虫干し映画MEMO

映画と本の備忘録みたいなものです
映画も本もクラシックが多いです

魔人ドラキュラ (1931/アメリカ)

2005年06月10日 | 映画感想ま行
DRACULA
監督: トッド・ブラウニング
出演: ベラ・ルゴシ 
    ヘレン・チャンドラー 
   デヴィッド・マナーズ

 ドラキュラものでも、ロンドンに移ってからの伯爵とヴァン・ヘルシング教授の戦いがメイン。

 吸血鬼映画で、私が一番初めに見たのは忘れちゃったけど、もしかしたら吸血鬼パロディコメディだったかも。それからクリストファー・リーを見て、あの声がいいなあ、ほんとに別世界から響かせるようだなと思った。それにリーは背が高いのでほとんどの共演者を見下ろしていたので、すっごくスノッブな感じがして良かったのだ。
 それから「エド・ウッド」の中のマーチン・ランドー演じるルゴシを見て、それからやっとこの伝説の「魔人ドラキュラ」に到達したもので、どうしても「わあ、これがルゴシか!」の視点で見てしまうという申し訳ない見方をしました。
 とはいえ、やはりベラ・ルゴシという人の一つのスタイルを作り上げてしまった実力は実によくわかりました。同じく吸血鬼ものの古典「ノスフェラトゥ」では、吸血鬼がいかにもバケモノじみたルックスで、それを踏まえたヘルツォーク版「ノスフェラトゥ」のキンスキーは化け物がまさに死の町を跳梁する、という感じで町を行くシーンが撮られていました。そういういかにも妖怪然としたヴァンパイアに比して、この悠々と街中を行くドラキュラは顔立ち整い、犠牲者を襲うシーンまでいかにも貴族然とした気品があり、そこがまた恐ろしい。このタイプのドラキュラ決定版はやはりまず先鞭をつけたという意味でもリーより、ルゴシになるのでしょう。
 それにセリフ。リーも声が素晴らしいが、舞台役者(事実そうだった)のように口跡があざやかでしかも邪悪さも感じさせ、その上観客に嘘をリアルに信じさせる力が必要…たいしたものです。これをやり遂げてしまったことが彼にホラー俳優のイメージを決定することになり、その後のルゴシにとっては不幸だったようです。
 映画としては古いこともあって、ちょっとテンポゆったり目だし、ラストがいささかあっけないけど、雰囲気は満点な映画でした。きれいな廃墟という感じの城のセットが特に素敵。