虫干し映画MEMO

映画と本の備忘録みたいなものです
映画も本もクラシックが多いです

ONCE ダブリンの街角で(2006/アイルランド)

2008年06月17日 | 映画感想わ行
ONCE
監督: ジョン・カーニー
出演: グレン・ハンサード    男
   マルケタ・イルグロヴァ    女

 穴の開いたギターでダブリンの街角に立ち、歌を歌うストリート・ミュージシャンの前に現われたのは、チェコからのピアノを弾くことを楽しみにしている移民の女。二人は一緒にセッションを楽しむようになり、惹かれあっていくが…

 やさしい映画でした。
 心象描写的に流れる曲がちょっとレトロでソフィスティケートよりも率直、という感じで心のささくれを包んでなだめてくれるようです。
 主人公の男女もいわゆる片隅で生きる、優しさのために人生で損な役割を敢えて選んでしまうようなタイプ。
 そんな映画ですから、勝利的ハッピーエンドには程遠く、切ない涙がジンワリ…という幕切れ。

 でもねえ、こういう「本物の人生よりも、きっと少しだけ優しい世界」の純粋な共感や愛情、勇気とかを求めて私は映画見たがってるんだと思うのですよ。最近見た映画の中でこれがいちばん心なごませてくれたように思います。

 それにしても、世界は動いているんですねえ。
 ダブリンを舞台にしたものでは、つい最近のものまで、なんか寂れて取り残された感が漂っていたようでした。でも、この映画ではまだ壁や街並みが再開発の嵐に見舞われたりして古い面影が薄れていくという段階には見えないけど、活気があって移民を受け入れる側です。

ワールド・トレード・センター(2006/アメリカ)

2006年10月18日 | 映画感想わ行
WORLD TRADE CENTER
監督: オリヴァー・ストーン
出演: ニコラス・ケイジ ジョン・マクローリン
マイケル・ペーニャ ウィル・ヒメノ
マギー・ギレンホール アリソン・ヒメノ
マリア・ベロ ドナ・マクローリン
スティーヴン・ドーフ スコット・ストラウス
ジェイ・ヘルナンデス ドミニク・ペズーロ

 オリバー・ストーンということで考え込んでます。
 でも確かに、私たちが個人として把握できるのはじかに見たこと・聴いたことで過酷な体験を通してどこにその共感がつながっていくかということ。
 奇跡は奇跡でない無数の無念があるからこそ奇跡です。
 良く考えてまとめていきたいです。

若き日のリンカン (1939/アメリカ)

2006年04月27日 | 映画感想わ行
YOUNG MR. LINCOLN
監督: ジョン・フォード 
出演: ヘンリー・フォンダ 
    アリス・ブラディ 
    マージョリー・ウィーヴァー 
    ウォード・ボンド 

 イリノイの雑貨屋から、学校へ行っていないリンカーンが恋人(?)の励ましで苦学して弁護士となり、人々を動かし、無実の人を救う青春時代を描くJ・フォード作品。

 100均ショップのダイソーで買ってきたクラシック映画DVD。ちょっと字幕に見難いところがありましたがまあまあです。315円では贅沢は言いません。

 なんたってリンカーンですから偉人伝なのかな?
 でもいつの間にか「法廷で真犯人を追い詰めての大逆転劇」でペリー・メイスンみたいな感じになってました。もちろん、ペリー・メイスンよりこちらのほうが先でしょうが。
 やはり「この偉い人は、実はこんなに素敵な人だった!」という映画のようですが、さすがに気持ちのいい男を描くのに長けたジョン・フォード監督らしく、リンカーンを正義漢で誠実でしかも柔軟性とユーモアに富んだ男性に描き、臭さもそれほど感じさせません。
 ヘンリー・フォンダも登場シーンから顔に落ちる影、手足の長さが実物を髣髴させます。お行儀悪く長い足を机の上などに上げているシーン、何か足を折りたたむように扱っているシーン、また身体の長さを画面の横方向に使っているシーンが多く、この不器用にさえ見えそうな足の長さを意識して強調しているみたい。
 全編にわたってリンカーンがなんとなく垢抜けていないところや、袖から飛び出したカフス、つんつるてんズボンなどがまたごつくてリンカーンらしいイメージです。

 これ見てて思ったけど、リンカーンって、なんだか日本の水戸黄門を連想させます。「庶民に伝説を生み出させる存在」という点が似てるかな、と思いました。

私の頭の中の消しゴム (2004/韓国)

2006年02月28日 | 映画感想わ行
A MOMENT TO REMEMBER
監督: イ・ジェハン
出演: チョン・ウソン   チョルス
    ソン・イェジン   スジン

