虫干し映画MEMO

映画と本の備忘録みたいなものです
映画も本もクラシックが多いです

リップスティック(1976/アメリカ)

2009年07月24日 | 映画感想ら行
LIPSTICK
監督: ラモント・ジョンソン
出演: マーゴ・ヘミングウェイ
   クリス・サランドン
   アン・バンクロフト
   ペリー・キング
   マリエル・ヘミングウェイ

 かなり前に見た映画で記憶違いがあるかもしれませんが、最近の事件に関して思い出したので。ビデオのレンタルで見ましたが、allcinemaのデータでは、まだDVD出ていないようです。

 主人公のマーゴ・ヘミングウェイが恵まれた容姿を活かしきれていないようにも感じたのを覚えています。さすがにトップモデルで、ライフルを構えた姿など、見事に絵になっていました。いまだに記憶によみがえります。弁護士役のアン・バンクロフトはかっこよかったし、なにより悪役がものすごい悪役っぷりで、こんなやつ木端微塵にしたれ!とうら若き頃の私が画面を見て叫んでました。

 今まで「2ちゃん」は敬遠していましたが、京都教育大学の集団強姦事件については、2ちゃんで状況を追っていました。被害者に対するひどい中傷には、それを止められない無力感でいたたまれないような思いでした。今回、2ちゃんへの認識もちょっと改まりました。
 この映画では、レイプされた美しいモデルが、被害を法廷に訴えるものの、そこで私生活を暴露され、中傷され、罵倒された揚句に強姦魔は解放され、さらなる悲劇を招く…という女としてやりきれない展開が続きます。映画なので最後にカタルシスは用意されていますが、実際はこうはいかんだろうなあ…という不安も残りました。
 相当昔の映画なのに、ほとんど今現在ネット上で同じような中傷が繰り返されています。
 京都の事件は、示談になり刑事としては終了したようですが、これを見るだけでも、複数の加害者と弁護士相手に法廷で闘え、とは19歳の女子学生には酷に過ぎます。

 2ちゃんの書き込みの中には
・レイプされたら本人が「犬に噛まれた」と考えて自己内解決すれば済む
・レイプ被害を訴えた女は浅慮で、自分の価値を下げることになる。
というようなひどいものもあります。
 あまりにもストレートで、惨くて、怒りなどの感情が動くより先にまず体が凍るようです。
 性犯罪は明るみに出た時に被害者のほうが加害者よりも苦しまなくてはならないのが現実です。
 だからこそ、事件を明らかにしてくれた被害者に同性として感謝し、少しでも心身をいたわってほしいと願っています。

 もっと眉に唾・頭はクールに対処しなければネットと付き合う資格はないのかもしれませんが、ちょっと怒ってます。

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 後記
 事件に関連する記事を追っていると、今は、アメリカでは被害者の支援団体の活動などが充実しており、何度も証言台で被害の事実を再現させられたりしなくて済むという情報もあります。日本でも一刻も早く支援体制が整えられますように。

ラスト、コーション(2007/中国、アメリカ)

2009年05月28日 | 映画感想ら行
LUST, CAUTION
色・戒
監督: アン・リー
出演: トニー・レオン イー
   タン・ウェイ   ワン・チアチー

 1942年、日本軍占領下の上海。女子大生チアチーは、抗日運動に心血を注ぐクァンに秘かな恋心を抱き、日本に協力する裏切り者を暗殺すると言う彼と学生仲間と行動を共にする。チアチーは、日本の傀儡政府に協力する特務機関のリーダー、イーに近づく。一度は失敗し、別れ別れになる仲間たちだったが、3年後、チアチーはクアンと再会し…

