虫干し映画MEMO

映画と本の備忘録みたいなものです
映画も本もクラシックが多いです

父親たちの星条旗(2006/アメリカ)

2006年10月31日 | 映画感想た行
FLAGS OF OUR FATHERS
監督: クリント・イーストウッド
出演: ライアン・フィリップ    ジョン・“ドク”・ブラッドリー
   ジェシー・ブラッドフォード     レイニー・ギャグノン
   アダム・ビーチ      アイラ・ヘイズ
   ジェイミー・ベル     ラルフ・“イギー”・イグナトウスキー
   バリー・ペッパー     マイク・ストランク

 日本軍との激戦の地、硫黄島で星条旗をたてた6人のアメリカ兵の写真が有名になり、生き残った3人の兵士はアメリカへ帰り戦時国債の売り込みキャンペーンに使われる。

「我等の生涯の最良の年」は暖かくて純朴なドラマだった、と思い出した。
 今のアメリカの抱えている戦争と違って、太平洋戦争は実際「よい戦争」で正義が勝ったはずのものだ。しかしどちらも実際戦っているものたちには不条理で圧倒的な暴力である。

 痛ましい思いの疼きと、涙が止められない2時間だった。
 実際、私の知っている戦争に行った人は、戦場のことを語らなかった。そして息子を戦争で無くした曾祖母は、靖国に行ったことはなかったが、戦後数十年経ったある日勲章が届き、号泣していた。もちろん一片の骨さえ帰ってはこなかったのだが。そばにいた者にも、その悲しみの奥底までは知ることは出来ないのだろう。
 兵士はなぜ戦えるのか、なぜ進んでいくことができるのか、現場に行くことが無いものにはすべては分からないのだろう、今アフガンやイラクで問われていることも現場にいなくてはわからない何かがあるのだろうなどと、凄惨な戦場シーンにすくみながら、でも安全な場所であくまでエンタテインメントとして見ていることをどこかで考えてしまいました。だってこの映画見ながらずっと泣いていたけど、やっぱり後味の悪い涙じゃない。主人公を都合のいいように利用する国とか軍隊とか、当面のヒーローを無理やり求める大衆に対してはともかく、人間性についての信頼はあまりガタガタしない。

 それにしてもイーストウッドは歯軋りしたいくらい老獪な監督であると思う。この映画は素材も撮りかたもオーソドックスで、フラッシュバックや、アイスクリームの上のイチゴソースの色など言ってみれば手垢がついた、お定まりのやり方だと思ってもなお乗せられてしまう。音も実に息があう、という感じがする。132分が短い。

 美しいアダム・ビーチがおっさんに差し掛かってたのが少し悲しかった。

 12月の日本側からの映画「硫黄島からの手紙」で栗林中将にもっと関心が集まるといいのに、と期待している。以前「散るぞ悲しき」という中将についての本を読んで感動した。日本人はケネディ大統領に上杉鷹山の日本での知名度を上げてもらったそうだが、イーストウッドがこの映画を撮ることになって良かったと思う。もっと日本人に知ってほしい人。

兜王、『ダブルマックス』GYAO放映終了間近

2006年10月30日 | エンタテインメント
 兜王ビートルの項書き足しました。
 短いし、プロレス団体ファン向けのサービスフィルムか、などといろいろ考えましたが本当に映画でした。
 デビルマンに腹立って、これは笑ってるのはなぜだろうと思いましたが、作るほうの思いというのは伝わってしまうものなのかもしれません。

 現在パソコンテレビGYAOで『ダブルマックス』というタイ映画を放映中です。
 11月1日までです。
 これは「マッハ」のリットグライ監督と出演者のペットターイ・ウォンカムラオが共同監督ですが今までに見たリットグライ映画よりは痛さがちょっと薄まってます。
 ウォンカムラオが主役でアクションも前面に出て引き受けています。ギャグがベタです。トニー・ジャーも少しだけ出ていて、そこだけアクションのレベルが違う感じです。
 見ていて、昔の芝居小屋システムなど連想してしまいます。もう一人の主役の若い男の子がハンサムで余りにもつっころばし風なのです。

