虫干し映画MEMO

映画と本の備忘録みたいなものです
映画も本もクラシックが多いです

東映テレビ不思議シリーズの並大抵でないシュールさ

2006年09月30日 | エンタテインメント
 先週は本日土曜日にあるイベントの準備やら、第三四半期終了でそろそろ税金の年末作業向けの打ち合わせで、テレビとお友達状態でした。「ドクター・フー」の放送とか、ご好意で見ることができた東映テレビシリーズ、「怪奇大作戦」と言う円谷プロの作品など、実に中身の充実したテレビ・ビデオ視聴生活でありました。

東映では、このたび次の作品を見ることができまして、どれも2回以上見て唸っています。

「シュシュトリアン」
・普通戦隊サラリーマン
 うわあ~うわあ~、なにこれー! シュシュトリアンの怪人というか、彼女らが戦う相手というのはパターン化した怪人スタイルがまるでなくて、ただそこら辺の人になんかくっつけただけとか、ただの変な人、みたいなのはとっくに承知でしたが、これは…ほんとにハチマキしてるだけのサラリーマン。オチと言うべき缶の中身にもハラホロヒレハレです。
・ウルトラマンに会いたい
 噂のウルトラマンとの共演! ハヤタ隊員の使い方には、リアルタイムでウルトラマン見ていない私もじわっと涙腺刺激されました。

「ナイルなトトメス」
ウィキペディアによる番組概要は、
中島サナエ(堀川早苗)は、新しい住まいに引っ越して来た事を先祖の墓に報告したが、誤って墓を壊してしまい、そこにあったナイルの悪魔51匹を人間界に放出してしまう。その後、初代トトメスからの命令でサナエが2代目トトメスに変身し、その悪魔を退治し、再び葬る事になる。「イブンバツータ・スカラベルージュ」の呪文でトトメスに変身し、トトメスの持つ不思議ステッキから伸びるパピルスと不思議オルゴールでナイルの悪魔を捕まえる。「美しく戦いたい。空に、太陽がある限り。不思議少女、ナイルな、トトメス!」が登場時の決め台詞。
 無茶な設定に呪文ですね。
・長男はマッチ売りの少女がお好き
 これはすごい!ひどい! 
 今では危なくて放送なんて絶対出来ないんじゃないか!?
 トトメス抹殺に送り込まれたナイルの悪魔、インテリがまるで雑学みたいなのでトトメスに迫る。しかし学力のないトトメスはマッチ売りの少女姿でナイルの悪魔に個人教授させて、高い学力をゲット…1日であっという間に高学力なんて、私が個人教授して欲しかった…
 学力で責めるナイルの悪魔というのもめちゃくちゃですが、だいたい勉強なんて学校の試験か入学試験でもなければ「それがどしたの?」でおしまいです。律儀に付き合うトトメスも「薄幸の少女に弱いインテリ」の描写の仕方もめまいがしそうです。(余談…わたし、ヘレニズム時代の質問とソクラテスは答えられました!それにスーパーストリング理論て、今なら小学生には無理でも、概要を答えられる人は増えてると思います) 

「勝手にカミタマン」
 これは、カミタマンというどうも半人前の神様みたいなのがオバQとかケロロ軍曹みたいに居候になって家庭やご町内に事件が起きるというもののようだ。今回見たうちで一番ぶっ飛んでいて、思わず家族全員に無理やり見せて絶句させて回った。
・恋するフランス人形
 ひな祭りに男雛の家出が発覚。残された女雛に捜索を頼まれたカミタマン。男雛はフランス人形と片隅でひっそりと暮らしていた…
 もうもう、絶句です。
 この番組では、カミタマンが居候した家の男の子がヒーローに変身したりする様なのですが、この回はぜんぜん出番なし。雛人形とフランス人形によって演じられる戦前の木下恵介の映画パロディのような、定番コントのようなパターンドラマとカミタマンという人形の主人公の組み合わせに人間キャラとの絡みが、そして雛人形独特の動かない白い顔がこの世のものとも思えぬシュールさを放っております。

 どういう視聴者が対象の番組だったんですか?

