 映画のムードがあくまで荘重に沈まず、それを受け入れるかどうかは好みの問題になってしまうと思うが、私はともかく泣けた。
 出演俳優が、近年見たフランス映画に出ていた顔なじみが多くて、安心ではあったのだけど、ほかの映画を思い出してしまう。特にブノワ・マジメルは「ピアニスト」のワルターですから、ひょっとして切れるんじゃないかとつい心配してしまった。

耳慣れたクラシック

2005年06月30日 | 日記・雑記
 昨日の夜は、川崎の新しいホールでコンサートがありました。
 曲目がリクエストで決まるというので、ほんとに耳慣れた曲ばかりで、最後がエルガーの「威風堂々」 で、連れが演奏家の腕よりホールの音響に興味のある建築技術者だったので、「曲の余韻がおさまらないうちに、急いで拍手ばかりしてNA15がわからん」と、こっちにはわからない用語を発する人間でした。でも確かに、静かに終わる曲は、余韻が消えて一呼吸置いてから拍手が起こるほうがいいなあ。なんか終わるか終わらないかのうちに怒涛の拍手では却って興がそがれる感じ。

 思ったのが日本の音楽教育も欧米クラシックが主なので、クラシックファン以外へのリクエストで、これくらいはすぐに出てくるんだな~、と。
 しかし、日本のクラシックだと、どうなんでしょう?
 雅楽「越天楽」は必ず教科書にあるのでともかく、例えば長唄だけでも「越後獅子」「松の緑」「黒髪」がさわりでわかる人は愛好者以外どのくらいいるかな?

 前に、「てなもんや三度笠」という昔の時代劇バラエティ番組のリバイバル放送の録画を見せてもらったことがあるのだが、若侍役が、
「てんぷらの衣はうどん粉で~」
と「勧進帳」の「旅の衣はすずかけの」のもじりを歌いながら登場してました。
 こういう番組で通じるギャグであったということは、勧進帳の芝居もこの長唄も日本人のスタンダードな共通常識だったということですよね。その番組から、もう30~40年くらい経ったでしょうか。いま、そのギャグ、通じるでしょうか?
 なぜか日本のクラシックが気になったコンサートでした。だから中学校で邦楽器必修になったのかな?でも自分で演奏より、派手で豪華でわかりやすくてちょっと無残で面白い「道成寺」の踊りでも見せたほうが日本の文化全般への興味が湧きそうな気がする。

フランケンシュタイン (1931/アメリカ)

2005年06月28日 | 映画感想は行
FRANKENSTEIN
監督: ジェームズ・ホエール
出演: ボリス・カーロフ  モンスター
   コリン・クライヴ  フランケンシュタイン
    メエ・クラーク   エリザベス
    ジョン・ボールズ
    エドワード・ヴァン・スローン
    ドワイト・フライ

 生命を作り出す研究にとり憑かれたヘンリー・フランケンシュタイン博士は、死体を集めて接合し、嵐の夜、電気の力でそのモンスターに命を吹き込む。生命の創造に成功したと有頂天の博士だったが、モンスターは博士に制御できるものではなかった。

 原作により忠実なのは、ケネス・ブラナーとデ・ニーロ版の「フランケンシュタイン」(1994)で、あれも悲しげな話でしたけど、これはそれとは少し性質の違う悲しさを感じるモンスター。諸悪の根源、ヘンリー・フランケンシュタインには、「お前はなんだ!」と、なぐってやりたくなります。
 ボリス・カーロフの伝説的な名演とフランケン決定版とも言うべき特殊メイクであまりにも有名な作ですが、カーロフのモンスターは実に、実に名演です。彼の表情で、人の手によって人の忌み嫌う姿で作り出されてしまったモンスターの悲しみに共感してしまう。
 子どもは様々なものに、子どもとして接してそのものが何であるかと対応の仕方を覚えていく。しかし巨大な身体と力をはじめから持ってしまったモンスターは、彼の心の無垢な状態を理解されず、従うことだけ要求され、怪物としてしか扱われない。特に子どものシーンで、その悲しさが強調される。あの花を見る表情も、その後のパニックになった表情も実に素晴らしい。

 メイキングもついていて、メイクの話、ほかのフランケンシュタイン作品などの紹介もあり、この悲劇的なモンスターがなんだかゴジラを思わせる変貌をしてていったんだなあ…としみじみするのでした。

