虫干し映画MEMO

映画と本の備忘録みたいなものです
映画も本もクラシックが多いです

スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師(2007/アメリカ)

2008年06月29日 | 映画感想さ行
SWEENEY TODD: THE DEMON BARBER OF FLEET STREET
監督: ティム・バートン
出演: ジョニー・デップ    スウィーニー・トッド
   ヘレナ・ボナム=カーター    ミセス・ラベット
   アラン・リックマン    ターピン判事
   ティモシー・スポール    バムフォード
   サシャ・バロン・コーエン    ピレリ
   エド・サンダース    トビー

 19世紀のロンドン。理髪師ベンジャミン・バーカーは、妻に横恋慕したターピン判事によって無実の罪で流刑にされ、15年後、ロンドンに戻った。そしてパイの店の女主人に妻は死に、幼い娘は判事のもとで幽閉されていると聞かされる。ベンジャミンはターピンへの復讐を決意。“スウィーニー・トッド”と名を変え、パイの店の2階に店を開く。

 相変わらず、ティム・バートン風悪趣味で残酷なおとぎ話でありましたが、今回はタイトルから血みどろ。それも印象に残るのは噴き出すよりも、ドロドロと重そうに流れる血。
 もっと不思議なのは、なぜでしょうか、元がミュージカルの舞台だというのに、歌詞は頭に残っても、メロディー忘れちゃう。私はミュージカルの映画や舞台を見ると、帰りはたいがいその中で印象的なメロディー歌いながら帰る、とか、DVD見た日は皿洗ったり掃除しながら歌ってるのが普通なのに、いや、この映画は"beautiful""naive"の言葉は頭に焼きついてもメロディーがどっか行っちゃって。せっかくあんなに歌っていたのに、なぜでしょう?
 ラストもまた血の中ですべて収まるところへおさまって、納得のエンディングなのでした。最後の剃刀は彼にとっての救いだったと思います。そして若いナイーヴな二人は彼ら自身のまた新たな苦労をしていけば良いのです。
 次から次へと斟酌なく喉を掻っ切るという壮絶スプラッタしても見た後に不思議にあくどくなくて、いつもの解放感が残りました。
 しかしこの映画で一番怖かったのは、復讐のためにはすべてかえりみないトッドよりも、不都合を全部「とりあえず横に置いといて」自分の憧れの家庭を夢見ることのできるミセス・ラベットでした。
 
 それにゴキブリを見た時には完全に及び腰になりましたが、あの程度で済んで本当によかった。

秋葉原の事件と、北朝鮮・アメリカ

2008年06月27日 | 日記・雑記
秋葉原の事件は信じたくない現実、というものでした。

事件の背景についてはあれこれ言われていますが、
情報があるようでみんなおんなじ風でよくわかりません。

ただ、派遣労働者が使い捨ての労働力ということですが
労働者というものはかつてはたいがいがそう扱いだったのではないでしょうか。
今「蟹工船」がリバイバルヒットしているそうですし、
そもそも、近代はそうでない社会を目指してきたのではないのですか?
だからこその法整備だとか労働組合結成なんですよね?
それが、どうしてこんなことになったのでしょう。

佐野真一の「旅する巨人―宮本常一と渋沢敬三」は
なかなかのお勧め本で、日本の民俗学そのものを学閥の外にいた故に、作り上げることができた2人の日本の碩学を描いた素敵な本です。
その中で読んだのですが、宮本常一は、10代のころ郵便局の通信の仕事をしていました。彼が師範学校の入試に合格し、同僚が次々と肺結核で倒れていく悲惨な環境から抜け出すことを、そういう環境に残る仲間が喜んで、貧しい着たきり雀の彼に衣類などを贈ってくれたそうです。
犯人には、これほど人の心を感じるようなことがなかったのでしょうか?それとも彼自身が感知するアンテナを持っていなかったのか?

アメリカが北朝鮮をテロ支援国家指定から外すなんて

がっかりです。

日本は、韓国みたいに大騒動をしないって高くくられてるんでしょうか?
「思いやり予算」即時撤廃デモとか起こると思います?

