虫干し映画MEMO

映画と本の備忘録みたいなものです
映画も本もクラシックが多いです

ナポレオンの愛人(2006/イタリア、スペイン、フランス)

2008年10月07日 | 映画感想な行
IO E NAPOLEONE[伊]/NAPOLEON (ET MOI)[仏]
NAPOLEON AND ME[米]
監督: パオロ・ヴィルツィ
出演: モニカ・ベルッチ
   ダニエル・オートゥイユ
   エリオ・ジェルマーノ

 ナポレオンに対して激しい反感を持つエルバ島の若い教師・マルティーノは、生徒を扇動して教師を首になる。ナポレオン暗殺を狙う彼だが、島で数少ないインテリであるために流刑となり島にやって来たナポレオンに司書として雇われて…。

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 これも邦題がなんかな~、でした。英題見ると、まあ納得です。
 私としては「あるいは裏切りという名の犬」のノワールなオートゥイユ様が、ナポレオンという英雄であり、悪魔でもあり、小人物な面も、でもやっぱり強烈な吸引力を持つ人物をさすがの貫録で演じてほれぼれでしたし、主人公マルティーノの情けなくて直情な若さが好ましくもあり、滑稽でも悲劇でもあり…ラストもうまい!
 コイツ、ほんとにしょうがねーなー…と…。いや、主人公だけでなくみんなが。
 それでつい、小突かれまくるコジモの見せる優しさにホッとする気分になります。決して共感できる人物ではないのですが。

 皮肉な映画です。
 ナポレオンは自分に投影される周囲の期待というものを分かってそれに乗ってますからね。
 人間て、どうして懲りないんでしょう。
 鳴り響くベートーベンが実に気が利いてます。

日本海大海戦(1969/日本)

2008年09月08日 | 映画感想な行
BATTLE OF THE JAPAN SEA
監督: 丸山誠治
出演: 三船敏郎    東郷平八郎(連合艦隊司令長官)
   加山雄三    広瀬武雄少佐
   仲代達矢    明石大佐
   平田昭彦    津野田参謀
   土屋嘉男    秋山参謀
   佐原健二    信濃丸副長
   アンドリュウ・ヒューズ    ロジェストウェンスキー中将
                     (ロシア艦隊司令長官)
   ピーター・ウィリアムス    ネボガトフ司令官
   藤田進     上村中将

 日本連合艦隊とロシアのバルチック艦隊との海戦を描いた戦争スペクタクル。

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 基本に忠実に、細心な注意を行き届かせ、情報を正しく読み、なおかつ勝負に出るときは大胆に…というまことに、事に当たっては斯くありたい作戦です。

 6日土曜の夜BS放送の「7人の侍」見ずにこちらにしました。128分の映画でしたが、それよりもずっと長~く感じました。
 すごいオールスターキャストなんです。allcinemaのキャスト一覧でも、乃木大将の笠智衆も(ちょっと気の毒な役でもありますが)、辰巳柳太郎とか松本幸四郎とかもメインじゃない様な位置にあるほどです。
 東郷元帥、広瀬少佐などなど、昔の少年たちのヒーロー目白押しで、皆様きちっとその人物を造形しておられます。
 海戦シーンは素晴らしいです。

 でも… 学校で歴史の時間に教材ドラマ見ているような気分に誘われてしまったのでした。すいません。

ノーカントリー(2007/アメリカ)

2008年09月07日 | 映画感想な行
NO COUNTRY FOR OLD MEN
監督: ジョエル・コーエン
   イーサン・コーエン
出演: トミー・リー・ジョーンズ    エド・トム・ベル保安官
   ハビエル・バルデム    アントン・シガー
   ジョシュ・ブローリン    ルウェリン・モス
   ウディ・ハレルソン    カーソン・ウェルズ
   ケリー・マクドナルド    カーラ・ジーン

 ベトナム帰還兵モスは、複数の死体が横たわる麻薬の取引現場らしい場所の近くで、200万ドルの大金を発見した。危険と知りつつ持ち帰ってしまう。その後、組織と殺人者シガーに追われる身となってしまう。モスは、愛する若い妻カーラ・ジーンを守るため、死力を尽くしてシガーの追跡を躱していく。一方、老保安官エド・トム・ベルもまた、モスの行方を追い始める。

