虫干し映画MEMO

映画と本の備忘録みたいなものです
映画も本もクラシックが多いです

恋は五・七・五!(2004/日本)

2009年07月09日 | 映画感想か行
監督: 荻上直子
出演: 関めぐみ    高山治子
   小林きな子   内山マコ
   蓮沼茜     田中弘美
   橋爪遼     山岸実
   細山田隆人   土山義仁
   高岡早紀    ヨーコ先生
   中村靖日    中村
   嶋田久作    三浦
   もたいまさこ  校長
   柄本明     爺ちゃん
   杉本哲太    高田マスオ

 統廃合を2年後に控えた松尾高校。校名を歴史に刻むために片っぱしから様々な大会への参加を宣言した校長に、気弱な国語教師・高田マスオは俳句甲子園への参加を命じられる。集められたメンバーは、なかなかクラスになじまない2年生の帰国子女・高山治子、外見重視でチア部をクビになったマコ、治子に憧れる1年生の不思議ウクレレ少女Pちゃん、写真部員・土山、野球部の万年補欠選手・山岸。

=============

 お話はだめなメンバーが目覚めて、仲間との絆を深めて、嫌味なライバルをやっつけてついに勝利!という王道ストーリーです。
 もちろん荻上監督のテイストですので、ぬるさ健在でそれほど燃え上がったりもしませんが、「めがね」や「かもめ食堂」に比べれば燃えているかな、と思いまする。高校生が競うお話ですから、当然ですが。

 私についていえば、この映画は導入部でまず泣かされてしまいました。

 肥満体形のマコが、「あんたがいると邪魔」とチア部を追い出されます。泣きながら階段を駆け上がり、自殺しようと屋上から半身乗り出したところに居合わせた土屋から「言い残すことは?」と問われます。そして彼女が叫ぶのが

 次の世は ましな私に 生まれたい

 泣けます。はげどうです。
 今は、何とか現実の私と折り合いつけてやってますので、それほどわが身の現実に傷ついてはおりません。
 でも、高校生くらいの時は頑張ってもなかなか着実な進歩がみられない己の実力にいたく自尊心傷つきまくりで、こう叫びたい衝動を抱えて生きていたように思います。それに今まで生きてきたうちで、一番容姿が気になる時代だったと思います。ああ、思い出すだけで入る穴を掘りたくなるような恥ずかしい時期だったなあ。
 メンバーそれぞれの造形やライバルたちのデフォルメもいかにも、それに繰り返しの使用も巧いですがパターン通りで類型的にも感じます。でもでも、ともかくこの一句(句と言っていいのかな?季語ないしね)でぐいっと胸の中に残った恥ずかしいものをつかまれました。

 ただ、家族で見ていたら下ネタ部分で男子高校生が逃げて行ってしまいました。
 個人での鑑賞がいいかもしれません。

さよならねずみ年(カスピアン王子の角笛)

2009年01月06日 | 映画感想か行
 色々ありましたが、3月末に元の生活に戻れることになりました。
 年末に久しぶりに私専用PCを立ち上げたら、見事に故障状態で何度も立ち上がっては固まるという状態で、年末年始かかりきりでした。結局全部分解してさし直したら良くなったので、たぶん接触不良だったのでしょう。
 数カ月も触っていなかったのにクッキーに80もウィルス警告が出ていました。いったい何があったのでしょう?

 それはさておき、遅ればせながら去った年の干支にちなんで、昨年見たネズミさんが印象的な映画についてちょっと。
「魔法にかけられて」のお掃除ネズミもなかなかでしたが、あれはゴキブリのほうが強烈でした。

 で、ネズミの一番は「シューテム・アップ」
 クライヴ・オーウェンよろしかったですねえ。というわけで、映画についてちゃんと書きたいと思います。

 それに、ネズミと言ったら、何といってもリーピチープ(ナルニア国物語)を楽しみにしていたのですが…

ナルニア国物語/第2章:カスピアン王子の角笛(2008/アメリカ)
THE CHRONICLES OF NARNIA: PRINCE CASPIAN

監督: アンドリュー・アダムソン
出演: ジョージー・ヘンリー    ルーシー・ペベンシー
   スキャンダー・ケインズ    エドマンド・ペベンシー
   ウィリアム・モーズリー    ピーター・ペベンシー
   アナ・ポップルウェル    スーザン・ペベンシー
   ベン・バーンズ    カスピアン王子
声の出演: リーアム・ニーソン    アスラン
   ケン・ストット    松露とり(トリュフハンター)
   エディ・イザード    リーピチープ

