虫干し映画MEMO

映画と本の備忘録みたいなものです
映画も本もクラシックが多いです

ダンディ2 華麗な冒険

2007年11月22日 | エンタテインメント
THE PERSUADERS!
監督: ピーター・ハント他

 1971~72年イギリスのテレビシリーズ。
 吹替映画大事典で広川太一郎氏が「過激な実験をした」と述べておいでなので早速借りてみました。

 しかしまあ、私は「ダンディー2」のその二人がトニー・カーティス(声・広川太一郎)とロジャー・ムーア(声・ささきいさお)というところに驚き。なんかすごいゴージャスじゃありません?
 フィルモグラフィを見てみると、主な主演作一巡りした時代のカーティスと007直前のムーアというやっぱり当時の相当ゴージャスな顔ぶれですよねえ。

 演じる役も、功成り名遂げたスラム出身のアメリカ富豪とイギリス貴族出身のスポ-ツマンの二人の有閑階級プレイボーイで、法の手の届かない悪に正義の鉄槌を鉄槌を下すお手伝いをするみたい(まだ1巻しか見ていないので、断定は出来ない)で、主演の二人の名声確立し、女性にもてもて、というイメージの上で優雅に遊んでいるような感じ。

 で、主眼の吹替えなんですが、字幕と吹替えで2話分見比べただけでも、その「過激な実験」は伺えますです。
 オ-プニングテーマだけでもオリジナルは音楽だけなのに、吹替え音声では「殿様」「だんな」と掛け合っております。それにカーティス=広川氏から飛び出す言葉のバリエーションには驚かされます。綺麗な若い女性=「うれしこちゃん」て、この番組以外に使われました?それに「シラケコンニャク」(2話目にでてくる)って何?広川氏に対してムーア=ささきいさお氏はどうしても受けに回ってる感は否めませんが、広川氏のはじけっぷりに対してはこのくらいのくだけ方がバランスいいのかもしれませんね。

吹替映画大事典/とりみき 吹替愛好会著

2007年11月19日 | 映画の話題
三一書房(1995年刊)

 この本も存在は知っていて、でもめぐり合わないうちに10年以上経ってしまい、思い立ってすぐ買える本ではなくなってしまいましたが、出来れば買っておこうかという本です。
 私は、お子様向け・家族向け映画を家族一緒に見にいって映画にはまっていったわけではなく、テレビ放送の吹替え映画から映画というメディアの虜になっちゃったので、吹替えの声優の方々にはかなりお世話になっています。それでも最近は字幕ばっかり見ていて、よほど気に入った映画でないと吹替えまでは見なくなっていました。それでもバート・ランカスターは日本語版では久松保夫氏の声でないとバート・ランカスターの感じがしない、とは思ってました。

 日本のアテレコが如何に質の高い声の演技陣を持っていたか、ということをあらためて気付かせる本です。なるほど、最近NHKBSで次々放送されている「スター・トレック」「ローハイド」「ヒッチコック劇場」「奥様は魔女」などを見ていて、日本語吹替えの声が、本人が話してるとしか思えないくらいにはまりきっているのを見せられているし、特に、レンタルビデオ字幕版を見ていた「スター・トレック」は、英語力が無い私には吹替えのほうが人物の聞き分け、性格や劇中ポジションの違いがくっきりわかることを(さみしいけど)確認させられたところでした。特にウィリアム・シャトナーのカーク船長は吹替えのほうが端正に聞こえる。
 しかし、私の興味は、それ以上に冒頭に紹介された「続・夕陽のガンマン」の吹替え版ラストシーンのような吹替え版独自の楽しみを作り出していた部分に思い切りひきつけられる。
 以下緑字は文中より

 イーライ・ウォラックが首に縄をかけられるシーンで彼が絶叫する。「ごめんなさあい!」

 (うわあああ~~~~ほんと?!! と、私も絶叫)

 縛り首男=イーライ・ウォラックの声で「俺、汚ねえ奴」
 死体=リー・ヴァン・クリーフの声で「俺、悪い奴」
 そしてポンチョ男=クリント・イーストウッドは「おれ、いい人」と結び笑わせる。(5p)


 きゃあ、きゃあ、きゃあ、しゃべらせちゃったの~!おもしろそ~~~~~見たい~~、とまた私は絶叫するのです。

 それに、この本に出てくるテレビシリーズも是非見なくては、と息が荒くなるようなのばかりでレンタルDVD検索に恐ろしい時間かけました。
 で、とりあえず広川太一郎氏が「吹替えの過激な実験をした」と述べておられる「ダンディー2」を予約。
 それに「宇宙家族ロビンソン」のドクター・スミスというキャラの形容にもしびれました。

