虫干し映画MEMO

映画と本の備忘録みたいなものです
映画も本もクラシックが多いです

ブラザーズ・グリム (2005/アメリカ、チェコ)

2006年04月30日 | 映画感想は行
THE BROTHERS GRIMM
監督: テリー・ギリアム
出演: マット・デイモン    ウィル
    ヒース・レジャー   ジェイコブ
    モニカ・ベルッチ 

 フランスに占領されていた時代のドイツ。諸地方を巡り、昔話を収集して名をなしていたグリム兄弟だが、彼らは怪物退治のいかさまで稼いでもいた。それがばれて処刑されそうになり、フランスの行政官に10人の少女行方不明事件を解決するように命じられる。

 そこそこ面白い映画でした。これ、実はドキドキするほど期待してたんです。なんたってテリー・ギリアムにグリムですから。昔話って、それなりのお約束が存在しているから、それに乗った上でギリアムのお遊びが加わったら、すっごく面白くなるだろう、と思ったのです。
 映像は相変わらずギリアムっぽいし、昨年劇場で見逃したのが残念になったけど、「バロン」なんかに比べるとちょっとテンポが落ちたようにも思います。テリー・ギリアムは、ダークで不思議で、でも必ず「くすっ」がそこらじゅうに仕掛けてあるし、緩急の感覚が気持ちのいい、私にとっては疲れない入れ込みが出来る映画なのです。やはりそういう期待をしてみておりました。今度の映画でははじめがなんだかとろく感じてしまい、いつもの快感が十分味わえなかったような気がします。グリムのお話を目いっぱい詰め込んだせい?後半のほうが前半より断然キモチが弾みました。
 マット・デイモンとヒース・レジャーの軽さもよかったし、モニカ・ベルッチの怖い美しさは絶品ですね。

 このところ身体悪くして、坂田靖子を読んでいましたので私的に「ビーストテイル」の勝ちかな…と。

ジョゼと虎と魚たち (2003/日本)

2006年04月28日 | 映画感想さ行
監督: 犬童一心
出演: 妻夫木聡   恒夫
    池脇千鶴   ジョゼ(くみ子)
    新井浩文   幸治
    上野樹里   香苗

 バイト先の飼い犬の散歩にでた大学生・恒夫は、古ぼけた乳母車を押す老人と、その乳母車に乗った少女に出会う。恒夫は足の不自由なジョゼと名乗る少女が気になって、外へ連れ出したり、福祉の申請を買って出たりしはじめる。

 これは、池脇千鶴の話しかたなど、ジョゼという少女の造形があまり(私の感覚に)ヒットしなかったせいか、今ひとつ馴染めない感じを抱いて見ていた。でも、ラストシーンに至って「うっ」と来ました。恒夫の涙は別れの悲しみのためでなく、自分自身へのものですね。翳りの無い、優しくて、しかし強くなりきれない男を演じられる妻夫木聡がピタリでした。彼にしてもジョゼにしても、やはりあの経験を抱えた上でその後の人生を生きていきます。ちょっと違う自分になって。
 ジョゼという少女が、きちんとご飯が作れる(けっこう重要)、そして自分自身で頭と感覚を研ぎ澄ませていった、自分の位置が判断できる賢い少女であり、だからこそカワイゲの無い毒舌がほとばしってしまう…様に思える。そこであのヒロインの話しかたが引っ掛かったのだが、これは人それぞれの趣味ですね。
 周囲の人間、弟、あのジョゼの息子などは実にわかる存在でした。

若き日のリンカン (1939/アメリカ)

2006年04月27日 | 映画感想わ行
YOUNG MR. LINCOLN
監督: ジョン・フォード 
出演: ヘンリー・フォンダ 
    アリス・ブラディ 
    マージョリー・ウィーヴァー 
    ウォード・ボンド 