 トニー・レオンの映画は、なんとなく別格です。
 新人のタン・ウェイもかわいくてレトロな化粧も似合ってるし、いかにも蹂躙されてる風なセックスシーンが痛々しくてぴったりなんですけど、どうしても目がいきます。トニー・レオンに。
「あ、そんなに身体さらしちゃって…」
なんて思うのは、痛々しい若い女性ではなく、トニー。
 延々続く(ように感じる)ラブシーンはとても官能的でも、私の意識を醒めさせてしまう冷え冷えを抱えています。
 自分を暗殺寸前のところで逃がした彼女をあっさり殺してしまう酷薄な男なのに、トニー・レオンはどうしても汚らしい男には見えない。彼の不思議な清潔さにこちらが翻弄されるようで、思わず彼女を失くした彼の思い、とか感じてしまいそうで、あわてる。
 だからこそ、彼女の「逃げて」を納得してしまう。
 私はトニー・レオンには冷静になれない磁力を感じてしまうので、他の人の見方はまた別でしょうが、やっぱりこの映画を支配しているのはレオンの放つ透明なのに妖しいオーラだと思います。

 それにしてもチアチーの一生は女の人生としては踏んだり蹴ったりで、それについて一番怒りを感じるのはクアンである。お前が一番情けなくてどうしようもない男だ!と歯噛みする。

 NHK BSの番組でこのチアチーのモデルになった女性のドキュメンタリーを見たけれど、印象だいぶ違いました。そちらの彼女のほうが意志的に生きる女性で、見ていてちょっと救われました。

ロケットマン!(2006/タイ)

2008年03月11日 | 映画感想ら行
DYNAMITE WARRIOR
監督: チャルーム・ウォンピム
出演: ダン・チューポン    ロケットマン(スー・シアン)
   パンナー・リットグライ    ナイホイ・ダム(黒鬼)
   プティポン・シーワット    ウェン閣下
   カンヤパック・スワンクート    サオ

 敵を蹴散らす主人公が、両親の仇を探して国中を放浪しながら数々の困難を乗り越え大願を果たすために奔走する姿を描く。1920年代のタイの農耕地帯。僧として修行中だったシアンは牛泥棒に両親を殺され、還俗し、無数のロケット弾を操り仇を探して放浪の旅を続ける。ついに仇の居場所を突き止めたが、その男ナイホイ・シンは妖術使いだった・・・

『七人のマッハ!』のダン・チューボン主演で、悪役でアクション・スーパーバイザー、リットグライも出演。
 もちろん、ムエタイ・アクション見たくて見たんですが、前半ちょっと我慢の部分もございました。設定がちょっと時代劇で、今まででも一番荒唐無稽っぽいし、主人公が相変わらずまじめな朴念仁キャラで朴訥を絵に描いたようなラブシーンやってるし、悪役がなぜか3枚目兼でコメディしてるし…
 わざと泥臭くしてるのかな?オープニングの旧式ロケット飛ばしたり、ロケットに乗ったり「今度は特撮もございます」なところにノリそびれてしまいました。
 とはいえ、後半クライマックスまでのタイ式の痛さ全開アクションの迫力はうれしいですねえ。

 タイのアクション映画は洗練未満の、そこが魅力です。

リトル・ミス・サンシャイン(2006/アメリカ)

2008年01月23日 | 映画感想ら行
LITTLE MISS SUNSHINE
監督: ジョナサン・デイトン
   ヴァレリー・ファリス
出演: グレッグ・キニア    リチャード・フーヴァー
   トニ・コレット    シェリル・フーヴァー
   スティーヴ・カレル    フランク
   アラン・アーキン    グランパ
   ポール・ダノ    ドウェーン・フーヴァー
   アビゲイル・ブレスリン    オリーヴ・フーヴァー

 アリゾナ州に住むフーヴァー一家は、家族それぞれに問題を抱え、崩壊寸前。パパのリチャードはまったく見こみない成功論を提唱し、自ら忌み嫌う負け組に知らず知らずなっている。グランパはヘロイン常習者で言いたい放題。ママのシェリルは疲れ気味。長男ドウェーンはそんな家族の中でニーチェを読みつつ沈黙を続ける。さらにはそこへゲイで自殺未遂のシェリルの兄フランクまで加わる。そんなとき、娘のオリーヴに美少女コンテスト出場のチャンスが訪れる。一家は旅費節約のため、オンボロのミニバスに家族全員で乗り込み、はるばる開催地のカリフォルニア目指して出発する。