 わがままに手足をつけて変わり身という衣を着せたような奴(175p)

…強烈に見たい。 

ローズ・イン・タイドランド(2005/イギリス、カナダ)

2007年11月18日 | 映画感想ら行
TIDELAND
監督: テリー・ギリアム
出演: ジョデル・フェルランド   ジェライザ=ローズ
   ジェフ・ブリッジス   パパ/ノア
   ジェニファー・ティリー    ママ/グンヒルド王妃
   ジャネット・マクティア   デル
   ブレンダン・フレッチャー   ディケンズ

 10歳の少女ジェライザ=ローズは両親が2人ともヤク中。母親が薬のために死んでしまうと、父親はジェライザ=ローズを連れて故郷へ向かう。辿り着いた父の実家は、テキサスの草原の中のボロい一軒家。そして父親もクスリを打ったまま動かなくなってしまう。ジェライザ=ローズは、頭だけのバービー人形たちと残される…。

 見終わってしばし声が出ない、という映画でありました。
 子どもの悲惨を絵に描いたような生活。ダニエル・キイスを読んでる時のような気分にも襲われます。無力感のような感じ。両親の都合よく使われ、首だけの人形と小さな世界を作り、現実を頭の中で少し書き換えながら生きている…実に悲惨でグロテスクでもローズにはこれ以外の選択肢がない。その彼女の世界を目の当たりに見せられ、凄惨にしてどこか実感のない現実が進行し、外の光は妙に明るく白々しい。
 一家の中で両親がはるか昔になくした世間知を担当しつつも、子どもとして周囲の愛情を強烈に求めるる余りにとんでもないところまで踏み込んでしまいそうになるのに、自分の見たものを正確に社会的に位置づけられない幼さとが同居している。現実ならあの子はとんでもなく薄汚れているだろうけれど、やはりむちゃくちゃ美少女。世界の狭さと子ども時代のイノセントがディケンズ相手の異様なキスやきわどい接触に異様なリアリティを与えるようで、もう背筋が凍る様だった。

 ギリアムらしいといえば、まったくその通りです。同年の「ブラザース・グリム」に比べれば全然納得です。
 ほんとに疲れました。

ラブソングができるまで(2007/アメリカ)

2007年11月16日 | 映画感想ら行
MUSIC AND LYRICS
監督: マーク・ローレンス
出演: ヒュー・グラント アレックス・フレッチャー
 ドリュー・バリモア ソフィー・フィッシャー

 80年代に一世を風靡したバンド“PoP”の元ボーカル、アレックス。今は昔のファン相手に腰振って歌うドサ回りの哀れな日々。彼のもとに、人気絶頂の若き歌姫コーラから、彼女の新曲を作って欲しいという依頼が。またとない復活のチャンスにも、作詞が巧くいかないアレックスはたまたま植物の手入れに来ていたアルバイトのソフィーが口ずさむ歌詞にひらめきを感じ、二人で曲作りをすることに…。

 ヒュー・グラントはなんだかダメ男を選んでやってるようです。同工異曲の感はありますが、演じる人物の過去を納得させちゃうのが、いつも感心させられます。「アバウト・ア・ボーイ」のなし崩し的に年取ってきた中古のプレイボーイとか、「アメリカン・ドリームズ」のいまや番組もろとも瀬戸際の司会者とか。私、美貌を自ら笑えるスターは大好きです。
 この映画でも、中年になっても青年時代の残滓しか売り物がなくて、場末のステージで昔の曲を腰振って歌う元アイドル。でもそれほど強烈な惨めさでなくて、ナサケナさくらいにとどめて笑えるのは彼の演じる主人公の人の良さが漂うおかげだと思う。
 それに、エンド・クレジットの曲のところを止めてひとつひとつ確認したけど、歌は出演者が歌ってるんですねえ。さすがみんな歌うまいわ。
 ドリュー・バリモアもかわいかった。
 ストーリーはありがちだし、お気楽映画には違いないけど、こういうほっとする映画がたくさんなくちゃやりきれないじゃありませんか。

申告の〆を目前にして設備が壊れて

2007年11月15日 | 日記・雑記
 この10日ばかり、夜はご飯食べて風呂入って寝る。PCさわる余裕なしでした。
 12月の税金申告の〆を目前に、駐車場の設備が壊れました。
 以前設置した時と規格が変わっていて、機械だけ変える小工事では済まず、コンクリートはつって配線からやり直しです。
 年内に工事完了出来るのか、あせりまくりました。
 以前に施工した業者がもうないので、業者選びから始まり、打ち合わせ、発注、請け書、着工金払い込みまでやっと今日終わりました。ぜえぜえ。