と言うわけでタイトルの通りです。
トトメス、カミタマンはこれを見た元気な男の子たちの意識の底に、女に対する恐怖感のようなものが残りそうにも思います。ただただ笑ってくれているといいんですが。
このシュールさは東映の、と言うより、全作の脚本の浦沢義雄氏のものでしょうか。

ドクター・フー

2006年09月27日 | エンタテインメント
 イギリスの伝説的長寿SFテレビドラマ「Dr.Who」が今週、NHKのBS2で四話連続放送しています。
 この番組は、翻訳小説によく出てくるので名前はおなじみでしたが、実際に見たのは初めて。
 今度の放送分は最新版だそうで、ドクター役も、パートナーになる女の子もなんとなく今風のルックスかな、と思います。
 900歳の宇宙人のドクターについて時間空間を越えて飛び回る19歳の女の子が余り垢抜けない、ロウヤークラスの生まれ育ちのようなのも「へえ~へえ~」と発見したような気持ちです。
 それに、SF的なセットやクリーチャーとかは、いかにもテレビっぽい親しみのもてるチープさがありますが、ストーリーや登場人物の置かれたけっこうシビアで、その辺も興味しんしんです。
 昔バージョンも是非見てみたい。

-----
 ところで、アメリカの古いテレビドラマで放送は、「ローハイド」「コンバット」も見続けているが、やはり長く続いたドラマは良い意味でパターンにはまっているものですね。
「ルーシーショー」というのが私はぜんぜんピンとこない。ほとんど笑えない。これからNHKBSでテレビシリーズ「奥様は魔女」が始まるそう。これは少し見たことがあり、わくわく期待して待っているが、ちょっと不安でもある。

ヤング・フランケンシュタイン(1974/アメリカ)

2006年09月26日 | 映画感想や行
YOUNG FRANKENSTEIN
監督: メル・ブルックス
出演: ジーン・ワイルダー   フレデリック・フランケンシュタイン博士
    ピーター・ボイル   怪物
    マーティ・フェルドマン   アイゴール
    マデリーン・カーン    フレデリックの婚約者

 フランケンシュタイン博士の曽孫フレデリックは、医学者になっていたが、フロンコンスティーンと名乗り、先祖とは別だと主張している。そんな彼が博士の遺産を受け継ぐことになり、ルーマニアの古城を訪れる。そこで見つけた博士のノートをもとに、やはり生命の創造にチャレンジしてしまう…。

 だいぶ前にビデオで見ただけだったので、今回DVDのメイキングとブルックス監督の音声解説をじっくり見ました。それほど新しい発見というのもありませんでしたが、この映画の原案は主演のジーン・ワイルダーだったのですね。メイキングで最近のお姿を拝見。髪の毛が少なくなっていたけれど、面影変わらず。
 シモネタも入ったコメディ仕立てになった、でも原作の悲劇を知っていると余計救われるように思うパロディの傑作です。やっぱり元の映画を見て「言ってやりたい!」と感じること(女の子のシーンとか、モンスターの演説とか)をほぼ網羅してくれてるようでスッキリする。
 そのほかは
・博士とモンスターが歌い踊るのは、「ザッツ・エンターテインメント」でクラーク・ゲーブルが歌って踊ってた曲なのね。
・ジーン・ハックマンは前回全く知らなくて識別できず、今回はじ~~~っと見ていたらやっぱりハックマンはハックマンでした。

