虫干し映画MEMO

映画と本の備忘録みたいなものです
映画も本もクラシックが多いです

エイリアンVS. プレデター (2004/アメリカ)

2005年08月30日 | 映画感想あ行
ALIEN VS. PREDATOR
監督: ポール・W・S・アンダーソン
出演: サナ・レイサン   アレクサ・“レックス”・ウッズ
    ラウル・ボヴァ     セバスチャン・デ・ローサ
    ランス・ヘンリクセン      チャールズ・ビショップ・ウェイランド
    ユエン・ブレムナー     グレーム・ミラー
    コリン・サーモン      マックス・スタッフォード

 巨大企業ウェイランド社に衛星から南極大陸の地下深くで謎の熱源が発生しているというデータが送られる。経営者で億万長者のウェイランドは、環境問題専門家のレックスら各分野の専門家を招集、自らも現地調査を開始する。問題の場所に辿り着いた調査団は、そこで巨大ピラミッドを発見。なんとそこは、100年周期でエイリアンたちと若いプレデターたちが戦う儀式”の場所だったのだ…。

 どっひゃあ!…なお話でした。
 真剣にパロディだろうか、と思っちゃったし。
 製作にウォルター・ヒルの名前もありましたね。
 で、コピーで
 「――どちらが勝っても…人類に未来はない。」って…

 嘘つき。

 最後なんか、もしかしたら抱き合ったりしないか、とかそれが心配でドキドキしてしまった。

 これ以降のプレデターどうなるんでしょう?
 それが一番心配です。

 いや、ランス・ヘンリクセンだけちょっとましだったけど、出演者ほとんどいいとこなしに死んじゃうんだもの。もうちょっとがんばらないと、モンスターの強さに怖くて心臓ドキドキもできません。

ロング・エンゲージメント (2004/フランス)

2005年08月29日 | 映画感想ら行
UN LONG DIMANCHE DE FIANCAILLES
監督: ジャン=ピエール・ジュネ
出演: オドレイ・トトゥ    マチルド
    ギャスパー・ウリエル     マネク

 第1次大戦当時。恋人のマネクの戦死の報を聞いたマチルド。だが彼女は「恋人が死んだら私にはわかる」という自分の直感を信じ、マネクを探し続ける。

 これは、何度も何度も予告編を見て、結局映画館では見られなかった映画。予告編では思いっきり感動作なムードだったが、これはジンとはするものの、やはり、ジャン=ピエール・ジュネ監督の映画だった。さすがオドレイ・トトゥで、一筋縄ではいかないわが道を行くヒロインである。そのうえでみんなを協力させてしまう、また自分の弱みさえ利用するパワーも納得させてくれる。
 やはり画面の印象が美しい。色目は抑えてあるし、それほど多くの色を使っていない。それに強い色・深い色を注意深く制限してあるようで、それだけに闇の色が2箇所ほどすごく印象が強い。衣装や背景がくすんでいるのに肌の色がきれい。
 それに、きつすぎないテンションのサスペンスが、マネクと共に死地に丸腰で置き去りにされた恋人の仇を討つティナ・ロンバルディ役の武器なんか、いかにもジュネ監督らしいと思う。
 塹壕のどぶ泥のような状況もすさまじく「西部戦線異状なし」を連想させるようで、実に戦争と市民のかかわりに、架空戦記などのヒロイズムと無縁にリアルに迫るものだったと思う。
 ティナ役マリオン・コティヤールの美しさにも瞠目。ジョディ・フォスターもさすがで、彼女の役にピタリとはまりこんでいた。

男装 (1935/アメリカ)

2005年08月28日 | 映画感想た行
SYLVIA SCARLETT
監督: ジョージ・キューカー
出演: キャサリン・ヘプバーン
    ケイリー・グラント
    エドマンド・グウェン

 父が会社の金を博奕に使い込み、母は病死。故郷マルセイユを後にし、父の祖国イギリスへ官憲の追跡を逃れるため男装して渡るシルヴィア転じてシルヴェスター・スカーレット。 船の中で、親子はハンサムな男と知り合いになるが…