 これはCM入りでなくきちんとDVDで見直してからちゃんと感想書きたい映画です。

兜王ビートル

2006年10月28日 | 映画感想か行
最近、金曜土曜は毎度バタンキュー状態で
ご飯食べるとそのまま寝室へ直行、
でもなんか見てます。
昨夜は「兜王ビートル」という永井豪原作、ダイナミックプロの映画(かな?)
プロレスラー、マスクマンが大挙して出演しており
なんと主演のビートルは同名のプロレスラーが実在するのだそうで
もしかして本人?
映画だとしたらすごいC級ですが
不思議に「デビルマン」みたいに腹立ちません。
「なに~これ~」とわらって済んじゃう程度のしょうもなさです。
どこが違うのか、ちょっと考えてみなくては。

兜王ビートル(2005/日本)
監督: 河崎実
出演: 兜王ビートル (大阪プロレス)
   斎藤工
   中川翔子
   大原かおり
   堀内正美
   スペル・デルフィン (大阪プロレス)
   ビル・ロビンソン

 大阪プロレス”で実際に活躍する漫画家永井豪デザインの覆面レスラー“兜王ビートル”が主人公。宇宙人によって昆虫と合成されてしまったビートルたちがプロレスのマット内外で戦う。

 ALLCINEMAのデータでは公開年月日がちゃんと入っていたから、なんと公開もされたんでしょうか。
 途中にいかにもコマーシャルタイムみたいな区切りがあったから、テレビ用に編集されたごく狭いファン向けのフィルムか何かなのかしら、と思ってました。
 ギャグのレベルが高校生以下向けみたいなんですが「ありゃあ~~~」とか「ひえ~~ん」とか呟く程度の反応で本当に腹も立たずに笑えました。
 これは、デビルマンと比べるほうがマチガイでした。力込めてとんでもない方向に飛んでっちゃったものでなく初めから力こぶなし(出演者の実物の筋肉は別)のもの。ヒロインのおとぼけもこの世界にはまっていて良かったと思います。

 大阪プロレスというところの紹介もちょっと覗いてきました。私の知らない世界でした。
 http://sports.livedoor.com/battle/osaka/
 この世界だと、あの変なゴキブリの着ぐるみさんたちもそれほど浮き上がる世界でもないのかな?でもカマキリはともかくゴキブリやクワガタは動きにくいと思います。

ニュー・ワールド(2005/アメリカ)

2006年10月26日 | 映画感想な行
THE NEW WORLD
監督: テレンス・マリック
出演: コリン・ファレル     ジョン・スミス
    クオリアンカ・キルヒャー    ポカホンタス
    クリストファー・プラマー    ニュー・ポート船長
    クリスチャン・ベイル    ジョン・ロルフ
    オーガスト・シェレンバーグ    ポウハタン

 1607年、イギリスの船が、北アメリカに辿り着く。食料も無く、命の瀬戸際の彼らは一部が残り、一部はイギリスへ救助を求めに帰る。ジョン・スミスが先住民との交渉に赴くが捕えられ、処刑されそうになった時、王の末娘ポカホンタスが命乞いをし、彼は救われる。そしてアメリカの大地で二人は愛し合うようになるが…

 チラシのコピーは 

一生を変えてしまう愛がある

17世紀初頭、“新大陸”アメリカ。
異なる世界のふたりが許されない恋におちた――


確かに愛の物語ではありましたが、大いなる自然が舞台なのに、映画全体のトーンが喪失感に満ちたものでありました。
 何だか全体がポカホンタスと蹂躙されるアメリカの地に対するレクイエムみたいに感じる。
 アメリカの大地は実に美しく雄大で荘厳なオーケストラの曲がかぶります。何だか滅びることを約束された楽園のようです。
 イギリスからやってきた者たちは、青々とした大地を柵で囲み、泥の中で汚れています。
 先住民の男たちと、鎧や、まだ織りの荒い布の服をまとったヨーロッパ人を比べると先住民の身体の美しさとが眼を奪います。
 主人公スミス・ポカホンタス・ロルフの3人は誰もが求めて得られぬものに苦しんでいます。
 ポカホンタス登場シーンの彼女ののびやかな美しさが強烈な印象を残すだけに、だんだん萎縮していくような彼女がその後の先住民の運命に重なって来たりもします。

