虫干し映画MEMO

映画と本の備忘録みたいなものです
映画も本もクラシックが多いです

キンキーブーツ(2006/アメリカ、イギリス)

2007年12月29日 | 映画感想か行
監督: ジュリアン・ジャロルド
出演: ジョエル・エドガートン   チャーリー・プライス
   キウェテル・イジョフォー   ローラ/ サイモン
   サラ=ジェーン・ポッツ   ローレン
   ジェミマ・ルーパー    ニコラ

 田舎町ノーサンプトンの伝統ある靴工場の跡取りチャーリー・プライス。彼は、婚約者と共にロンドンへ転居。ところが、ロンドンに到着早々、父親の訃報が。突然に工場を継ぐこととなったチャーリーは、倒産寸前という事実に愕然。どうにか工場を救おうとリストラ、取引先へ日参と苦闘するチャーリーは、ドラッグクイーン向けの靴というニッチ市場に目をつける。

 実話を元にした映画。
 品がよくて丈夫で、伝統にのっとった実用的な長く使おうタイプの紳士靴が、安くて傷んだらポイとっかえひっかえの輸入品に負けて、生き残りの道を探す慣れない工場主が培った技術を生かして男の体重に耐えられる男性用でない靴を作ろうと思いつく。よくある成功物語に収まっているけれど、DVDのおまけによれば、現実はそれほど易しいものでもなかったようだが、敢えて良くあるハッピーエンド展開に収めてしまっている。
 で、一番印象に残るのはドラッグクイーン・ローラ役のキウェテル・イジョフォー。やたらと厚い胸板で、鍛え上げた筋肉で、なおかつドラッグクイーン。「プリシラ」のガイ・ピアースとか、「3人のエンジェル」のウェズリー・スナイプスばり。
 工場とそこで働く人々を切り捨てられないチャーリーは、合理的で現実を割り切って生きる婚約者と結局袂を分かち、苦しい道を敢えて選ぶ。
 ローラもまた、自分の本来の自分らしさをまだ完全には肯定できない。しかし、男として普通の楽な生き方は、ローラの心が許さない。

 ローラに向ける人々の目とか、でかいピンヒールブーツに思わず技術的な意欲を燃やしてしまう職人さんとかも期待通りで楽しいし、それぞれが自分の心の中の壁を乗り越えていく過程がコミカルに描かれ、ショーの場面は楽しくて華やか。楽しめて最後にほっとできる映画なんだけど…

 やっぱり見た後に幸せだけじゃなくて、あの真っ赤なブーツを見たときに感じたような、抑えても抑えきれない叫びを聞いてしまったような、澱みたいな感触が残ります。

ロルカ 暗殺の丘(1997/スペイン、アメリカ)

2007年12月26日 | 映画感想ら行
監督: マルコス・スリナガ
出演: アンディ・ガルシア   ロルカ
   イーサイ・モラレス  リカルド
   ナイム・トーマス
   エドワード・ジェームズ・オルモス
   ジャンカルロ・ジャンニーニ

 スペインの天才詩人、フェデリコ・ガルシア・ロルカは1936年、内戦中にファシストによって銃殺された。彼にあこがれていたリカルド少年は、家族とともに国を逃れプエルトリコで成長した。1954年、31歳になったリカルドは、ロルカの死の真相を探るために再びスペインへ戻る。

 これは、いまだに明らかになっていない、おそらく永遠に公には明らかにされないロルカの死の真相に対する一つの仮説を描き、その中で国民同士が殺しあう内戦という悲劇と、濡れた血にまみれた手を抱えたまま生きていかざるを得ない人間・知りたくない事実を分かち合う家族の悲劇を描いたもの。

 オープニングで、英語で「午後の5時」がロルカ役のアンディ・ガルシアの声で朗誦されます。聞いた途端にメニュー画面でスペイン語音声探したんですね・・・・なかったんです。
 どうして?
 スペイン、アメリカ製作の映画なのに、何でDVD音声は英語だけなの??????スペインで公開してるんだから絶対スペイン語の音あるはずなのに!!!!

