虫干し映画MEMO

映画と本の備忘録みたいなものです
映画も本もクラシックが多いです

ロッキー・ホラー・ショー (1975/英)

2004年06月30日 | 映画感想ら行
THE ROCKY HORROR PICTURE SHOW
監督:ジム・シャーマン
出演:ティム・カリー スーザン・サランドン バリー・ボストウィック

 婚約したばかりのブラッドとジャネットは雷雨の中で迷った挙句にパンク、電話を借りようと立ち寄った気味の悪い城で、とんでもない一夜を経験する。

 始めてみた時は、知性派スーザン・サランドンのほぼ全編下着姿(きれいだなあ)と、高くて細めの歌声に圧倒されちゃったのですが、キッチュでエッチで怪しくておかしい素敵なミュージカル。
 私は今まで一度しか見たことなかったのだけれど、これ、少し前までは旧作館とかで定期的にパーティーのように上映があったそうですね。わかる!思わず身体が動きます。
 おまけにキングコングも借りてきてしまいました。
 DVDには、特典映像はないけど、音声解説が
「監督・脚本の二人の音声解説」「アメリカ映画館のファンの突っ込み」「元ネタ解説」がついていて、と~っても楽しめます!

リチャードを探して (1996/米)

2004年06月29日 | 映画感想ら行
LOOKING FOR RICHARD
監督、制作、脚本、主演:アル・パチーノ
出演:アレック・ボールドウィン ウィノナ・ライダー ケヴィン・スペイシー

アル・パチーノの初監督作品。シェイクスピアの「リチャード三世」の映像化を、俳優が役と作品を作り上げていくまでを、作品と町の人から、シェイクスピア俳優、学者などの反応、解釈を織り込みながらのドキュメンタリー。
インタビューに登場する俳優はJ・ギールグッド、K・ブラナー、V・レッドグレイヴ、D・ジャコビ、J・R・ジョーンズ、K・クライン。

私のシェイクスピア入門は字からだったので、小説的に読んで面白さに興奮し、劇で退屈した、という覚えがあまりない。ただ、劇場中継を見ていると、汗迸らせながら高い調子でセリフを歌う役者さんに眼を奪われがちになります。ほぼ日本語で見てます。
この映画の中で、映画化では劇の独特の台詞回しでなく、あたりまえにあの素晴らしいせりふを言う、というのを見て、ケネス・ブラナーなんかは実はこれがやりたくて、あれほどドッチャリ沙翁劇の映画化をしてるのかしらん、なんて思った。独白と言うか、観客に語るような部分が多いから。「マクベス」のイアーゴなんか、モノローグをほんとうにた~~~~っぷりって感じで演じてましたものね。
濡れ衣をきせられた現実のリチャード三世は気の毒だが、なんて面白いんだろう!ただ、アル・パチーノの扮装は醜さと共に必要な色気と言うか魅力がもうちょっとほしいな~なんて贅沢言っちゃいたい。

シュレック(2001/米)

2004年06月27日 | 映画感想さ行
監督:アンドリュー・アダムソン ヴィッキー・ジェンソン
声の出演:マイク・マイヤーズ キャメロン・ディアス エディ・マーフィ ジョン・リスゴー

 緑のオーガー、シュレックは、王位を狙うファークアーク卿に火を吐く竜の守る塔に閉じ込められているフィオナ姫の救出に行かされるハメになる…

 ギャグの一つ一つがけっこうえぐいので、子どもが嫌がったりして、う~ん対象年齢は何歳?と思う。でも画面の草の質感、空の遠さなんかはきれいでため息が出そう。テレビでしか見たことがないけれど、映画館で見たらさぞかしと思う。
 でも別に見たかったなあ~とは強烈に思えないのよね~
 うちの十代少女二人も、「見終わった後、なんか釈然としない」と言います。今回は一人初見、一人再見だったけど、二人とも同じ感想。
 「人の本質は外見にあらず」はその通りですけどね、私も「醜い」フィオナ姫が、本当に醜いのか、オーガーのシュレックが何で人間の基準で自分を醜いと言っとるんじゃい?が疑問でたまらないのよね。いわゆる「美しい姿」を持ってるフィオナ姫が、悩むのはわかるけど、シュレックの持つ自分像が誰の基準をもって「醜い」になっとるのか?
 美はそれを見るものの中にあるんでしょう?