 ただ、私はコリン・ファレルの眉毛に「ありゃなんだ」と言いたい。ミスキャストとまでは言わないけれど、ポカホンタスの心を虜にする様な男か?あれが?と憤然とした。クリスチャン・ベイルがコリン・ファレルの穴を埋められないわきゃあ無いだろう、と思う。この辺の感じ方は私の男性の好み丸出しになってしまうが。
 それにポカホンタスが受身過ぎ。私の読んだ本ではイギリス人が先住民の食料を盗んで、そのためにトラブルが起きてそこを彼女が「争いをエスカレートさせてはいけない」と周囲を鎮めるのでした。それでこそイギリス宮廷でも存在感を示す大陸の王女なのではないか?この映画のクオリアンカ・キルヒャーは本当にきれいだけれど、運命に翻弄されるばかりではない若い率直さや威厳がもっともっと欲しいと思うのでありました。
 ディズニーの「ポカホンタス」もテーマ曲以外は好きではないが、これも映像はきれいだし、構成も悪くは無い…が個人的に納得できない。

 ちなみに、私はポカホンタスは空気の悪いロンドンなんかに行ったからあの若さで亡くなったんではないかと思っている。
 それからちょっとした日本とのご縁では、日米通商条約が調印されたり、幕府の遣米使節が乗って太平洋を渡ったのがこのポカホンタス父の名前の軍艦ボウハタン号。

エド・ウッド(1994/アメリカ)

2006年10月24日 | 映画感想あ行
ED WOOD
監督: ティム・バートン
出演: ジョニー・デップ
   マーティン・ランドー
   サラ・ジェシカ・パーカー
   ビル・マーレイ

 実在の映画監督で、“史上最低の監督”という名を贈られた通称エド・ウッドの伝記的物語。

 この映画は定期的に見たくなるけど、主役のジョニー・デップを見たくてではありませんで、やはりベラ・ルゴシ(マーティン・ランドーではなく)を見たくなります。泣けます。当たり役が当たりすぎてしまったためにそのイメージから抜け出せなくなった俳優の悲劇とかつての栄光の煌き、老残の哀れとなおも残る威厳…病院退院後のシーンは本当に泣けます。ノスフェラトウ的醜悪な怪物を魅惑的で高貴で恐ろしい吸血鬼にまるで変えてしまった役者です。エド・ウッドのとんでもないセンスもわかっていたでしょうに、ウッドがルゴシに捧げる尊崇の真実も分かっていました。そのためにこの間ローハイドでマーティン・ランドーの若き日のお姿を見たときには感動してしまったが、いやこの人はベラ・ルゴシとは違ってこの歳にしてオスカーです。

 それにしても、情熱とセンスの見事にアンバランスな人っているのですね。でもエド・ウッドに関してはあれだけの数の映画をつくっているのですから、まあセンスは無いにしても、あのレベルの映画をつくっておいてなおも新しい映画に他人を巻き込む、説得してしまう情熱の強烈さ、もしくは催眠術に掛けてしまう人間的魔力は推して知るべしです。
 私は映画を見たいだけの人なのだが、作りたい人にとっては、エド・ウッドの「俺が作ってやる!」意欲には、身につまされるものがあるでしょうね。

connie & carla コニー&カーラ(2004/アメリカ)

2006年10月23日 | 映画感想か行
CONNIE AND CARLA
監督: マイケル・レンベック
出演: ニア・ヴァルダロス    コニー
   トニ・コレット     カーラ
   デヴィッド・ドゥカヴニー     ジェフ
   スティーヴン・スピネラ     ロバート
   ダッシュ・ミホク     マイキー
   アレック・マパ     リー

 幼なじみのコニーとカーラはスターを夢みてカフェで歌う、でもちっとも芽の出ないコンビ。ある日、2人は殺人現場を目撃してしまい、ギャングに追われるハメに。2人はロサンゼルスへ逃げ、身を隠すためにドラッグクイーンになりすましてステージに立つ。するとなんと大うけしてしまい一躍スターに…。

 この映画の中では直接触れてないけど、ギャングの手を逃れるために女装した「お熱いのがお好き」を思い出させずにはいないです。あれは男が女に変装、こちらはちょっとややこしく、女が女装する男に変装する… で、ちょっとストレートに過ぎるような「お互いの違いに寛容であれ」というようなメッセージも上手に見せてくれているので、ジェフとロバートの兄弟が抱き合うシーンで、ちゃんとジーンとして涙が出ました。
 すべて丸く収まって、全部めでたしめでたしで、そこが物足りないといえば物足りないけど、これぞ安心して見られるコメディというものなのです。