 例によってallcinema ONLINEの引用ですが、
 80年代、メキシコ国境沿いのテキサスを舞台に、麻薬取引がらみの大金を持ち逃げしたばかりに、理不尽なまでに容赦のない宿命を背負わされてしまう男の運命を、原作の持つ神話的スケールそのままに描き出す。

 映画を観終わって、これを読むまで、主人公がモスだとは思わなかったりして。
 誰が主人公?と聞かれると、モスかなあ…とは思いますが、なんかドラマの真ん中にいる気がしません。冷血で感情の感じられない殺し屋シガー役のハビエル・バルデムの印象は強烈ですが、やはり主人公とは言えません。
 この映画を牛耳っているのは、原題に最も端的に示される自分を取り巻く世界の崩壊…崩壊というよりも、世界が確かなものであることへの疑念かな。
 トミー・リー・ジョーンズのいかにも骨っぽい、老練な保安官の嘆息に、今まで堅固であると信じていた足もとが、砂状化して音もなく崩れて行くような感じがする。それを感じられるものは全部ではないけれど、運命というものは全ての者にひとしく気まぐれで不条理。気づいたが負け。ちょっと大げさかもしれないが、虚無の前にたたずむ恐ろしさというのはこんなものだろうか。

 恐ろしい映画だったが、一番恐ろしい殺し屋が妙に「納得の存在」であったのが不思議で、しかも面白い。忘れられなくなりそうな映画。

ナショナル・トレジャー/リンカーン暗殺者の日記(2007/アメリカ)

2008年06月19日 | 映画感想な行
NATIONAL TREASURE: BOOK OF SECRETS
監督: ジョン・タートルトーブ
出演: ニコラス・ケイジ    ベン・ゲイツ
   ジョン・ヴォイト    パトリック・ゲイツ
   ハーヴェイ・カイテル    セダスキー
   エド・ハリス      ウィルキンソン
   ダイアン・クルーガー    アビゲイル・チェイス博士
   ジャスティン・バーサ    ライリー・プール
   ブルース・グリーンウッド    大統領
   ヘレン・ミレン     エミリー・アップルトン博士

 ウィルキンソンと名乗る古美術商から、彼の曽祖父がリンカーン大統領暗殺事件の犯人だと告発される。ベンは何としても祖先の無実を晴らそうと、天才ハッカーのライリー、そしてベンとは今や破局寸前の恋人アビゲイルの協力を得て調査を開始。

 前作で「これがほんとに古代から誰にも解けない謎だったのかい?」と呆然とするほどサクサク謎解きをして、秘宝を見つけたベン・ゲイツですが、今回もヒントが出たらその場で解決、まあ、特殊文字の解読はお母さんにやってもらいますが、謎解きは家族内で間に合ってます。
 お約束通りに恋人とは壊れかけてます。彼って、謎解きしてないと魅力がないんでしょうか?
 ライリーもラッキーを掴み損ねてます。

 そんなこんなで、アクションもハデだけど人的ダメージがなく、サスペンスも全然息苦しくなく、おまわりさん達もそうむきになって追いかけたりしないという素敵な展開で、きちんと2時間で祖先の汚名を雪ぎ、お宝もみつけ、恋人との仲を修復し、長年の両親の不和も、ライリーの経済問題まで一挙解決!
 すごいじゃありませんか。
 決して皮肉言ってるわけじゃなくて、やっぱ夢と冒険で軽やかにドキドキさせてくれるのもいい映画だよね~

 ただね、私、ヘレン・ミレンもエド・ハリスも大好きで、やっぱ役不足じゃないか、と。
 それにやっぱり秘宝がなきゃダメなのか~とかは、あとで思ったけど。 

ナイト ミュージアム(2006/アメリカ)

2007年04月26日 | 映画感想な行
NIGHT AT THE MUSEUM
監督: ショーン・レヴィ
出演: ベン・スティラー   ラリー・デイリー
   カーラ・グギーノ     レベッカ
   ディック・ヴァン・ダイク    セシル
   ミッキー・ルーニー    ガス
   ビル・コッブス    レジナルド
   ジェイク・チェリー    ニック・デリー
   ロビン・ウィリアムズ     テディ・ルーズベルト大統領

 失業中のラリーは、別れた妻の元にいる息子にも足元の定まらない生活から抜け出して、定職につけといわれる始末。なんとか自然史博物館の夜警の仕事にありつくが、夜になると、そこは展示物に命が宿って大騒ぎになっていた…!