 興行的にはこけた映画だそうです。なんとなくわかる。今でこそ、あのヘプバーンの初々しい少年の姿が、その声が見ていてキャアキャア言っちゃうようなものだけれど、当時はヒット作もない主演女優に、主演がどうもクーパーに隠れがちだったグラントでやっぱり弱いかも。それにすっきり爽やかというより、苦味を残してる結末。途中もまるで舞台劇のように感じられるやり取りが続いたり、華やかな映画ではない。
 サイレント時代からのスター女優のふっくらした柔らかそうな頬と唇、パッチリした瞳を見慣れると、このキャサリン・ヘプバーンのいささか骨ばった頬と大きな口はやはり異質なものかもしれない。でも、髪をばっさりと切ったその男装姿はとってもキュート。結局ロマンスものだけれど、ファーストシーンでの冴えない娘より、ひらりと柵を超えたり、胸を張って闊歩する少年スタイルは誠に颯爽としてドレス着てるよりもキュート。あまり女の肉体を強調しない細い少女姿もまあいいけど、美少年というのは男にとっても女にとっても、特殊な存在なのかなと思わせる何かがプラスされるようだ。
 出てくる男は程度の差はあっても、父親もふくめてしょうもない男たちばかりだけれど、それに絶望もせずフォローしながらついて歩く道徳軸の正常な娘を演じている。
 ケイリー・グラントは、苦労するヤツは馬鹿だと思ってる見た目のいい詐欺師。ボードビル仕込らしい軽やかな踊りや歌やピアノまで見せてくれるし、まだ一途で物慣れない少女と恋愛遊戯の刺激を求める女性に対し、その処し方がなかなか粋に感じるラスト。悪い男をさほどの嫌悪感無しで見られる。
 さすがはジョージ・キューカー監督で、キャサリン・ヘプバーンが可愛い。それにケイリー・グラントの明暗のバランスを微妙にブレンドできる独自の持ち味が発揮されてたんだなあ、と思った映画。

 この邦題も、もうちょっと考えられなかったのかな。もっと含みのある、それだけで作品といいたくなるような邦題もいっぱいあるのに、ちょっとストレートに過ぎるようにも思う。

台風・ドラクエ8・夏休み

2005年08月26日 | 日記・雑記
 25日の夜はだいぶ荒れましたが、26日の朝には、空は曇っているけれど風はなく、何とか納まったようです。

 昨日は突然停電でも怖くないものをしようと思って、本と「ドラクエ8」で過ごしました。ドラクエはほかのと変わらず8でも迷子状態です。ベルガラックへ行こうと思ってるのに、ついたところはサザンピーク。いえ、レベル上がるからいいけど…この辺がゲームのちょっと辛いところ。本だと主人公が苦労してるのをドキドキしながら読んでればいいんだけど、ゲームはプレイヤーの方向音痴が影響しちゃうから。ストーリーからの無茶な逸脱は出来ないけど、寄り道や迷子もゲームの醍醐味だと思ってせっせとモンスターと闘ってます。

 夏休みも後数日なので、自由研究や宿題の追い込み指導で昼が忙しいです。
 今年は社会科資料問題の解き方が苦手という子に、資料をまとめてレポートを書くというのを教えていましたので、今のところ駒ヶ根市の人口推移とか産業別・年齢別人口とかに詳しいです。ほとんどすぐ忘れるけど。数年前には太陽系について調べたので、以来、プラネタリウムの宇宙探検もので木星の衛星の数数えたりするようになりました。
 いやほんとにどうでもいいような知識ばかり増えるようです。