 留守中にTB、コメントいただいた皆様、申し訳ありませんでした。
 明日もヒュー・グラント主演作の感想1本書いて、お返事などをさせていただきますので。
おやすみなさいまし。

アメリカン・ドリームズ(2006/アメリカ)

2007年11月15日 | 映画感想あ行
AMERICAN DREAMZ
監督: ポール・ワイツ
出演: ヒュー・グラント   マーティン・トゥイード
   デニス・クエイド   ステイトン大統領
   マンディ・ムーア   サリー・ケンドゥー
   マーシャ・ゲイ・ハーデン    大統領夫人
   ウィレム・デフォー    首席補佐官
   クリス・クライン    ウィリアム・ウィリアムズ
   サム・ゴルザーリ    オマール
   ジェニファー・クーリッジ    マーサ・ケンドゥー

 再選を果たした合衆国大統領は、めずらしく新聞を読んですっかり神経衰弱に。首席補佐官は、大統領がお気に入りのテレビの公開オーディション番組“アメリカン・ドリームズ”に決勝のゲスト審査員として出演させることにする。一方、あたりまえに視聴率至上主義の当の番組はいまや人気落ち目で、司会者マーティンによってかつてない個性的な出場者が集められていた。アイドルになるためにはなりふりかまわずのサリー、ミュージカル好きのアラブ系純朴青年オマールが注目株。しかし、オマールにはある恐るべき使命が託されていた…。

 ブラックであくまでコメディなんですが、なかなかキビシイ笑いでありました。
 だってねえ、補佐官なんか大好きなウィレム・デフォーがやってるんですが、そっくりショー見てるくらい似てますです。あの方に。
 大統領はぼけまくり、現実とは壁を隔てたところにいる。

 戦争なんか現場にいなけりゃ結局は知ったこっちゃない。
 人の不幸はただの見せ物。
…という人間の、特に意識したくはない残酷な本音もアリアリ。

 ヒュー・グラントの落ち目の司会者のすさみ方がリアルでした。死に方も壮絶でしたが。

 結局死んだものが損なだけ…はぁ…
 こういうのを商業ベースで作っているだけアメリカはまだまだすごいと思う。

300 <スリーハンドレッド>(2007/アメリカ)

2007年11月01日 | 映画感想さ行
300
監督: ザック・スナイダー
出演: ジェラルド・バトラー    レオニダス
   レナ・ヘディ    王妃ゴルゴ
   デヴィッド・ウェンハム   ディリオス
   ロドリゴ・サントロ    クセルクセス

 紀元前480年、大帝国ペルシアの服属要求を拒み、10万のペルシア軍に抗して全滅するまで戦い抜いたスパルタのレオニダス王と300の精鋭の戦い。

 テルモピレー、またはテルモピュライの戦いについては、高校の世界史の時間の研究発表の時に、この辺の歴史好き級友が張り扇の音がしそうな名調子の語りで、実演も交えてこってり教えてくれたのでそれなりに記憶に残ってました。覚えていたのが、最期の食事シーンでのレオニダスのセリフ。級友は「今宵はハデスの館で宴をしようぞ」とか言ってたけど、映画では「地獄(hell)で~」 になってました。ちょっと残念。
 あと締めくくりは「折れた槍を捨て、剣を振るい、それもまた刃が毀れ尽きれば、武器がなくなっても己が拳と歯と、あらゆるもので、最後の一人が倒れるまで闘い抜いたのでした!」…なあんて調子でした。(こういうラストも見たいな)
 かなりそれと違うところは多かったのですが、こっちの映画の設定もヒロイックなので、お話としては可です。まるでゲームか娯楽アクションの怪物みたいな敵が出てくるのが笑えます。
 結論への持っていき方は強引だし、スパルタの社会はどう考えてもいびつだし、私のような弱いものは絶対脱落するのでやだなあとも思いますが、この「誇り高く死力を尽くして殉じる」姿の吸引力はしぶしぶながらも認めざるを得ません。

 ドラマ部分に突っ込みいれたくなるとはいえ、私がこの映画の魅力だと思うのは、戦闘シーンの映像と全体セピアがかった色彩。
 原作がコミックだそうだが、実際絵がひとつひとつ素晴らしく決まっている。ストップモーションではないけれど、動きが分解されて漫画のコマを追うような感じで、身体の躍動とか力が思い切り漲った絵をつないで見るような映像に(苦手な血みどろシーンなんだけど)眼が離せない。

 これは絶対、大スクリーンで見たかった!

 和製英語らしいけど、歴史劇をコスチュームプレイっていいますよね。この身体そのものがコスチュームというこの映画の、あれだけの筋肉作り上げた出演者の皆さんはすごい、えらい。