 痛くておっかしい映画でした。
 それぞれ問題を抱えた家族が、旅行中にそれに向き合い、ひと波乱ののちそれぞれの再生への希望を見出す…のがロードムービーの常道な展開だと思いますが、この映画ではそれぞれ自分の傷に向き合わねばならない時に、傷口が広がるばっかりで救いなしです。
 それなのに、痛々しいばかりでなく個人の悲劇=傍から見ればファースである「まいったなあ」という笑いを浮かべることができます。
 この家族ほんとにがっちり家族の絆が存在しております。何気ない言動で傷つけあい、行く先々でみんな「負け犬」を確認させられるばかりなのに、お互いをいたわりあう行動が思わず知らずごく自然に出てしまう姿に、心のなかにあったかいものがじわじわ広がってきてしまいます。
 パパとママは激しくやりあっても、それぞれの家族の立場を維持するし。
 ゲイで恋人に振られて、仕事もなくして自棄になって自殺未遂をした伯父さんも、ちゃんと家族の傷をいたわる余裕あり。スティーヴ・カレル、「40歳の童貞男」よりもこういうキャラのほうが私は好きです。
 不良老年のおじいちゃんも、いざというときは人に合わないまっとうでストレートな言葉を発します。
 それに、およそミスコン的でないぽっこりおなかのかわいいオリーヴが本当に家族のサンシャインです。
 およそ雰囲気違うけれど、「ミスティック・リバー」(小説のほう)で繰り返される「クソみたいな人生」を連想。どうしようもない人生だけど、どうにかこうにか生きて行くんだわ。そして、ため息ついて立ち上がるためには、切れそうで切れないこの家族みたいなつながりがつっかい棒になるんでしょう。
 押しがけの車というのはむちゃくちゃ象徴的。

 それにしても、死にざまに至るまで、おじいちゃんのセンスは破壊的すぎます。

ロルカ 暗殺の丘(1997/スペイン、アメリカ)

2007年12月26日 | 映画感想ら行
監督: マルコス・スリナガ
出演: アンディ・ガルシア   ロルカ
   イーサイ・モラレス  リカルド
   ナイム・トーマス
   エドワード・ジェームズ・オルモス
   ジャンカルロ・ジャンニーニ

 スペインの天才詩人、フェデリコ・ガルシア・ロルカは1936年、内戦中にファシストによって銃殺された。彼にあこがれていたリカルド少年は、家族とともに国を逃れプエルトリコで成長した。1954年、31歳になったリカルドは、ロルカの死の真相を探るために再びスペインへ戻る。

 これは、いまだに明らかになっていない、おそらく永遠に公には明らかにされないロルカの死の真相に対する一つの仮説を描き、その中で国民同士が殺しあう内戦という悲劇と、濡れた血にまみれた手を抱えたまま生きていかざるを得ない人間・知りたくない事実を分かち合う家族の悲劇を描いたもの。

 オープニングで、英語で「午後の5時」がロルカ役のアンディ・ガルシアの声で朗誦されます。聞いた途端にメニュー画面でスペイン語音声探したんですね・・・・なかったんです。
 どうして?
 スペイン、アメリカ製作の映画なのに、何でDVD音声は英語だけなの??????スペインで公開してるんだから絶対スペイン語の音あるはずなのに!!!!

 A las cinco de la tarde
 ・・・「午後の5時」をスペイン語で聞きたかった。

 その他にも、ロルカの詩の朗読がいくつも挿入されているんですから、ああ、スペイン語音声が聞きたかったと悔しさが募ってたまらず、落ち着かなく見終えたのでした。
 映画としてよかったと思いますが、その点が気にかかってまともに見た感じがしませんでした。
 そのうちスペイン語入りDVDもでてくるかな?
 ちょっと中年のアンディ・ガルシアは素敵でした。

ローズ・イン・タイドランド(2005/イギリス、カナダ)

2007年11月18日 | 映画感想ら行
TIDELAND
監督: テリー・ギリアム
出演: ジョデル・フェルランド   ジェライザ=ローズ
   ジェフ・ブリッジス   パパ/ノア
   ジェニファー・ティリー    ママ/グンヒルド王妃
   ジャネット・マクティア   デル
   ブレンダン・フレッチャー   ディケンズ