 それにしても、この時代のブルックス監督の映画ってすごい人材揃いでした。
 気弱そうでまともそうでいて、どっか危なそうなワイルダー、容貌魁偉なフェルドマン(怖いのも可笑しいのも何でもござれがすごい)、体格だけで主張してしまうボイル、なんたってマデリーン・カーン。
 マデリーン・カーンの役はまあ、フツーじゃない役が多いんだけど、それにリアリティや共感、果ては賞賛まで抱かせてしまう才能とパワーには本当に感嘆してしまう。おまけに歌がめちゃめちゃうまい。今年の「プロディーサーズ」ミュージカル版はすごく良かったけど、ユマ・サーマン(彼女が悪いわけじゃないけど)のやった役どころにマデリーン・カーンが納まったらさぞや…と思っちゃいました。
 そんなわけで「珍説世界史PART1」のDVD予約しました。この映画のカーンも素晴らしかったですね。

河内カルメン(1966/日本)

2006年09月25日 | 映画感想か行
監督: 鈴木清順
出演: 野川由美子   武田露子
   和田浩治    坂田彰
   川地民夫   高野誠二
   宮城千賀子   武田きく
    伊藤るり子    武田仙子
    松尾嘉代   雪江
    佐野浅夫   勘造
   嵯峨善兵   斎藤長兵衛
   桑山正一   不動院の良厳坊

 河内の娘露子は、村の悪たれたちに暴行され、母は近くの破戒坊主と浮気という有様に、家を飛び出して大阪でキャバレー勤め。そこで彼女は美貌を武器に生きていく…

 鈴木清順のぜんぜんわけが分からなくない、ストレートでスピーディーでパワフルな映画。
 特典映像の当時の予告編には一応「女の出世物語」みたいな字幕がバーンと出ますが、ちょっと違う。
 ファーストシーンが野川由美子の自転車の上で動くヒップです。実にかわいい野川由美子で、「殺し屋」の時のいつもどっか不満!という顔とは大違い。その純朴でかわいい、働いている工場のお坊っちゃんに恋心を抱くやまだし娘がひどい男遍歴を重ねる話。ほんとにひっどい。

 まず村で輪姦される。
 母親は父親を家にもいれずに近所の坊主と浮気。
 大阪では酔って眼が覚めたら客と連れ込みにいる。
 その客は彼女に入れあげて使い込みをした挙句に首になり、ヒモ生活。
 モデルになって、上役のレズの相手にされそうになる。
 初恋の彰とも再会するが、山師になっており、彼の温泉発掘の資金のために金貸しの妾になり、ついには彰と今で言うAVを撮らされる。
 金貸しも彰も死に、故郷へ帰れば父は死に母の浮気相手の破戒僧が妹を毒牙にかけている。
 
 実に実にひっどい話なのに、ズルズル暗いところへ引きずられる感覚がまったくない。
 溝口健二の「雪夫人絵図」もひどい男に翻弄される女の話なのに、何でこんなに違うのでしょう。どっちも不幸のたびに主人公が美しくなっていきますが、かたや雪夫人木暮美千代は生命を削る如くにはかなさを増し、こちらは不幸に鍛えられるが如くに輝いちゃう。陰影濃い画面だというのに、野川由美子はいつも汚れをよせつけない様に翳りなく美しい。思うに、露ちゃんは「これがすき」「これはいや」などの感覚を決して人の判断に委ねない。彼女の根幹が崩壊しないのはそのせいだろうか。
 ひどい男揃いのうえに、お母さんも迫力ありすぎ。しかし、ここまですごいと「香華」(有吉佐和子原作、木下恵介監督)のような愛憎劇とは無縁なのが「河内パワー」の源であろうか。
 不思議な付き合いをする川地民夫もへんないい人だが、佐野浅夫は、こちらが歳を重ねるごとになんか泣けるようになる…

ハンテッド(1995/アメリカ)

2006年09月23日 | 映画感想は行
THE HUNTED
監督: J・F・ロートン
出演: クリストファー・ランバート ポール
   ジョン・ローン   キンジョー
    ジョアン・チェン  キリナ
   原田芳雄     タケダ
   夏木マリ    ジュンコ
   島田陽子    ミエコ
   岡田真澄