 夏休み過ぎたら、映画にやっといけるな。

ダメな人のための名言集/唐沢俊一

2005年08月24日 | 
幻冬社文庫

 世に名言集というものは数々あり、だいたいが「努力・誠実・信頼」とか、美徳を謳い、努力と信念で成功を収めた人の実例集みたいなのが多いんではないでしょうか。中にはビアスの「悪魔の辞典」とか、アランの「定義集」にも時々皮肉なのもありますけど、日めくりカレンダーに書いてある偉い人のお小言みたいなのが目に付きます。
 いつも思うのは、家康の「人生は重き荷を負うて長き道を行くが如し」とかいうのがありますが(記憶が性格でないのでこの通りじゃないですが)私としては、是非、ゴールを教えていただきたい、と思うのです。目指すところが死だけだったら、荷物投げ捨てて遊びながら行っちゃいますよ。日々の楽しみがあるから、多少の我慢もして生きていこうと思うので、我慢だけの人生ならやってられない。と、私のイチャモンはともかく、この名言集はそれと違って読後とても爽やか。

 そもそも、冒頭がグルーチョ・マルクス
 私を見なさい。
 無一文から身を起こして、独力で今の極端な貧乏にまでなった男だ。


 さすがグルーチョのギャグですわ!肩の力一気に脱力しません??

 それにジョン・ウォーターズ監督の「ピンク・フラミンゴ」のあのディヴァインの葬儀にウーピー・ゴールドバーグが花輪につけて贈った言葉。
 ごらん、ほめるとどうなるか。

 ディスコの色物ダンサーでドサ回りをしていたディヴァインは、映画によって売れっ子になり、多忙を極めて心臓麻痺で亡くなったそうです。
 しみじみ噛み締めたい言葉です。ゴールドバーグも実にわかっているというべきですね。(でも「ピンク・フラミンゴ」は一度見ればたくさんです。)

 SF映画などに博識なコミックブック編集者ジェフ・ロヴィンの名言。
 この映画(注・「海底一万リーグからの妖怪」)は、1950年代後半に公開された数多くの低予算SFモンスター映画のの一つである。しかし、地球の直径が約1万三千キロしかないのに、海底一万リーグ(約五万キロ)というのは、この生物も辛い目にあったに違いないという点は指摘しておかなければならない。

 ギャーハハハ!これは正確さをよしとするか、それともインパクトをよしとするか人間のタイプの話に振られているけど、でもね、モンスター映画は突っ込みどころはあってあたりまえで、ただそれをいかに面白がらせてくれるか、こちらの気持ちをそれなりの、ハチャハチャでも、ホラーでも、それなりのスポットにきちんと落としてくれるかになるんだよね、などと昼のBSの「水爆と深海の生物」(1955/アメリカ)の録画など見ながら大笑いしたのでした。

 これは第1章の「全ての努力が無駄になった時に、つぶやいてみたい名言」からの引用ですが、「善人過ぎる彼(彼女)に一言言ってやりたいときの名言」などは、実に、実に心なごみます。

ウォルター少年と、夏の休日 (2003/アメリカ)

2005年08月23日 | 映画感想あ行
SECONDHAND LIONS
監督: ティム・マッキャンリーズ
出演: ハーレイ・ジョエル・オスメント      ウォルター
    ロバート・デュヴァル     ハブ・マッキャン
    マイケル・ケイン     ガース・マッキャン
    キラ・セジウィック     メイ

 1960年代、父をなくした14歳の少年ウォルターは、自分を十分に見ようとしてくれない母のメイに押し付けられるようにして2人の大叔父のもとで夏休みを過ごすことになる。電話もテレビも無い家で、セールスマンを銃で脅して追い払うような偏屈なおじたちは、大金を持っているとの噂がある。
 仕方なく共同生活を始めた3人。そしてウォルターは古い美しい女性の写真を見つける。

 泣けた。
 原題の“LIONS”を見ると、明らかにおじさんたちに主体があるのに、邦題は子どものほうになっちゃってる。ウォルターが二人の男の記憶をついで生かしていくには違いないけど、でも、無為に生きるのを頷じ得なかった誇り高きライオンたちの物語だもの、もう一寸そこのところが活かせなかったかな。それにウォルターは心のよりどころ、ホームを見つけるのだからどうも「休日」というのも抵抗ある。
 昔語りのシーンの、ハリウッド冒険映画のような画面はうれしくなる。全体にナチュラルな色なのに、そこだけ色調から違って、それもいかにもオトギバナシ風にきらびやかで、でもありそうでなさそうで…虚実のあわい、って感じで良い。若い頃を演じた役者も雰囲気があって良かった。特に眼鏡の彼が素敵。
 実力があってどっしりとしてしかもやんちゃなおじいさんたち二人の素敵なこと!さすがはマイケル・ケインとロバート・デュバル。それにオスメント君の最初のいかにも飢えたような母に向ける縋るようなまなざしと、映画のラストの姿勢から伸びた、しっかりした表情の違いはたいしたもの。しかし、彼はどういう役者になるのでしょうか。
 すっきりと爽やかに泣ける映画。