 近所のシネコンでは吹き替えしかなかったので、昨夜ちょっとお出かけして原語版見て来ました。
 楽しかったです~。本当にご家族向けプログラムピクチャーのお手本、という感じでお行儀が良くて気持ちのいい映画でした。解釈の難しい問題は全部スルー。
 私としては、Sacagawea(サカジャウィア・アクセントは第一音節だと思う)を発音してるところを聞けたのが嬉しかったのですが、彼女は余り活躍してません。

 まあ、映画としては楽しく見られて、気持ちがほっとするというようなもので、展開とかはほぼ読めちゃいます。夜の博物館で、あれが全部動いていたら…という胡桃割人形的にオーソドックスなお話で、誰もがそうだといいな、というところで落ち着きます。アッティラ大王のカウンセリングの"You next"は笑えました。
 それより!! ディック・ヴァン・ダイクとミッキー・ルーニー が!!映画始まるまで知らなかったもので、ほんとにドキドキしてしまった。ラストでは軽快なステップも見せてくださって感激でしたわ!

21グラム(2003/アメリカ)

2006年11月18日 | 映画感想な行
21 GRAMS
監督: アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
出演: ショーン・ペン ポール
   ナオミ・ワッツ クリスティーナ
   ベニチオ・デル・トロ ジャック

 重い心臓病の大学教授のポール。前科者だが立ち直って信仰に生きるジャック。以前はドラッグ中毒だったが今は夫と2人の娘と幸福に暮らすクリスティーナ。不幸な事故から出会うはずも無い3人の運命が交錯していく。

 21グラムの意味はもうすでにインプット済みなのだが、「魂の重さ」「命の重さ」というものよりも、「それでも人生は続くのか?」「何のために生きるのか?」が宿題として残されたような気分。これもまた善と悪との対決のすっきりした構成でなく、誰もが落ち込んでしまいそうな人生の落とし穴を見せられたみたい。
 時間がシャッフルされていて、終わりのほうになっていろいろなシーンがつながってまとまりを持つ。生き残ったものに希望を持たせるような終わり方ではあるものの、それでも生きるのは苦しいだろうし、死んでいくのは無念だろう。
 ありがたいことに、ここまでぎりぎりに切羽詰った状況に追い込まれたことが無いので、できる限りの想像をするしかない。そして想像を超えた苦しみが待っていることも想像できる。

 臓器移植についても考えさせられた。私は今まで「自分個人としては臓器移植以外に命をつなぐ道が無くても選択したくありません、ほかの人についてはわかりません」という立場であったのだが、さて、本当にぎりぎりまで追い込まれたらなんと言うのだろう。
  'Life goes on...'  人生は続く… それに生命をつなぐって子供を生んでということもあり、またここでは一部が他の個体で生きているというのも改めて不自然だと思う。それをどう得心するか、受け入れるか受け入れないか… 海外での移植のための募金なんかもここら辺はスルーしているようです。考えても袋小路に入っちゃうでしょうが、目をつぶれば不誠実です。

 ショーン・ペンは相変わらずうまいですが、ベニチオ・デル・トロの演技の頑なさが、前科者から更生したジャックという男に似つかわしいと思った。

NOTHING ナッシング(2003/カナダ、日本 )

2006年11月16日 | 映画感想な行
NOTHING
監督: ヴィンチェンゾ・ナタリ
出演: デヴィッド・ヒューレット デイブ
   アンドリュー・ミラー アンドリュー

 カナダ、トロント。デイブとアンドリューは、共に人付き合いに難がある性格。デイブは協調性がなく、アンドリューは極度の心配性で家から出られない引きこもり。その二人は、デイブが外で、アンドリューが家にいることで、なんとか生きていた。しかしその二人の生活にひびが入り、ついで仕事も家も失いそうになり、思わず二人は“放っといてくれ!”と叫ぶ。するとその瞬間から、驚いたことに彼らの家の周りは“無の世界”に・・・。