深呼吸の必要(2004/日)

2004年06月25日 | 映画感想さ行
監督:篠原哲雄
出演:香里奈 谷原章介 成宮寛貴 北村三郎 吉田妙子 金子さやか 久遠さやか 長澤まさみ 大森南朋

 2月、沖縄の離島のキビ刈りに内地から若者たちがやってくる。3月いっぱいまでに見渡す限りのキビ畑を刈らなければならない。それを過ぎると工場が閉まるので、農家にとっては必死の時期。慣れない彼らは、経験豊富な田所の指導でキビ刈りをはじめる。

 思わずメインキャストを全部書いてしまいました。これは強いて言えば香里奈が中心なのでしょうが、それぞれに解決しきれないものを抱えた彼らが、自然と、島の優しさと労働の中でそれなりに自分の心を解放していくさまを、起伏はちょっとでじんわり、しみじみ~と見せてくれます。
 お話は出来過ぎって言ったらそれまでです。離島の事故という緊急時にお医者と看護婦さんがたまたま居合わせるなんて幸運もそうはないでしょう。でも極端な人の出て来ない、それなりにつらい生き方の中でもがく若者たちを優しい目で描いた、心が穏やかになる映画でした。 

先生の袴

2004年06月25日 | 日記・雑記
 どうでもいいって言えば、ほんとにどうでもいいことなんだけど。
 今年の小学校の卒業アルバムで、30歳前後の女の先生が、柄の入った中振袖に裾模様付きの袴、編み上げブーツというすごい格好をしていた。
 これ絶対誤解があるよね。
 袴にブーツというのは、大正の一時期くらいの女学生の、かなり特殊な格好なんだよね。女学生の一般的なスタイルは袴に草履。…うちのおばあちゃんは、大正時代の東京府立第一高女の卒業生で、アルバムも残ってるし、本人から聞いたから間違いないと思うけど。
…けっこうきれいな先生だからかわいいけどね。やっぱり仮装っぽく見えちゃって。式服にはどうかあ~と思っちゃう。
 中学校の先生は、紋付袴に草履だった。
 ほっとした。
 こうやって、いろいろ変わって行っちゃうんだろうか。

アカルイミライ(2002/日)

2004年06月24日 | 映画感想あ行
監督:黒澤清
出演:オダギリジョー、浅野忠信、藤竜也

 これは今日見た映画ではないけれど、お薦めしちゃったので一応参考までに感想をヒトコト。
 
 ヒリヒリくる映画。肌を一枚剥かれる様な感触がある。程度の差はあっても、誰しも社会や世間への違和感・疎外感・爆発しそうなものを抱えている自分というものに覚えがあるのではないかと思う。自分の周りのバリアの中に無遠慮に入ってくる人間への不快感もすごく痛切に感じられる。拒絶して、それでも何かを求めている。でも何を?ワタシハナニヲモトメテイルノダロウ?ワタシノイルベキバショハドコカ?苛立ちになって噴出してしまう。
 若い彼等の視界には他者への共感、とでも呼ぶものがまだ無い。しかし歳をとったところで、それで他者へのまなざしを獲得しても何がわかるというものではない。ただ受け入れられることの幅が少し広くなるだけ。でもそれがあるのとないのとでは、生きること、日常を過ごす重さがすごく違うんだけど。
 そして空の向こうが見えないことを認識して、そこから今日から明日へ、が始まる。
 オダギリジョー、浅野忠信、藤竜也すごくいいです。
 くらげの非現実感もぐっときます。