 名古屋にやって来たビジネスマンポールは、ホテルでナンパした女が忍者に殺されるのを目撃。彼も重傷を負う。そして忍者集団に命を狙われ始める。ポールはタケダという武道家夫妻にたすけられ、匿われる。タケダ一族とキンジョーらの忍者は数百年の争いを続けていた。

 すごい映画だった。
 この前見た(なんとノリユキ・パット・モリタ氏の遺作であった)「スパイ・モンキー」もなかなか面白い日本を映した映画だったのだが、これは「外国映画にみる変な日本」「絶句映画」のもう極めつけ。笑うのも通り越して呻いてしまった。時々思わず失笑はもちろんありましたが。『猿も木から落ちる』は超弩級パワーでした。
 それにしても、監督・脚本のロートンはあの「プリティ・ウーマン」の脚本の人で、私はあの映画がさほど好きではないとは言え、これほどめちゃくちゃな筋立てをするのが信じられない。時代劇を作法そのままで、無理やり現代に持ち込んだみたいでそれをまたけっこう他の映画でおなじみの実力もある役者がやってるものですから、変な夢でも見てるみたい。ビデオのパッケ-ジを見て製作年を何度も確認。このおとぼけがほんとに10年ちょっと前???
 クリストファー・ランバートって「ハイランダー」の彼よね? 何なの、このおでこ!!!何が何でも忍者装束に着替えないと気がすまない忍者の皆さんとか(いつもながら地下足袋が素敵)、いくらなんでも弱すぎの警官、島田陽子の装束にもびっくり。岡田真澄さんも、夏木マリさんもとんでもない扱われ方で、引きつったまま「ひえ~~ひえ~~」と呻きつつ見てしまいました。
 ジョン・ローンは不死身でアザトイところがなかなかかっこよかったのですが、タケダと忍者たちが闘う理由とか、事件のきっかけになる女殺しの原因とかが余りにもへっぽこなので、彼にとって気の毒にも見ているほうは脱力したまんまです。
 原田芳雄とジョン・ローンの決闘は他のチャンバラシーンに比べて力入っていたのですが、その直後の弓で私的には一気にしょぼーんでした。

 全編流れる太鼓もそれだけとれば素敵ですが、やっぱりねえ、役者と音楽だけではダメなのね。
 トンデモなジャンルにおいては、突き抜けちゃってすごく面白いです。思ったのですが、これは一部カットしてセリフの総入れ替えをしたらすごく雰囲気の違ったアクションになる…かな?

エイプリルの七面鳥(2003/アメリカ)

2006年09月21日 | 映画感想あ行
PIECES OF APRIL
監督: ピーター・ヘッジズ
出演: ケイティ・ホームズ   エイプリル・バーンズ
   パトリシア・クラークソン    ジョーイ・バーンズ
   オリヴァー・プラット   ジム・バーンズ
   デレク・ルーク    ボビー

 エイプリルは、典型的中流の家族から浮いた存在で、今は家を飛び出してハーレムで恋人のボビーを暮らしている。しかし、今年の感謝祭は家族を招き、初めての七面鳥ディナーに挑戦する。実は母のジョーイは癌で余命わずかだった。

 ケイティ・ホームズってこんなにかわいかったのですか!!
 発見です。ただトム・クルーズの奥さんだけやってるんじゃ惜しい!と初めて思った!
 家族からはみ出して、(家族から見たら)クズ男と一緒になった女の子という役で、確かにジャック・スパロウ船長に負けないくらい眼の周り真っ黒だけど、ほんっとにかわいい。それに率直な性格であることが実によく分かる。お母さんも率直で勇気のある女性。よく見ればこの娘が母と一番良く似ている様なのに、お互いを求め、思う気持ちがすれ違ってばかりなんて、そういうものかもしれないが、切ない。
 クランベリーソースのエピソードだけでも、エイプリルの心の底の素直さ優しさがにじみ出ます。
 エイプリルの家族も、お父さんは優しいし、妹なんかも中流意識丸出しと言っても、そのイヤラシさよりも自分の守備範囲から出たくないといった風に見え、悪役とはちょっと違う。それがこの映画が切ない余韻をもつ理由であるのでしょう。