バットマン ビギンズ (2005/アメリカ)

2005年06月27日 | 映画感想は行
BATMAN BEGINS
監督: クリストファー・ノーラン
出演: クリスチャン・ベイル   ブルース・ウェイン/バットマン
   マイケル・ケイン   アルフレッド
    リーアム・ニーソン    ヘンリー・デュガード
    モーガン・フリーマン    ルシウス・フォックス
   ゲイリー・オールドマン    ゴードン警部補
   渡辺謙    ラーズ・アル・グール
   ケイティ・ホームズ    レイチェル

 ブルース・ウェインは目の前で両親を殺され、その犯人もまた司法取引で仮釈放になり、もっと大物の悪人に殺された。自らの悪への怒りと恐怖を克服し、悪に恐怖をもたらしたいと思う彼は、社会の底辺をさまよい、中国の監獄にまで入ることになる。そこでデュガードという男に出会い、ヒマラヤの奥地で心身を鍛えた彼は家のあるゴッサムシティに戻り、汚職と腐敗が横行する街の悪を恐怖せしめる存在になろうとする。

 映画館で拍手してました。楽しかった!
 ティム・バートンのも主役はともかく悪役が大好きですが、これは主役のバットマンクリスチャン・ベイルが素敵!!
 きれいだし、このキャラクターの持つ弱さとダークな部分をちゃんと持ちこたえて、でもヒーローなんだもんね
 クリスチャン・べイルは筋肉隆々になっちゃってますが、前の映画は確か「マシニスト」でしたよね?私の体重より増減激しくないですか?役者って大変です。

 それにまた絵が良かった。ゴッサムシティの公園一つろくになさそうな遠景やビルの群れ、町中や下層の人のきったなさ。いかにもそれらしくて、でもありえないよなあ、という感じの修行場。(ヒマラヤで忍者もなかなか謎ですし、なぜか「インドの山奥で修行して…」という歌が浮かんできました。何の歌だっけ?)あの街を見下ろすバットマンの影、いいわ、いいわ!
 バットマン装備の数々…これはときめいちゃいましたね!!あの一つ一つ装着というシーンではしびれてしまう。手作り感覚も素敵。バットマン滑空のシーンなんかマンガっぽくて嬉しくて叫びだしたくなった!
 脚本も良かったですね!無理なくストーリーを運んで、ここぞ、というところで聞きたいせりふを引っ張り出してきてくれて!もう涙でそう!

 出演者の方々、みんなはまりきってます。この絵空事の世界をきちっと構築して爽快感のある映画にしてくださいました。
 でも、渡辺謙さん出番少ない。それなりに重みはあったけど「あれだけ~~~~?」もっと出てきて欲しかったよう!
 一番驚いたのがゲーリー・オールドマン。初登場でびっくり!それで少しはいつもの片鱗が見えるのかな?と思ったら最後までそのまんまで、またびっくり。DVDが出たら早速、皆々打ち揃って「きゃ~、ゲーリー・オールドマンが○○○○してる~!」など心ゆくまで叫びつつ鑑賞したいと思います。

アンダーワールド (2003/アメリカ)

2005年06月27日 | 映画感想あ行
UNDERWORLD
監督: レン・ワイズマン
出演: ケイト・ベッキンセイル    セリーン
    スコット・スピードマン     マイケル・コーヴィン
    シェーン・ブローリー     クレイヴン
   マイケル・シーン     ルシアン
    ビル・ナイ    ビクター

 人間の知らないところで幾世紀の長きに渡り繰り広げられているヴァンパイアとライカン(狼男)の殺し合い。ヴァンパイアのセリーンは優秀なハンター。彼女は、既に滅びようとしていると思われるライカンが多数潜んでおり、ライカンに追われている青年が、なぜ追われるのか突き止めようとするが、リーダーのクレイヴンはその言を採らない。一人で行動を開始したセリーンはその青年を探し出し、尋問する最中にライカンに襲われる。