 何につけても「あひ~」とうめきつつ見ました。
 ストーリーはいろいろお急ぎになっていました。それに冒険活劇の色彩が濃くて、原作よりも戦闘シーンが多くてスペクタクルでした。まあ、娯楽作ですから良いんですが。
 よかったのは、ぺベンシー4きょうだいが、ルーシーも大きくなってほぼ私のイメージどおりになっていたこと。

 一番「あひ~」であったのは原作ではもっとあどけなく発展途上な少年だったプリンス・カスピアンがえらい美男で、怒れる若者っぽくて、おまけにスーザンが……!

 えええええ~~~~!!!(注:悲鳴です)

 これは最終作で彼女の行動が変わる、たとえばイギリスに残ることを意志的に選んだりするようになるんだろうか?

 本当に楽しみだったリーピチープなんですが、予想はしてたけどちょっと悲しかったです。
 リーピチープはドン・キホーテ的な存在だと思うのですよ。一つの体には大きすぎる誇り高さと理想と高潔の人、いやネズミなのです。だからこそ滑稽でもあり、悲哀があり、何より気高いのです。
 2時間ちょっとの映画で、ネズミの気高さまでは十分に描くのはやっぱ難しいでしょうか?(しくしく)

クィーン(2006/イギリス、フランス、イタリア)

2008年04月08日 | 映画感想か行
THE QUEEN
監督: スティーヴン・フリアーズ
出演: ヘレン・ミレン    エリザベス女王
   マイケル・シーン    トニー・ブレア
   ジェームズ・クロムウェル    フィリップ殿下
    シルヴィア・シムズ    クィーン・マザー(皇太后)
   アレックス・ジェニングス    チャールズ皇太子
   ヘレン・マックロリー    シェリー・ブレア

 1997年8月31日、皇太子との離婚後も世界中の注目を集め続けたダイアナ元皇太子妃が、自動車事故に遭い他界する。すでに王室を離れ一民間人となったダイアナ元妃に対し、女王はあくまで「王室を離れたもの」に対する従前通りの方法で対処しようとするが、それは国民の激しい反発を招いた。首相に就任したばかりのトニー・ブレアは、女王にある提案をする。

 ダイアナ妃の葬儀の時に読んだ新聞のどれか、確か英字新聞(語訳付き)だったと思うけど、それに「英国が理性をなくした日」といったタイトルが付いていたと記憶している。石投げられるかもしれないけど、私もちょっとやりすぎではないかと思った一人。その時は彼女のことにさほど関心なかったし、離婚のときも「難しいところへお嫁に行ったからね~、お気の毒に」くらいにしか思ってなかった。
 それ以後、否応なしにいろいろ情報は入ってきたけど、結局「ほんとに合わなかったんだな、大変だったんだな」「せめてご主人にもっと大事にされていればね」というのが私のダイアナ妃に対する感想。

 この映画を見ると、まあ、冷静な人はいつでも存在するし、物事一方の立場だけでは語れない、と当り前な感慨を持たざるを得ませんです。
 ヘレン・ミレン演じる女王がエリザベス2世と全くイコールであるとは思いませんが、責任感と使命感、義務への忠実を第一に誇り高く己を持し、感情もコントロールし抜くことが、あの英連邦宗主の威厳をもった女性を作り上げていったのだとしたら … いや、難しかったでしょう。
 それに、嘆き悲しむ一般国民はまた、ダイアナを好奇心の餌食にした人々とも重なるわけで。
 あれこれ考えて、つくづくアタシは庶民でよかった、と思った次第です。 

キンキーブーツ(2006/アメリカ、イギリス)

2007年12月29日 | 映画感想か行
監督: ジュリアン・ジャロルド
出演: ジョエル・エドガートン   チャーリー・プライス
   キウェテル・イジョフォー   ローラ/ サイモン
   サラ=ジェーン・ポッツ   ローレン
   ジェミマ・ルーパー    ニコラ

 田舎町ノーサンプトンの伝統ある靴工場の跡取りチャーリー・プライス。彼は、婚約者と共にロンドンへ転居。ところが、ロンドンに到着早々、父親の訃報が。突然に工場を継ぐこととなったチャーリーは、倒産寸前という事実に愕然。どうにか工場を救おうとリストラ、取引先へ日参と苦闘するチャーリーは、ドラッグクイーン向けの靴というニッチ市場に目をつける。