 特典映像を見ていたら、「低予算映画の見本」とか言われてます。
 ともかく二人の周りからすべてが消えていく、消したいと思ったものを消すことはできるが元に戻すことは出来ないという力を偶々持たされてしまった二人のダメ男に何が起こったか。
 驚いたことにぜんぜんシュールを感じない。気に入らないものを消すことができる力に気がついて、良く考えるとあんまりありがたくもなさそうなその力をどうやって使うか。気に触るものを刹那的にドンドン消していくのであって、その瞬間には結果なんか考えてられない。実によく分かる。
 この大変な事態になにやってるんだろうねえ…とか。(日本)刀を革ベルトで背負った下着姿にいささか哀感覚えたり…。とんでもない事態に直面してやってることのあほらしさにしみじみ共感(してしまうのだ私は)…。
 まあ、二人とも降りかかるトラブルに対して、ワタクシの家庭で父母の教へ給ひしトラブルへの対処法とはまったく別の対処ばっかりしていて余りの不器用さ、いい加減さに唸らされるのだが、なんかやっぱりその不器用さに共感してしまう。
 結局二人はお神酒徳利みたいなものなのに、なかなか気がつけないのにまた哀感しみじみ。
 多分コメディだろうけれど、つくづくしみじみしてしまった映画。

 それとは別に思い出したのがローレンツの「ソロモンの指輪」身の丈に合わない能力も不幸の元ですって。

ナチョ・リブレ 覆面の神様(2006/アメリカ)

2006年11月07日 | 映画感想な行
NACHO LIBRE
監督: ジャレッド・ヘス
出演: ジャック・ブラック     イグナシオ(ナチョ)
   エクトル・ヒメネス   スティーブン(ヤセ)
   アナ・デ・ラ・レゲラ   シスター・エンカルナシオン
   リチャード・モントーヤ    ギレルモ
   ピーター・ストーメア   ジプシー・エンペラー
   セサール・ゴンサレス    ラムセス
   ダリウス・ロセ     チャンチョ

 幼くして両親を亡くし、修道院で孤児として育てられ、今は料理番のイグナシオ。つまらない生活のうえに、お金のない修道院では大事な子どもたちに満足な食事を与えることもできない。街でルチャ・リブレ(レスリング)のスター、ラムセスの豪華な暮らしぶりを目にしたナチョは、自分もレスラーになってお金を稼ぎ、子どもたちにおいしい食事をあげようと決意する。ところが、ルチャ・リブレは修道院の僧や憧れのシスター・エンカルナシオンからも神に逆らうスポーツだと思われている。彼は、ひょんなことから知り合った謎のヤセ男とタッグを組み覆面レスラー、ナチョとなるべくトレーニングを開始する…。

 すいません。最初に謝っちゃいますが本日はちょっと文句を申し述べさせていただきたいと思います。それで思いっきりストーリーなど書いてしまいます。

 だって惜しい!!

 ジャック・ブラックもエクトル・ヒメネスももったいない! 設定も主役もせっかくの素材を活かしきってない!ラストシーンはにっこりできるのだけれど、どうもすべて「あと一息」と感じてしまう。
 あの「スクール・オブ・ロック」のジャック・ブラックなのであります。
 その主人公が
「ルチャ・リブレが好き」
「孤児たちが好き」
「シスター・エンカルナシオン好き」
そのためにはなりふりかまわず、強くなってやるのだ!
…とここまで揃っていて、あの押し付けがましいくらいギンギンの「ブラックパワー」が押し寄せてこない。
 各所のギャグで笑えるけど、どうもやっぱりあと一息を求めてしまった。

 チャンチョや子どもたちとイグナシオの関係にもっと的を絞って、
 つまらない日常のなかで、シスターの登場とルチャ・リブレとラムセスに憧れる子どもたちにイグナシオの情熱に火がつく
  ↓
 トレーニング、しかし試合で負け続け
  ↓
 強くなりたい!
  ↓
 ラムセスの子どもたちへの裏切り
  ↓
 でまあ、いろいろあって
  ↓
 ナチョとラムセスの決戦!
 徹底的に痛めつけられるナチョ。しかし、シスターと子どもたちの応援で奇跡的な復活と勝利!