 でも、ほんとに料理の仕方がうまいと思った。
 ミュージカルのヒットナンバーのベストが恥ずかしげも無いオンパレードで嬉しくなってしまう。それも豪華すぎないステージで本当に気分よさそうに歌われて、見ているほうもとっても気分がいい。
 ニア・ヴァルダロスはあの大ヒット作しか知らないけれど、目鼻の大きさは際立って、トニ・コレットも同様で、そりゃ本物の男に混じれば華奢なんだけど、よくまあ、ドラッグ・クイーンに化けるなんて恐ろしいことをしたものです。自分でプロデュース・主演していないといい出せないんじゃないだろうか。
 ミュージカルにのめりこんじゃうギャングのエピソードも、ジェフの恋人の発言もベタだけど、どちらも持っていき方が自然。
 デヴィッド・ドゥカヴニー、ここでは(自分は女装しないで)その辺の好青年という雰囲気でこういうのも良いです。

アレルギー、「WTC」「アフガン」

2006年10月22日 | 映画の話題
 ここ2・3日アレルギーに捕まって散々な日常でした。今回の原因はまだ不明。古いものの整理をしていたので埃かもしれません。
 涼しくてあまり汗もかかない気候なので昼間は何とかやり過ごしているのだけれど、夜風呂に入ると血行が少し良くなるせいかいきなり吐き気。そして猛烈に全身むず痒い。もうチャイコフスキーの妻の如く(すごく少数の人にしか分からない比喩だと思いますが)身もだえしてしまいます。そのため夜PCにさわっている余裕も無く、狙っていたオークションも逃しました。しかし、痒みってほんとに神経にこたえるものですなあ。

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痒がりながら考えていたこと

「ワールド・トレード・センター」
 実にオーソドックスな人間の生きる意思についての感動ドラマになっていて、オリバー・ストーンのこれまでを考え合わせると、これだけかな、と思う人も多いのではないかと思った。本当にそのことが起こった時の衝撃と混乱と悲しみが映し出されているようだった。怒りはまだこの先だったのだろうか。
 911に関しては、まだまだその記憶や傷跡は生々しい。私にしてからが、テレビの枠に囲まれた「その瞬間」を記憶している。それ以後の「テロとの戦い」…アフガン戦争、イラク戦争、宗教・人種間の亀裂の拡大、疑心暗鬼の増幅…このことについて持っている私たちの情報量は、それがある一つの見方に偏っているかもしれないとしてもけっこう多い。
 この映画はあの時点での「一人一人の人間の持っているもの(愛情やそれまでの人生で築いていたもの)がどれほどのものであるのか、人間の命を守ろうとする人間同士の善意」というものに焦点が絞られているようで、そのほかのものは正面きって見せられてはいない。
 とはいっても、自らの生命の危険を冒して生存者を探す元海兵隊員のちょっと憑かれた様な描写や、明日があるつもりで大事な相手と気まずく別れた取り返せない後悔などが画面に映し出される。

 今週はBS深夜にアジアの映画特集で「アフガン零年」もやっていた。これははじめてみたときに余りにも打ちのめされるような映画だったので、今回は見ずにはいられなかったけど、その前に「テニスの王子様」とかグレゴリー・ハインズの天才的な体技を見る「タップ」を見て準備していたのだが、やはりやりきれない気持ちからなかなか立ち直れなかった。アフガンについては、その地の生活などは私の知識は無いに等しい。そしてラストは少しの希望さえも持たせてくれないけれど、これが現実であろう、もっと多くのひどいことがあるのだろう…と認識を迫られる。

 どちらにしても、私が思うことは
「誰の身にも、こんなことはもう起って欲しくない」
 多くの人がこう考えているのだろうに。

ワールド・トレード・センター(2006/アメリカ)

2006年10月18日 | 映画感想わ行
WORLD TRADE CENTER
監督: オリヴァー・ストーン
出演: ニコラス・ケイジ ジョン・マクローリン
マイケル・ペーニャ ウィル・ヒメノ
マギー・ギレンホール アリソン・ヒメノ
マリア・ベロ ドナ・マクローリン
スティーヴン・ドーフ スコット・ストラウス
ジェイ・ヘルナンデス ドミニク・ペズーロ