 実話を元にした映画。
 品がよくて丈夫で、伝統にのっとった実用的な長く使おうタイプの紳士靴が、安くて傷んだらポイとっかえひっかえの輸入品に負けて、生き残りの道を探す慣れない工場主が培った技術を生かして男の体重に耐えられる男性用でない靴を作ろうと思いつく。よくある成功物語に収まっているけれど、DVDのおまけによれば、現実はそれほど易しいものでもなかったようだが、敢えて良くあるハッピーエンド展開に収めてしまっている。
 で、一番印象に残るのはドラッグクイーン・ローラ役のキウェテル・イジョフォー。やたらと厚い胸板で、鍛え上げた筋肉で、なおかつドラッグクイーン。「プリシラ」のガイ・ピアースとか、「3人のエンジェル」のウェズリー・スナイプスばり。
 工場とそこで働く人々を切り捨てられないチャーリーは、合理的で現実を割り切って生きる婚約者と結局袂を分かち、苦しい道を敢えて選ぶ。
 ローラもまた、自分の本来の自分らしさをまだ完全には肯定できない。しかし、男として普通の楽な生き方は、ローラの心が許さない。

 ローラに向ける人々の目とか、でかいピンヒールブーツに思わず技術的な意欲を燃やしてしまう職人さんとかも期待通りで楽しいし、それぞれが自分の心の中の壁を乗り越えていく過程がコミカルに描かれ、ショーの場面は楽しくて華やか。楽しめて最後にほっとできる映画なんだけど…

 やっぱり見た後に幸せだけじゃなくて、あの真っ赤なブーツを見たときに感じたような、抑えても抑えきれない叫びを聞いてしまったような、澱みたいな感触が残ります。

かちこみ! ドラゴン・タイガー・ゲート(2006/香港)

2007年10月01日 | 映画感想か行
DRAGON TIGER GATE
龍虎門
監督: ウィルソン・イップ
アクション監督: ドニー・イェン
出演: ドニー・イェン   ドラゴン・ウォン
   ニコラス・ツェー   タイガー・ウォン
   ショーン・ユー   ターボ・セック
   ドン・ジェ    マー・シャオリン
   リー・シャオラン    ローザ

 親をなくした子どもたちを引き取り、武術を教え正しく育てる場所“龍虎門(ドラゴン・タイガー・ゲート)”。タイガーは、ここで育ち、中心的存在になっている。ある日タイガーは、悪党一味と衝突するが、その中に幼い頃生き別れた兄ドラゴンがいた。年月は二人の兄弟にも埋めがたい溝を作っていたが、ドラゴンは、自分の恩人を巨大犯罪組織“羅刹門”に殺され、同じ組織に叔父の命を奪われたタイガーもまた、仲間のターボとともに羅刹門打倒に立ち上がるのだった。

 私にはこういう映画がどうしようもなく面白いのですから、抵抗せずにきゃっきゃと喜んで見ました。
 原作がコミックですから、主人公たちのルックスもそれに規定されちゃうのでしょうね。ドニー・イェンもうっとうしそうな垂れ下がる前髪に漫画的な若作りで、ええ、本当に良くやってくださって嬉しゅうございます。
 ニコラス・ツェーも「プロミス」の端正さはどこへやら、あからさまにそこら辺のにーちゃん風が似合いすぎてます。
 監督は「SPL/狼よ静かに死ね」のウィルソン・イップで、「SPL」での殺気を放つようなアクションではなく、超絶スピード感のある、手に汗握る、でもファンタジーでコミック的なアクションが実に素晴らしく楽しめます。

 はっきり言ってストーリーは型どおりで、やられた分はきっちりやり返してます。
 叙情的な音楽背景にしたお芝居部分は、申し訳ないけど「わかるから、次行って!」という気分です。
 か弱い女の子がよろよろとリヤカーみたいなのに瀕死のけが人を乗せて担ぎこむのは病院ではなく、脈絡なくいきなり出てきた様に見えるお寺で、老師様とやらに超自然的に治してもらいます。
 悪のボスも、邪魔者を御自ら出向いて制裁し、仇討ちにやってきた面々と一人で戦います。組織で地域経済とかを牛耳ろうとかの野望よりも、まずバトル狂であるらしゅうございます。
 ラストバトルは5回ほど繰り返してみてしまいましたが、ほんとにすごい。決め絵はまるっきりコミック。技もゲームの特殊技みたい。でもアクションのキレが良くてカッコイイ!ドニー・イェンの登場以後はもう息をすることも忘れて見とれてしまう。