 背景に音楽がほとんどなくて、それだけにラストシーンの歌が沁みた。

精密検査行って来ました

2006年09月19日 | 日記・雑記
今までも検診で引っ掛かったことはたびたびありますが
今回は要再検査でも、至急で日にち指定でありましたので
さすがに少しドキドキしました。
内臓に腫瘍はあったのですが、良性だそうで
ま、ほっとしました。

でもねえ、私持病があるので
酒もタバコもやらず、塩と油も控え
刺激物も余り取らず
早寝早起きの(運動不足以外は)
と~~~っても模範的な生活してるのになあ。
良性とはいえ、こういうのからは逃れられないのね。

「足腰を鍛え鍛えて癌で死に」
なんて不穏当な川柳を読んだことがありますが
人間の命って結局は、運とか巡りあわせなのでしょうか。

ミニミニ大作戦(1969/イギリス、アメリカ)

2006年09月17日 | 映画感想ま行
THE ITALIAN JOB
監督: ピーター・コリンソン
出演: マイケル・ケイン チャーリー
   ノエル・カワード ブリッジャー
   ベニー・ヒル ピーチ教授
   トニー・ベックリー フレディ
   ラフ・ヴァローネ アルタバーニ
   ロッサノ・ブラッツィ ベッカーマン

 女好きの大泥棒チャーリーが刑務所に服役中のボスの指令で、イタリア、トリノでの金塊輸送車を襲撃することになる。彼はトリノの交通網をコンピューターの専門家で大女好きの教授を使ってマヒさせ、その間にミニ・カーでの逃走を計画。チームを組んでイタリアへ…

 シャーリーズ・セロンのリメイク版とはぜんぜん雰囲気の違う映画。あちらのほうがスピーディーだけれど、こっちはミニを使ったカーチェイスはもちろんのこと、細部のこだわりがすごく素敵。破壊も景気よくやります。
 男を見る映画で、ケインは当然のこと、教授の変態やフレディのコワモテ、ノエル・カワードのもったいぶり方にしびれます。
 マイケル・ケイン初登場のアップでジュード・ロウを連想してしまった。ほんとにいい男だった。

 これは、メイキング見て、解説付きの本編を見直してから書き直します。
 しかし主人公の節操も臆面もない女好きを見ておりますと、ジェームズ・ボンドみたいな絶倫男が流行った時期があるのかな、など思います。アストン・マーチンに乗っておりますし。

この人を見よ

2006年09月13日 | 日記・雑記
今注視しているのは石橋湛山。
言論の自由について、今の風潮は余りにも軽んじているような気がする。

がんばって何か書けるようになるまで考えてみたい。
そのために石橋湛山について読んでいる。

ところで、X-MENファイナルディシジョン、書き直しました。

みおのょっ! はときいんっ!

2006年09月11日 | 
知る人以外には訳のわかんないタイトルですが。
この記事は

レンタル(不倫)/姫野カオルコ著
角川文庫

についてです。

 姫野カオルコのエッセイでは彼女自身が「なかなか男の人に性の対象に見てもらえないかわいそうな私」のポーズしてます。この本の主人公もそれにオーバーラップするような、SM系ポルノ小説家だけど実体験のない30歳過ぎの処女(文字通りの意味)小説家。その彼女が、名前からして霞という色男デザイナーとの不倫の機会に臨んで…というお話。

 自己欺瞞と全く無縁な主人公は恋愛とも無縁。なんか分かる。結局みんな「ドロドロ」「ズルズル」「頭で分かっていてもどうにもならない私」が好きなのね。
 私もそうなのよ。はしばみとピーナッツとさんざしのお菓子については。男については将来はいざ知らず、今のところは大丈夫。