 紋切り型になっても、上がったり下がったりを派手にやったほうがこういう映画ではスッキリするかと思うんだけど… もちろんワタクシ個人のわがままなんですが…

ニュー・ワールド(2005/アメリカ)

2006年10月26日 | 映画感想な行
THE NEW WORLD
監督: テレンス・マリック
出演: コリン・ファレル     ジョン・スミス
    クオリアンカ・キルヒャー    ポカホンタス
    クリストファー・プラマー    ニュー・ポート船長
    クリスチャン・ベイル    ジョン・ロルフ
    オーガスト・シェレンバーグ    ポウハタン

 1607年、イギリスの船が、北アメリカに辿り着く。食料も無く、命の瀬戸際の彼らは一部が残り、一部はイギリスへ救助を求めに帰る。ジョン・スミスが先住民との交渉に赴くが捕えられ、処刑されそうになった時、王の末娘ポカホンタスが命乞いをし、彼は救われる。そしてアメリカの大地で二人は愛し合うようになるが…

 チラシのコピーは 

一生を変えてしまう愛がある

17世紀初頭、“新大陸”アメリカ。
異なる世界のふたりが許されない恋におちた――


確かに愛の物語ではありましたが、大いなる自然が舞台なのに、映画全体のトーンが喪失感に満ちたものでありました。
 何だか全体がポカホンタスと蹂躙されるアメリカの地に対するレクイエムみたいに感じる。
 アメリカの大地は実に美しく雄大で荘厳なオーケストラの曲がかぶります。何だか滅びることを約束された楽園のようです。
 イギリスからやってきた者たちは、青々とした大地を柵で囲み、泥の中で汚れています。
 先住民の男たちと、鎧や、まだ織りの荒い布の服をまとったヨーロッパ人を比べると先住民の身体の美しさとが眼を奪います。
 主人公スミス・ポカホンタス・ロルフの3人は誰もが求めて得られぬものに苦しんでいます。
 ポカホンタス登場シーンの彼女ののびやかな美しさが強烈な印象を残すだけに、だんだん萎縮していくような彼女がその後の先住民の運命に重なって来たりもします。

 ただ、私はコリン・ファレルの眉毛に「ありゃなんだ」と言いたい。ミスキャストとまでは言わないけれど、ポカホンタスの心を虜にする様な男か?あれが?と憤然とした。クリスチャン・ベイルがコリン・ファレルの穴を埋められないわきゃあ無いだろう、と思う。この辺の感じ方は私の男性の好み丸出しになってしまうが。
 それにポカホンタスが受身過ぎ。私の読んだ本ではイギリス人が先住民の食料を盗んで、そのためにトラブルが起きてそこを彼女が「争いをエスカレートさせてはいけない」と周囲を鎮めるのでした。それでこそイギリス宮廷でも存在感を示す大陸の王女なのではないか?この映画のクオリアンカ・キルヒャーは本当にきれいだけれど、運命に翻弄されるばかりではない若い率直さや威厳がもっともっと欲しいと思うのでありました。
 ディズニーの「ポカホンタス」もテーマ曲以外は好きではないが、これも映像はきれいだし、構成も悪くは無い…が個人的に納得できない。

 ちなみに、私はポカホンタスは空気の悪いロンドンなんかに行ったからあの若さで亡くなったんではないかと思っている。
 それからちょっとした日本とのご縁では、日米通商条約が調印されたり、幕府の遣米使節が乗って太平洋を渡ったのがこのポカホンタス父の名前の軍艦ボウハタン号。

28日後... (2002/イギリス、アメリカ、オランダ)

2006年06月18日 | 映画感想な行
28 DAYS LATER...
監督: ダニー・ボイル
出演: キリアン・マーフィ    ジム
    ナオミ・ハリス   セリーナ
    クリストファー・エクルストン    ヘンリー少佐
    ミーガン・バーンズ    ハンナ
    ブレンダン・グリーソン    フランク

 人間の人格をなくし凶暴なだけの存在にしてしまうウィルスに感染したチンパンジーたちが、動物愛護活動家たちによって放される。その活動家の一人がチンパンジーに噛まれて、仲間に襲い掛かる…。その28日後。交通事故で昏睡状態に陥っていたメッセンジャーのジムは、ロンドン市内の病院の集中治療室で意識を取り戻す。ベッドから起き廊下をさまようジムだったが、院内にはまったく人の気配がなかった。

 終末世界ものでした。
 それほど心胆寒からしめるものではなかったのですが、後半の武器を持って孤立し常軌を逸した小グループの存在はありきたりながら、納得できすぎて嫌になっちゃうほどでした。それに対抗して、気のいい主人公が結局暴力で対抗するしかなくなっていくなんて、それも納得なんですが、なんかなあ… 救いがないです。
 一番印象に残るのは、主人公が目ざめて無人の街をさまようところでした。あの街の描写は素晴らしい。音楽も効果的で世界が変わってしまったのだ、ということを次から次へと駄目押ししていくようでした。あと現場にあるものはにおいなのでしょうが、それがすこ~し希薄な感じ。部分的には忍び寄る腐臭などを感じさせるところもありました。