 10歳の少女ジェライザ=ローズは両親が2人ともヤク中。母親が薬のために死んでしまうと、父親はジェライザ=ローズを連れて故郷へ向かう。辿り着いた父の実家は、テキサスの草原の中のボロい一軒家。そして父親もクスリを打ったまま動かなくなってしまう。ジェライザ=ローズは、頭だけのバービー人形たちと残される…。

 見終わってしばし声が出ない、という映画でありました。
 子どもの悲惨を絵に描いたような生活。ダニエル・キイスを読んでる時のような気分にも襲われます。無力感のような感じ。両親の都合よく使われ、首だけの人形と小さな世界を作り、現実を頭の中で少し書き換えながら生きている…実に悲惨でグロテスクでもローズにはこれ以外の選択肢がない。その彼女の世界を目の当たりに見せられ、凄惨にしてどこか実感のない現実が進行し、外の光は妙に明るく白々しい。
 一家の中で両親がはるか昔になくした世間知を担当しつつも、子どもとして周囲の愛情を強烈に求めるる余りにとんでもないところまで踏み込んでしまいそうになるのに、自分の見たものを正確に社会的に位置づけられない幼さとが同居している。現実ならあの子はとんでもなく薄汚れているだろうけれど、やはりむちゃくちゃ美少女。世界の狭さと子ども時代のイノセントがディケンズ相手の異様なキスやきわどい接触に異様なリアリティを与えるようで、もう背筋が凍る様だった。

 ギリアムらしいといえば、まったくその通りです。同年の「ブラザース・グリム」に比べれば全然納得です。
 ほんとに疲れました。

ラブソングができるまで(2007/アメリカ)

2007年11月16日 | 映画感想ら行
MUSIC AND LYRICS
監督: マーク・ローレンス
出演: ヒュー・グラント アレックス・フレッチャー
 ドリュー・バリモア ソフィー・フィッシャー

 80年代に一世を風靡したバンド“PoP”の元ボーカル、アレックス。今は昔のファン相手に腰振って歌うドサ回りの哀れな日々。彼のもとに、人気絶頂の若き歌姫コーラから、彼女の新曲を作って欲しいという依頼が。またとない復活のチャンスにも、作詞が巧くいかないアレックスはたまたま植物の手入れに来ていたアルバイトのソフィーが口ずさむ歌詞にひらめきを感じ、二人で曲作りをすることに…。

 ヒュー・グラントはなんだかダメ男を選んでやってるようです。同工異曲の感はありますが、演じる人物の過去を納得させちゃうのが、いつも感心させられます。「アバウト・ア・ボーイ」のなし崩し的に年取ってきた中古のプレイボーイとか、「アメリカン・ドリームズ」のいまや番組もろとも瀬戸際の司会者とか。私、美貌を自ら笑えるスターは大好きです。
 この映画でも、中年になっても青年時代の残滓しか売り物がなくて、場末のステージで昔の曲を腰振って歌う元アイドル。でもそれほど強烈な惨めさでなくて、ナサケナさくらいにとどめて笑えるのは彼の演じる主人公の人の良さが漂うおかげだと思う。
 それに、エンド・クレジットの曲のところを止めてひとつひとつ確認したけど、歌は出演者が歌ってるんですねえ。さすがみんな歌うまいわ。
 ドリュー・バリモアもかわいかった。
 ストーリーはありがちだし、お気楽映画には違いないけど、こういうほっとする映画がたくさんなくちゃやりきれないじゃありませんか。

ロード・オブ・ウォー(2005/アメリカ)

2007年09月04日 | 映画感想ら行
LORD OF WAR
監督: アンドリュー・ニコル
出演: ニコラス・ケイジ    ユーリー・オルロフ
   イーサン・ホーク    ジャック・バレンタイン
   ブリジット・モイナハン    エヴァ・フォンテーン
   ジャレッド・レトー    ヴィタリー・オルロフ
   イアン・ホルム    シメオン・ワイズ