 映像はかっこよかった。全編ブルーグレイを基調とした色彩で、その中にケート・ベッキンセイルの白皙の美貌が浮かび、スレンダーな肢体にあの長いコートがひらり。そこが「ブレイド」や「マトリックス」を連想させてしまうところでもありますが、あまりアクションシーンに重量感とかぶつかる時の痛さが感じられずに、ずっと「軽やかな」感じのアクション。
 ラストでヒロインがものすごい跳躍をしてラスボス役をすっぱり、なんてシーンがありますけれど、そこでも手ごたえのあるような感触はなくて、「ひらり」でした。
 そもそもがかっこいいアクションとヒロインの美貌を楽しむような映画だろうと思うので、その「ひらり」が受け入れられればそれでいいのかなあ。
 突っ込み入れながら結構楽しい映画でした。世界は人間が大多数で、それに混じって密かに生きつつける種族なのに、とりあえず人間とのかかわりはほんのちょっとで、ヴァンパイアは、何を栄養に生きているのでしょうか?それに、戦士役とはいえ、ライカン、ヴァンパイア共に「ストリート・オブ・ファイヤー」の不良なアンちゃんたちみたいなコスチュームがなんかな~、面白おかしかったりして。
 個人的に、群れる吸血鬼とか団体行動の吸血鬼って、やはり変に思っちゃう。エゴのカタマリで、一人でしか暮らせないようなのが吸血鬼の宿命な方が好き。
 ビル・ナイはなかなか素敵だったので、是非ハーレムを率いてる伝統的なヴァンパイアを演じてるのを見たいですね。

お疲れの週末

2005年06月27日 | 日記・雑記
 試験終わりました。
 あと実地があって、それから決定ですがとりあえず筆記はパス。
 時間がうまく合わなくて、お昼をぬいたので試験が終わってからの説明の最中にお腹鳴るんじゃないかとヒヤヒヤものでした。
 試験会場に向かう途中で、昔通勤していた駅を通ったら、なんとすっかり様変わりで電車から見ても田んぼがすっかりなくなってる!見渡す限りの田んぼと畑と、家がちらほら、そこに電気機器メーカーと化粧品会社の研究所、高校だけが大きな建物で目立ってたのに、全然目立たず当時の面影もない。
 だからどうってことはないけど…

 試験だ試験だといいながら、映画館へはさすがに行かなかったものの、全然見る映画の本数は減ってなかったような気がします。

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 思ったこと。「半魚人」の手がシャコバサボテンみたいだな~と思ったのだが、シャコバサボテンも、あの葉の部分の形状がシャコに似ているので名前がついたのだろうか?「半魚人」のネーミングは最高だけど、その言葉はいつからあるのだろう?「シャコ人間」とか「えび人間」のようなタイトルでなくて良かったな~
 そのものずばり過ぎるけど「大アマゾンの半魚人」て、すごいいいタイトルです。

維新派 キートン(演劇DVD)

2005年06月26日 | エンタテインメント
 劇団「維新派」のキートンの映画をモチーフにした舞台を収録のDVD
 少年が雨の日に寂れた映画館で映画の中に入り込んでしまう。そしてその世界のキートンに出会い…という「探偵術入門」の設定から、キートンの様々な映画のシーンが登場。

 私は舞台はミュージカルやダンス以外あまり見ません。見るのは高校生やプロでない劇団の公演に誘われるくらい。まずお金がないので。これもキートンの名前に惹かれてみたのだけれど、セリフがない、まるで舞踊劇のように身体性で見せる舞台で、それもストーリーを担っている部分をフォーカスして見るタイプの舞台ではない。
 セットがまたすごい。のっぺりした斜面を多用しており、野外だし、濡れたらどうするんだろうと心配になるほどだったが、そこに浮き上がる影の効果は最高。歯車や骨組みで組上げたような巨大セットのイメージも素晴らしい。
 かなり長い時間で、テレビ画面では休憩を入れて見たが、役者さんたちの体はたいしたものでした。スローモーションが多いのに、身体の動きに緩みもなく、舞台の隅まで隙がない感じ。音楽も良かった。ただ、じかに見ると全然印象違うだろうとは思った。やはり音の点では録画は弱い。

 私が好きでたまらないキートンの映画の魅力は、まず面白い見せ方に徹していること、キートンの体技ばかりでなく映画自体のスピード感が群を抜いていること。どうしても貧乏くじを引いてしまう人間の世界への違和感や哀愁の奥に優雅さが感じられること。
 これはスピード感はちょっと置くとして、キートン映画の場面が出てくることだけでなく、キートンのムードが感じられた。(どうしても私はキートンファンとしての視点からこれを見る)
 しかしこれを小さな画面でなく、じかに見たら病みつきになるだろう。