 イリノイの雑貨屋から、学校へ行っていないリンカーンが恋人(?)の励ましで苦学して弁護士となり、人々を動かし、無実の人を救う青春時代を描くJ・フォード作品。

 100均ショップのダイソーで買ってきたクラシック映画DVD。ちょっと字幕に見難いところがありましたがまあまあです。315円では贅沢は言いません。

 なんたってリンカーンですから偉人伝なのかな?
 でもいつの間にか「法廷で真犯人を追い詰めての大逆転劇」でペリー・メイスンみたいな感じになってました。もちろん、ペリー・メイスンよりこちらのほうが先でしょうが。
 やはり「この偉い人は、実はこんなに素敵な人だった!」という映画のようですが、さすがに気持ちのいい男を描くのに長けたジョン・フォード監督らしく、リンカーンを正義漢で誠実でしかも柔軟性とユーモアに富んだ男性に描き、臭さもそれほど感じさせません。
 ヘンリー・フォンダも登場シーンから顔に落ちる影、手足の長さが実物を髣髴させます。お行儀悪く長い足を机の上などに上げているシーン、何か足を折りたたむように扱っているシーン、また身体の長さを画面の横方向に使っているシーンが多く、この不器用にさえ見えそうな足の長さを意識して強調しているみたい。
 全編にわたってリンカーンがなんとなく垢抜けていないところや、袖から飛び出したカフス、つんつるてんズボンなどがまたごつくてリンカーンらしいイメージです。

 これ見てて思ったけど、リンカーンって、なんだか日本の水戸黄門を連想させます。「庶民に伝説を生み出させる存在」という点が似てるかな、と思いました。

風邪でした。

2006年04月26日 | 日記・雑記
 今年の春はいつもより寒いと思いませんか?
 はじめにお腹で、今は咳です。体重が減りました。さすがに46㌔を切ると、なんとなく身体に力がない気がします。もっとやせていてもエネルギッシュな人もいるのに、私はやせすぎもダメみたいです。
 今年は厄年、とか体の変わり目とかいうものなのでしょうか。だるい身体で30代の恋愛相談、なんてのを見て気を滅入らせる日々であります。

 それで、テレビ映画見て、肩凝らない本ばかり読んでいました。
 エディ・マーフィーの「ゴールデン・チャイルド」のノベライゼーションはけっこう面白かったです。映画のほうがテンポやスピード感があって、私にはずっと楽しいと思いましたが、映画ではいかにもマーフィーならではのファンタジー・コメディなのに、本では主人公チャンドラーが名前らしいハードボイルドな男でお話自体もハードボイルドなムードでした。
 他には「生協の白石さん」、「伊平次とわらわ」坂田靖子(ああ、名作…)、「日本霊異記」、「Open Office オフィシャル・ユーザーズガイド」(これからこう無料版ソフトをお仕事で活用できないか、と)

 トム・クルーズの「トップガン」 相変わらずトム・クルーズにはうっとりできませんが、この映画の中の彼の革ジャンに日の丸らしきものがついてる、と言っていた友人がいたので目を皿にしていたけどわかりませんでした。
テレビで1日2~3本映画を見ていましたが、やはり欲求不満です。ああ「トム・ヤム・クン」見たい!!

 別の友人からは「FF12、クリアしたぞ~」とメールが来た。なんか面白くない。(ゲーム自粛中)

バルスーズ (1973/フランス)

2006年04月23日 | 映画感想は行
LES VALSEUSES
監督: ベルトラン・ブリエ
出演: ジェラール・ドパルデュー
    ミュウ=ミュウ 
    パトリック・ドヴェール 
    ブリジット・フォッセー 
    ジャンヌ・モロー 
    イザベル・ユペール