 ソビエト連邦崩壊前のウクライナに生まれ、少年時代に家族とともにアメリカに渡ったユーリー・オルロフ。ニューヨークにレストランを開いた両親を手伝うユーリーは、ギャング同士の銃撃戦を目撃し、武器を売ることを思いつき、弟のヴィタリーと2人で武器売買の事業を始める。天性の才覚を発揮し、世界有数の武器商人へと成長していくユーリー。そんな彼をバレンタイン刑事が執拗に追う…。

 見終わると原題がとっても意味深に感じられます。LORD…ほんとうに支配するものって…なるほどねえ。
 自分が売った銃口の先のことは頭から締め出すことは、それほど誰にでも出来ることではありません。
 しかし、それが可能な主人公もフツーに恋をして、結婚して、子どもが出来て、家族に愛されたい、ちゃんと稼いで体裁の良い生活を整えたいとか、戦場とはなれた場所で思ってて、銃口の先のことを考えずにはいられずに麻薬におぼれる弟を困ったもんだと思っていてという、裏社会の活動と市民としての日常が恐ろしいようにあたりまえに連続して描かれます。
 音楽もまた軽快でそれがまたおもいきりシニカルです。

 ラストで、最大の武器商人たちがリストアップされるけれど、やはり本質は誰が悪いだけではなくて主人公ユーリーの弟の死で示されたと思う。
 あのシーンで二人の選択の違いがくっきりと描かれておりますからねえ。
 さすがにハリウッド資本では出来なかった映画らしいですが、ニコラス・ケイジがこういうのを製作主演するあたり、アメリカもすごい、と思います。

リバティーン(2004/イギリス)

2006年12月07日 | 映画感想ら行
THE LIBERTINE
監督: ローレンス・ダンモア
出演: ジョニー・デップ    ロチェスター
   サマンサ・モートン    エリザベス・バリー
   ジョン・マルコヴィッチ     チャールズ二世
   ロザムンド・パイク    エリザベス・マレット

 1660年代、王政復古のイギリス。第二代ロチェスター伯爵こと詩人のジョン・ウィルモットは才能を王にも周囲にも認められていたが放埓な生活を送っていた。ある日、ジョンは訪れた芝居小屋で観客のブーイングを浴びていた若い女優エリザベス・バリーに目を留め、彼女に演技指導を申し出る。

 ジョニー・デップがだんだんメジャーになってきて「ジョニーがもう変な(失礼)映画に出なくなったらどうしよう」と少し心配だったのですが、どうでしょう。この映画の製作も2004年ですが、彼はこれからもジョニーでなきゃ、という役を選び続けてくれるでしょうか?

 これも、なまじ才能と敏感な心を持ってしまったがために、幸福になりたいクセに、それから遠ざからずにいられないどうしようもない天邪鬼の映画でした。絶対に満たされない人間の心の飢えを嫌悪感無く、かっこよく見せるのは、役者のルックスと力量とが必要で、よくやってますよね。サマンサ・モートンとマルコヴィッチはそれぞれの役で、リバティーンの発散する愛と毒とを巧く受けていたと思います。
 全体に画面が暗い、なんだかまるで劇場みたいに顔とか白い部分が浮き上がるような、画面全体が滑らかでない感じで、不快感とは違うがちくちくした感触のある不思議な映像だった。

ロンゲスト・ヤード(2005/アメリカ)

2006年09月07日 | 映画感想ら行
THE LONGEST YARD
監督: ピーター・シーガル
出演: アダム・サンドラー   ポール・クルー
    クリス・ロック    ケアテイカー
   バート・レイノルズ   ネイト・スカボロー
   ジェームズ・クロムウェル    ヘイズン刑務所長
   ネリー   メゲット
   ボブ・サップ   スウィトウスキ

 八百長試合でフットボール界を追われた元スーパースターのクルーはすっかり落ちぶれ、ついにはパトロン女性の車を持ち出してカーチェイスをして3年の刑。刑務所では、強権的な所長に看守のチームのかませ犬になるチームをつくるように命じられる。1974年のロバート・アルドリッチ監督作品のリメイク。