 結局、なぜ兄弟生き別れになったか、とか「かちこみ」とは何ぞや?というのはわからなかったけど、ともかくこういう映画最高に好き。

=======
後日 
「かちこみ」とは殴りこみのことだそうです。予告編ナレーションにしっかり入っていました。

今宵、フィッツジェラルド劇場で(2006/アメリカ)

2007年08月25日 | 映画感想か行
A PRAIRIE HOME COMPANION
監督: ロバート・アルトマン
出演: ウディ・ハレルソン ダスティ
トミー・リー・ジョーンズ アックスマン
ギャリソン・キーラー ギャリソン・キーラー
ケヴィン・クライン ガイ・ノワール
リンジー・ローハン ローラ・ジョンソン
ヴァージニア・マドセン デンジャラス・ウーマン
ジョン・C・ライリー レフティ
マーヤ・ルドルフ モリー
メリル・ストリープ ヨランダ・ジョンソン
リリー・トムリン ロンダ・ジョンソン

ロバート・アルトマン監督の遺作。実在の人気ラジオ番組「プレイリー・ホーム・コンパニオン」をモチーフに、番組の名物司会者ギャリソン・キーラー本人が手がけた脚本を豪華キャストで映画化。長年続いた公開ラジオショウの最終回。出演者はそれぞれの思いでステージに立つ…

 これも出来れば映画館で見たかった。それもちょっと小さめのあんまり混んでないようなところで雰囲気出してみたかったのですけどねえ。しかし、行ける範囲の劇場ではどこもやってないんだからDVDでも見られてラッキーというものです。
 アルトマン監督は好きだし、特に「ゴスフォードパーク」みたいなのが好きで、この映画なんか見る前からすごく私の感覚にフィットしそうな気はしましたが、もうピタリ。
 出だし、劇場の警備担当ガイの登場シーンの絵からノスタルジックでしかもおかしい。彼の名前からしてガイ・ノワール!遊んでますねえ!愛すべきマンネリのような番組進行に、なんだか変てこなコマーシャル。存在感があまりない観客。
 そしてここでは死がとても普通にあることとして語られる…老人の死も、不慮の死も。
 涙がにじむような感動、というわけでなくて「しみじみ」が胸をじわじわ侵食していく感じ。人間が生きていくことのおかしさ・切なさ・つらさ・馬鹿馬鹿しさを決して張り上げない、普通の声で聞かされたようです。
 豪華キャストの、ストリープ&トムリンのジョンソン姉妹役の2人も、ジョン・C・ライリーたちカウボーイコンビも、リンジー・ローハンもわかっていることとはいえ、ほんっとに歌うまいのねえ。

カーラの結婚宣言(1999/アメリカ)

2007年05月21日 | 映画感想か行
THE OTHER SISTER
監督: ゲイリー・マーシャル
出演: ジュリエット・ルイス
   ダイアン・キートン
   トム・スケリット
   ジョヴァンニ・リビシ

 軽度の知的障害のあるカーラが庇護しようとする母の手から飛び立ち、同じように障害のあるダニエルと結婚するまで。

 ダニエル役のジョヴァンニ・リビシ目当てに借りました。この映画でも彼は巧かったと思います。障害のある人に感じてしまう欠損とか、過剰と、清潔なイノセントを感じました。
 カーラ役は見ているうちに気がつきましたが、「フロム・ダスク・ティル・ドーン」のお姉さんの方じゃないですか。私には「ギルバート・グレイブ」よりもそっちが印象濃かったです。彼女は過剰の方をより感じてしまいましたが、主役だからどうしても目立っちゃうのでしょうか。
 それになんと言ってもダイアン・キートンはさすがです。富裕階級の知的な奥様を、頑固な固定観念と母の悲しみを含めて見事にエレガントにいやみも含めて演じてました。う~ん、中産階級的インテリのばりばり、サンドラ・ブロックが年取ったらこういう役出来る様になるかしら?