王様の漢方 (2002/日本・中国)

2005年08月22日 | 映画感想あ行
GREATWALL, GREAT MEDICNE
漢方道
監督: ニュウ・ポ
出演: チュウ・シュイ    リ・レン
    渡辺篤史    市川一雄
    ノーマン・リーダス    ノーマン
    沢本忠雄    大山忠
    中山一朗    中村英雄

 日中国交正常化30周年記念の日中合作映画。
 市川の経営する小さな貿易会社は後発大企業に押されて倒産寸前。ヤクザの取立てに切羽詰った彼は、自分の長年の持病を一瞬で治した中国の名漢方医を尋ねる治療観光ツアーを思いつく…

 夜中に目が覚めて、それほど集中力も無くぼー~っと見始めた。展開は読めてしまうのだが、意外にも目がパッチリと覚めて、でも疲れた神経に障るところが無い、優しい良い映画だった。名医李先生と沢本忠雄以外は日中キャストがそれほど(私には)おなじみでない人ばかりで新鮮だった。ノーマン・リーダスのほうがよく見てる。(ミミックとか、ブレード2とか)
 そのまま特典映像をほとんど見てしまった。幸福薬局の先生の漢方案内も熱心に見て、思わず行きたくなっちゃったほどである。
 李先生は、万人が夢見る理想の医師ですね~ 優しくて腕が良くて、不安を受け止めて包み込んでくれる。見ていて中日友好はどっか行っちゃって、この李先生の大人の風格に見とれてしまった。高々3年前なのに、今のこの日中にはらむ不穏な空気ってなんだろう。

 お嫁さんは鄙にしては美人だなあ、とか安直に過ぎる展開とかチラッと思うけれど、ラストのグレートウォールの映像には圧倒されてしまう。

 特典映像の撮影中に目撃されたUFO、私よく見えません~!

アイヌの昔話/萱野茂

2005年08月21日 | 
平凡社ライブラリー

 今年の夏は、アイヌ展や縄文展などの博物館の催し物にかなり出かけてきて、道具類や生活用品を見ることが出来た。もちろん年月にして数千年を隔てる人びとであるし、アイヌ=縄文人説を唱えるつもりもない。他の時代のものでも実際に生活に使い、使い込まれたであろう品物の丹念な出来に驚くが、今に残された数々の細工物の精巧な細工にたっぷり感動してきた。
 石器しかない縄文時代に、木を切り出して作った器の薄さ、飾りの細やかなこと。アイヌの衣装のまったく無駄の無いつくりと意匠に優れた刺繍やカットワーク。鮭革の着物や靴といった自然の恵みの徹底的な利用。アイヌの人は男は木彫りと狩りが出来て一人前、女は刺繍や裁縫、編み物など生活技術が確かになってこその成人という社会だったみたいです。
 それで、自分が使い込むものだからこそ、丁寧に愛着持って作ったのか、とか思ったんだけど、疑問もあって、縄文時代でも土器なんかは工房があって、ある程度専門生産やってたんだろうってことになっているではないですか。どうなんでしょうねえ? 