 主人公・力石理気子がセックスしてしまう霞というナルシズムのカタマリみたいな男がものすごい。文節ごとに「フ」という息の音が入り、口から出る言葉は「。」にたどり着くまで400字詰め原稿用紙1~2枚までをおフランスな形容で飾り立てる。彼の発する文章それぞれに著者の言語能力(いや、それに加えるに観察とパロディのかな?)に圧倒され、感心しつつも、つい飛ばしそうになるのを必死で全部読みました。引用したいところですが、余りにも長いのでちょっと無理。
 ともかく理気子は彼の言葉に

 みおのょっ! はときいんっ!噴火だ! ゴジラ!

 と火を吹いてハズカシさに悶えつつセックスの前段としての恋愛ごっこの「手間」に付き合うのです。だってそうしないと彼は「しおしおのぱー」なんですもの…

 ページを繰っていて笑わないページがない!共感を誘われつつ、だけどその笑いは自分をも嗤わずにはいられないというものです。笑いを成立させるためには意地の悪さとニヒリズムが必要だと思いますけれども、それが爽快にブレンドされております。
 ラディカルで優れたアフォリズムに満ちた作品です。できれば「姫野『処女』三部作」のあとの「ドールハウス」「喪失記」もどうぞ。

X-MEN ファイナルディシジョン(2006/アメリカ)

2006年09月10日 | 映画感想あ行
監督: ブレット・ラトナー
出演: ヒュー・ジャックマン   ウルヴァリン
    ハル・ベリー   ストーム
    パトリック・スチュワート   プロフェッサーX(エグゼビア)
    ジェームズ・マースデン   サイクロップス
    ベン・フォスター   エンジェル
    ファムケ・ヤンセン   フェニックス=ジーン・グレイ
    イアン・マッケラン   マグニートー

 自らを犠牲にして皆の命を救ったジーンの死の動揺から立ち直れずにいるX-MEN。そんな時、ミュータントの能力を消去し普通の人間にすることのできる新薬“キュア”が開発される。「ミュータントとして生きるか、それとも人間になるか」の選択に、ミュータント社会は大きく揺れる。

 私は原作をぜんぜん知りませんので、映画化されたものだけで判断するだけですが。
 なんか、重要そうなキャラでちょっと背景不足な感じがしたのが、エンジェルと”キュア”の鍵になる坊や。きっと原作では重要なファクターのキーパーソンなんではないか、と思わせましたが、まあこれが最終章だそうで、話をまとめるためのこの忙しさでは沢山の時間を割く余裕はなかったのでしょうね。
 それにしても二作目までの重要人物が惜しげもなく消えて行き、最終章というのに新しいキャラもどんどん投入されます。展開も素早く、まさにあれよあれよ。ミュータントの特殊能力もぜんぜん出し惜しみせず、ミュータント同士の対決シーンでも能力に合わせて自然に組み合わせが決まって、1対1のがっぷりシーンがたっぷり続きます。
 一作目からの時間経過の間に出演者の格が上がったせいか、アメコミを忘れそうになり、新しい登場人物のゴーレム風外観がアメコミを思い起こさせてくれました。
 愛憎絡み合った年配コンビも、お歳にも負けず、パワー全開は素敵でした。
 アクションものとしては実に楽しかった。物理法則を超える映画ならではのシーンもお腹一杯見せてくれて深夜12時近くに(レイトショーで見たので)ほわほわと楽しく帰宅いたしました。

 そして実は月曜からX-MENの1、2作目を続けてみていました。
 旧作を見ると、それほど経過したわけでもないのに、身体は変わってないのに、ヒュー・ジャックマンがなんだか老けた感じがする。ハル・ベリーはますます美しいのに。なぜだろう?

 X-MENカー、今回は無しでした。続けてくれたっていいじゃん。

 あれだけ力の優越を信じて数十年生きてたおじいさんがあんなにあっさり改心しちゃうものでしょうか?もっと別の行き方があるんじゃないでしょうか。原作ではどうなのか?