大アマゾンの半魚人 (1954/アメリカ)

2005年06月25日 | 映画感想た行
CREATURE FROM THE BLACK LAGOON
監督: ジャック・アーノルド
出演: ジュリー・アダムス 
    リチャード・カールソン
    リチャード・デニング
    ウィット・ビセル 

 アマゾン川で水掻きのついた手の化石が発見された。残りの部分を求めて奥地へと赴く調査隊だったが、彼らの前に姿を現したのはなんと半魚人だった…!

 これは、半魚人の造形が素晴らしいですね。最初は手(シャコバサボテンに水かきがついたみたい!)だけから、体全体、そして顔のアップへ!あのくら~い穴のような光の無い目が、全身のトゲトゲした感じがなんとなく恐竜を思わせて、生きる化石風の雰囲気があります。
 呼吸するたびに、顔の下半分のえら状のものが動いて、魚っぽくて素敵。
 これは着ぐるみスーツのモンスターでしょうけれど、泳ぐ姿が滑らかで、本当に水中を住処とする生物のような感じがするほど。船上シーンは合成の明らかなところいっぱいだが、水中の、特に格闘シーンは素晴らしい。

 出てくる美女は人跡未踏の奥地でパニックになってもメイクと髪は完璧だし、科学者役なのに「気をつけて」「きゃ~!」と言う役割しか振られてない。船長は「アフリカの女王」のオーモット船長そのままのルックスでなんとなく笑える。
 それに半魚人は、男は容赦なく殺してまわるのに、美女にはなんだかおそるおそる近づいてるような風でもあり、丁寧に扱って怪我無く攫うのが「キングコング」以来のトラディショナルモンスターぽくて、これまた素敵。

 半魚人の犠牲者は多いんだけれど、なんとなく半魚人のほうに同情してしまった映画。

条件反射

2005年06月24日 | 日記・雑記
昨日は夜遅くに用があり、昼間時間が空いたので
ドラクエVを明るい時間にやってみました。
20分もすると眠くなっちゃったんですね、これが。
いつも風呂の後、半分寝たような状態で、
「ダンジョンで迷う、行き先がわからず地図上をうろうろ」
というRPGの醍醐味を味わいつつやってますが
コントローラー持つと眠くなるような条件反射が出来上がっているのでしょうか?
主人公のレベルはバリバリ上がってます。
詰まってばかりで「日々是レベル上げ」状態ですから。

26日は、家族内で2人が資格試験やらなにやら受験です。
そういうシーズンですね。
試験は割と好きだけど、やっぱり早く終わって遊びたい。
「バットマン」見に行きたい!

ロスト・チルドレン (1995/フランス)

2005年06月24日 | 映画感想ら行
LA CITE DES ENFANTS PERDUS
監督: ジャン=ピエール・ジュネ
   マルク・キャロ 
出演: ロン・パールマン 
    ジュディット・ヴィッテ
   ドミニク・ピノン
    ダニエル・エミルフォルク 

 不気味な一つ目軍団、クローン人間の群れの跋扈する荒廃した近未来を思わせる世界で、心は子どものままの怪力大男の小さな弟がさらわれる。必死に行方を追う男の前に子どもの盗賊団の顔役のような少女が現れる。二人は不思議にお互いに気になる…
 
 この前、「シックスストリングサムライ」の話題が出たときについオンラインレンタルDISCASに予約しちゃった映画。昨年の9月予約でまだ来ないのもあるのに、さっさと来ました。「シックスストリングサムライ」が突き抜けたように広い空の下に乾いた暑い風を感じるようなのに比べ、これはふたをしたような垂れ込めた空と湿気に満ちた映像であるにも関わらず、同じにおいを感じてしまう。もちろん映像的にはこちらのほうがずっと美しいと思う。
 好きなものを集めて丹念に作りあげたジオラマ世界が、実際に動き始めたような現とも夢ともいえない奇妙な感覚。ちょっとゆがんだ登場人物。頭の中の暗いほうの隅っこにもやもやと集まっていた怪しい不思議なものと響きあう…みたいな、どうも既視感を感じさせるパーツが揃っている。
 夢をむさぼるエピソードもマッドサイエンティストよりもビーストテイル的。だからどんなことでもあっさりと起こる。あのヒロインの涙が窮地を救うことになるのは、まさにすばらしいオトギバナシ的連鎖の世界ではありませんか!