 少佐に「女性が未来」なんていわせてます。女性がいないと未来がない?? しかしどう見たって未来につなげようって扱いではないです。おそらく身体がすぐ壊れます。そこがよくわかりません。

 救いがないといえば、別バージョンエンディングはほんとに救いがありませんでしたが、あちらのほうがより「ありそう」で怖かったです。
 でも、あの極限状況で自己の安逸よりも他の尊重を固持する主人公のあり方がこのドラマに託された人類の希望なのかもしれません。

ナルニア国物語/第1章:ライオンと魔女 (2005/アメリカ)

2006年03月10日 | 映画感想な行
THE CHRONICLES OF NARNIA: THE LION, THE WITCH AND THE WARDROBE
監督: アンドリュー・アダムソン
出演: ウィリアム・モーズリー     ピーター・ペベンシー
    アナ・ポップルウェル     スーザン・ペベンシー
    スキャンダー・ケインズ     エドマンド・ペベンシー
    ジョージー・ヘンリー     ルーシー・ペベンシー
    ティルダ・スウィントン    白い魔女

 戦争を逃れて疎開した田舎の大きな屋敷で、ぺベンシー家の4きょうだいは、不思議な世界に迷い込む。そして彼らは自分たちが予言に約束された、その世界動物が話し、フォーンやドワーフのいるナルニアに自由をもたらす人間であると聞かされる…

 最初に「ナルニア国物語」を読んだのは確か小学校4年生くらいの時。本というのはめぐり合いに時節があると思うのだけれど、私もちょうどどっぷりはまる時期にこの本とめぐり合ってしまったみたい。シリーズ全部そろえて今でもしょっちゅう読んでいるのだけれど、読み返すと当時の感覚に戻ってしまう。カニグズバーグは、大学生から読んで夢中にはなったけれど、読んできて子ども時代には戻れない。思春期に読まなかったのがつくづく悔しい。
 それはさておき、大人になって読むと、このお話はメタファーなんていえないくらいのあからさまな比喩だよなあ、などいろいろ考えることはあるものの、好きなものは好き。おまけに当時作られたイメージががっちり頭の中に巣くっている。

 だから
 この映画を見て、
 よく出来てるとは思う。

 でも

 ルーシーちっちゃすぎ。

 タムナスさん若すぎ。

 ナルニアの閉ざされた時期はもう少し暗くなきゃ駄目。でないと街灯の灯りが効果的に浮かばないではないか!

 教授はもっと偏屈感がないと承服できない。

 それにあの帰還シーンの言葉使いは何?

 それに、良いほうの軍勢と、白い魔女方の軍勢のクリーチャーの造形。悲しいことにどうしても「ロード・オブ・ザ・リング」の二番煎じに見える。
 
 でも、衣装たんすからナルニアへの第一歩が思い描いたのにほぼその通りだったのでとりあえず全部許しちゃう。
 それに今のほうがエドマンドの抱えていた負の感情と当時の甘いものへの飢えが理解できるようになった。ターキッシュ・デライツ、やっと見られました。プリンじゃなくて。やはり実物を知らない友達が、「あれはきな粉もちみたいなもの?」とか言ってましたが、やわらかくは無いでしょう。いつか血圧とめまいが大丈夫になったらイギリスへ行って実物を食べよう!

 どうせ、また何回か見にいくので後はまた次に。
 でもこの映画は、「ロード・オブ・ザ・リング」に比べたら、少なくとも私にはパンチ力はダンチに下がります。

ニコラ(1998/フランス)

2006年01月19日 | 映画感想な行
LA CLASSE DE NEIGE
監督: クロード・ミレール
出演: クレモン・ヴァン・デン・ベルグ
    フランソワ・ロイ
    イヴ・ヴェローヴェン
    ロックマン・ナルカカン