 フランスの二人のチンピラが行き当たりばったりに反社会的行動しまくりながらの道中。

 バルスーズとはフランス語で“睾丸”を意味するスラングだそうで、そうすると日本だったらそのものずばりの言葉が映画館の看板にでかでかと書かれたわけですね。そこら辺の衝撃度がこの当時でどの程度のものだったのか?今だとさして強烈な映画という感じしません。昨日中学生の女の子がいる時に見るのは思わず遠慮しちゃいましたが。また、セックスの描写も露骨だけど、あまり扇情的でなくドライな感じ。これは、主人公の男二人の次々に出会う少女からジャンヌ・モロー演じる生理が終わった年代までの女性たち絵巻って感じですね。二人がまた脊髄反射で行動するみたいで、それがまた次次にページを繰るみたい。
 まだ若くてでっぷりしてないドパルデューはじめ、出てくる男が微妙にだらしないのばっかり、かっこよくないのがこの映画らしいというところでしょうか。めちゃめちゃなのに根本でみょうに優しい。あの川沿いのシーンでまるで二人同じ格好で呆然とするところなんか爆笑です。あのカーセックスも音楽とともに転げて笑えます。
 まあ、どの世代の女性も、私にはわかりきらない人たちばかりなのです。ブリジット・フォッセーは除いて。時代の感覚もあるのでしょうか?

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 昨日電車の中で久しぶりに脳貧血が起きました。運良く座れてよかった。最近風邪で調子が悪くて昨日は一食しか食べなかったのが良く無かったですね。ご飯はちゃんと食べましょう

怪傑ズバット完結!

2006年04月21日 | エンタテインメント
…を見ました。

 今日は着物で外出なので、サングラスを使わず、日向を裸眼で歩いたのと疲れたので、また涙が止まらなかったのですが、帰ってからタオルを握り締め、「快傑ズバット」DVD Vol.6を見たのでした。
 とうとう最後まで見てしまいました。もう残ってないかと思うと残念。

 最終話に向かって加速度的にズバットワールドになっていきました!
 ズバットや無辜の人々のやられ方も、またズバットの悪人のやっつけ方も「きゃ~強烈」なことになっています。伝染病ワクチンを運んでいた女医の卵はなんとあっさり殺されてしまい、ラストシーンではそのお父さんの作務衣みたいなのを着たお医者さんが「早川さーん!」と叫んでいました。う~む。
 いつ学校へ行っているんだ!の小学生・オサム君も相変わらず早川さんを追って放浪していました。

 後半になると、それぞれの会のボスたちは、ズバットの「飛鳥五郎を殺したのはお前か」の追及に対してアリバイを主張していましたが、その世界諸地域とか都市の選択が面白かった。「インドで修行」とは何の修行だったのでしょう!
 皿投げ、独楽の曲芸、カメラ、釣りから筮竹まで、呆れるほどの技術で用心棒と張り合っていた早川さんでしたが、最後の最後の用心棒たちは案外あたりまえでした。でも棒みたいなマシンガンのどこに弾倉があるのかな、とは思いました。
 ラスボスの敵の組織の総統D(この総統を呼ぶ「デー」という日本式発音がたまりません)は、一体どうなって倒れていたのでしょう?デッド・オア・アライブが気になります。どこにでも出張する警視庁の刑事さんが特に問題にしていないのであれでよかったのでしょうか?いや、ここはズバット・ワールド、「サクラ大戦」の「太正時代」のようなものなのです!そのまま受け入れなければ。そうでなければ、あの不死身ぶりは説明つきません。

 でも最後にいたって見事な七三分けだった東條刑事のヘアスタイルがおかっぱみたいになってたのが悲しい。おまけに三つ揃いまでやめちゃって… あれ好きだったのに…

紹巴の帯と大島紬

2006年04月20日 | 日記・雑記
明日はあるパーティーがありまして、
本日はその席で着るもののために時間使ってました。
グレイの牛首紬は小紋の格で着られるので
それに昨年買った新しいベージュの帯をしようと思って
すべての空き時間をなげうって
ブルー系の濃い目の帯揚げを探して歩いてました。
これ、と思うのは見つからなかったけど妥協して買いました。
今まではくすんだ赤の帯揚げ帯締めを使っていたのだけど
やはり今の季節だと赤より青系が爽やかでしょう。
ほんとにどうしてこういうのに夢中になっちゃうんでしょう。しょうがないですねえ。