 オリバー・ストーンということで考え込んでます。
 でも確かに、私たちが個人として把握できるのはじかに見たこと・聴いたことで過酷な体験を通してどこにその共感がつながっていくかということ。
 奇跡は奇跡でない無数の無念があるからこそ奇跡です。
 良く考えてまとめていきたいです。

劇場版 テニスの王子様 二人のサムライ The First Game(2005/日本)

2006年10月16日 | 映画感想た行
監督: 浜名孝行

 テニスの王子様 劇場版アニメ。

 これほど顔がぐしゃぐしゃになったのも久しぶり。家族から「そこまで泣かなくても…」と言われるほど涙が出た。もう可笑しくて可笑しくて。

 ありえねーだらけの設定とストーリー。でも私にとってはそのありえなさをきゃっきゃと笑えたアニメなのでどうでもいいですが、この劇場版はすごかったです。ありえねー変な大人だらけで、主人公の中学生の群れしかまともな奴がいないのはしょうがないです。
 ともかくこの映画のテニスの試合シーンはただものではありません。特にキャプテンの手塚のスーパーショットは繰り返して見ました。何度見ても涙が出ます。それに主人公の越前リョーマの試合に至っては遂にドラゴンボールと化してしまいました。いくらジャンプの漫画でも…でも面白いからいいや。
 一応テニスなんだからコート上でやって欲しいとか思ってはいけないのでしょうね。

 実写版の映画を見るのが楽しみになりました。実写版で一番面白そうで楽しみなのが、不二周助。このアニメでも羆落しは何かを召還してるみたいでしたが、さて、実写版ではどう撮ったんでしょう!
 DVDには「テニスの王子様 跡部からの贈り物 君に捧げるテニプリ祭り」も入っていました。全員登場ファンサービス風のアニメですが、私はテニプリのコミックスは10巻くらいでリタイアしたので全員分からずさほど面白くありませんでした。

 どちらにしてもなんとなくボーイズラブファン向けのサービスが入ってるような気がします。

ミステリー・メン(1999/アメリカ)

2006年10月15日 | 映画感想ま行
MYSTERY MEN
監督: キンカ・ユーシャー
出演: グレッグ・キニア   キャプテン
    クレア・フォーラニ    モニカ
   ジェフリー・ラッシュ   カサノバ
   ベン・スティラー   フューリアス
   ウィリアム・H・メイシー    シャベルマン
   ハンク・アザリア    ジェフ

  架空の未来都市「チャンピオン・シティ」では、ゴッサムシティのバットマンの如くキャプテン・アメイジングが活躍中。片やヒーローを目指す情けない男たちがいる。だが、悪者がいなくなったので失業しそうなキャプテンが、彼自身が活躍したくて釈放した悪党につかまってしまった。そしてヒーローになれなかった男たちが立ちあがる!

 巨額の製作費を投じた大作と聞いてまあびっくり。言われると納得。画面はリアルで凝ってる。でもなんだか軽い。これは狙った軽さなんでしょう。ごちゃごちゃした町に変なちょうちんとか、意味不明なカタカナ電飾看板があふれ(そういうのが出てくるとつい一生懸命読んでいる)、ゴッサムシティほどダークではないけれど、そういう架空の町らしいムードが素敵。ただ興行結果は惨敗だそうですが、それもわかるかも。
 出演者がともかく豪華で、上に挙げたほかにもポール・ルーベンス、トム・ウェイツなど「ほんとに?」というメンツ。それで大真面目にアメコミをちょっとはずしたような、アメコミにソープオペラを足して、おなじみ日本のヒーロードラマのエッセンスを振り掛けたような調子で、おなか抱えるて笑う、と言うより思わずにたっとしてしまう。
 ジェフリー・ラッシュの大時代ふうとか、グレッグ・キニアの学園ドラマのかたきやくが老けたような感じとか、危険を忌避するマッド・サイエンティストとか、シャベル男のW・H・メイシ-のあくまで堅いまじめ口調など、ほんとにうまいやり方だなあ、と。

 ほとんど唯一意味の通る電飾看板の「原告22人全員…」の続きは何でしょうね?

