虫干し映画MEMO

映画と本の備忘録みたいなものです
映画も本もクラシックが多いです

踊る海賊(1948/アメリカ)

2009年07月29日 | 映画感想あ行
THE PIRATE
監督: ヴィンセント・ミネリ
出演: ジュディ・ガーランド
   ジーン・ケリー
   ウォルター・スレザック
   グラディス・クーパー
   ニコラス・ブラザース

 叔母の世話になっている孤児マニュエラは、海賊マココに憧れているが、叔母に強いられ年配の市長ペドロと結婚することになる。しかし、役者のセラフィンと知合い、心は揺れる。一方、市長こそがマココと知ったセラフィンは自分がマココと名乗ってマニュエラをペドロから奪おうとする。

 いかにもこの時代らしいそつのないミュージカルでした。さすが!
 衣装もセットもきれい。ジュディ・ガーランドの部屋へ花飾りを伝っていくシーンなんか、心憎いばかりで口笛吹いちゃいそうです
 コール・ポーターの曲も素敵。
 ジュディ・ガーランドはどの衣装でも美しく魅力的、いや、スターですなあ…
 ジーン・ケリーはほかの映画よりマッチョで端正に見え、ダンスはパワフル「マココのダンス」なんか筋肉を圧倒的に感じます。
 
 さて、文句ないミュージカルでしたが、ここで大発見!
 ラストの見せ場でジーン・ケリーとアクロバティックなダンスを見せるニコラス・ブラザーズという素晴らしいエンタテイナーが!
 大急ぎで検索してみたら、ユーチューブで何件か見られました。足を棒にしてビデオ店や図書館の資料を探さなくていいなんて、ほんとになんて良い時代なんでしょう! 
 結構世に知られたダンサーのようです。今まで知らなかったなんて恥ずかしい!
 ジーン・ケリーがパワフルならば、こちらはアステアみたいに重力の働き方が一般人とは違うよなあ、と思わせるタップで、しかも品があります。
 主役の輝きも素晴らしいけれど、ニコラス・ブラザーズを見つけただけで大儲けでした。というわけで、気がつけば今回もビックリマークだらけ。でもほんとにすばらしいダンスでした。

リップスティック(1976/アメリカ)

2009年07月24日 | 映画感想ら行
LIPSTICK
監督: ラモント・ジョンソン
出演: マーゴ・ヘミングウェイ
   クリス・サランドン
   アン・バンクロフト
   ペリー・キング
   マリエル・ヘミングウェイ

 かなり前に見た映画で記憶違いがあるかもしれませんが、最近の事件に関して思い出したので。ビデオのレンタルで見ましたが、allcinemaのデータでは、まだDVD出ていないようです。

 主人公のマーゴ・ヘミングウェイが恵まれた容姿を活かしきれていないようにも感じたのを覚えています。さすがにトップモデルで、ライフルを構えた姿など、見事に絵になっていました。いまだに記憶によみがえります。弁護士役のアン・バンクロフトはかっこよかったし、なにより悪役がものすごい悪役っぷりで、こんなやつ木端微塵にしたれ!とうら若き頃の私が画面を見て叫んでました。

 今まで「2ちゃん」は敬遠していましたが、京都教育大学の集団強姦事件については、2ちゃんで状況を追っていました。被害者に対するひどい中傷には、それを止められない無力感でいたたまれないような思いでした。今回、2ちゃんへの認識もちょっと改まりました。
 この映画では、レイプされた美しいモデルが、被害を法廷に訴えるものの、そこで私生活を暴露され、中傷され、罵倒された揚句に強姦魔は解放され、さらなる悲劇を招く…という女としてやりきれない展開が続きます。映画なので最後にカタルシスは用意されていますが、実際はこうはいかんだろうなあ…という不安も残りました。
 相当昔の映画なのに、ほとんど今現在ネット上で同じような中傷が繰り返されています。
 京都の事件は、示談になり刑事としては終了したようですが、これを見るだけでも、複数の加害者と弁護士相手に法廷で闘え、とは19歳の女子学生には酷に過ぎます。

 2ちゃんの書き込みの中には
・レイプされたら本人が「犬に噛まれた」と考えて自己内解決すれば済む
・レイプ被害を訴えた女は浅慮で、自分の価値を下げることになる。
というようなひどいものもあります。
 あまりにもストレートで、惨くて、怒りなどの感情が動くより先にまず体が凍るようです。
 性犯罪は明るみに出た時に被害者のほうが加害者よりも苦しまなくてはならないのが現実です。
 だからこそ、事件を明らかにしてくれた被害者に同性として感謝し、少しでも心身をいたわってほしいと願っています。

 もっと眉に唾・頭はクールに対処しなければネットと付き合う資格はないのかもしれませんが、ちょっと怒ってます。

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 後記
 事件に関連する記事を追っていると、今は、アメリカでは被害者の支援団体の活動などが充実しており、何度も証言台で被害の事実を再現させられたりしなくて済むという情報もあります。日本でも一刻も早く支援体制が整えられますように。

スカイ・クロラ The Sky Crawlers(2008/日本)

2009年07月23日 | 映画感想さ行
THE SKY CRAWLERS
監督: 押井守
声の出演: 菊地凛子   草薙水素
    加瀬亮    函南優一
    谷原章介  土岐野尚文
    山口愛    草薙瑞季
    平川大輔   湯田川亜伊豆・合原
    竹若拓磨   篠田虚雪
    麦人     山極麦朗

 森博嗣原作のアニメ化。平和を実感させるための見世物として“戦争”が行われている世界を舞台に、死ぬことがなく思春期の姿のまま戦闘機のパイロットとして戦わされるためだけに生きる“キルドレ”と呼ばれる存在の運命を描く。