 それでまあこういう(↑)帯を買いました。とっても軽いです。
 あわせてある着物は相続ものの大島紬。このクラスの大島は相続でもしなけりゃ一生ご縁が無かったかも。この着物はもう洗い張りが必要なのですが、お金もないし、まずこの着物に似合うだけの貫禄がつくまでじっくりやります。帯留めも相続ものの鼈甲。

 以前に絹物にアレルギーの方がいらっしゃるというのを知ってびっくりしました。私が絹アレルギーだったら、我が家のぎっしりつまった和箪笥3棹を前に泣くに泣けなかったでしょう。いや、ほんと着物ってなんか病みつきになります。

ハンター (1980/アメリカ)

2006年04月19日 | 映画感想は行
THE HUNTER
監督: バズ・キューリック
出演: スティーヴ・マックィーン  ラルフ・ソーソン (パパ)
    イーライ・ウォラック     リッチー
    ベン・ジョンソン     保安官
    キャスリン・ハロルド  ドティ
    レヴァー・バートン    トミー

 過去30年間に1万人もの犯罪者を牢に送り込んだという実在の賞金稼ぎラルフ・ソーソンの話を映画化。

 マックイーンの代表作といえないでしょうが、私は好きです。
 今日、昼にテレビ放送をするというので「私家に居ない時間だから見といてね!」と友達(マックイーン・ファン)に見てもらった。彼女は「ラストシーンの切り方がひどい」と嘆いていた。最後の彼の顔のアップがとまるところで、新しい命と実際の彼の運命を思っていつも涙ぐむのが定番だったので、あの余韻をバサッと切られるとつらかっただろうなあ。私は保存版ビデオを見ます。

 それにしても、実話を基にしたフィクションにしても半端じゃないアクション。現代の賞金稼ぎという実話も驚き。しかし、その激しい命がけの仕事をやり遂げてしまうのに、スマートになれない日常生活があり、その格差がすんなり納得出来てしまう。この映画のマックィーンは時として非常にかわいい。遺作ということで贔屓目があるかもしれない。この人も「何を演じてもマックィーン」という役者だと思うが、それが好ましい。
 でも、「リラックス!(息を)吐け!」と運転しつつラマーズ法呼吸をしてみせるマックィーン、「もっと古い車を…」といったのに結局新車のトランザムを借りて、廃車状態で返す時の表情、妊婦教室の身の置き所の無い当惑顔…見るたびに、こういうマックィーン好きだなあと思う。
 マックィーンだからこそで好きな部分も多いけど、決して役者に寄りかかった映画ではないと思う。

発掘

2006年04月18日 | 日記・雑記
 まだまだ目が本調子というわけでもないので、映画館は控えめに、模様変え・片付けものなどしています。
 本日は小屋裏のダンボールの中を整理していたらきったない煤けた、大きさの割りに重いケースがでてきました。中には見覚えのある真珠や珊瑚のタイピン、べっこう(本物)のカフスなどなど…
「やーねー、おじいちゃんたら、こんな汚いケースに入れちゃって」
と下へ持って降りたら、
「あら懐かしい。その銀の煙草いれ、どこにあったの?」というお言葉。
 ひええ~、このきったないケースが純銀製?
 危うく捨てるところでした。
 おばあちゃんもメノウやべっこう、螺鈿の帯留めをトワイニングのティーバッグの空き缶に入れてしまってたから、おじいちゃんもその伝でそこら辺の空き箱にでも入れてたのかと思っちゃったじゃない。とはいえ、私もそのティーバッグの空き缶ごとそのまま使わせていただいてます。