腎臓腫瘍・腫瘍マーカー反応・潜血反応だって

2006年10月14日 | 日記・雑記
 2日ぶりにこの記事を書いている私用のPCを立ち上げました。
 前に精密検査をしましたが、なんと要再検査がまたまた3項目も!
 いや、どうせまた経過観察だろうけど、やんなっちゃいます。来年は検査の前に精進潔斎・斎戒沐浴などしてすっきり検査をパスしたいですねえ。

 ちょっとまとまった時間ができましたので山田風太郎の「焼け跡」「闇市」の戦後日記をまとめて読んでいました。「不戦日記」「虫けら日記」以外はまだ文庫化されていないと思います。ハードカバーで重いのですが、今の北朝鮮のことも思わせるようなところもあります。さっさと文庫化してもっと読まれるといいのに、と思わずにいられません。

ブロークバック・マウンテン(2005/アメリカ)

2006年10月14日 | 映画感想は行
BROKEBACK MOUNTAIN
監督: アン・リー
出演: ヒース・レジャー イニス・デル・マー
   ジェイク・ギレンホール ジャック・ツイスト
   ミシェル・ウィリアムズ アルマ
   アン・ハサウェイ ラリーン・ニューサム
   ランディ・クエイド ジョー・アギーレ

 ブロークバック・マウンテンで羊の番をしていた若い2人のカウボーイ、イニスとジャック。彼らは山の中の2人きりの生活野中で、いつしか友情を超えた愛情を感じていく。その季節が過ぎ、別のパートナーとそれぞれの人生を歩む2人だったが…

 やはりアン・リーの映画だなあ、と思ったのでした。ひたむきな思いと人間の孤独。今ちょうど新作予告の真っ最中のせいもあるだろうけれど「トリスタンとイゾルデ」を思い出さずにいられなかった。要するに運命の相手に出会ってしまった歓喜と絶望のお話を。
 イニスは同性愛を世間の常識と恐怖の記憶で縛られたタブーとして生きている。ところが、彼の魂が求めてしまったのは同性のジャックだった。まずいことにジャックもまた応えてしまったのである。トリスタンとイゾルデの本の感想でも「トリスタンとイズーは(激しく愛し合いそのために激しく憎みあい)自らも他人をも傷つけ血を流しながら、お互いを求めます」なんてちょっと気恥ずかしいことを書いてしまいましたが、同じ光景を見た思いです。
 
 ランディ・クエイドのでっぷりした憎々しさに唸りました。「さらば冬のかもめ」のあの彼が…

サトクリフ版トリスタンとイズーについて
 いろいろなバージョンがありますが、一番好きです。

きょうのできごと a day on the planet (2003年/日本)

2006年10月11日 | 映画感想か行
監督: 行定勲
出演: 田中麗奈   真紀
    妻夫木聡    中沢
    伊藤歩    けいと
    柏原収史    正道
    三浦誠己   西山
   石野敦士   坂本
   松尾敏伸   かわち
   池脇千鶴   ちよ

 関西の大学生たちの一日。そしてその周りに起こること。
 中沢が大学院に合格し、引っ越す。新しい住まいの引っ越し祝いと手伝いに集まった幼馴染、恋人、友人たち。そしてその日に起こった出来事がテレビに。ビルの間に挟まって動けなくなる男、浜辺に打ち上げられたクジラ…

 私はこの監督が苦手かもしれない。…もしくはセカチュー以後気持ちが引いてるのかもしれません。
 これは実に淡々と若い者たちの日常を描いて、実際他人にはどーでもいーこと「何でお前は(俺には無い)女が寄ってくるような見てくれを有しているんだ」「何で彼女はああずけずけものを言うんだ」「私の彼が幼馴染(=自分の友達)と、性別を超えた仲良しなのは何だか引っ掛かる」…などなど、渦中の苦しみのようなものを思い出させてくれました。今のところ「渦中」にいないので苦笑しながら見ていられます。
 それに、この年頃に抱えていた気持ちのようなものをも思い出させます。まだまだ時間はありそうなんだけれど、可能性もありそうだけれど、でも現実には全く無力だったり、将来が見えないような不安感など。
 飽きたりはせず、じっと見続けて気持ちのいいエンディングテーマで締めくくられ、ほっとしてDVDをしまった映画でした。

 挟まれ男エピソードはどうしてもイッセー緒方の「ヘイ!タクシー」を思わせます。

アルフィー(1966/イギリス)

2006年10月10日 | 映画感想あ行
ALFIE
監督: ルイス・ギルバート
出演: マイケル・ケイン
   シェリー・ウィンタース
   ミリセント・マーティン
   ジュリア・フォスター
   シャーリー・アン・フィールド