 まあ、役者がきちっと演じて、ラストでハッピーにまとめて、私もちょっと目頭じわっと来た映画ではあります。でもこの二人の行く先はそりゃあ苦難の道でしょうね。お母さんならずとも、先を案じてしまいます。
 …そんな具合で、知的障害を持って、でもそれを意識しないほどには重くない彼らにとっての「自分の思うように生きたい!」という思いは、そうそう容易く受け止められるものではありませんでした。分かるけど!わかるけど、でも…と、つい保留を入れたくなります。なんかゴチャゴチャなものをとりあえず突っ込んでおいた引き出しを思いがけず開けられてしまったというような、落ち着かない気分で見ているシーンが多くて、なかなか笑いのシーンも笑いきれませんでした。あ、あの感謝祭の夜のマーチングバンドには笑いましたが。

コンフェッション(2002/アメリカ)

2007年02月25日 | 映画感想か行
CONFESSIONS OF A DANGEROUS MIND
監督: ジョージ・クルーニー
脚本: チャーリー・カウフマン
出演: サム・ロックウェル    チャック・バリス
   ドリュー・バリモア    ペニー・パチーノ
   ジョージ・クルーニー     ジム・バード
   ジュリア・ロバーツ   パトリシア
   ルトガー・ハウアー    キーラー
   マギー・ギレンホール     デビー

 70年代アメリカにおいて、テレビ番組『ゴング・ショ-』などで一世を風靡し、人気者だったプロデューサー兼司会者のチャック・バリスのは一方でCIAの暗殺担当の秘密工作員だった。

 すごく分かりやすい映画でした。語り口が滑らかで、ストーリーが停滞するところがありません。ジョージ・クルーニーの初監督作品だそうですが、手馴れたもの、って感じがするくらいでした。
 それでまあ、中身なんですが、語り口滑らかで、なんかするっと終わりまで見せられちゃいました。山あり谷ありではない映画でした。工作員だったことの真偽は実はどうでもいいんじゃないかと思いました。だって、ジョージ・クルーニーやジュリア・ロバーツの見てくれから話し方、仕草何もかも「絵に描いたよう」で、いかにもフェイクっぽい。
 しかしまた、主人公自身の誰にも明らかで華やかな実績のほうもまた、空しさが響くようにできている。
 それでラストが人生総括ショーでは、「はあ… やっぱりそうなの…?」と…
 手ごたえのある、幸福な人生って何なんでしょう?
 チャックはペニーがいただけじゃダメだったの?
 虚脱感のある、妙に可笑しい映画でした。
 ジョージ・クルーニーって才人なんですね。

=======
 あと2,3日でこの恐ろしい追い込み仕事は終わります。今までサボった私が悪いのですが、右肩はガッチガチで冷え切った状態です。同じ人間の身体の左右でよくこれだけ体温から何から違うようになるものだと思います。肩こり過ぎて吐いたりしてます。もうこんな状態を繰り返すのはイヤなので、今後はこつこつ地道に働きます。(と今は決意してます)

グエムル -漢江の怪物-(2006/韓国)

2007年02月03日 | 映画感想か行
監督: ポン・ジュノ
出演: ソン・ガンホ パク・カンドゥ
   ピョン・ヒボン パク・ヒボン
   パク・ヘイル パク・ナミル
   ペ・ドゥナ パク・ナムジュ
   コ・アソン パク・ヒョンソ

 ソウルの中心を流れる漢江(ハンガン)の河川敷で売店を営むパク一家は、家長のヒボン、長男カンドゥ、次男ナミル、長女ナムジュ、そしてカンドゥの娘ヒョンソの5人家族。ある日突然、漢江に正体不明の巨大な生き物が出現、人々を襲う。ヒョンソも犠牲者となった。怪物の持つウィルス感染者として強制的に隔離された一家に死んだと思ったヒョンソから助けを求める電話が入る。取り合わない当局に対し、一家は病院を逃げ出し、ヒョンソの救出に向かうのだったが…。