 ところで、ちょっとしたきっかけで「批判」ということについて考えていました。
 私は基本的には個人がわからないものを「わからない」、面白くないと感じたものを「面白くなかった」というのは当然だと思っています。
 クリエイターがその作品を発表するのは「世に問う」ということ、批判にもさらされることなんじゃないのかな、と思うからです。
 私のケジメは、意見を言うからには、とくに否定的な見解を申し述べるについてはどんな形にせよ自腹を切って見たものについて言います。
 それに、自分にとってどんなにつまらなくても屑だの闇に葬れという言い方はしません。自分の意見はあくまで自分のもので、人の意見はまた別のものだからです。ただ、年齢制限があってしかるべきとは言うし、許されない範囲の事実の歪曲とかがあったときはケース・バイ・ケースで公開やめろって発言することもあるかもしれない。(ちなみにまだそう言った事はない)
 私にとって面白くない作品が素晴らしいけれど理解できないのであれば、私の能力の無さが明らかになるだけであって、その作品自体の価値に傷をつけるものではないと思うのだが。

 でも私、他から悪し様に言われてるものを自分だけが好きな状態ってけっこう好き。生身の男性について「ほかの人は悪く言うけど、あの人ほんとは優しいのよ。あたしだけがわかるの」な状況になったことは全くないのだが、そんなちょっと自虐でアブナイ気分てこんなかな…と思ったりして。不謹慎でしょうか。

オテサーネク 妄想の子供 (2000/チェコ、イギリス)

2006年04月17日 | 映画感想あ行
OTESANEK
監督: ヤン・シュワンクマイエル
出演: ヴェロニカ・ジルコヴァ    ホラーク夫人
    ヤン・ハルトゥル    ホラーク
    ヤロスラヴァ・クレチュメロヴァ     シュタードレル夫人
    パヴェル・ノーヴィ    シュタードレル
    クリスティーナ・アダムコヴァ    アルジュビェトカ
    ダグマル・ストリブルナ    警官

 子どものいない妻を慰めようと、ホラークは木の切株を赤ちゃんの形に削る。妻は周囲に妊娠したと告げ、切り株を子どもにする。そしてその切り株は動き始める。隣の少女はチェコに古くから伝わる民話“オテサーネク”だと直感する。それは、子どものいない夫婦が切株を育て、その切株が異状に育ちついに食べられてしまうというもの。

 ジャンルとしてはホラーに入るのだろうか?気味が悪い、というか気色の悪いお話だった。
 それでも不思議に目をそむけるとかではない。スプラッタシーンはあることはあるが、実際のシーンより冒頭のまだ、という時期のほうがよっぽどえぐい。現実に食人が始まってからは変に気味の悪い「何かを食べようとする口」だののアップはなくなり、無邪気な赤ん坊声で木片が人食いをして、もうそっちがむちゃくちゃでもう駄目。
 みんな、おかしい。あまりチャーミングでもなく、何でも平然と受け止めてる女の子が特に気味悪い。
 しかし、考えるとバケモノには善悪ないもんね。そのものに備わった行動してるだけなのよね。う~、やだ。
 テーマはそれだけじゃないだろうけど、思わず考えちゃったわよ。子どもって何のために持つの?育てるの?

 シュワンクマイエル監督の映画は初めてなのだが、どうも私には調子の良い時限定の映画のようです。

マカロニ・ウエスタン 800発の銃弾 (2002/スペイン)

2006年04月16日 | 映画感想ま行
800 BALAS
監督: アレックス・デ・ラ・イグレシア
出演: サンチョ・グラシア    フリアン
    アンヘル・デ・アンドレス・ロペス    シャイアン
    カルメン・マウラ     ラウラ
    ユウセビオ・ポンセラ     スコット
    ルイス・カストロ    カルロス
    マヌエル・タリャフェ     マヌエル

