虫干し映画MEMO

映画と本の備忘録みたいなものです
映画も本もクラシックが多いです

ピエロの赤い鼻 (2003/フランス)

2005年06月30日 | 映画感想は行
EFFROYABLES JARDINS
監督: ジャン・ベッケル
出演: ジャック・ヴィルレ  ジャック
    アンドレ・デュソリエ  アンドレ
    ティエリー・レルミット  ティエリー
   ブノワ・マジメル  エミール
   シュザンヌ・フロン  マリー

 1960年代のフランスの田舎町の小学校教師のジャックは、毎週日曜日になると、赤い鼻をつけたピエロとなり、人々を笑わせていた。息子のリュシアンはそんな父が理解できず、怒りのこもった目で彼にとっては「馬鹿なこと」をしている父を見ている。ジャックの古い友人アンドレは、リュシアンにジャックがピエロになるわけを話して聞かせる。
 それは第2次世界大戦中…

 映画途中から、めちゃめちゃ泣いてしまった。フランスではレジスタンスは特別な地位を持っているように思うのだけれど、今までの礼賛昂揚的なだけでなく、レジスタンスに参加するまでは行かないけどドイツは癪にさわるフランス人の行動の喜劇と悲劇が表裏に張り付いて、どちらの側が次に見せられるのかわからない映画。普通の人々の勇気と優しさに思い切り打ちのめされる感じ。
 ドイツ占領下のフランスで、ジャックとアンドレはルイーズにいいところを見せたくて列車のポイントを爆破する。しかし傷ついたのはフランス人。そして真犯人が出ないならば射殺されるはずの人質に選ばれてしまう。人質はほかに調子のいい保険屋とジャックの教え子の青年。そして死を目前にした極限状況の中でのあるドイツ兵との交流。
 それは「戦場のピアニスト」を想起させるものであった。あの映画でも、自らの意思に関係なく状況に押し流されて悲痛な最期を遂げるドイツ軍人が物語で主人公と対となるが、ここでも、命を懸けて自分の人間性を守り通し、死んでいったドイツ人に、そして自分の命と人生を他人に与えたフランス人の夫婦に無条件で泣かずにはいられない。そしてジャックは死者への誓いを守り通し、与えられた自分の命に光を宿すのである。

 映画のムードがあくまで荘重に沈まず、それを受け入れるかどうかは好みの問題になってしまうと思うが、私はともかく泣けた。
 出演俳優が、近年見たフランス映画に出ていた顔なじみが多くて、安心ではあったのだけど、ほかの映画を思い出してしまう。特にブノワ・マジメルは「ピアニスト」のワルターですから、ひょっとして切れるんじゃないかとつい心配してしまった。

耳慣れたクラシック

2005年06月30日 | 日記・雑記
 昨日の夜は、川崎の新しいホールでコンサートがありました。
 曲目がリクエストで決まるというので、ほんとに耳慣れた曲ばかりで、最後がエルガーの「威風堂々」 で、連れが演奏家の腕よりホールの音響に興味のある建築技術者だったので、「曲の余韻がおさまらないうちに、急いで拍手ばかりしてNA15がわからん」と、こっちにはわからない用語を発する人間でした。でも確かに、静かに終わる曲は、余韻が消えて一呼吸置いてから拍手が起こるほうがいいなあ。なんか終わるか終わらないかのうちに怒涛の拍手では却って興がそがれる感じ。

 思ったのが日本の音楽教育も欧米クラシックが主なので、クラシックファン以外へのリクエストで、これくらいはすぐに出てくるんだな~、と。
 しかし、日本のクラシックだと、どうなんでしょう?
 雅楽「越天楽」は必ず教科書にあるのでともかく、例えば長唄だけでも「越後獅子」「松の緑」「黒髪」がさわりでわかる人は愛好者以外どのくらいいるかな?

 前に、「てなもんや三度笠」という昔の時代劇バラエティ番組のリバイバル放送の録画を見せてもらったことがあるのだが、若侍役が、
「てんぷらの衣はうどん粉で~」
と「勧進帳」の「旅の衣はすずかけの」のもじりを歌いながら登場してました。
 こういう番組で通じるギャグであったということは、勧進帳の芝居もこの長唄も日本人のスタンダードな共通常識だったということですよね。その番組から、もう30~40年くらい経ったでしょうか。いま、そのギャグ、通じるでしょうか?
 なぜか日本のクラシックが気になったコンサートでした。だから中学校で邦楽器必修になったのかな?でも自分で演奏より、派手で豪華でわかりやすくてちょっと無残で面白い「道成寺」の踊りでも見せたほうが日本の文化全般への興味が湧きそうな気がする。