 もちろんオリジナルには勝てません。
 でも、アルドリッチ作品のリメイクものとしては一番質が良いと思いました。名場面も踏襲し、友情とプライドに殉じて損な生き方をあえて選択するヒロイズムをきっちり見せてくれました。
 バート・レイノルズの出方もちょこっと顔出す程度のものでなく、しっかり強烈な見せ場も作ってたし、エド・ローターも出演してたのはすごく嬉しかった。

 オリジナルに比べると、今回の映画のほうが出演者のガタイが総じて大きくなっているように思います。それだけに試合の激突の迫力すごいっ!主人公としてはバート・レイノルズの方がずっとアクが強いと感じましたが(今回は彼自身はずいぶん枯れてましたね。でもやるときはやります)、あの敵味方共に巨人のような軍団を相手にするにはアダム・サンドラーのようなお人柄を感じさせる主人公が良かったのかもしれません。

 今回は所長がカタキ役を一手に引き受けて、看守長の存在が少し薄くなってしまったので私には最後のシ~ンの「ジィィィ~~~~~ン」が「ジーン」程度になってしまいました。
 気持ちのいい映画です。

ラヴェンダーの咲く庭で(2004/イギリス)

2006年08月02日 | 映画感想ら行
LADIES IN LAVENDER
監督: チャールズ・ダンス
出演: ジュディ・デンチ   アーシュラ
   マギー・スミス   ジャネット
   ダニエル・ブリュール   アンドレア
   ナターシャ・マケルホーン   オルガ
   ミリアム・マーゴリーズ   ドルカス
   デヴィッド・ワーナー    ミード医師

 1936年、イギリスのコーンウォール地方に暮らす初老の姉妹ジャネットとアーシュラ。ある日、嵐の去った浜辺に一人の青年が打ち上げられているのを発見した姉妹は、彼を自宅へ連れ帰り看病する。ポーランド人の彼を二人は家族として受け入れる。回復したアンドレアは、素晴らしいヴァイオリンの演奏を披露し、近隣まで知れ渡る。そしてロシア人画家の美しく若いオルガが彼に近づき、それを、特にアーシュラは穏やかではいられなかった。

 ちょっとキツイ映画でした。
 アーシュラにとっての「なぜ彼なのか」「なぜ今なのか」という不公平感は強烈だろうと思うからで、私も経験しないで来た様々なものを、今のところは「ま、いいや。無きゃ無いで困らないし」で過ごしてきたけど、ある日切実な欲求を伴ってやってきたとしたら…どうなるかわかりません。老姉妹の会話からすると、アーシュラにとってはあれほどに激しい感情は生まれて初めてだったのでしょう。それがなぜ彼なのか。ほんとに人生は理不尽です。

 大女優二人の貫禄はさすがで、もう役そのものですね。イギリス名物の上品な老婦人にピタリと納まって、それでいてときめきとか嫉妬、求めて焦がれる感情を切々と感じさせます。
 私の場合は、ダニエル・ブリュールは今回あまり眼に入りませんで、マギー・スミス、ジュディ・デンチに圧倒されてました。マギー・スミス大好きです。「ムッソリーニとお茶を」とか「ゴスフォード・パーク」の権高な老婦人なんか最高です。

 知りたいと思ったのは、ラベンダーがどういうイメージを持っているのか。原題の”LADIES IN LAVENDER”で、イギリス・英語圏の人には共通してイメージされるものがあるんじゃないかと思う。日本で言ったら「橘=昔の恋人」みたいな(ちょっと古すぎかな?)
 それにアンドレアが家に帰るとか、故国のことを全く触れないのをまあみんなあたりまえみたいにしているけど、私は否応無く「戦場のピアニスト」方面へ連想が働くのだがその辺は実はどうなんでしょう。

ROCK YOU! [ロック・ユー!](2001/アメリカ)

2006年07月30日 | 映画感想ら行
A KNIGHT'S TALE
監督: ブライアン・ヘルゲランド
出演: ヒース・レジャー    ウィリアム
   マーク・アディ     ローランド
   ルーファス・シーウェル    アダマー伯爵
   シャニン・ソサモン     ジョスリン
   ポール・ベタニー     チョーサー
   アラン・テュディック    ワット
   ローラ・フレイザー    ケイト