 ローグはやはり異端の孤独をどこでも感じるのではないだろうか?

 しかし、さすがは映画なのは、キュアの一発で身体が変わってしまうところです。私なんか、ウオノメみたいなできものを切除しただけで何週間もヒイヒイ言ってるのに…(愚痴です、すいません) 

電車男(2005/日本)

2006年09月09日 | 映画感想た行
監督: 村上正典
出演: 山田孝之    電車男
    中谷美紀    エルメス

 女性と話すこともなく、デートなんてとんでもないアキバ系オタク君が、電車の中で酔っ払いに絡まれていた女性を見かねて助けようとする。それをきっかけに、彼は2チャンネルの応援されつつ、「女性との交際」という未知の冒険に… 

 映画では本にはない「ヤマ場」がありまして、それが受け入れられれば良いのかな、と思います。
 私は(私ががさつな女のせいか、それとも最近姫野カヲル子をまとめて読んでおりましたためでしょうか)エルメスという女性像がどうにも違和感ありすぎて映画にも、なかなか馴染めなかったでした。
 しかし、主人公電車君の、本で感じたような裏表無しでかわいいところは同じように感じました。
 それに2チャン応援団の描き方も優しくて「それぞれが現在から一歩踏み出していく」というのも、悪くはないと思います。

 違和感は一番大きいのは私の(勝手に)持ってたイメージとのずれだと思います。
 もっと2チャンらしい雰囲気とか、アスキーアートを派手に使うかな、とか思ってました。画面に文字の花火乱舞とか。いえ、ほんとに勝手な思い込みです。

 でも、本読んだ時も思ったのですが、オタク君にとって、女性が神話の怪物みたいな感じなのですが、実際どうなのでしょう?

ロンゲスト・ヤード(2005/アメリカ)

2006年09月07日 | 映画感想ら行
THE LONGEST YARD
監督: ピーター・シーガル
出演: アダム・サンドラー   ポール・クルー
    クリス・ロック    ケアテイカー
   バート・レイノルズ   ネイト・スカボロー
   ジェームズ・クロムウェル    ヘイズン刑務所長
   ネリー   メゲット
   ボブ・サップ   スウィトウスキ

 八百長試合でフットボール界を追われた元スーパースターのクルーはすっかり落ちぶれ、ついにはパトロン女性の車を持ち出してカーチェイスをして3年の刑。刑務所では、強権的な所長に看守のチームのかませ犬になるチームをつくるように命じられる。1974年のロバート・アルドリッチ監督作品のリメイク。

 もちろんオリジナルには勝てません。
 でも、アルドリッチ作品のリメイクものとしては一番質が良いと思いました。名場面も踏襲し、友情とプライドに殉じて損な生き方をあえて選択するヒロイズムをきっちり見せてくれました。
 バート・レイノルズの出方もちょこっと顔出す程度のものでなく、しっかり強烈な見せ場も作ってたし、エド・ローターも出演してたのはすごく嬉しかった。

 オリジナルに比べると、今回の映画のほうが出演者のガタイが総じて大きくなっているように思います。それだけに試合の激突の迫力すごいっ!主人公としてはバート・レイノルズの方がずっとアクが強いと感じましたが(今回は彼自身はずいぶん枯れてましたね。でもやるときはやります)、あの敵味方共に巨人のような軍団を相手にするにはアダム・サンドラーのようなお人柄を感じさせる主人公が良かったのかもしれません。

 今回は所長がカタキ役を一手に引き受けて、看守長の存在が少し薄くなってしまったので私には最後のシ~ンの「ジィィィ~~~~~ン」が「ジーン」程度になってしまいました。
 気持ちのいい映画です。

狩人と犬、最後の旅(2004/フランス、カナダ、ドイツ、スイス、イタリア )