 A las cinco de la tarde
 ・・・「午後の5時」をスペイン語で聞きたかった。

 その他にも、ロルカの詩の朗読がいくつも挿入されているんですから、ああ、スペイン語音声が聞きたかったと悔しさが募ってたまらず、落ち着かなく見終えたのでした。
 映画としてよかったと思いますが、その点が気にかかってまともに見た感じがしませんでした。
 そのうちスペイン語入りDVDもでてくるかな?
 ちょっと中年のアンディ・ガルシアは素敵でした。

ヴィデオドローム(1982/カナダ)

2007年12月20日 | 映画感想は行
VIDEODROME
監督: デヴィッド・クローネンバーグ
出演: ジェームズ・ウッズ
   デボラ・ハリー
   ソーニャ・スミッツ
   レイ・カールソン
   ピーター・ドゥヴォルスキー

 カナダの地方TV局の社長が、暴力と残酷さにまみれたシーンの放送を衛星から捉える。そして次第にその映像の虜となっていく。

 83分で短いんで、つい昼休みに見ちゃったんですが。年末に掃除と仕事の合い間にクローネンバーグ見てしまった。いや、これはゆっくり夜見るべきでありました。
 DISCASのレンタルDVDは、予約したらそのまま忘れていて、何が来るかはあちら様のご都合なので、その時の気分で選んだり出来ません。

 これは、映像に捉われた人間の体が変化して…というホラーですが、テレビ・ビデオその他の小道具・装置類が半端にレトロ感がありました。なんか怖さも半端な感じでした。う~ん。15年前に見ていたらどう感じたのでしょうか?短さも一因だし、やはり犠牲になる恋人役の綺麗なデボラ・ハリーも性格がちょっとイっちゃっていて、あんまり同情できないのも原因でしょうか。暴力・セックスの刺激を求めてしまう人間の暗黒面とかもあんまり突っ込んでいませんし。
 製作年度は1982年で「デッドゾーン」の前なんですね。
 クリストファー・ウォーケンタイプのちょっと不気味だったり不思議だったりする美男を「クローネンバーグの映画に出てきそうな…」なんて形容しますが、このジェームズ・ウッズもまさにそのタイプ。「デッドゾーン」までの切なさは無いですが、やはり巻き込まれてしまった運命に自分の手で始末をつけようという悲壮な主人公でした。後味は悪くありません。

サンキュー・スモーキング(2006/アメリカ)

2007年12月17日 | 映画感想さ行
THANK YOU FOR SMOKING
監督: ジェイソン・ライトマン
出演: アーロン・エッカート   ニック・ネイラー
   マリア・ベロ    ポリー・ベイリー
   デヴィッド・ケックナー    ボビー・ジェイ・ブリス
   キャメロン・ブライト    ジョーイ・ネイラー
   ロブ・ロウ    ジェフ・マゴール
   アダム・ブロディ    ジャック・バイン
   サム・エリオット    ローン・ラッチ
   ケイティ・ホームズ    ヘザー・ホロウェイ
   ウィリアム・H・メイシー    フィニスター上院議員
   J・K・シモンズ    BR
   ロバート・デュヴァル    ザ・キャプテン

 タバコ研究アカデミーの広報担当ニック・ネイラーは、タバコ業界の顔的存在。あらゆる話術戦略を駆使してタバコの悪役イメージと戦っている。タバコを糾弾するフィニスター上院議員はパッケージにドクロマークをつけるようにと息巻く。そしてニックはタバコのイメージアップのために駆け回る。

 今年見た映画では、アメリカ製作では特に、こういう全国大公開しないような映画が良い出来でした。 「アメリカンドリームズ」もそうだし、これも「スパイスが効いてるなあ」と唸らされました。
 タバコというのは、受動喫煙で、喫煙者以外に被害が及ぶとか、タバコで出火とか、社会的に悪とみなされやすい要素が酒や脂肪よりも目に付きやすいので他のものより叩かれやすい。おまけにこの映画のなかでタバコ業界のやってるこも褒められたものでは絶対ないし、ネイラーが弄するのも詭弁。
 でもねえ、公聴会でのネイラーの発言もやっぱり真実です。
 それに、正義は我にありと信じる人たちの危なさ・馬鹿馬鹿しさ、タバコを守る側攻める側・その攻防をスクープする者それぞれの「やったもん勝ち」的成功信仰もきっちりと描かれておりました。
 それに親子のストーリーまで巧く入れちゃって(これは原作の功績なのかな?)なかなかの儲け物でありました。