 厳格で過保護な父を持つ12歳の少年ニコラ。親の手を離れてスキー教室に参加するが、そこで彼の頭の中には不安な空想ばかりがよぎり、そして実際に悲惨な事件が発生する。

 夜一人で見るような映画ではありません。いや、もしかしたらそれが一番ふさわしい見方なのかな。見た後で気持ちが沈んでたまらなくなりました。
 ニコラの父は、スキー教室に息子をやるにもバスで団体行動では安全に確信がもてないと自分で送り届け、遊園地で遊んでいる時に子どもに教訓としてはとんでもない怖すぎる話をして牽制する。
 ニコラもまたニコラで、その頭の中ときたら「え~~~~~~12歳というのはこんなものまで持っているのか?」「それともホントにこれは特殊例なのか?」と、夜ではあるし、冗談ですまないようなエロチックで危険な妄想をどんどん膨らませていく。
 スキー教室という健康的な環境で、先生たちも実にまともに大人をしている。雪山の描写は実に静かで美しい。そして時々入るやけに明るい教室風景が突拍子もなく騒々しく浮き上がって見える。

 映画の半分は、見ているものがニコラ少年の妄想に付き合わされる形で、ラストの衝撃も
「これは事実なのか?それともニコラの頭の中なのか?」と戸惑う。別の少年を出すことで、その回答もわかるのだが、それでも非現実を引き摺るように映画は終わる。
 一番ぞ~っとしたのが、グロテスクな妄想シーンよりも、殺人事件の犯人よりも、ラストシーン前の子どもを抱いた若い母親に対するニコラの妄想。心底ぞっとした。子どもをこんな映画に出して良いのか、と真剣に思ったくらい。
 これだけ身体にコタエたのだから、パワーのある映画ですが、体調の悪い時にはお薦めしません。

ノスフェラトゥ (1978/西ドイツ・フランス)

2005年06月09日 | 映画感想な行
NOSFERATU: PHANTOM DER NACHT
監督: ヴェルナー・ヘルツォーク
出演: イザベル・アジャーニ   ルーシー・ハーカー
    クラウス・キンスキー  ドラキュラ伯爵
    ブルーノ・ガンツ  ジョナサン・ハーカー
 
 1922年のムルナウの「吸血鬼ノスフェラトゥ」のヘルツォーク監督によるリメイク。
かなり忠実で、同じ絵を使っているところもたくさん。

 やっぱり元作品のほうが怖かった。
 吸血鬼の造形は同じだし、雰囲気もゴシックで、特にイザベル・アジャーニの白塗りの美貌はサイレント映画の恐怖のムードをかもし出すのにぴったり。
 でも闇の奥深さ、影の濃さという点では、カラーはモノクロにかなわないかもなあ。

 それに、ヘルツォークの映画独自の映像もけっこうあり、ヒロインの性格も、ラストも変わっちゃってた。ノスフェラトゥもモノクロのほうの生命感のない棒をつないだような感じではない。棺桶持つのも重そう。
 ペストに襲われた町の描写では、不気味さの質が変わってる。元作品では、町の人々が恐怖に捉われて、ほとんど麻痺したようにになっているが、この映画では張り詰めたところを過ぎて、神経の糸が切れているような異常な状態がまがまがしく描かれる。私、ネズミ苦手なのですごくいやでした。
 サイレントではないので、実際にノスフェラトゥの声が聞こえてくるのがすごく違う感じ。「死ねない不幸」という言葉を重ねて使っている。それで、ラストもあのように変えてしまったのだろうか。

 それにしても、ウィレム・デフォーといい、キンスキーといい、ノスフェラトゥやってる役者さんてとっても楽しそうに見えます。
 今週は、ベラ・ルゴシのドラキュラも借りてきたので、明日はそちらを。

ノートルダムのせむし男 (1923/米)

2005年04月25日 | 映画感想な行
THE HUNCHBACK OF NOTRE DAME
監督: ウォーレス・ワースリー
原作: ヴィクトル・ユーゴー
出演: ロン・チャニー パッツィ・ルース・ミラー アーネスト・トレンス

せむし、容貌魁偉のカジモドはノートルダム寺院の中でひっそりと生きている。道化の祭りの日に一番醜いものとして道化の王に選ばれたカジモドは、ジプシーの美しい娘エスメラルダを見る。
 ノートルダムの副司教の弟はエスメラルだを狙っており、カジモドに誘拐させようとするが、美男の近衛兵に阻止され、カジモドはつかまり、公衆の前で鞭打たれる。そのときに広場にさらされ、渇きに苦しむカジモドに水を与えたのはエスメラルダだった。近衛兵と恋に落ちたエスメラルダは、嫉妬に狂った副司教の弟の罠でついに死刑を待つ身となる。