シッコ(2007/アメリカ)

2008年06月21日 | 映画感想さ行
SICKO
監督・出演: マイケル・ムーア

 アメリカの医療制度を扱ったもの。
 見るのが怖かったのですが、実際すごく怖かった。
 医療が暴走する資本主義に呑み込まれていくと、こういう結果になります…

 アメリカには「一番病」というのがあるんですね。
 小さい頃から「アメリカ一番」「社会を壊す恐怖の全体主義」「MIGHT IS RIGHT」「社会的成功絶対主義」…どっぷりつかって価値観の骨格ができちゃうんですね。だからほかの国でよさそうなものがあっても、アメリカが学ぶべきだとか、考えられないのかなあ?
 これ見てると、ノーマン・メイラーのアメリカ愛国主義に対する言説を思い出しました。2人ともアメリカの脆い民主主義というものを根底で信じてるんですね。

 日本では、日本人自身の一部が自虐的に日本を貶めていて、歴史を悪いほうにゆがめていると主張がされています。しかしながら、一番病よりは、まだ「俺たちまだまだだよな」的認識のほうが健全に思えてきます。
 医療制度については、日本でも危うい局面です。
 でも日本の言論のほうが虚弱でしょう。

 チェ・ゲバラの娘さんを見ることができてちょっと感動。

ナショナル・トレジャー/リンカーン暗殺者の日記(2007/アメリカ)

2008年06月19日 | 映画感想な行
NATIONAL TREASURE: BOOK OF SECRETS
監督: ジョン・タートルトーブ
出演: ニコラス・ケイジ    ベン・ゲイツ
   ジョン・ヴォイト    パトリック・ゲイツ
   ハーヴェイ・カイテル    セダスキー
   エド・ハリス      ウィルキンソン
   ダイアン・クルーガー    アビゲイル・チェイス博士
   ジャスティン・バーサ    ライリー・プール
   ブルース・グリーンウッド    大統領
   ヘレン・ミレン     エミリー・アップルトン博士

 ウィルキンソンと名乗る古美術商から、彼の曽祖父がリンカーン大統領暗殺事件の犯人だと告発される。ベンは何としても祖先の無実を晴らそうと、天才ハッカーのライリー、そしてベンとは今や破局寸前の恋人アビゲイルの協力を得て調査を開始。

 前作で「これがほんとに古代から誰にも解けない謎だったのかい?」と呆然とするほどサクサク謎解きをして、秘宝を見つけたベン・ゲイツですが、今回もヒントが出たらその場で解決、まあ、特殊文字の解読はお母さんにやってもらいますが、謎解きは家族内で間に合ってます。
 お約束通りに恋人とは壊れかけてます。彼って、謎解きしてないと魅力がないんでしょうか?
 ライリーもラッキーを掴み損ねてます。

 そんなこんなで、アクションもハデだけど人的ダメージがなく、サスペンスも全然息苦しくなく、おまわりさん達もそうむきになって追いかけたりしないという素敵な展開で、きちんと2時間で祖先の汚名を雪ぎ、お宝もみつけ、恋人との仲を修復し、長年の両親の不和も、ライリーの経済問題まで一挙解決!
 すごいじゃありませんか。
 決して皮肉言ってるわけじゃなくて、やっぱ夢と冒険で軽やかにドキドキさせてくれるのもいい映画だよね~

 ただね、私、ヘレン・ミレンもエド・ハリスも大好きで、やっぱ役不足じゃないか、と。
 それにやっぱり秘宝がなきゃダメなのか~とかは、あとで思ったけど。 

ONCE ダブリンの街角で(2006/アイルランド)

2008年06月17日 | 映画感想わ行
ONCE
監督: ジョン・カーニー
出演: グレン・ハンサード    男
   マルケタ・イルグロヴァ    女

 穴の開いたギターでダブリンの街角に立ち、歌を歌うストリート・ミュージシャンの前に現われたのは、チェコからのピアノを弾くことを楽しみにしている移民の女。二人は一緒にセッションを楽しむようになり、惹かれあっていくが…

 やさしい映画でした。
 心象描写的に流れる曲がちょっとレトロでソフィスティケートよりも率直、という感じで心のささくれを包んでなだめてくれるようです。
 主人公の男女もいわゆる片隅で生きる、優しさのために人生で損な役割を敢えて選んでしまうようなタイプ。
 そんな映画ですから、勝利的ハッピーエンドには程遠く、切ない涙がジンワリ…という幕切れ。

 でもねえ、こういう「本物の人生よりも、きっと少しだけ優しい世界」の純粋な共感や愛情、勇気とかを求めて私は映画見たがってるんだと思うのですよ。最近見た映画の中でこれがいちばん心なごませてくれたように思います。