 韓国映画でこんなに面白かったのはほんとに久々です。
 私はどうも韓国映画は肌に合わない感じで、素直に面白いなあと思ったのはほんとに1,2本なのだけれど、これは最初から最後まで面白かった。
 うまく形容できないのだけれど、どこか突き放したような、というか感情移入をさせないような第三者視点でいられるというか、そういうムードが実にうまくできていて、それが「やった!」というより「う~ん、やるなあ」「やられちゃった」という感覚で見た後にうならせてくれました。
 家族がののしりあいながらも、ヒョンソのために行動することをまったく疑わないし、やることなすことボケだらけながら全く後ろを振り返らず、前進あるのみといった点。韓国の国民なら素直に納得、というかあたりまえで気にも留めない心性なんでしょうか?この辺わかったら面白いのにねえ、と思ったのですが。ヒョンソもヒョンソでとんでもない環境でも、けっこう冷静で彼女なりに戦っている雄々しきヒロインぶり。
 ホラーコメディを見た、というより怪物の出てくる喜劇と悲劇…ものごとの多面性を一度に見た感覚。怪物も画面にとってつけたような違和感無かったし。
 ラストではバトルに拳骨作ってる私と、家族に抱きしめられる少女にジワッとしてる私と、火炎瓶投げる彼とか原始的な戦いにやっぱり笑いたい私が居りました。

 ちょっと「ルナ・パパ」を思い出してしまいました。
 これも劇場で見逃して実に残念でした。リバイバルがあったら絶対いきます。

クラッシュ(2004/アメリカ)

2006年11月29日 | 映画感想か行
CRASH
監督: ポール・ハギス
出演: サンドラ・ブロック     ジーン
   ドン・チードル      グラハム
   マット・ディロン   ライアン巡査
   ジェニファー・エスポジート   リア
    ウィリアム・フィクトナー   フラナガン
   ブレンダン・フレイザー    リック
   テレンス・ハワード    キャメロン
   クリス・“リュダクリス”・ブリッジス   アンソニー
   タンディ・ニュートン    クリスティン
   ライアン・フィリップ    ハンセン巡査

 クリスマスを間近に控えたロサンジェルス。黒人刑事グラハムとその同僚でヒスパニックの恋人リア。拳銃を買うペルシャ人の雑貨店経営者ファハドとその娘。黒人青年アンソニーとピーター。地方検事のリックとその妻ジーン。差別主義者の白人警官ライアンと同僚のハンセン。黒人夫婦キャメロンとクリスティン。彼らの人生は思いがけない形で交錯する。

 アカデミー作品賞、脚本賞も納得してしまいました。
 人種差別とか、不法入国、人身売買、殺人…ごっそり詰め込まれていますが、結局は「クラッシュ」(ぶつかり合い)というタイトルの示すものをものすごく感じさせられました。
 一つの事故にかかわる人間たちの、その時点に至るまでの1日を追い、ぎすぎすした社会で人とぶつかり合い、怒り、主張しつつ、それでも人とのつながりを求めてしまう「人間」というものを見せられる。
 教養も財産もありそうな黒人に対して、屈辱的な嫌がらせをする白人警官と、それを嫌ってペアを解消する若い警官のエピソードが端的に示すとおり、人って一つの側面のみで生きる存在ではありえないし、自身でも思っても見ない結果を起こしてしまったりする。
 単に人種だの宗教だけでなく、いたるところで、家族の中でさえ、人は自分の考える枠に当てはめて他者を振り分けていくが実に痛い。
 あくまで誠実なヒスパニックの修理屋はどこでも理不尽な疑いに付きまとわれ、被害者意識に捉われたペルシャ人はちょっとしたことでそれを爆発させる。しかしこの2人にとって双方の娘が共に彼らにとってのエンジェルだったエピソードは、救いだった。本当にほっとした。

 ライアン・フィリップは「リース・ウィザースプーンの夫」という記憶の仕方でしたが、「ゴスフォード・パーク」「17歳の処方箋」「父親たちの星条旗」…素直に評価して注目したいと思います。

兜王ビートル

2006年10月28日 | 映画感想か行
最近、金曜土曜は毎度バタンキュー状態で
ご飯食べるとそのまま寝室へ直行、
でもなんか見てます。
昨夜は「兜王ビートル」という永井豪原作、ダイナミックプロの映画(かな?)
プロレスラー、マスクマンが大挙して出演しており
なんと主演のビートルは同名のプロレスラーが実在するのだそうで
もしかして本人?
映画だとしたらすごいC級ですが
不思議に「デビルマン」みたいに腹立ちません。
「なに~これ~」とわらって済んじゃう程度のしょうもなさです。
どこが違うのか、ちょっと考えてみなくては。

兜王ビートル(2005/日本)
監督: 河崎実
出演: 兜王ビートル (大阪プロレス)
   斎藤工
   中川翔子
   大原かおり
   堀内正美
   スペル・デルフィン (大阪プロレス)
   ビル・ロビンソン

