虫干し映画MEMO

映画と本の備忘録みたいなものです
映画も本もクラシックが多いです

マッチポイント(2005/イギリス、アメリカ、ルクセンブルグ)

2008年05月25日 | 映画感想ま行
MATCH POINT
監督: ウディ・アレン
出演: ジョナサン・リス・マイヤーズ   クリス・ウィルトン
   スカーレット・ヨハンソン    ノラ・ライス
   エミリー・モーティマー    クロエ・ヒューイット・ウィルトン
   マシュー・グード     トム・ヒューイット
   ブライアン・コックス    アレックス・ヒューイット
   ペネロープ・ウィルトン    エレノア・ヒューイット

 イギリス、ロンドン。元プロテニス・プレイヤーのアイルランド人青年クリスは会員制テニスクラブのコーチとして働き始める。実業家の息子トムと親しくなり、その妹クロエと付き合い始める。だが彼は、トムの彼女であるアメリカ人女優ノラに惹かれていく。

 上流階級の娘との結婚、その邪魔になる女を殺そうとする…という部分は結婚の前後の違いこそあれ「アメリカの悲劇」(陽のあたる場所」)と大体同じ。
 でも、ここにはエリザベス・テーラーがいない。輝くばかりに美しく、上流階級で磨き上げたような無垢で穢れのない存在がいない。
 上流への足がかりになる妻のクロエは無邪気そうだけど、過去にスキャンダルがあり、だからこそしがないテニスコーチ出身のクリスとの結婚。そして夫にとって自分が上流社会へとのつなぎ目であることも十分承知。
 ノラは美しく、男が無視できない存在。だがそれは彼女にとってメリットばかりではないことはたやすく見て取れる。
 結局トムは彼女に飽きた。トムに捨てられたノラは、クリスにも捨てらるばかりか、殺されてしまう。彼女は男にとって欲望の対象、子供にとって一時欲しくてたまらなくなるおもちゃのようで悲しい。たばこを吸うシーンがあるのが彼女だけ、というのも何か暗示的。

 努力の何のというけれど、この映画で描かれるのは「裕福で名門に生まれ合わせたラッキー」「たまたまチャンスに恵まれたラッキー」と、「努力も報われず、出会いにも恵まれなかった不幸」の並列。

 死に際になったらクリスは「自分だって苦しんだ」なんて言ってるんじゃなかろうか。
 とことんシニカルな後味の映画だった。

パンチドランク・ラブ(2002/アメリカ)

2008年05月24日 | 映画感想は行
PUNCH-DRUNK LOVE
監督: ポール・トーマス・アンダーソン
出演: アダム・サンドラー    バリー・イーガン
    エミリー・ワトソン    リナ・レナード
   ルイス・ガスマン    ランス
   フィリップ・シーモア・ホフマン    ディーン・トランベル
   メアリー・リン・ライスカブ    エリザベス

 バリー・イーガンは、相棒のランスと共にロサンゼルスのサン・フェルナンド・バレーの倉庫街でトイレの詰まりを取るための吸盤棒をホテル向けに販売している。突然キレて発作的に破壊行為をしたり、精神に問題を抱えている。そしてマイレージポイントを集めて飛行機に乗ろうと計画している。ある日バリーの前に一人の女性が現れる…

 痛い映画なんですが、今の気分にジャストフィットしたみたいで、ラストでちょっと心がほのぼの安らいでました。
 現実的には、こういう男には近寄らなくて良ければ私は絶対に近寄りません。彼の抱える問題の片鱗が見えただけでさっさと撤退します。でも彼の衝動には身につまされずにいられません。
 人生の不公平とか、カオスでしかない世界とか、人間織り込み済みで生きていかなにゃあ世間様を渡れんわい、と思っていてもそう簡単には割り切れませんです。バリーは困ったチャンには違いないですが、アタるのはガラスやトイレで、決して人を傷つけません。わかって人を傷つけているDV男などとはちゃんと区別してほしいのであります。
 プリンへの彼のこだわりに、最後までなんかやっぱり本末転倒…と思わず苦笑させられます。うん、自分の願望とか形がつかめるようになってよかったねえ。

スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ(2007/日本)

2008年05月14日 | 映画感想さ行
監督: 三池崇史
出演: 伊藤英明    ガンマン
   佐藤浩市   平清盛
   伊勢谷友介   源義経
   安藤政信   与一
   堺雅人   平重盛
   小栗旬    アキラ
   田中要次   平宗盛
   石橋貴明    弁慶
   木村佳乃    静
   香川照之    保安官
   桃井かおり    ルリ子

 平家の落人の埋蔵金を狙い、よそ者が押し寄せ、やがて村は、平清盛率いる平家ギャング(赤軍)と、源義経率いる源氏ギャング(白軍)の抗争の場になる。そこへ、一人の凄腕ガンマンがやってきた…

 最近、何見てもあまり面白くありませんで、映画見ながら余計なことばっかり考えてる始末で、私の感性とやらはすっかり錆びきっちゃったのかなあ、と思ってました。
 この映画見ていても、ファーストシーンの書割のようなバック、うそくささ満載の大芝居という、いつもだったら喜んでかたずをのんでしまうであろうものを見ていても、なんとなく乗れずおりましたが。

 中盤、1時間も過ぎてから調子に乗ってきました。
 ドロドロ、血まみれ、凶悪の笑いのてんこ盛りを見ていてうれしくなりました。
 ええ、もうギャハギャハ笑わせていただきまして。
 あのマカロニウェスタンの名作を踏襲していまして、そのなぞり方も気持ち良かったです。
 最後の決闘は伊勢谷友介が美しく、獲物に刀を持ってきたところも「キャー!かっこいくていいわ!」なのでした。
 その流れからいえば主人公が痛めつけられるシーンは、もっとこってり見せてもよかったのではなかったでしょうか?

 まあ、皆さん気持ちよさそうでしたね。特に佐藤浩一さん、タランティーノさん。
 源平へのなぞらえについては、元祖宗盛さんがちょっとお気の毒でした。
 ところで、ラストの雪はいきなり積もってましたが、まさか「LOVERS」のような事情ではありませんよね? 決闘をあの色彩で彩るためのものですよね。

 このあと、一気に「荒野の用心棒」「続・荒野の用心棒」を見ました。晴れ晴れする傑作ですねえ!
 おもしろかったけど、やっぱ「ジャンゴ」はまだ勝てないですねえ。

趣味の問題(2000/フランス)

2008年05月08日 | 映画感想さ行
UNE AFFAIRE DE GOUT
監督: ベルナール・ラップ
出演: ジャン=ピエール・ロリ
   ベルナール・ジロドー
   フロランス・トマサン
   シャルル・ベルリング
   アルチュス・ドゥ・パンゲルン
   ジャン=ピエール・レオ

 レストランで働く青年ニコラは、実業家フレデリックに専属の試食係として雇われる。やがて、フレデリックはニコラを食の好みばかりでなく、あらゆる面でつくりかえようとし始める。

 キモチワルイお話です。
 すべて満ち足りたらしい生活をしている実業家が望んだものは、自分のコピーのような人間を奴隷にすることだったんでしょうか。屈折しきった支配欲と自己愛の極致でしょうか?
 素人が軽々に言うことじゃないでしょうが、ドメスティックバイオレンス関係とか、共依存なんて言葉を連想します。ここでも一方が圧倒的に強者ですが。

 いや、それで、中年にしても、青年にしてもさして美しく見えないのが困ったというか…
 スキーシーンはテレビでも目が痛かった。
 共感とか、感情移入とかを拒んで最後まで私をドン引きさせたという映画なのでありました。