 14世紀。平民のウィリアムは諸国を巡る騎士エクスター卿の従者をしていた。ある日、卿が不幸にもジュースティング(馬上槍試合)の最中に命を落とす。ウィリアムは卿の代わりに出場、みごと優勝してしまう。そしてそれ以後、彼は騎士の身分を騙って試合に出、勝ち進む…

 おとぎ話なんですが。楽しかった。
 音楽がクイーンの”ロック・ユー”に始まってデビッド・ボウイとかエリック・クラプトン、そしてエンディングの We Are The Champions に至っては、ゲンコツ作って一緒に歌っちゃいましたね。
 実際には暗黒の中世の真っ最中で、身分を越えるだの運命に挑戦というたら、99パーセント閉じられてる世界です。だからおとぎ話なんだけど、気持ちのいい青春ドラマになっていて、主人公もいいし、その仲間たちの結束や信頼もとても気持ちいいし、ラストの展開は都合よすぎても、こうでなくてはいけないっ!それでゲンコツなのです。
 ダンスシーンの中世風ダンスがいつの間にかロックになって、それが違和感なく楽しめるし、ケイトのロゴにもきゃっきゃと笑える。
 原題が”A KNIGHT'S TALE”なのは、ポール・ベタニーのチョーサーがでてきて納得いたしましたが、あんなふうに油を売っていてはイタリアへ行く暇がなくなっちゃいそう。邦題もうまく選んだと思う。
 ハレバレ気分。

蝋人形の館 (2005/アメリカ)

2006年07月17日 | 映画感想ら行
HOUSE OF WAX
監督: ジャウム・コレット=セラ
出演: エリシャ・カスバート   カーリー・ジョーンズ
   チャド・マイケル・マーレイ    ニック・ジョーンズ
   ブライアン・ヴァン・ホルト    ボー/ヴィンセント
   パリス・ヒルトン    ペイジ・エドワーズ
   ジャレッド・パダレッキ    ウェイド

 カーリー、ペイジら6人の若者たちは、フットボール観戦するため長距離ドライブ中、キャンプ場で一泊。翌朝車の一台のファンベルトが切断されていた。仕方なく仲間と別れ、修理品の調達で近くにある片田舎の町へ向かうカーリーと恋人のウェイド。アンブローズという寂れた街には人影もないが、立派な蝋人形館があった。

 私ももちろん世飢魔Ⅱを連想しました。
 怖いよりも気色悪くてバイオレンスなホラー。それほど血みどろではないんだけど、あっさり指チョンとか、パリス・ヒルトンの絶命シーンとか「ひええ~」と絶叫でなく声が後ろへ引けるような悲鳴が上がってしまう描写。あの蝋人形の眼が動く~~~とかも。まあしかし、あれは蝋人形にするんだったら致命的欠陥でしょうけど。だって生きた部分は変化するから…うう、思い出すと気持ち悪い。
 それにラストの火事のシーンで蝋の中へ足がずぶずぶ、あの蝋の半融け感がすっごく気色悪くて嫌でした。まさに原題の”HOUSE OF WAX”の部分がモロに「うげげ」だったのです。
 その意味では成功したホラーだったと思います。
 
 結局、双子対双子の対決になって、無人の映画館で延々とかけられている映画も「何がジェーンに起こったか」のきょうだいもので、その辺になにか意味はあるのかもしれません。あのシスコンのお兄ちゃんも最後はなんだかハレバレしてます。

レジェンド・オブ・ヒーロー 中華英雄 (1999/香港)

2006年06月11日 | 映画感想ら行
A MAN CALLED HERO
監督: アンドリュー・ラウ
出演: イーキン・チェン   
    ニコラス・ツェー  
    クリスティ・ヨン 
    スー・チー 
    ジェリー・ラム  
    ユン・ピョウ 

 武術の才能に恵まれた華英雄はアヘン貿易を批判し殺された両親の仇を討ったために、恋人のジェイドを残し、アメリカに渡った。そこで人間として扱われない中国人の立場に怒り同胞を助けるために事件の起こし、そこでも追われる身となる。ジェイドは彼の子を身ごもっており、彼を追ってアメリカへやって来た。再会した二人は束の間の幸せな時間を過ごす。しかし彼の師からの奥義伝授を巡る日本人のライバルが、彼を狙う。