 大阪プロレス”で実際に活躍する漫画家永井豪デザインの覆面レスラー“兜王ビートル”が主人公。宇宙人によって昆虫と合成されてしまったビートルたちがプロレスのマット内外で戦う。

 ALLCINEMAのデータでは公開年月日がちゃんと入っていたから、なんと公開もされたんでしょうか。
 途中にいかにもコマーシャルタイムみたいな区切りがあったから、テレビ用に編集されたごく狭いファン向けのフィルムか何かなのかしら、と思ってました。
 ギャグのレベルが高校生以下向けみたいなんですが「ありゃあ~~~」とか「ひえ~~ん」とか呟く程度の反応で本当に腹も立たずに笑えました。
 これは、デビルマンと比べるほうがマチガイでした。力込めてとんでもない方向に飛んでっちゃったものでなく初めから力こぶなし(出演者の実物の筋肉は別)のもの。ヒロインのおとぼけもこの世界にはまっていて良かったと思います。

 大阪プロレスというところの紹介もちょっと覗いてきました。私の知らない世界でした。
 http://sports.livedoor.com/battle/osaka/
 この世界だと、あの変なゴキブリの着ぐるみさんたちもそれほど浮き上がる世界でもないのかな?でもカマキリはともかくゴキブリやクワガタは動きにくいと思います。

connie & carla コニー&カーラ(2004/アメリカ)

2006年10月23日 | 映画感想か行
CONNIE AND CARLA
監督: マイケル・レンベック
出演: ニア・ヴァルダロス    コニー
   トニ・コレット     カーラ
   デヴィッド・ドゥカヴニー     ジェフ
   スティーヴン・スピネラ     ロバート
   ダッシュ・ミホク     マイキー
   アレック・マパ     リー

 幼なじみのコニーとカーラはスターを夢みてカフェで歌う、でもちっとも芽の出ないコンビ。ある日、2人は殺人現場を目撃してしまい、ギャングに追われるハメに。2人はロサンゼルスへ逃げ、身を隠すためにドラッグクイーンになりすましてステージに立つ。するとなんと大うけしてしまい一躍スターに…。

 この映画の中では直接触れてないけど、ギャングの手を逃れるために女装した「お熱いのがお好き」を思い出させずにはいないです。あれは男が女に変装、こちらはちょっとややこしく、女が女装する男に変装する… で、ちょっとストレートに過ぎるような「お互いの違いに寛容であれ」というようなメッセージも上手に見せてくれているので、ジェフとロバートの兄弟が抱き合うシーンで、ちゃんとジーンとして涙が出ました。
 すべて丸く収まって、全部めでたしめでたしで、そこが物足りないといえば物足りないけど、これぞ安心して見られるコメディというものなのです。

 でも、ほんとに料理の仕方がうまいと思った。
 ミュージカルのヒットナンバーのベストが恥ずかしげも無いオンパレードで嬉しくなってしまう。それも豪華すぎないステージで本当に気分よさそうに歌われて、見ているほうもとっても気分がいい。
 ニア・ヴァルダロスはあの大ヒット作しか知らないけれど、目鼻の大きさは際立って、トニ・コレットも同様で、そりゃ本物の男に混じれば華奢なんだけど、よくまあ、ドラッグ・クイーンに化けるなんて恐ろしいことをしたものです。自分でプロデュース・主演していないといい出せないんじゃないだろうか。
 ミュージカルにのめりこんじゃうギャングのエピソードも、ジェフの恋人の発言もベタだけど、どちらも持っていき方が自然。
 デヴィッド・ドゥカヴニー、ここでは(自分は女装しないで)その辺の好青年という雰囲気でこういうのも良いです。

きょうのできごと a day on the planet (2003年/日本)

2006年10月11日 | 映画感想か行
監督: 行定勲
出演: 田中麗奈   真紀
    妻夫木聡    中沢
    伊藤歩    けいと
    柏原収史    正道
    三浦誠己   西山
   石野敦士   坂本
   松尾敏伸   かわち
   池脇千鶴   ちよ

 関西の大学生たちの一日。そしてその周りに起こること。
 中沢が大学院に合格し、引っ越す。新しい住まいの引っ越し祝いと手伝いに集まった幼馴染、恋人、友人たち。そしてその日に起こった出来事がテレビに。ビルの間に挟まって動けなくなる男、浜辺に打ち上げられたクジラ…