 まあ、そういう興味からこの「アイヌの昔話」を読んでみました。
 たった一人でアイヌの文化を守る活動を始めた萱野茂氏の集めた昔話集。
 最後に教訓がついて、生活の知恵総覧のような趣もあります。自然と共存して生きる人びとですから、どんなものにも神様の存在を見ていて、それぞれの神様の人間との関係が面白い。人間にありがたがられると神様うちで幅がきくようになる、とかまるで勤務評定のようでおかしい。
 それに、生活のなかで語られたものだからこそ、生活が反映しているようだ。
 食べるもの、その食べ方、そして着るもの、しらみの話など、リアルに感じられる。熊もだけれど、しらみはけっこう登場していて一緒に生活しとったんだなあ、と思うし、「着物のすそを引っ張っておちんちんを隠す年頃」なんて描写には、定型の言い回しではあろうが、あの華麗な衣装がどのくらいのサイクルで作りかえられるものだったのか考えてしまう。
 そして幸福な生活というものが「何が食べたいとも、何がほしいとも思わず暮らす」ということになる。やっぱり飢えずにいるのが難しい生活だったのかなと思う。

 アイヌ語の語りをカタカナで書いたものも納められているが、これはほんとは音で聞きたいところでしょう。
 たった一人がはじめた一歩が、今のアイヌ文化を守る取り組みと、「土人法」であたかも劣等民の如く扱われていたアイヌの人々の誇りを取り戻す元になったようで、その点もすごいと思うものです。

================
 ここ2、3日体調がよくなかったので本読んで暮らしていた。土曜には「チーム・アメリカ」を見に池袋へ行こうとお誘いがあったのに行けなかった。悲しい。「英語で読む日本史」(講談社)も読み始めた。内外一流のジャパノロジストが書き下ろす日本史。江戸と明治から読み始めた。昭和まで終わったら、鎌倉へ戻り、そこからまた最後まで読んだらはじめにさかのぼろうと思う。受験時代の勉強法と同じ順番。ページ数も限られているし、それぞれの体制の枠組みからのアプローチが多いみたいな気がする。訳語も、何を選んで書いているかも刺激的で面白い。
 ところで旗本ってbannarmenていうのね。思わず看板かかえた侍の姿が浮かんじゃった。

アニーよ銃をとれ (1950/アメリカ)

2005年08月20日 | 映画感想あ行
ANNIE GET YOUR GUN
監督: ジョージ・シドニー
出演: ルイス・カルハーン     バッファロー・ビル
    ハワード・キール     フランク・バトラー
    ベティ・ハットン     アニー・オークリー

 実在の女性ガンマン、アニー・オークリーをモデルにしたミュージカル。野育ちの射撃の名手、アニーはバッファロー・ビルの一座に加わり、大人気を博する。一座の花形でやはり射撃の名手フランクに夢中なアニーだが、アニーの腕がよすぎることが2人の仲の障害になる…
 
 華やかで素敵なミュージカル。はじめはジュディ・ガーランドが主役だったそうだが体調を崩して降板、ベティ・ハットンになったとのこと。DVDの特典でガーランドのナンバーが2つ入っているが、キャラクターも、また演出も相当違う。出来上がったものを見てしまっているから、ハットンに有利なのはどうしようもないけれど、この役に関してはハットンがいいように思う。単細胞で純情で勝気な少女らしくて良い。
 ハワード・キール(美声!!!!)との意地の張り合いの有名なナンバーは実にエキサイティングだった。ラストもワクワクするような豪華さでとても楽しい。

 興行のシビアさにも触れて、よく出来たミュージカルだけど、さすがに昔もので、今では先住民や女性についてあんな描き方は絶対に出来ない。
 冒頭のナンバーで「インディアンは、平気で人を殺せるやつら」「白馬に乗った正義の味方がバッタバッタと撃ち倒す!」と歌ってる!それまでの白人の優位と正当性にな~んにも疑問持ってない時代だったんですね。
 それにアニーは夫になる人にわざと負ける。あんなに鼻っ柱の強いアニーが自分の一番自信を持っているもので勝ちを譲る。これは賢いかもしれないけど私はやりたくない。納得できん。しかし考えてみると、彼女が実はナンバーワンなのだから、男はそれでよかったのか?