今年一番泣けたのは

2007年12月16日 | エンタテインメント
またしても眼の奥がずきずきするようになって、モニターを見るのがつらい毎日になってます。でも、税金仕事からは逃げられなくて、なかなかここの更新に至らず、後ろめたく思っております。

 というわけで、12月半ばとなりましたし、この状況ではこの次の更新が何時になるか自信ないので今年の総括をそろそろと思います。

 新作映画はろくに見られませんで、ほとんど家でDVDを見るばかりでした。
 数少ない中で一番楽しかった映画は「ヘアスプレー」でありました。
 あれも見たかった、これも見たかったと、公開された映画のタイトル見ただけでため息出ちゃいますが、こういう時期もきっとあるんだろうと、まあこれからに期待を持つことにします。

 今年の夏からは私自身の身体が不調のせいでしょうか、やたら「ナマモノ」が見たくなりました。でもお金ないので近所の青少年センターとか公会堂の地元向けの安い演劇や演奏会に通っていました。
 スターが出演してセットも素晴らしい舞台にはかなわないところはありますが、素敵な舞台はいっぱいありました。

 しかし今年一番泣けたのは、なんとテレビで見た高校演劇コンクールの最優秀作でした。

 「躾~モウとくらした50日」岐阜農林高校演劇部

 脚本から部のオリジナル。これが素晴らしかった。
 「入りたくてこの高校へ入ったんじゃない」やる気のまるで無い女子高生が、子牛の世話をすることになる。はじめは渋々やっていたのが次第に愛情を持つようになり、一生懸命に世話をするが、もともとオスの牛は50日したら肉牛として売られていく運命、というお話。筋だけならありがちかもしれないが、主人公の造形も、彼女にかかわるサイドエピソードを担当する友人たちの状況設定、農業高校の現状の描写など、隅々まで「らしさ」を感じさせ、笑いをとりながらも、すべてがぶちあたる「自分ではどうにもならない現実の壁」のリアルさが迫ります。

 初めて情熱を注いだものを屠畜場に送った主人公にも、
 自分が継ぐはずだった酪農業を手放さざるを得ない友人も、
 獣医になりたくて勉強しているけれど、大学進学までの学力に手が届くかどうか…の友人にも
-特に解決は示されません。

 エンディングで主人公に送られるのは、応援のエール
 
 この長良の川に磨かれた君。
 金華の風、山田の上に吹きすさぶ。
 負けるな、負けるな、と吹きすさぶ。
 負けるな、負けるな、と吹きすさぶ。

がんばれ、ではなく 負けるな、のエールに思い切り泣きました。不確定な未来に立ち向かうために、不本意な現状に負けるものか、負けるな、という叫び、決意がこの面白くて切ない舞台を清々しい涙で締めくくってくれました。
(エールは正確に聞き取れてないかもしれません)

 高校演劇という場でこそ生まれた傑作ではないかと思います。
 8月の末に受賞作品の放送があったのですが、是非お正月にでも今一度あの感動を味あわせてくれないかしら~、と再放送を切に願うものであります。

ブリジット・ジョーンズの日記(2001/アメリカ、イギリス)

2007年12月06日 | 映画感想は行
BRIDGET JONES'S DIARY
監督: シャロン・マグアイア
出演: レニー・ゼルウィガー    ブリジット・ジョーンズ
   コリン・ファース    マーク・ダーシー
   ヒュー・グラント    ダニエル・クリーヴァー
   ジム・ブロードベント    ブリジットの父
   ジェマ・ジョーンズ    ブリジットの母