BS映画

2004年06月23日 | 映画の話題
23日はわりと暇な日で、「深呼吸の必要」のチケットもらっちゃったので、行く気満々でした。でも足がはれちゃって一日休養。結局家でBS映画3本見ていたので、出かけて1本か、家で3本か…あんまり変わりが無いような気もする。
で見ていたのが
「孔雀城の花嫁」(1959/日)
「チザム」(1970/米)
「白馬城の花嫁」(1961/日)
「チザム」西部史上有名なリンカーン郡の騒動の英雄チザムをジョン・ウェインが演じる。話はきついが思いっきり娯楽映画で銃撃戦からスタンピードまで西部劇要素大盤振舞。パット・ギャレットがさえないオジサン風だった。最後にチラッと新聞記事に出てくるウォーレス将軍というのは「ベン・ハー」の原作者?
「孔雀城の花嫁」は美空ひばり出演でも大友柳太朗の「花嫁」シリーズ。「白馬城~」は美空ひばり映画。
 私は、「孔雀城」の美空ひばりが女優として一番好き。歌が少ないし、お姫様らしさ、清楚さがいい。それに大友柳太朗の役が人にあってる。映画としても、ありがちとはいえ、ラストはジ~ンと来る。米とぎシーンが好きだ。

Book Columnも書かなくちゃ

2004年06月22日 | 
本のほう、サボってばかりです。いいかげんやらなくちゃ、と気合を入れようとしてます。
これ書きたいなあ、と思っているのが今のところ
「ラーオ博士のサーカス」フィ二ー
「永遠平和のために」カント
「新トロイア物語」阿刀田高
以上3冊。
「ラーオ博士のサーカス」は長年の愛読書なので一度は書きたいな、なのです。へんてこりんで滑稽で妙にひっかかる本です。
「永遠平和のために」私もカントの批判シリーズはおそるおそる読み始め、さっさと挫折しましたが、この本(岩波文庫版)は薄いし、要件が箇条書きになっているので、頭整理しながら何とか食いついていけます。やっぱりわけのわかんないとこはあります。翻訳も決して親切じゃないと思う。でも永遠平和のための条件というのを、一つ一つ読んでいくたびに情なくなっちゃう。えらい人はたいてい、これ知ってるんだろうになあ。
「新トロイア物語」これは「トロイ」のために引っ張り出してきたが、ほんとにほんとに面白かった。ウェルギリウス読まなくても、トロイ戦争から、ローマ建国への流れがわかっちゃう!その上物語がたっぷりズッシリ味わえるお値打ちもの!
 というわけで、この3冊のBook Column、そのうちぼちぼちしか書けませんが今からでも是非!どれも読んで損はありません。

歴史は女で作られる(1955/仏)

2004年06月21日 | 映画感想ら行
監督:マックス・オフュルス
出演:マルチーヌ・キャロル ピーター・ユスチノフ

 19世紀、ヨーロッパの社会で一世を風靡し、さまざまな著名人・国王と浮名を流したローラ・モンテスの生涯を描く。

 なんていうと、女性一代記みたいですし、そういう風に見られないことはないけど、これはローラ・モンテスという数奇な一生の女性の生涯に寄せて、映画としての語り口みたいなものを見せてるような映画ですね。
 ローラ・モンテスはスペイン舞踊のダンサーとしてもてはやされ、栄華の日を作曲家リストや、バヴァリア国王の恋人として過ごした後に、落ちぶれてサーカスの見世物になります。実際、この女性にとって凄まじく残酷なシーンが連続していくわけで、さらし者にされ、不躾な質問を浴び、挙句が「たった1ドルで、あなたも元国王の愛人に触れられる」というありさま。その屈辱のシーンと彼女の回想の中の華やかな過去がまるで層のように重ねられ、まだまだ美しい彼女のその場の表情を一層痛切に見せていく。混ざり合うのではなく。重ねられる、という印象。
 印象的なシーンが多い。船上での窓越しのダンスシーンから一人舳先で空を見上げるローラ、リストとの別れの朝のローラ、パレードに向かってまっすぐ馬を走らせるローラ、針と糸を求めての大騒ぎ…
 本当の意味での賢さを持たなかったかもしれないが、きっと彼女はセンスがよくて機転が利いて、最高の恋人だったのだろう。しかし、皆彼女のもとを去り、しかし彼女はそれをきっぱり見送れる女だった。自分の生きたい様に生きる、と言い切る女だった。男女を問わず、世界はそういう人間に甘くない。

キューティー・ブロンド(2001/米)