 キャストのニコラス・ツェー、ユン・ピョウの名前でワクワクして見たのですが。
 原作があるものらしいので、そちらのストーリーを追ったせいでしょうか、なんか展開が未整理な感じで、むりにあっちゃこっちゃ行くこたあないのになあ…日本行きは省いて他のとこで対決したって良かったんじゃないか?ヒーローは浮気しちゃだめ。などなど雑念入ってみてました。いろいろ盛りだくさんでアメリカにも気を使い、特に忍者の描写なんかは抱腹絶倒でした。
 大問題はアクションがいまいち弾まないこと。ワイヤーも景気良く跳んでるし、まさにマンガ!という炎が出たり水がはねたりの特殊効果も派手派手なんですが、私的に迫力不発。こっちでゲンコツ握っちゃうまでに至らない。それが残念。

 主人公とその息子、ライバルが今風イケメンなのと、兄弟子の怪人マスクで東映特撮シリーズっぽいのが、ユン・ピョウ様とそこはかとなき違和感をかもし出しています。日本の忍者が中国語で会話するのはまあいいけど、コードネームがあの時代にジュピターとかマーズとか、おまけに忍者なのに感情むき出しが笑っちゃう。忍者はとりあえず普段は何着てもいいけど、戦闘コスチュームがあれでは覆面した昔の郵便屋さんみたいでカッコよくない。スーチーさんの和服はもうちょっとびしっと着付けてね。だって「デキルくのいち」なんでしょう?
 ニコラス・ツェー、この当時は亀梨君みたい。今ほんとに彼に期待・注目してます。

RENT/レント (2005/アメリカ)

2006年05月24日 | 映画感想ら行
RENT
監督: クリス・コロンバス 
出演: ロザリオ・ドーソン    ミミ
    テイ・ディグス    ベニー
    ジェシー・L・マーティン    コリンズ
    イディナ・メンゼル    モーリーン
    アダム・パスカル    ロジャー
    アンソニー・ラップ    マーク
    ウィルソン・ジェレマイン・ヘレディア     エンジェル
    トレイシー・トムズ     ジョアンヌ
    サラ・シルヴァーマン     アレクシ

 1989年のクリスマス・イブ。若くて貧乏で夢しかない若者たちの暮らすアパートに暮らすルームメイトのロジャーとマーク。元の仲間で今は金持ちと結婚したベニーは、再開発のために家賃滞納で彼らを追い出しにかかっている。マークの元恋人モーリーンはそれに抵抗のためのライブを計画。そしてモーリーンの今の恋人はジョアンヌ。恋人をエイズで亡くしたロジャーは階下のダンサー、ミミに心惹かれる。ロジャーたちの親友トムドラッグ・クイーンのエンジェルと恋に落ちる。そしてそれから1年…

 今年は映画館へ行くたびに予告編でさんざん

 525600ミニッツ!

 の歌声を聴かされて、名曲ですから是非見たかったのです。数年前のトニー賞の時からみたいなあ、と思いましたし。今回もご近所の劇場の公開が明後日でおしまいなので夜の回に一人で行ってきました(もう夜しかやってない)。
 曲と、ブロードウェイのオリジナルキャストの歌は素晴らしい。しみじみ見てよかった…と嬉しくなった。

 ただ~、映像に関しては「舞台が見たい」と思うところが、特に見せ場と思えるところで多かった。
 特にラストシーンでは、右手手前にミミとロジャー、左後方に仲間たち。またミミとロジャーのアップが交互もそれでいいのだが、ラストにあの奇跡が来るのであれば、絶対に舞台のほうがそれを納得させる説得力があったと思う。実は、ラストではちょっと気抜けしてしまった。

 一番どかっと来たのはエンジェルの葬儀。…私はたった一人、私の特別な人が死んだ時に自分を悼んでくれれば後はどうでもいいや。

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 雷です。TB、メールなどはすいません、明日に。