 それにしても、世界は動いているんですねえ。
 ダブリンを舞台にしたものでは、つい最近のものまで、なんか寂れて取り残された感が漂っていたようでした。でも、この映画ではまだ壁や街並みが再開発の嵐に見舞われたりして古い面影が薄れていくという段階には見えないけど、活気があって移民を受け入れる側です。

阿修羅城の瞳(2005/日本)

2008年06月14日 | 映画感想あ行
監督: 滝田洋二郎
出演: 市川染五郎 病葉出門
   宮沢りえ    つばき
    樋口可南子    美修
    沢尻エリカ    谷地
    小日向文世    四世鶴屋南北
    内藤剛志    国成延行
    渡部篤郎    安倍邪空

 江戸の町に人の姿に身を変えてはびこる魔物たちを退治していた“鬼御門”という組織があった。5年前まで凄腕の鬼殺しだった病葉出門(わくらばいずも)は今は役者。ある日、彼は5年前以前の記憶がない女つばきと出会い、恋に落ちる。実は2人の間には因縁の糸が絡み合っていたのだった…

 これを見る前に「サラエボの花」というラスト15分涙ドボドボの映画を見てしまいました。
 何とか気持ちを立て直そうと思って、思いっきり非現実な映画見たいな、と思ったのです。

 結果。
 今風に言うと「ビミョー」でした。

 樋口可南子、宮沢りえのお二人は素晴らしい! 綺麗! 非現実空間を構築する美と迫力を十分に発揮なさってます。

 個人的に染五郎が好みじゃないのと
 アクションがちょっとテンポが悪いのと(元が舞台劇とはいえ、どうせ映画なんだからもっとじゃかじゃかどんどん飛んだり早まわしたりしても良いんじゃないのかな)
 クリーチャーに既視感がありすぎるのが

 私がこの映画を楽しみきれなかった原因でありました。
 もっと豪華絢爛で作り物の楽しさと疾走感があふれた画面にして欲しかったなあ…
 いい絵があるのになあ…
 とまあ不満は個人的な欲求なんですけどね。

アビエイター(2004/アメリカ)

2008年06月08日 | 映画感想あ行

THE AVIATOR
監督: マーティン・スコセッシ
出演: レオナルド・ディカプリオ   ハワード・ヒューズ
   ケイト・ブランシェット   キャサリン・ヘプバーン
   ケイト・ベッキンセイル   エヴァ・ガードナー
   ジュード・ロウ      エロール・フリン
   アレック・ボールドウィン    ホアン・トリップ
   ジョン・C・ライリー     ノア・ディートリッヒ

 18歳で父母を亡くし大富豪となったハワード・ヒューズ。1927年、21歳の彼は、その莫大な財産を全て注ぎ込み、航空アクション映画「地獄の天使」の製作に着手。30年に同作を完成させると大ヒットを記録し、ハワードは一躍ハリウッド・セレブの仲間入りを果たす。やがて、人気女優キャサリン・ヘプバーンと出会い、2人は恋に落ちる。彼はその後も次々とヒット作を生み出す一方、航空会社TWAを買収し、自らの操縦で世界最速記録を次々と更新するなど、大空への夢も実現させていく。

 ハワード・ヒューズという名前は、アメリカ史でちょこっと、ハリウッド女優の逸話にちらほら見たかなという程度の知識で見ました。
 ハワード・ヒューズという人間が、成功したのも、まともな生活ができなくなったのも、あの「コダワル性格・性向」のなせるもの、結局彼に心の平安は無い。私の感想なんてそこに収まっちゃって大作なのにすいません…なんて申し訳なく思ってしまいました。あんなに長い映画なのに、見終わってなんとなく未消化な気分。
 ヘプバーン役のブランシェットはがんばりました。しかしベッキンセイルはきれいだし、悪くはないのに、私がエヴァ・ガードナーに対して持っている「美女の迫力」に対する畏敬の念に邪魔されてか、どうも不満。ジュード・ロウは何のためにわざわざ登場したのであろうか?など思い…きっと私は映画ビジネスについての描写が足りなく感じたのでしょう。航空機ビジネスについては何も知らないせいか、そういう不満は一切なしですから。

 TWAにしろ、パンナムにしろ今は昔の物語で、感慨を禁じえないってところがあります。
 ただ、ゼロ戦についてはどうなの?私の愛読書の一つが柳田邦夫「ゼロ戦燃ゆ」。ヒューズの設計図を剽窃したように言わせといていいのか、などつい本を引っ張り出してしまった。