 ヒロインの少女がいかにも子どもなのに、そのくせ大人の女の顔が仄見えるのがすごい。無理した背伸びのませた子どものこわばりを感じない!ロン・パールマンの魁偉さが可愛く見えてくる。

Musical Baton

2005年06月22日 | 日記・雑記
音楽に関する同じ質問をリレーしていって、みんなでブログ上で回答を発表しつつ他の5名に回していこう!という趣旨の企画Musical BatonPulp Literature様よりまわってきました。
 いつも訪問させていただいて、海外作品についての書評に啓発させられておりますが、こちらにまわしていただくとは想定外でした。つきましては、回答を以下に。

・Total volume of music files on my computer (コンピュータに入ってる音楽ファイルの容量)

 316M。
 私の専用PCはサウンドカードさしていないので、共用のPCの中の容量。

・ Song playing right now (今聞いている曲)

 ピアニスターHIROSHI「ゲゲゲのカンパネラ」「アイネ・クライネ”スーダラ”ムジーク」
 (元気つけたい時用にこの2曲編集して聞いています)


・The last CD I bought (最近に買ったCD)

 川畠成道「Ave Maria」バイオリン曲集
 大塚愛「黒毛和牛上塩タン焼680円」
  情報遅れてます

・Five songs(tunes) I listen to a lot, or that mean a lot to me (よく聞く、または特別な思い入れのある5曲)

 1 バッハ「ゴールドベルク変奏曲」グレン・グールドのモスクワコンサートアレンジ
  これが私をグールドのとりこにしました
 2 モーツァルト「ピアノソナタ集」グレン・グールド演奏
  面白い
 3 ナット・キング・コールベストヒット
  問答無用で声が好き
 4 矢野顕子「Hitotsudake」
  ある日、ふと自分に喰いこんでる曲があるのを発見。
 5 ベルリオーズ「幻想交響曲作品14」
  第4楽章、第5楽章に、魅入られた時期があります。

 重厚な曲がないのに我ながら気付く。
 ほとんど毎日ピアノ曲ばかり聴いています。


・Five people to whom I'm passing the baton (バトンを渡す5人)

 音楽をサイトのテーマの一つにしていない方にお聞きしたいと思います。
 これは気付いたら、自分のサイト上に回答するというものらしいので、お気が向いたらお願いします。もちろん無視してくださっても結構です。

 ・にゃら様 how do you like movies?
    映画音楽以外の音楽のお話はあまりしていませんね
 ・mac様 (ほとんど)シネマ日記 
    いつも、ミュージカル鑑賞記にワクワクさせていただいていますので
 ・arudenteな米様 arudenteな米 
    どんな音楽がお好きでしょうか
 ・ブッキー様  ブッキーの備忘録
    blogではありませんがやはりあまり日記の話題に上りませんので
 ・PAPPOP様 Cinema Paradise
    話の端々に音楽のお話が出てきますが、一度まとめてお聞きしたい!なんて

丹下左膳餘話 百萬兩の壺 (1935/日)

2005年06月22日 | 映画感想た行
監督: 山中貞雄
出演: 大河内傳次郎   丹下左膳
   喜代三   お藤
   沢村国太郎   柳生源三郎

 先祖の隠した百万両のありかがしるされているというコケ猿の壷をめぐって柳生家と不知火道場がつばぜり合い。その壷をひょんなことから手に入れたみなしごと、その親代わりになった隻眼隻手の浪人左膳とお藤の夫婦を巻き込んでのコメディ。

 実は、邦画旧作のコーナーを宮城千賀子の「狸御殿」無いかな~と探していて発見。どうして今まで見落としていたのでしょうか!試験は日曜だ、勉強しなければ!と思いつつ、我慢しきれず見ちゃいました。ついでにBSの「ストリート・オブ・ファイヤー」も見てしまいました。この意志薄弱さはどうしようもないです。でも楽しかった。