 幸せのさなかで若年性アルツハイマー病で記憶を失っていく妻と、最愛の人に自分を認識してもらえない悲運にも、彼女を愛し続ける夫。

 私は韓国映画・ドラマなんとなく苦手。
 さすがに「冬のソナタ」は苦手だけど、ストレートでほかの人が惹かれる魅力が理解できるような気がしたし、「猟奇的な彼女」もテンポが良くてそこそこ楽しめたけど、これは2度見てみたけど、どうも感覚がすれ違ってばかり。
 背中の痒いところを一生懸命かきむしってるのに、一番痒いところに当たらないというような感覚。

 主人公の二人は美しい。でもそれぞれのディティール描写がなんかずれてる。
 社長令嬢と肉体労働者の組み合わせで、その背景の落差の表現が、二人がそれぞれに持っている家庭やとりまく人とのかかわりの違いが浮き出てこそ、と思うんだけど、う~んどうでしょう。彼の持つセンスが土方時代からもっと描写してれば、とか例えばあの暴力の爆発は、スイッチが入ってしまうきっかけをうまく描いたほうがいいんじゃないかな?チェルスの母に関しては、きっと国民性の違いで受け取り方が違うのでしょう。
 お医者さんも、ああいう外見になる必要はあったのだろうか?
 要するに、泣けずにいろいろ考えちゃったのでした。
 韓国映画はまだまだおそるおそる近づくというものです。

我輩はカモである (1933/アメリカ)

2005年06月06日 | 映画感想わ行
DUCK SOUP
監督: レオ・マッケリー 
出演: グルーチョ・マルクス 
    チコ・マルクス
   ハーポ・マルクス 
   ゼッポ・マルクス 
   マーガレット・デュモント
   ルイス・カルハーン 
 フリードニア共和国は財政難に陥り富豪のディスデル夫人の援助なしには。彼女はファイアフライ(グルーチョ)が宰相になるのを条件に援助を承諾。隣国の指導者トレンティノ(L・カルハーン)はフリードニア乗っ取りを企み、チコリニ(チコ)とピンキィ(ハーポ)のスパイ・コンビを送り込む。

 傑作だと思う。但し、私にとっては面白さよりは映画史的な意味で。
 面白いんだけど、これはこの映画以前にパロディを見すぎて、ほとんどのシーンにデジャヴが感じられるという困った作品。それだけ偉大な作品の証明と言えるのだが。「あれはこれだったのか!」と発見納得しちゃう箇所が多くて、作品自体を楽しもうと頭を切り替えられたのは3回目くらいでようやくだった。
 そもそもが、マルクス兄弟の笑いは今ひとつ思い切って笑えない。一番初めに見たのが「二挺拳銃」だったのだが、オープニングすぐのギャグのブラックさに引きつり、そのままほとんど引きつり笑いで最後まで。素敵な歌と音楽が入る映画が多く、そこはすごく好きだし、チコとハーポの動きの素晴らしさや、グルーチョの人類の(と言うほどキツイ…英語がそれほどわかってないけど、そう思う)悪意と愚かさをギャグにして笑いのめす腕前には呆然と感心しても、やはり顔が引きつる。私のアイドルは生真面目なキートンなのだ。
 それでもやっぱりこのアナーキーさ、シュールさには、自分が笑うかは別にして今の感覚で見て敬服してしまう。
 映画として安心してみていられるのは「オペラは踊る」なのだが、これはどうしても傑作に数えずにいられない、アナーキーでナンセンスに満ちた引きつり笑いの映画。

WATARIDORI (2001/仏)

2005年04月18日 | 映画感想わ行
LE PEUPLE MIGRATEUR
総監督: ジャック・ペラン 
共同監督: ジャック・クルーゾ ミッシェル・デバ

 鳥の「渡り」を追ったドキュメンタリー。

 これもまたどうやって撮ったんだろう、という映像てんこ盛りの映画。
 上からの絵のいくつかや、そのほかにも明らかにCG使ってるんだろう、というところもありますが、驚異なのは地上から捉えた絵、かなり近接して撮った絵は、時間かかったろうな、すごいな、とひたすら感心。

 相手が鳥ですから、やっぱり人がらみとかでメリハリがつけてありますが、人間と鳥の接点というのは鳥にとってはほとんどありがたくない状況ばかりです。環境問題も考えなければならないようになっています。