 ブリジット・ジョーンズ、出版社勤務のOL、32歳。独身、太め。彼女の新年にあたっての決意は「日記をつけ、タバコとお酒を控えめにし、体重を減らして、恋人を見つける」

 allcinema ONLINEでは

 爽やかコメディ。30代の独身女性をヒロインに、仕事に恋にダイエットに悪戦苦闘しながらも常にポジティブに生きる等身大の女性像を描き同世代の女性の強い共感を得る。

 なんて書いてありますが、どうなんでしょうねえ。爽やかに感じていますか、皆様? 
 共感…というか、わかるんですけどね「や~め~て~~」「ひいいい~」と、思い出したくない過去の失敗を思い出させられてしまうエピソードの連続で、誰しもここまではしないだろう、という強調ぶりにめげつつ「まいったわねえ」と苦笑い。私どもお局組はそんな感じで、一緒に見ていた22歳女子大生は「引き笑い」と表現してたけど、「何でこうなの?」とドン引きしつつクスリと笑えたそうです。
 だから、マークが彼女のどこに惹かれ、かわいらしさを感じてるのはわかるけど、彼女のどこが決定打なのかはちょっと不明。
 もちろん、レニー・ゼルウィガーは多少太っても、ほっぺたが丸くてもそれなりにかわいいし、あの胸もお尻も醜くはない。女性が自己投影できる美貌は保っちゃってる。
 以上文句の様ではありますが、結局楽しく映画を見るために主人公の魅力は必須ですから。

 ヒュー・グラントも人に合ってるし、マークが「ダーシー」であることもなかなか笑えたし、トナカイ柄のセーターも、サンタのネクタイもママのお見立てですのね。

 私の好みで言うと、映画館よりも女同士で集まって騒ぎながら見るにいい映画です。定番になってます。

死ぬまでにしたい10のこと(2003/アメリカ、スペイン)

2007年12月04日 | 映画感想さ行
MY LIFE WITHOUT ME
監督: イザベル・コヘット
出演: サラ・ポーリー    アン
   スコット・スピードマン    ドン
   デボラ・ハリー    アンの母
   マーク・ラファロ    リー
   レオノール・ワトリング    アンの隣人
   アマンダ・プラマー    ローリー
   ジュリアン・リッチングス    トンプソン医師
   マリア・デ・メディロス    美容師
   アルフレッド・モリナ    アンの父

 母親の家の裏庭のトレーラーハウスで失業中の夫と幼い2人の娘と暮らす23歳のアン。突然自分がガンであり、余命2ヶ月と告げられた彼女は、ノートに死ぬまでにしたいことを書き出していく…

 実は昨日検査終わって家に帰ってきたばかりで病院帰り女2人組で見てました。二人とも深刻な病気ではなくて、一病息災長く付き合いましょうという慢性病患者なので、この女性のような切迫感はまずないのですけれど、まあ、病院にいると、隣の人の容態が急変したりはよくあることです。突っ込みながら見る映画じゃないんだけど、二人で黙っているのがつらくて、時々ついちょこっとだけおちゃらかしを入れたりしてしまうのでした。
 ほとんどすっぴん風のサラ・ポーリーはすごいなあ、と思う。
 それに彼女のハンサムでちょっと頼りなげなダンナにしても、調子よく現れた恋人にしても、ほんとにいい人でよかったねえ。
 一番良かったのは余りにもいいタイミングでお隣が引っ越してきたことです。恋人が現れるよりも確率ぐっと低いはずですもの。
 それにしても主人公強いなあ、と思う。私は”MY LIFE WITHOUT ME”をデザイン出来るか? 後は野となれ山となれ的な行動をとりそうな気もする。それだけこの世界に残していくものへの愛着が強いのでしょうし、まさに MY LIFE WITHOUT ME ~彼女がいなくても、彼女の人生の一部として愛しているのでしょうね。
 わたしは「他の男の人を夢中にさせたい」思いというのはなんとなくわかる。私は面倒くさがりで、感情の昂ぶりとか異性への激しい渇望とかは疑似体験でいいです~と思ってるので、あこがれだけ(少なくとも現在は)しかないけど、17歳で出来ちゃった婚では、やはり体験出来なかったものをしてみたくなるかもしれない。死を前に自分を確認する手段としても。

 最近めまいがひどくて、この主人公のように「貧血」といって治療してましたが、どうも腎臓にちょこっと腫瘍があるみたいです。でもそれほど心配なものじゃないようです。
 またまた久しぶりにPC立ち上げました。メールが死ぬほどたまってました。

 この後で「ブリジット・ジョーンズの日記」を見て、気分を中和しました。おもいっきり盛り上がりました。
 やっぱり、これだけでは沈みっぱなしになります。