 場面転換のあざやかさと、それぞれに実に気分のいい人物像が浮かび上がってくる描写の切れ味はめちゃくちゃかっこいい。本では、また大友柳太郎の左膳もコメディながらニヒルな影を残していたが、ここでは凄腕ではあるものの、矢場の女将お藤の居候であり、なんとなく立場が弱い。それに気が強くて口が悪く、いかにも仇っぽいお藤も、二人とも安吉の悲しさを己が心に感じる優しさが嘘っぽくなく描かれて、次第に親馬鹿コメディになるのを(見ているほうでもそうあってほしいと思う展開であるのだが)実に納得し、ほっとしてしまうのだ!「おぢさん、おばさん、けんくわしないでください」には泣かされた。そして安のしょんぼりとした足どりと、左膳のスピード。サイレントの映像の呼吸がトーキーでも活きて感じられるよう。
 柳生源三郎の沢村国太郎は美人の妻に婿養子でやはり頭が上がらない、暢気な次男坊育ちを実にやわらかく上手に演じていた。この春風駘蕩としたいやみの無いダメ男ぶりがこの映画のラストを支えている。口の利き方、話し方が巧い。この人のセリフは現代劇にはめ込んでも違和感なさそう。
 女優さんたちの美しさも、現代とはちょっと違う美人を総覧する感じがした。姿が違う。くず屋さんも気の毒だったし、面白かったし、もう江戸時代の生活を認識するのは難しいけど、歩き方からしてリアルな感じがする。
 このシーンが鮮やかだった、すごかった、はやはり是非その目でご覧になって!とお願いしたいが、山中貞雄監督の「ヒドイこと」をストーリーの流れの中で停滞させずに処理していく手際はすごい。

 この映画は、昨年DVDで山中貞雄ボックスが発売され、DISCASでもレンタル可能!さあ、皆さん見ましょう!
 傑作と定評のある「人情紙風船」は一度テレビ放送で見たきりで、ものすごくショックを受けた映画だったが、まだ何かを言えるところまでは落ちてきていない。しかしあの、人の酷薄さ、無常さ、醜悪さを描ききる監督が、この思い切り気持ちのいいコメディを撮ったのかと思うと、彼を殺した戦争がいまさらながら呪わしい。

レンタルショップ100円の日

2005年06月21日 | 日記・雑記
私の一番良く行くレンタルショップは
なんと1年1度しか100円サービスデーがない。
それが今日だったのだが
実は26日にある試験があって勉強しなくちゃいけないのだ。
ちゃんと寝ないと頭働かないのだ。
だからドラクエも1日1時間だけなのだ。(子供か、お前は)
でもやっぱり借りてきちゃった。
「大アマゾンの半魚人」
「フランケンシュタイン」(ボリス・カーロフの)
「丹下左膳余話 百万両の壷」(山中貞夫・大河内伝次郎)
「ファントム・オブ・パラダイス」
「維新派 キートン」(舞台の)
なんてこらえ性のない私!
DISCASからも
「アンダーワールド」
「ロスト・チルドレン」
が届いてる。どちらも再見というのがますますナサケナイ私。

若きウェルテルの悩み/ゲーテ

2005年06月21日 | 
高橋義孝訳 新潮文庫

 婚約者のいる女性ロッテに恋し、その純粋さ・多感さのゆえに破滅していく青年を描いて社会的にも文学史にも重要な傑作。

 今、エキサイトブックスで毎週木曜連載中の「非モテ文化史」シリーズというのがある。最近のは「明治のポジティブ毒男、武者小路実篤の巻」3回で、武者小路とその妻房子を今の毒男風に読み解いて面白かった。もちろん、「お目出たき人」も元祖勘違い君なところばかりでなくて、理想の愛情を求めるとか、自らを高めようとする主人公もまた読みどころではあります。
 小説は人それぞれ自分の読み方で読むものだけれど、やっぱりこういう風に読めるよね~と共感を禁じえない。このシリーズでは「トニオ・クレーゲル」「ムーミン」も登場していて、これからが楽しみ。「ベニスに死す」はあたりまえすぎてダメかな? で、私が期待しているのが「若きウェルテルの悩み」