2006年09月06日 | 映画感想か行
LE DERNIER TRAPPEUR
THE LAST TRAPPER
監督: ニコラス・ヴァニエ
出演: ノーマン・ウィンター
   メイ・ルー
   アレックス・ヴァン・ビビエ

 ユーコン川周りの過酷で雄大な大自然の中、昔ながらの罠猟をして生きる実在の狩人ノーマン・ウィンターと妻と犬たちとの生活を描く。監督は、自身もフランスの著名な冒険家であるニコラス・ヴァニエ。

 エンドクレジットを見ていて驚いたのは、声が吹き替えだったのですねえ。
 ノーマンをノーマン本人が演じているフィクションなのだ、と改めて気付く瞬間。

 特に「ここがクライマックス!」というあからさまなシーンは無く、淡々とした映画です。ただ、分かるのは毎日の生活自体が生と死のどちらも見えるところにいる、厳しいものであり、それこそが人間の生活であると彼らが考えているということでしょう。
 私がこの映画を見たくなったのも、私自身が人工的環境でなくては落ち着かないどうしようもない状態にいることを自覚しているからです。
 ノーマンは反対で、自然の中で、彼自身も自然の一部として生きることが必然である人です。
 この映画は、信頼していた橇犬のリーダーが事故死したあと、新しく加わった犬がノーマンの生活にしっかりと根を下ろすまでがメインストーリーとして進んで行きますが、ストーリー展開よりもノーマンと妻ネブラスカ、犬たちの生活の様子を見ていてやはり粛然たる思いを抱かざるを得ません。
 毛皮の値段のやり取りも彼の価値観を示すものでしょう。
 思い出したのは「クマにあったらどうするか」の姉崎等氏でした。
 こういうもので、たまにどついてもらって、自然に対する謙虚さを思い出さないといけません。

 気になるのはタイトル。「最後の旅」は違うと思うのですが。

===========
 雨の中走っていったのに時間を間違えていて40分待って、また冷えた。いつものシネコンではなく、小さな映画館だったので、久しぶりに映画の前に「神奈川ニュース」を見る。ニュースタイトルのバックに流れる神奈川県歌は、歌いだしの「ひ~かりあら~たに~」までしか知らないのだが、この続きを歌える人に会ったことが無い。相変わらずレトロ調なニュースでなごんだ。

ノーベル賞受賞者にきく子どものなぜ?なに?

2006年09月05日 | 
ベッティーナ・シュティーケル編/畔上 司訳
主婦の友社

bk1の内容説明では

どうして1たす1は2なの? どう答える? 子どもたちの究極の質問。親では答えられない難問・奇問に、ノーベル賞をもらったその道の天才たちが答える。

なんて書いてありますが、奇問というのはそれほどないです。
 確かに答えにくい質問(説明の中の1たす1は、みたいなの)とか、答えはなんとなく分かってるけど自分でうまく説明できないの(電話ってどうしてつながるの? どうしてプリンはやわらかいのに石は固いの?)とか、考えたくない質問(地球はいつまで回っているの?)とかはあります。
 どの質問もまっとうに聞きたい事ばかりだと思います。
 回答もまた、まっとうなものですが。
 その中でも、口の中で「う~~~」と唸ってしまうような解答もないわけではありません。
 ノーベル平和賞受賞者といえども個々の思想は平和主義とかでくくれるようなものであるはずは当然ながらありません。
 一つの事象に対しても捉え方は別々なのだろうと思わせられます。個々の体験の深い絶望が伺えるものもあります。が、子どもに対しての回答ですからもちろん相互理解と理性と希望を訴えるものになっているのがほっとします。
 なんか身につまされるのが、経済学賞受賞者担当の回答です。
「どうして貧しい人とお金持ちの人がいるの?」に対するダニエル・マクファーソンの答えは
「まず運の良し悪し。人生は不公平なものです」
これは実にミもフタもない真実です。このことを踏まえた上で生きていかなきゃいけないのよね。