 でも、動物がその本来の場で動く時の力強さ、美しさは、無条件に感動させるものがあります。100分あまり飽きずに見られましたが、本当は「ニルスの不思議な旅」のようにお話作ってくれたほうが私は好きだな、とスタッフの熱意と労力と苦労に感動しつつも思ってしまった。

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笑の大学 (2004/日)

2004年11月08日 | 映画感想わ行
監督: 星護
原作・脚本: 三谷幸喜
出演: 役所広司 (検閲官・向坂) 稲垣吾郎(作家・椿)
 昭和15年。中国戦線は拡大し、庶民の娯楽も取締りの対象となっていたこの時代、軽演劇も脚本段階で厳しい検閲を受けていた頃、警視庁では検閲官・向坂睦夫が“笑の大学”の座付作家・椿一の台本に無茶な注文をつけていた…

 これも見ようかどうしようか迷ったんですが、結局朝の9時から11時過ぎまでの間に見られたのはこれだけでしたし、見てきました。
 結論から言っちゃうと、作品としての完成度はやっぱ舞台が上じゃないかなあ、と思いました。と言っても、私はナマの舞台でなくてテレビで深夜中継されたのしか見てないんですけどね~ そのときの衝撃はけっこう大きかったんです。それが三谷幸喜初体験で以後注目していろいろ見ましたが、当たりもあるけどはずれもありました。
 今でも座薬とか、カラスとか内容けっこう覚えています。検閲官・西村雅彦に椿・近藤芳正だったと思います。すごく面白くて、幕切れ後が切なくなりました。

 メディアが変わって、かなり変わったものになっていました。
 当たり前ながら役者が変われば、人物のイメージも変わるんだなあ、と改めて思わされました。
 私は椿のイメージが舞台で固定されちゃってるので、稲垣吾郎は良くやってますがどうしても点が辛くなってしまいます。近藤さんみたいなああいう丸っこいムードの丸い眼鏡が漫画風に似合う椿が良かったなあ…なんて。
 役所広司はさすがですが、ちょっとオーバーアクション気味に見えてしまう。それに役所広司の重量感は、プラスかマイナスか微妙なとこじゃないかなあ。2人を取り巻く密室の感覚はすごく感じたけど、スピードと軽みがもうちょっと欲しかったような… 高橋昌也さんがとても雰囲気だしてらしたのでほかにもつい欲張りたくなっちゃう。
 7日間の物語なんだけど、時間の流れとか、時代が急展開していく様を、「映画だからこそ」の部分で見せてくれて、そこは良かったんですけど。やっぱり記憶の中で昔の面白さが膨らんでいって、映画の邪魔してるのかもしれません。終わった後に残るものは舞台版のほうが重みがあったように思う。
 あ、イチャモンつけちゃったけど、よく笑ったし、最後はじんわり涙の素敵な映画でした。

ワンス・アポン・ア・タイムin チャイナ天地大乱 (1992/香港)

2004年07月25日 | 映画感想わ行
監督:ツイ・ハーク
出演:ジェット・リー ロザムンド・クワン ドニー・イェン


HERO外伝で物足りなかったら、どうしたってこれ!
ワンス・アポン・ア・タイムinチャイナ 2作目

 ジェット・リーの理想的にかわいくて最高にかっこいい英雄もノリにノってるし、アクションはクライマックス白蓮教教祖との空中戦から、どことなく童顔に化粧のドニー・イェンとの対決まで、本当に息もつかせないおもしろさ!
 孫文なんかも登場して、ドラマとしてもスケールアップしてるようですが、ともかくアクショ~ン!!

 マトリックスは映像のスタイリッシュなとこは勝ってるけど、アクションではもちろん負けてます。

ワイルド・ワイルド・ウェスト (1999/米)

2004年04月26日 | 映画感想わ行
これもつい借りてしまいました、というDVD。

監督:ハリー・ソネンフェルド
出演:ウィル・スミス ケビン・クライン ケネス・ブラナー サルマ・ハエック

 やっぱり何度見ても、役者が惜しい!と思ってしまう。
 荒唐無稽な面白さを狙って、大道具とか、そこそこには面白いけど、同じ監督の「MIB」のほうが成功してるよね。
 惜しいのは、ウィル・スミスとケビン・クラインの掛け合い。もっと盛り上がりそうなのに。それにせっかくケネス・ブラナーを悪役に使ったんだからもっとハジケそうなのに。この際、彼の大得意のシェイクスピアで全部セリフ行っちゃうとか。彼ならそのくらいのストックはありそう。
 それに、もっとばっちり決まった絵があればねえ!(文句ばっかりだな… いえほんと、そこそこは面白かったんだけど)
 サルマ・ハエックはやはり添え物の花ですね。