 かつてはマカロニ・ウエスタンのロケ地だったスペイン・アルメリア地方の撮影所“テキサス・ハリウッド”。今は、すっかり寂れて観光客相手のウエスタン・ショーをしながら同じように行き場のない仲間たちに過去の栄光を語るスタント・ガンマンのフリアンのもとへ、今まで彼の存在も知らなかった孫・カルロスがやってくる。

 ラストに感動の涙。
 ああ、西部劇のその後にこういうのもありなんだ!
 カルロス少年の成長体験も含めて、実に、実にうまく見せてもらった映画だった。

 ウェスタン村に居る男というのがほんとにどいつもこいつも、「遠くから見てると面白いけど、はた迷惑で身内になるのはまっぴらごめん」といったしょうのない男ばっかり。やることなすことひとつひとつ、痛いわ、面白いわ、情けないわで身をよじってしまう。孫のクレジットカードでドンチャン騒ぎやっちゃうとこなんか、カルロスの大人体験も含めてのけぞって呻いちゃいましたね。
 それなのに、その情けないやつらの姿に、あのマカロニ・ウェスタンの誇り高き荒くれ男たちの姿が常に二重映しになって迫る。そのかっこいいかっこ悪さがたまらない。めっちゃくちゃな設定のうまさに脱帽。設定のうまさというなら、フリアンとカルロスの一家の絡み合った愛憎を生み出す事情もうまく出来てるなあ、と思う。

 そして大騒動のクライマックス。
 ガンマンたちの相手は最新装備の警官隊であり、戦車まで出てくる。
 しかしそこにいたっても軽やかな疾走感があり、ラストシーンはもしかしたら別物になるのでは、と一時は思わせ…しかし負け犬たちのそれぞれの意地がぶつかり合い、私を泣かせて締めくくられたのだった。

 これも男らしい男の映画。
 泣けます。でもこの真似をする男には近づけません。

これでおあいこ/ウディ・アレン

2006年04月14日 | 
伊藤典夫・朝倉久志訳 河出文庫

 ウディ・アレンの短編小説集。けっこう古くて、今は古本屋で探さないと入手困難かな。「プロディーサーズ」を見てなぜか読みたくなった本。

 ウディ・アレンの映像作品よりもややスノビッシュで、哲学だの歴史だの文学だの、様々な知識があればあっただけ楽しめます、と感じるもの。でも知らなくてもおかしいことはおかしいし、彼の映画でいつも感じる神経の先に何かが当たっているのを払いのけられないピリピリ感も味わえます。その上でアレンの大嘘世界の巧妙さに身を任せてクスクス笑ってしまいましょう。

 巻頭作の「ミスター・ビッグ」は若い娘に「神」探しを依頼された探偵のおはなし。
 
 駆け込んできたブロンド娘との会話
 「で、《彼》の顔つきとか特徴は?」
 「わかるわけないでしょう、見たこともないのに」
 「じゃあ、なぜ存在するとわかるんです?」
 「それをあなたが調べるんじゃない」
 「なるほど、すばらしい。顔つき、特徴はわからんというわけだ。 どこから手をつけるかもわからないわけですな?」
 「まあ、そういうことね。ただ、どこにでもいるんじゃないのかしら。この大気の中、ひとつひとつの花の中、あなたやあたしの中-この椅子の中にも」
 「ふむふむ」
 とすると、この女は汎神論者か。


はい、こんな調子です。ハードボイルド文体に哲学・神学の用語がちりばめられその取り合わせの妙がたまりません。
 ハードボイルドのパスティーシュですし、ラストにいたっては彼女との対決ですから、読んでいるとどうしても「三つ数えろ」的映像が浮かんでまいります。それで主役は顔がボギー、声がアレンね。
 この「ミスター・ビッグ」と「わが哲学」は落語の「こんにゃく問答」を連想したりもします。勉強しても実はわかんないわよっ!という普段隠してる本音の共感とか、深遠をおちょくる爽快感とか、それが共通してるんでしょうか。
 まあ理屈無しでも十分面白いので、ハードカバーで復刊してくれないかなあ。