 映画前に解説が入っていて、長いことビデオ化もされなかった作品だといっていたが、ネックになったのは権利問題だけだったのだろうか。
 その解説では実在のオークリーの写真も紹介されていたけれど、実にきっぱりした性格らしい普通にきれいな女の子だった。…ミュージカルのまるで野生人なアニーは本人には少し気の毒だったかもしれない。

CASSHERN (2004/日本)

2005年08月19日 | 映画感想か行
監督: 紀里谷和明
出演: 伊勢谷友介   東鉄也/キャシャーン
    麻生久美子   上月ルナ
    寺尾聰    東博士
    樋口可南子    東ミドリ
    及川光博    内藤薫
    唐沢寿明    ブライ

 二つの大国に別れ、戦いに荒廃した世界で東博士の研究の鬼っ子のようにして生まれた新造人間。彼らを人間として認めない人類に、新造人間たちはその驚くべき身体能力と機械兵器で人類抹殺を宣言し、襲いかかる。

 やたら色飽和度の高い独特の色彩感の画面が続く、絵としてはとても興味深い映画でしたが、休み無しの愁嘆場とゲームみたいな戦闘シーンのとり合わせが私には全然あいませんでした。すいません。
 ロボット系や上月博士の家のセットなどは深刻なムードの中でおもちゃのようでどうも妙に思えて仕方なかったし、あの歯車や特殊ビークルのジブリっぽい、アニメっぽい感覚にも実写のアニメ風アクションがピタリとはまるように見えない。このストーリーの中で見るのではなく、「こんなの出来ました」を見ているようで醒めてしまった。
 だから、製作者側の思い入れで押しまくられて「どうだ!」と言われた感じで、「はあ」としか言いようが無い。新造人間のブライのいきなりの演説は、無言の後の声あまりにも朗々として唐突過ぎて目が回りそう。ヒロインのささやきはセリフとして完成されてない感じで、彼女のセリフの厭戦思想が力負けしてるよう。
 私はアニメのキャシャーンを知らない。映画だけ見た人にもきちんと納得させてくれる親切心がもう少し欲しかった。

=============
(今日は一日中忙しかったのに、ああ、ほっとする映画見たかった…)ので、夜中に書き飛ばしたらやはり何が言いたいかわからないものになっていたので書き直しです。(19日朝)

死霊の盆踊り (1965/アメリカ)

2005年08月17日 | 映画感想さ行
ORGY OF THE DEAD
監督: A・C・スティーヴン
制作・原案・脚本:エド・ウッド

 ティム・バートンの映画「エド・ウッド」を見た当時借りてしまい「好奇心もいい加減にしよう」と思ったのに、DVD化されていたのでまたつい借りてしまった。やっぱり芸の無い裸が延々と続くどうしようもない映画だったが、DVDのオマケ映像がすごかったのだ!
 監督インタビューでスティーヴン監督自身が1時間以上も延々としゃべりまくるのだが、製作秘話(?)もむちゃくちゃだった。
 映画冒頭で車を外から撮ったシーンは明るく、車内を映すシーンでは真っ暗なのだが
「撮り直す時間も無かったので、そのままにした。映画が世にでないよりまし。ノープロブレム」で済んじゃう。
 主役はセリフ覚えず、カンペ読んでるのが誰が見たって明らか。それで棺桶に入って寝るのが好きになってよく寝ていたそうだし。火や黄金に執着するとか、古代の奴隷とかいろんな女の子が出てきて、延々と裸で踊ったり動いたり(踊りにもなってない)するのを見るだけなんだけど、登場では衣装があるけど、ほとんど脱ぐシーン無しで場面が変わるといきなり裸になってる。その理由が「そのほうが死霊らしい」「映画のテンポが良くなる」…唖然呆然。どうして?それにテンポ云々を言えるような映画じゃないぞ!ああ、他にもミイラ男と狼男の意味不明な漫才があったな。

 で、この映画を作った監督が、
「映画は監督のイメージが最優先」
「準備が大事で、現場での偶然の収穫を期待してはいけない」
「続編で残された謎を明らかにしたい」
とか語ってる!謎なんてどこにあったのか?!
 この映画の音楽というのは「どういうセンスでこうなるんだ?」としか思えないのだけれど、なんと撮影時とは全然違う音楽を後付したんだそうだ。終わりそうでいて、いつまでも終わらないテンションを下げまくる感じの音楽なので、もしかしたら、この人たちは本職のストリッパーで、いつもの営業用の音楽流してるのかな、とか考えてたのに。