 これは、うちの高校生が借りてきたのでもっけの幸いと一緒に見ていました。原作はあまりはるか昔に読んだので、ノートルダム寺院をエスメラルダを背負って上がっていく怪力カジモドのシーンしか覚えていません。
 こちらはディズニーの「ノートルダムの鐘」と違って悲劇です。貴族と下層民の対立も描かれていますが、どちらの人の社会に容れられぬカジモドはエスメラルダの美しさと一瞬自分に与えられた彼女の優しさに命を捧げてしまうのです。
 この映画では、カジモドの、人の情に慣れないが為に彼が意識しない、出来ない非情さが迫ります。エスメラルダを守ろうとするために人々の上に石や巨木を落とし、煮えた鉛を流す残酷さが夢中な彼にはわからない。そして最後には手を取り合うエスメラルダと恋人に忘れられて、鐘を鳴らして一人で死んでいくカジモドの哀れさ。

 ロン・チャニーは「オペラ座の怪人」も素晴らしいメイクで、怪人がマスクを取るシーンは強烈な印象だったが、この映画でも、登場シーンからカジモドです。メイクはもちろん、立った姿の足の位置、動きも本当にああいう形に生まれ合わせてしまった人はああなのかもしれない、と思わせられますし、身体を無理に萎縮させた感じのない動きで、本当にすごい役者です。
 エスメラルダ役は、いつでもどこでもメイク完璧なのは、やっぱり昔の映画だな。とは思うが、ともかく美しく、掃き溜めの鶴そのもの。そのほかのキャストもあっている。
 なんといっても群集シーンの迫力、ノートルダム寺院の威容の表現や、寺院の上から広場を見下ろしたシーンなど、驚くような映像です。それに、時々コメディタッチの息抜きのようなシーンまであり、どんな古い映画も、傑作は本当に傑作だと唸った。

ナショナル・トレジャー (2004/米)

2005年03月23日 | 映画感想な行
NATIONAL TREASURE
監督、製作: ジョン・タートルトーブ
製作: ジェリー・ブラッカイマー
出演: ニコラス・ケイジ ハーヴェイ・カイテル ジョン・ヴォイト ダイアン・クルーガー ショーン・ビーン
 
 ベン・ゲイツは彼の家に伝わる「隠された歴史的な宝」の謎を追っていた。スポンサーを得てその一つの鍵を解き明かしたところで次の暗号はなんと独立宣言にあることが判明する。そこでスポンサーのイアンが宝のためには不法な手段も辞さないことがわかり、ゲイツは友人ライリーと共にイアンに殺されそうになる。

 ブラッカイマー、タートルトーブとディズニーなので、期待して行ってきました!
 期待したのとはちょっと違った映画でしたが、面白かったです。
 何を期待していたかいいますと、「パイレーツ・オブ・カリビアン」のいかにも作り物的なけれん味たっぷりの絵。だって、予告編がそんな感じだったんですもの~ でもこの映画は次から次へと現れる謎を解き明かしていく、ほどほどのアクションつきのパズルゲーム。とはいえ、テンポ優先で主人公、すぐ謎を解いちゃいますが。
 独立宣言を争うシーンで、頭脳戦でいくのと、バリバリ力で破っていく2組の進行のところはドキドキ!

 ヒーロー像もかなり好きなタイプ。「殺人詩篇」(ウィル・ハリス著)というミステリでも、ベトナム帰りの闘える英文学者なんて主人公が登場するけど、文武両道スーパーマン役のニコラス・ケイジは少しナサケナサを漂わせた風情が良かった。天才ハッカー・ライリーのジャスティン・バーサがとってもいい男なのに脇の2.8枚目くらいの役割に徹してるのも好き。ヒロインはすごくきれいだけど、もっと活躍させてあげたいようにも見えました。
 悪役ショーン・ビーンは惜しかったですね。ハーヴェイ・カイテルのおじさんぶりが魅力的だったので少し損かな、とは思ったけどもっとクールで魅力的だと映画がもっと面白かったのにね。
 ジョン・ヴォイト、懐かしかったです。今回はアクの抜けた役で、素敵でした。

 最後の、宝に到達したところでもう一捻り!と期待しちゃうのはわがまま過ぎるでしょうか?