旅するジーンズと16歳の夏 トラベリング・パンツ (2005/アメリカ)

2006年04月12日 | 映画感想た行
THE SISTERHOOD OF THE TRAVELING PANTS
監督: ケン・クワピス
出演: アンバー・タンブリン    ティビー
    アレクシス・ブレーデル    リーナ
    アメリカ・フェレーラ     カルメン
    ブレイク・ライヴリー    ブリジット

 母親たちがマタニティ・エアロビクスで知り合って以来の親友の4人の少女たちは、16歳の夏に始めてばらばらに過ごすことになった。彼女らは、4人誰にでも似合うジーンズを順繰りに送ってその夏の出来事をジーンズとともに共有しあおうと誓う。

 原作本を読んで、どうなるかな、と期待していたためか、「やっと及第点」くらいの感想になってしまった。(きゃ~、えらそう)それぞれの少女たちのイメージは、原作で持ったイメージにまあまあ沿っていたものの、削られた部分が気に食わなかったり、ティビーたちの共感の表現はそんなんじゃないだろうとか、ブリジットの試練のショック度とか、やっぱり本より成長物語としての印象が甘くなった。原作も、いかにもティーン向けの優しい印象の残るものだけどそれ以上にスイート。
 なんて文句先行しちゃいましたが、それなりに泣かせてくれたし「シスターフッド」の清々しさは十分に味わえます。すがすがしさという点ではお薦めです。

 ただ、あの、彼女たちの前に現れる男の子が…あんまり魅力無い、ってか私の趣味じゃないのばっかりで。これこそイチャモンなんだけどあんまりいい出会いに見えない… 


トラベリング・パンツ原作本の感想

プロデューサーズ (2005/アメリカ)

2006年04月11日 | 映画感想は行
THE PRODUCERS
監督: スーザン・ストローマン
製作: メル・ブルックス
    ジョナサン・サンガー 
出演: ネイサン・レイン    マックス・ビアリストック
    マシュー・ブロデリック    レオ・ブルーム
    ユマ・サーマン    ウーラ
    ウィル・フェレル     フランツ・リーブキン
    ロジャー・バート     カルメン・ギア
    ゲイリー・ビーチ     ロジャー・デ・ブリー

 ブロードウェイの落ち目プロディーサー、ビアリストックが気弱な会計士ブルームの漏らした一言から、わざとこけた芝居を打って出資金を懐へ…ともくろんで会計士と組んで絶対にこけるショウを企画するが、最低最悪のミュージカルがなぜか大当たりしてしまう…

 劇場鑑賞復活に選んで大正解。楽しかった!ハイクオリティで練りに練った悪趣味、って感じで終始笑いっぱなし!最後の最後のシーンでも思わず吹きだして拍手~~~!
 古きよき時代のミュージカルの体裁をそっくりいただいて、豪華なつくりなのに、ホントに露骨なオチョクリがまったく感じが悪くない。映画好きや、ミュージカルファンをくすぐるギャグもいっぱい。それに歌が素敵で!!!!!メル・ブルックス偉い!
 役者も良かった。ユマ・サーマンはちょっとつらい感じがしたけど、そのほかはもう見ほれちゃう。それに、このコメディの主役コンビに対して配するにはあれだけタッパのある女優が良かったんでしょう。ウィル・フェレルも「奥様は魔女」の頓珍漢振りよりず~~~~~~~~っと素敵。鳩ポッポもいいわ!
 帰りがホントに幸せな映画でした。