 ゲーテの名作中の名作で、ゲーテ自身が「この小説が自分のために書かれたと思う一時期をもたない人間は不幸だ」という言葉を残したそう。しかし、中学の時に初めて読んだときには「気持ちわり~」としか思えず、終盤のほうで、完全に周囲から浮き上がってしまったウェルテルに好意を持ち続けるロッテにさえも「なぜ?」と思ってしまった。
 ウェルテルは、誠実や美しいものへの賛美と、俗物性や不正、人間の卑小さへの嫌悪に対する感性が鋭すぎ、それを押し殺して生きるには神経が繊細すぎる。したがって、彼の持つ全ての刃はその純粋さのために自分に向けられることになる。そして彼は自殺する。
 人間生きる年数が長くなると、それなりにいろんな感情を体験するし、そのたびにウェルテルの昂ぶったり沈んだりにも共感を持てるように、彼の感情の一端を知ることになる。ウェルテルほど高くもどん底にも行ってない程度なのだが、それでも「この本は我がためのもの」感はなんとなくわかるようになる。
 それと共に、ウェルテルの痛々しさもだんだん肌の奥まで刺さっていくようだ。
 彼は若く、前途を切り開く意欲に燃え、世界を美しいものと見、理想をわが手で築かんとする清冽な心を持った青年として実にさわやかに登場する。それがかなわぬ恋に捉われ、社会の不合理や醜さに妥協を拒んで追い詰められる。決して彼の憧憬と賛美を裏切ることのないロッテは決して手の届かぬ存在であり、情熱をほかに向けようとした彼の努力は裏切られる。死は恋のためだけのものではない。

 でも、やっぱり傍にこれだけ激しい人がいなくて助かったなあ、と思ってしまう。もちろん私が誰かにこれだけ思いを寄せられることはないだろうが、傍目で見ていてもかなり不気味だ。
 絶対に思いを遂げられない恋する人の傍で、感情が高まってしまって、彼女が演奏している最中にわっと泣き出す、いきなり彼女の小さな妹に強くキスして泣かせてしまう。結婚した彼女とその夫の前で自分をもてあまして大騒ぎしてしまう。
 自分が会いにいけないときには、下男をやって、この男に彼女の目が注がれたと思ってときめく…
 やっぱりまだひいちゃう。

平凡/二葉亭四迷

2005年06月20日 | 
講談社文芸文庫「平凡・私は懐疑派だ」

 明治の文士の述懐のようなぼやきのような半生記。
 可愛がられ家の中の王様のようにして育ち、文学に志し、自分の文名を広める機には恵まれたものの、続かずそして文学そのものにも懐疑を抱き、挫折の上に生活に追われる39歳の今がある。

 ここ10年ほど古い小説が新しい版で出て、きれいな活字や広めの行間で読めるようになって嬉しい限りだが、これもそうなってから読んだもの。ほとんど流れ作業のように読んでいたティーンの頃でなく、今読んだというのもまた人生のめぐりあわせというものでしょうか。
 あらすじはずいぶん乱暴に書いてしまったが、本当に全編ぼやきのようでおかしい、そして切なく恥ずかしく、痛ましい。「浮雲」と同じく文章全体が軽妙なのですらすら進んでしまえるのだが、これまた「浮雲」と同じく自分の自尊心と怒りを扱いかねているような不器用で生きるのが下手な主人公なのだ。そしてキレてしまうには理性がありすぎる。
 自分が何ほどのものか、見えてしまうがために思い切って切れてしまう事も出来ない。これもまたものすごく不幸なことだろう。
 少年期や、青年期の失敗や懊悩は時代とシチュエーションこそ違え、そこに描かれる「やっちまった…」「何でこうなるんだ…」「そんなことがあってたまるか」の身に覚えのある心情には、共感のハズカシさで身もだえしてしまう。きちんと抗議できない、処理できない我に悔しい思いを心のなかに沈めていくことも実にわかってしまう。何よりも志を立て、情熱を注ぎ込んだ文学への懐疑に自分が綻びていくような寂しさが、虚無感が奥から響くようだ。

 明治という時代の特殊さ、現代との違いは、私にはもう実感ではわからない。四迷もまたその急ぐ時代の中で人よりものが見えすぎた人間だったのだろう。この本を読んで四迷という人の精神は、明治には現代人に過ぎると感じるのである。

「平凡」も、「浮雲」も青空文庫で読めます!