 美貌で道徳観念なんてまるで無いアルフィーは次々に女性と関係を持っても長続きしない。やっと身を固める決心をつけたとき、彼を待っていたのは……

 リメイク版よりなんとなく酷薄な感じがします。ジュード・ロウのアルフィーは自分の行動に「相手のため」の理屈をくっつけて安心してる小心者なところがあったけど、マイケル・ケインのアルフィーはそんな理屈を必要としてません。
 こういう主人公が成立するためには、主演の俳優に、この自分勝手な色男の存在感を肯定させてしまう圧倒的な説得力がないとダメなのはよく分かります。観客に語るスタイルもちょっとアタマのねじが欠けちゃった同級生を「しょーがねーなー」といいつつ見るみたいな気分になります。
 お相手の女性たちの造形も、時代を反映してるなあ、と思います。アルフィーに対して決定的な言葉を告げることになるリッチな年上女性ルビィ役シェリー・ウィンタース、リメイク版のスーザン・サランドン共に、いかにも自分の実力と欲望を肯定できる貫禄ですが、シェリー・ウィンタースのほうが叩上げ的雰囲気が漂っています。

 結局彼は自分の気ままに女性をつまみ食いしたつもりでも、女性たちは意思的に去っていき、人生の上澄みだけすくって味わっているだけでは果実も無く、残るものは…というお話には違いない。でも、彼にはまだ十分時間はあるし、病気も治っているし、それに苦かろうが十分噛み締めるべき思い出があるじゃないですか。

ものを言う自由と輿論(戦う石橋湛山)

2006年10月08日 | 
 ロシアのジャーナリスト、アンナ・ポリトコフスカヤ氏の殺人は衝撃でした。ローザ・ルクセンブルグの暗殺などアタマをよぎり、私がうろたえたところで何がどうなるということはありませんが、また一つ不安の種が増えてしまいました。核実験も心配でたまりませんのに。

 今、石橋湛山について読んでいるところで、中でも半藤一利氏の「戦う石橋湛山」(中公文庫)は日中戦争から対米開戦までの時期に絞って、一人変節を拒み「軍縮・植民地の放棄」を敢然訴え続けたジャーナリストを描いて、同時期のマスコミと大衆が暴走する軍部へ擦り寄るように熱狂していく様が浮かび上がる本。不況の閉塞感、他国から非難されることへの反発などがいかに内向きのナショナリズムをあおり、大衆が勇ましい言説を望むようになるかの描写も過去のこととばかり言っていられない。心底ぞっとする。「自由にものを言うこと」がいかに困難で、貴重なことであるか!
 石橋湛山は「植民地を、満州のみならず台湾・朝鮮など以前からのものも含めてすべて捨てる。これこそがその唯一の道でり、同時に、我が国際的位地をば、従来の守勢から一転して攻勢に出でしむるの道である。」と主張する。そして植民地経営が経済的にも安全保障にも日本にとってメリットは少ないと、きちんと経済学的にも解説している。
 もちろん彼の論は当時受け入れられるものではなく、警察や軍部に敵視されるものでした。
 しかし、戦後の日本は彼の主張した道を歩んだように見えます。
 
 同じ様に時局批判したジャーナリスト桐生悠々の、都市空襲を受けるならば日本の敗北は必至であるとした1933年信濃毎日新聞社説『関東防空大演習を嗤う』も、後でその通りになっています。

 正論必ずしも世に容れられるものではないということです。
 私の考えていることだって、誰かの受け売りになっていないか、まず自分から検証しなければいけません。

 そして戦後。山田風太郎の昭和21年の日記。
(新宿でA級戦犯を乗せた護送バスを見て)
この20年、10年亜細亜と全地球を震撼せしめた風雲児たちがギッシリつめられているのだ。彼等が残虐極まる戦犯であることを、今疑うものは一人もないが、もう十年たつと、やっぱり日本の英雄達に帰るから、輿論とは笑うべきものである(5月6日)

 山田風太郎の日記では、戦後の日本の手のひら返しの如き輿論の実態もきっちり読めます。

 ちなみに、湛山は戦後にもGHQから「戦争協力者」としてパージを受ける破目になりました。要するに、占領軍にも言いたいことを言っていたからです。連合軍の占領終了後首相になりましたが健康上の理由で2ヶ月で退陣。後に立正大学学長にもなりました。立正大学では、湛山の精神はどう生きているのでしょうか?