 少し前にDVDで見ました。
 最初の感想は「やっぱ大スクリーンで見るべき映画」というものでした。
 キルドレたちの個性を極力排除したような、まるで古いひな人形みたいな造形(たくさんいるから余計にそう感じる)、それに比べてやたらとリアルな空中戦闘シーン。リアルもデフォルメも色彩も隅々まで同質な感じで、押井監督らしいと言えばそうなのかも。大画面でその映像を楽しみたかったです。

 それはそれとして、見終わってなんとなく違和感・腑に落ちない・取り残された感がありました。
 例えて言うと、不条理劇を見て「?」状態で終わったような感じと言いますか。
 いろんな解釈ができると思うけど、私はハインラインの「フライデイ」のようなアイデンティティを他から規制された存在の物語を連想しました。
 

 で、原作読んでみました。
 私には苦手な部類の小説で、たくさんあるのでちょっと大変でした。そちらのほうはアイデンティティ小説でもあり、、妊娠小説でもありで、結論としては「アニメと小説は別物」でした。小説から入ると、アニメでのキャラのイメージの違いに戸惑ったと思います。小説でのキルドレはもっとユニセックスな感じです。草薙水素はもっとユニセックスを感じさせる声のほうがよかった、と個人的には思います。

ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!(2007/イギリス、フランス)

2009年07月21日 | 映画感想は行
HOT FUZZ
監督: エドガー・ライト
出演: サイモン・ペッグ    ニコラス・エンジェル
    ニック・フロスト    ダニー・バターマン
    ジム・ブロードベント    フランク・バターマン
   パディ・コンシダイン    アンディ・ウェインライト刑事
    ティモシー・ダルトン    サイモン・スキナー
   ビル・ナイ         首都警察警視

 ロンドンのニコラス・エンジェル巡査は、有能なあまりに同僚たちの反感を買い、田舎町サンドフォードの警察署に左遷されてしまう。そこでの相棒のダニーは脳天気な上に無類の警察映画オタク。その静かな街で明らかに不審な死が相次いで発生。ところが警察も町の人々も事故だと片付ける。納得できないニコラスは単独で捜査を進めるが…

 「巧い! 素敵! かっこいい!」

 私には他に申し上げるところがございません。
 ほんっとに久々に最初から最後まで心晴れやかに見られた快作!

 ゾンビ映画のパロディ「ショーン・オブ・ザ・デッド」のコンビ、エドガー・ライト&サイモン・ペッグの映画ですが、相変わらず唸りました。「巧い!」

 ストーリーやテンポの運びは軽快で心地よく、笑いが崩れすぎず、重いシーンもきちんとおさまり、登場するもの全て落ちをつけてくれているし、もちろんアクションシーンはガチにカッコよく素敵! 自転車にはぞくぞくしちゃいました。
 ただただ夢中になれるありがたい映画です。

 あ、クレジットなし出演のお二人、私はわかりませんでした。

恋は五・七・五!(2004/日本)

2009年07月09日 | 映画感想か行
監督: 荻上直子
出演: 関めぐみ    高山治子
   小林きな子   内山マコ
   蓮沼茜     田中弘美
   橋爪遼     山岸実
   細山田隆人   土山義仁
   高岡早紀    ヨーコ先生
   中村靖日    中村
   嶋田久作    三浦
   もたいまさこ  校長
   柄本明     爺ちゃん
   杉本哲太    高田マスオ

 統廃合を2年後に控えた松尾高校。校名を歴史に刻むために片っぱしから様々な大会への参加を宣言した校長に、気弱な国語教師・高田マスオは俳句甲子園への参加を命じられる。集められたメンバーは、なかなかクラスになじまない2年生の帰国子女・高山治子、外見重視でチア部をクビになったマコ、治子に憧れる1年生の不思議ウクレレ少女Pちゃん、写真部員・土山、野球部の万年補欠選手・山岸。

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 お話はだめなメンバーが目覚めて、仲間との絆を深めて、嫌味なライバルをやっつけてついに勝利!という王道ストーリーです。
 もちろん荻上監督のテイストですので、ぬるさ健在でそれほど燃え上がったりもしませんが、「めがね」や「かもめ食堂」に比べれば燃えているかな、と思いまする。高校生が競うお話ですから、当然ですが。

 私についていえば、この映画は導入部でまず泣かされてしまいました。

 肥満体形のマコが、「あんたがいると邪魔」とチア部を追い出されます。泣きながら階段を駆け上がり、自殺しようと屋上から半身乗り出したところに居合わせた土屋から「言い残すことは?」と問われます。そして彼女が叫ぶのが

 次の世は ましな私に 生まれたい

 泣けます。はげどうです。
 今は、何とか現実の私と折り合いつけてやってますので、それほどわが身の現実に傷ついてはおりません。
 でも、高校生くらいの時は頑張ってもなかなか着実な進歩がみられない己の実力にいたく自尊心傷つきまくりで、こう叫びたい衝動を抱えて生きていたように思います。それに今まで生きてきたうちで、一番容姿が気になる時代だったと思います。ああ、思い出すだけで入る穴を掘りたくなるような恥ずかしい時期だったなあ。
 メンバーそれぞれの造形やライバルたちのデフォルメもいかにも、それに繰り返しの使用も巧いですがパターン通りで類型的にも感じます。でもでも、ともかくこの一句(句と言っていいのかな?季語ないしね)でぐいっと胸の中に残った恥ずかしいものをつかまれました。

 ただ、家族で見ていたら下ネタ部分で男子高校生が逃げて行ってしまいました。
 個人での鑑賞がいいかもしれません。