2004年06月20日 | 映画感想か行
LEGALLY BLONDE
監督:ロバート・ルケティック
出演:リース・ウィザースプーン ルーク・ウィルソン マシュー・デイヴィス

 プロポーズを待っていた政治家志望の彼に「ブロンドの頭悪い娘と結婚できない」と振られてしまったエルは、彼の心を取り戻すべく、一途ながんばりで彼の後を追ってハーバード・ロースクールに合格。しかし彼には既にブルネットのフィアンセがいた。 

 やっとこ今ごろ、みました。
 能天気にうまく行き過ぎるって言えばそうですけど、爽快感もあって楽しい映画でした。ブロンドでグラマーで、そんな娘はオバカにしか見られない、というのは「へえ、そうなの?」(実感がない)なんですけどね。ま、この映画世間の思いこみ一覧とばかりに並べ立ててあります。「法学部のエリートは退屈で話しベタ・自分の頭脳を鼻にかけてる」「女性運動家はブスで身なりにかまわない」などなど。映画自体がそれを否定してないし、かえってステレオタイプをそのとおりに描いとります。とはいえ、頭悪いから、と自分を振った男に同じ言葉を投げつけてやれるなんて、なんて爽快なんでしょう!
 主人公が、自分の可能性をどかどか発掘していくところ、彼女があくまで前向きで性格がいいところが気分のいいところ。それにこの映画には基本的にいやな女が出てこない。イヤな男なら出てくるけど。
 それにブロンド美女といっても、リース・ウィザースプーンきれいには違いないけど、けっこうそこそこの美女で、決して手の届かない美女ではない。それもまた成功要因かな?

ユー・ガット・メール(1998/米)

2004年06月19日 | 映画感想や行
YOU'VE GOT MAIL
監督:ノーラ・エフロン
出演:トム・ハンクス メグ・ライアン

「めぐり逢えたら」の主演コンビで、メールでのやりとりで心を通わせた、でも実生活では商売敵の男女の、恋を実らせるまでの物語。

 これは元になったエルンスト・ルビッチ監督の「街角」をこの間見てしまったので、前に見たときより点が辛くなってしまった。元の映画を知らずにこれだけ見れば、ほんわかしていいそこそこの映画だな、という感想だった。
 ルビッチ監督の街角(1940)は時代が時代だから、文通だし、主人公同志は同じ店の中のライバル。ほとんどが店の中で展開されるが、周囲のキャラの際立ちかたがルビッチのほうが光ってる。それにラストシーンの主演ジミー・スチュアートのキュートさ!靴下ガーターがめちゃめちゃキュート!そういうきゃああ~~~なインパクトがルビッチ版のほうが強い。

 でも「ユー・ガット・メール」に出てくるフォックスブック、ああいうティー・ラウンジみたいな本屋さんい~な~。

江の島

2004年06月19日 | 日記・雑記
江ノ島水族館を偵察に行こうと思いましたが、たどり着けませんでした。
晴れた初夏の湘南ですから、道からしてすごい混雑で、カーナビにも裏切られ、おみやげ海産物はやたら高価でした。混んだところはきらいです。
稚児が淵あたりでお休み。
台風が近いせいか、波は大荒れでした。でも立ち入り禁止の場所で根性で海水浴している親子連れ、強風吹きすさぶ崖で寄り添うカップルなどいました。レジャーに必要なのは体力です。

トロイのヘレン(1955/米)