 というわけで、つまらなさは変わらないのでお薦めは決してしないけど、ティム・バートンも物好きな…と思うか、エド・ウッドばかりが注目されてるけど、映画界の裾野は広いぞ、とかまあ、いろいろノックアウトされるDVDではあります。

シングルス (1992/アメリカ)

2005年08月16日 | 映画感想さ行
SINGLES
監督: キャメロン・クロウ
出演: キャンベル・スコット
    キラ・セジウィック
    ブリジット・フォンダ 
    マット・ディロン 

 手痛い失恋を繰り返して、恋愛に臆病になっているリンダ。その彼女に恋をした生真面目な青年スティーヴと彼の住む独身者用アパートの若者たちを描く、群像コメディ。

 ちょっとお休みしたい気分に最適の、ぬるいギャグの連続で淡々と描かれる「恋をしたい若者たち」の生態。ほんとに生態、という感じがする。みんな、やりたいことはあるのだけれど、それをドカドカ突き進むふうでもなく、素敵な出会いとか約束の人を期待を捨てられずに待ってる。
 リンダとスティーヴは見るからにお似合いなんだけれど、不運なめぐりあわせで一度は別れてしまう。
 遊び人を気取る、売れないミュージシャンに夢中のジャネットは彼のために豊胸手術までしようとする。
 それやこれや、本当にぬるいギャグの連続にくすくす笑いながら見ていて、いつの間にか納まるところへ納まった彼らにほっとする。エンディングで伸びをして、「さあ、寝るか」で気持ちよく寝られそう。
 いや、3人の女性たちもいかにも適役だし、可愛いし、ミュージシャン役のマット・ディロン最高です。ナサケナサが板につきまくってます。
 それにさすがキャメロン・クロウ監督と言うべきでしょうか。あまり詳しくないジャンルですが、音楽最高にピタリです。

終戦の日

2005年08月15日 | 日記・雑記
敗戦日空が容れざるものあらず 石田波郷
土熱く灼けゐし記憶終戦日   沢木欣一

 8月15日は歳時記にも終戦記念日として載っていますが、私の記憶に残る終戦の日の句では「記念日」を使ってるのはありません。
「終戦日」「敗戦日」「終戦忌」「敗戦忌」などが多く使われています。
 実際には戦争も、その惨禍の後もさほど目にしないで育った世代になりますが、やはり1、2世代上の家族の傷跡は目にしてきました。

 終戦の日には半藤一利氏の「昭和史」など読むのがいいと思います。そして当時の日本政府が極東での戦争の分け前を狙うソ連に調停を頼むほど世間知らずだったこと、敗戦処理すらまともにしなかった、おそらく考えてもいないし、知らなかったので降伏すればそれで済むと思っていたのでそのために戦後に膨大な犠牲を出すことになった、などの事実に頭がかっかと熱くなります。
 そのあほらしさ、ナサケナサに死んでいった人たち、愛するものを失った人たちの無念を少しでも身に感じるように思えます。こんなことを繰り返してたまるか、とも思います。
 ともかく、自分の頭を使うことくらい怠るまい、と自分を叱咤できます。

 ついでに江畑謙介氏の「米軍再編」も読むといいと思います。その冷静な分析に魅了され、一種癒されますが、こちらも「アメリカに対等の立場でものが言える千載一遇のチャンス」と江畑氏が言う今「なぜ政治空白なんだ!」と腹が立つかもしれません。

 ノーマン・メイラー氏が言うように「民主主義とは壊れやすく、一生懸命に守らなければならないもの」です。それに熱狂には気をつけましょう。日本で熱狂がいい結果になったことはありません。

SAMURAI 7 (2004/日本)

2005年08月14日 | エンタテインメント
監督: 滝沢敏文
声の出演: 寺杣昌紀   カンベエ
      朴路美   カツシロウ
      コング桑田   キクチヨ
      草野徹   シチロージ
      犬飼淳治   ヘイハチ
      稲田徹   ゴロベエ
      三木眞一郎   キュウゾウ
      折笠富美子   キララ
      斎藤千和   コマチ
      西前忠久   リキチ
      子安武人   ウキョウ