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 そろそろ目の使用時間制限が取れて、生活が元のペースに戻ってきましたが、ゲームはしばらく禁止です。「コンバット」「ズバット」は見ています。「コンバット」はビデオを借りてみていたときは全部字幕だったのが、放送が吹き替え版なので、どうも関西弁や方言を振り当てられているキャラが気になります。原語では全部理解できる自信がないし、英語の話し方、訛りの知識も無いのでよくわからないのだけれど、有名なのはアイルランドとか、スペイン訛りかな?どこの訛りかがわかると人間関係もわかってくるのかな、などと考えてしまう。
 この1週間で本は5冊くらい読んだが、新刊が無い。ちょっとあせる。DVDは「ズバット」と「トラベリングパンツ 旅するジーンズと16歳の夏」だけ。ぼちぼち感想書いていきます。

自負と偏見(その2)

2006年04月08日 | 
 この小説の構成でジェントリー、紳士階級の中身を端から端までわかるように書いているのには、本当にうまいなあ、と思わされる。

 主人公エリザベスは年収2000ポンド(下限に近い年収)の父親の5人姉妹の次女。それも父親の土地に男子限定相続の縛りがあるので父親が死ねば親戚の男性が継ぐことになり、彼女たちには夫しか経済的な後ろ盾は無くなる。しかも紳士階級の娘だから自分で稼ぐための準備なんてまったく無い。そして母親は若いころは可憐な美人だったらしいが、今ではただの俗物。その縁戚の行動は、主人公に夢中なダーシー青年をしても、エリザベスと結婚して、縁続きになるのをためらわせるに十分な下品さ。

 片やダーシー青年は母が貴族の娘で年収が1万ポンド。しかも正しい倫理観を持ち、男友達に尊敬され、娘たち・親たちには絶好の婿がねと切望され、周囲には相応の気を配るという非の打ち所ない青年なのに、無愛想でどうもエリザベスの初対面の印象がよくない。そのためにエリザベスはかんたんに彼についての中傷を信じてしまい、ダーシーの求婚を断り、あまつさえ彼が「紳士らしくない」という非難までおまけにつける。

 紳士というのは、経済的裏づけと「紳士らしい態度」の両方を要求されてしまうのですなあ。それに、紳士階級の上と下で、そのまた上と下の階級との結婚を伴う結びつきがそれなりの階級ステップアップになる…もわかる仕組み。
 貧乏なエリザベスのほうが「態度」に重点置いて、エリザベスの父親の母に対する態度なんてとっても紳士らしいとは言えないのに、ダーシーを「紳士でない」といいきっちゃうのはいい度胸だと思う。もちろんその誤りを自分の思い上がりとともに思い知り、訂正する部分がこの小説のクライマックスのひとつ。

 だがしかしダーシーは、それだけ手ひどい拒絶をされても「あの生意気女!」なんて思わない。あろうことかそれまでの自分を反省すらしてしまう!エリザベスの妹の駆け落ちを秘密裏に金で始末をつけたり、二人の仲を引き裂こうとする叔母キャサリン夫人の非難で彼女の彼への気持ちの変化を確信したり、誠にうらやましく都合のいい展開。
 結婚後は、夫につき従う妻でなく、溌剌と夫に対等に発言する妻になる、というのもなんか少女向けラブコメを思い起こさせる原因の一つ。

 作者の適度のいじわるとか、穏やかな展開のユーモアもさすが名作です。
 最後にどうでもいいことで意見を言えば、私は(本人の気持ちはさておいてダーシーを争うライバルになる)キャサリン夫人の娘はあれほどナサケナイ存在でなく、意思の無いお人形のような、でもきれいな女の子でも良かったかもねえと思う。

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 本日で目の使用制限やっと解禁です。
 今夜はやっと録画した「コンバット」新シリーズが見られます。それから「ズバット5」を見て、明日は何を見ようかなあ。一週間長かった…… もう真っ暗な部屋でテレビだけつけてゲームするのは止めます。ちゃんと明かりつけて取説の注意を守ってすることにします。
 やっぱり小学生みたいだな。