2004年06月17日 | 映画感想た行
HELEN OF TROY
監督:ロバート・ワイズ
出演:ロッサナ・ポデスタ スタンリー・ベイカー ジャック・セルナス

 これまたロバート・ワイズ監督。意識してじゃないけど、最近ワイズ監督をまとめてみてるみたい。
 この映画は、パリスも、ヘレンもまともな人間で、トロイ戦争ははげたかの如きギリシャの為政者たちの欲が一番の原因で、二人の駆け落ちは止むに止まれぬ仕儀…に見えます。いえ、「トロイ」では戦争の原因の二人、あまりにもアサハカっぽくヘナチョコだったもんですから。
 俳優さんたちも筋肉魔人みたいじゃない。でも戦士というより、スポーツ選手みたいだけど。
 ロッサナ・ポデスタのヘレンは本当に生けるギリシャ彫刻のように美しい。登場シーンは息を呑む。観客はパリスと共に、近づいてくるヘレンの美しさを刻一刻実感することになる。スタイルも完璧(特に腕と胸)それでいて少女っぽい初々しさがあって、本当に素敵。この場合はたまたま絶世の美女に生まれたが為の不幸をもった女性、って感じ。「トロイ」のダイアン・クリューガーもきれいだったけど、どこか尖ったところがあって、私はロッサナ・ポデスタのほうがいい。
 ラストも、夫がパリスを殺しヘレンを取り戻す。イリアッドでは、トロイの女性は総て悲劇を背負わされることになるが、ヘレンは別である。でもこの映画では、彼女は真に愛するものを失う悲しみを経験する。ワイズ監督はやさしい。
 戦闘シーンも、「トロイ」より生々しくなかったけど、セットや何かは負けてなかった。
若いブリジット・バルドーがでてるんだけど、完璧にポデスタに負けてる。主役の輝きってすごい。

トロイ(2003/米)

2004年06月16日 | 映画感想た行
監督:ウォルフガング・ペーターゼン
出演:ブラッド・ピット エリック・バナ オーランド・ブルーム ダイアン・クルーガー  ショーン・ビーン

 カウンター33333番のゲッターさんと見てきました。
 二人ともどちらかというと、ドラマに浸かりたいタイプで、これはスケール壮大だし、映像はすごいんだけど、ドラマという部分では今ひとつだったのでした。
 それにホメロスの「イリアッド」とはかなり違ってるので、別物だということを肝に銘じて見ないと、腹立つこともあるかも。
 この映画の見せ場は戦闘シーンと、ブラピ、エリック・バナの躍動する筋肉の豪快さ、美しさ。そういうシーンはすごい。もう血が沸いちゃう感じ!かっこいい!!!!
 アガメムノンのや~な奴な部分とか、アキレスの感覚も古代ヒーロー的というより、現代人の感覚に近い。それで一番損だな、と思うのが女優陣。ギリシャ全土を戦争に陥れる美女へレンがそう見えるか、ブリセウス役の若い女優が非情のアキレスの心を揺るがす美と無垢と勇気を演じきれているか、本来ならヘクトルの凛々しい妻の筈のアンドロマケが泣きべそばっかかいちゃいかんとか。
 映画見る前の予習が多すぎて、かえって楽しめなかったのかな、とちょっと反省はあります。
 でももっと古代のロマンの香りが欲しかったりして~~~

Movie diary トロイ

素敵な歌と舟はゆく (1999/仏・伊・スイス)

2004年06月15日 | 映画感想さ行
Adieu,Plancher des Vaches
監督:オタール・イオセリアーニ
出演:ニコ・タリエラシュヴァリ、リリー・ラヴィーナ

 パリ郊外の城のような屋敷にすむ青年ニコラの一家。へりで飛び回るやり手の実業家の母、気ままに暮らす父、まだ小さな妹たち。彼自身はパリへ出かけて、物乞い皿洗いといったアルバイトをしている…

 この監督の映画はこれしか見たことがありません。はじめて見た時は、ジャック・タチを連想しました。セリフなんてメじゃないところや、映像が語るおかしみなんてよく似てると思うけど、テイストはずっと苦い。残酷、冷酷ですらある。それでも、みんな自分なりに自分の人生を生きていく自由な風に溢れている。
 見終わって、じわっとしてしまう。
 何気なく流れていくエピソードの一つ一つが、思いっきり人生そのものを差し出されたように思えてくる。例えば、ドジばかり踏んでいる巨体の黒人秘書が皿の汚れに文句を言った為に、ニコラは首になる。それを見送り、沈んでしまう黒人の表情。金持ちのニコラの仕事に対する姿勢や、失敗続きの黒人の胸のうちがくっきり浮かび上がる。
 コウノトリもなんか象徴的だし、父と自由人浮浪者の歌が特に記憶に残る。あれは監督の出身地の歌なのだろうか?
 公開時のコピーは「アデュー! 私の家族」だった。でもやはり夢かな。あの海と白い帆と、歌と友と…というのは。