 傑作「七人の侍」をのストーリーを踏襲してロボットSFアニメとしてリメイクしたもの。
 DVD一巻目は借りてみたのだけれど、次どうしようかと思ってるうちに時は過ぎ、先週NHKBS深夜の時間帯で集中放送ということで、録画して一気に見ました。26話を2日間でいっぺんに見るのはかなり疲れた。

 SAMURAI7DVD感想

 感想としては↑と同じです。
 最近のアニメとしては面白い。絵もまあまあだし、ストーリーもきっちり完結してる。キャラ設定も無理ない。人物や背景の2次元アニメ的な絵と、野伏せり(身体を機械化した戦闘員…ロボット)のCG的な絵の混在も面白い。
 設定変更も話を広げるためにはこうなるのかな、という理解はできる。ただそれが好きかどうかは別。
 オリジナルはアウトローの力に対して立ち上がった農民と、それの核となる戦いのプロの、本当に生きるためのもので挟雑物を感じない。このアニメ版では、都と生産地、為政者や、身分などが絡んでくるために、ストーリーが同じなのに戦う意味がかなり違ったものになっていると思う。そこのところを別物、と割り切ることが出来れば楽しめますです。
 
 でも私は違和感は払拭できない。あの大傑作、私的映画オールタイムベスト1で、キャラクターもそのままをこよなく愛してます。だから見ながら

「キクチヨのプシューはどうしてもいや」
「キュウゾウかっこいいけど、やっぱり違う。久蔵さんはこんなんじゃない」
「カンベエ、もうちょっと底の知れない感じがなきゃいや」
「カツシロウってば、まるでアムロじゃん」

 ほんと、ガンダムキャラで「七人の侍」やってるような感じに襲われちゃうのだ。
 哀切さの質が違う。

 でも、ここまで頑固に思い入れがない方になら、お薦めかも。 

東京原発 (2002/日本)

2005年08月13日 | 映画感想た行
監督: 山川元
出演: 役所広司   天馬都知事
    段田安則   津田副知事
    平田満   笹岡産業労働局長
    田山涼成   佐伯政策報道室長
    菅原大吉   石川都市計画局長
    岸部一徳   大野財務局長
    吉田日出子   泉環境局長

 カリスマ的な人気を集める天馬都知事はある日の会議の席上、悪化する財政建て直しの切り札として“東京に原子力発電所を誘致する”と宣言する。都の幹部がその是非と知事の真意をめぐって侃々諤々の議論を続けるその頃、お台場にはフランスから船で極秘裏に運ばれてきた大量のプルトニウム燃料が陸揚げされていた。そして、それは一般道を単独で陸送される…

 1999年の臨界をあんな人びとがあんな形で見ちゃった事故のことを密かに「ノストラダムスの恐怖の大王って、もしかしたらこれか?!」とか思っちゃった私としては、激しく頷ける議論が続く映画であった。
 原発の是非はとりあえず措くとしても、日本のエネルギー研究予算は原発に偏りすぎですって。
 ところで、原発で何をしてるかご存知?まずお湯を沸かしてるんです。

 ただね~、これを娯楽映画としてみた場合、ちょっと立場が明確になりすぎていて、素直に見られない人も多いかも。言いたいことはわかるけど、納得したくないぞ、と思う人はいるだろう。めちゃめちゃ要求が贅沢だけど、もっとブラックにイジワルに誰もが「しょーがねーなー」と笑うしかない状態に追い込まれる展開があったら…と、惜しい映画だった。
 役者の皆さんが達者なので、話が軽々進んでいくし、あまり難しいことを詰め込まれた感もない。学者役の人の飄々が現実に一枚カバーかけてる雰囲気。
 でも「昭和史」とか読んでると、頭のいい為政者がきちんとやってると思うのは幻想だと思い知らされますから。その意味では切実に寒々と身に染むラストです。