 私はこの監督が苦手かもしれない。…もしくはセカチュー以後気持ちが引いてるのかもしれません。
 これは実に淡々と若い者たちの日常を描いて、実際他人にはどーでもいーこと「何でお前は(俺には無い)女が寄ってくるような見てくれを有しているんだ」「何で彼女はああずけずけものを言うんだ」「私の彼が幼馴染(=自分の友達)と、性別を超えた仲良しなのは何だか引っ掛かる」…などなど、渦中の苦しみのようなものを思い出させてくれました。今のところ「渦中」にいないので苦笑しながら見ていられます。
 それに、この年頃に抱えていた気持ちのようなものをも思い出させます。まだまだ時間はありそうなんだけれど、可能性もありそうだけれど、でも現実には全く無力だったり、将来が見えないような不安感など。
 飽きたりはせず、じっと見続けて気持ちのいいエンディングテーマで締めくくられ、ほっとしてDVDをしまった映画でした。

 挟まれ男エピソードはどうしてもイッセー緒方の「ヘイ!タクシー」を思わせます。

かもめ食堂(2005/日本)

2006年10月01日 | 映画感想か行
ROUKALA LOKKI
監督: 荻上直子
出演: 小林聡美    サチエ
   片桐はいり    ミドリ
   もたいまさこ   マサコ
   ヤルッコ・ニエミ
   タリア・マルクス
   マルック・ペルトラ    マッティ

 フィンランドのヘルシンキに“かもめ食堂”という小さな食堂をオープンした日本人女性サチエ。しかし、お客は日本のアニメが好きなおたく青年だけ。それでも営業を続けるサチエ。そしてオタク青年にたずねられた「ガッチャマン」の歌詞を教えてくれた旅行中の日本女性を家に泊めることになる。

 フィンランドというと、私の脳裏に浮かぶのは「ムーミン」と「アキ・カウリスマキ」「ミカ・ハッキネン」 それにシャーロット・マクラウドの小説中の「フィンランド語は難しいのでフィンランド人は寡黙」という冗談だけです。
 アキ・カウリスマキは大好きなので、マルック・ペルトラが出てきた時には、思わず歓声!名前もマッティなんて、素敵!
 それはさておき、「バーバー吉野」の荻上監督で、全体の雰囲気やタッチは同じように感じました。穏やかで想定内の展開で登場人物の味方したくなる…という。
 フィンランドという遠い国へきてしまった3人の日本女性が、それぞれに事情背負っていることは直接にも言外にも語られ、異国の地での今の安定が永遠のものではないことをわかった上で、現在をいとおしんで生きるというのはちょっといいな、と思わせられる。やっぱり「世界の終わりの時に約束がある」って、ひとつの安心だと思う。
 レストランで出てくる料理が、サチエが「日本人のソウルフード」というおにぎりはじめとして、とんかつ・鮭の焼いたの・家庭のオムレツ・肉じゃがみたいなのと、ほとんどが日本の家庭料理でそれが料理の手際も含めてとってもとっても美味しそうに映っていました。ものを食べるシーンが気持ちよくて、「体と心を養う」という食べるということの意味をしみじみ考えてしまう。
 欲を言えばフィンランドの美しい自然をもっともっと見せて欲しかったです。

 マルック・ペルトラは、「過去のない男」でも寿司を食べていたから、おにぎり食べるのは大丈夫だったのでしょうか?梅干はきついと思うけど、鮭なら大丈夫かな?

河内カルメン(1966/日本)

2006年09月25日 | 映画感想か行
監督: 鈴木清順
出演: 野川由美子   武田露子
   和田浩治    坂田彰
   川地民夫   高野誠二
   宮城千賀子   武田きく
    伊藤るり子    武田仙子
    松尾嘉代   雪江
    佐野浅夫   勘造
   嵯峨善兵   斎藤長兵衛
   桑山正一   不動院の良厳坊

 河内の娘露子は、村の悪たれたちに暴行され、母は近くの破戒坊主と浮気という有様に、家を飛び出して大阪でキャバレー勤め。そこで彼女は美貌を武器に生きていく…

 鈴木清順のぜんぜんわけが分からなくない、ストレートでスピーディーでパワフルな映画。
 特典映像の当時の予告編には一応「女の出世物語」みたいな字幕がバーンと出ますが、ちょっと違う。
 ファーストシーンが野川由美子の自転車の上で動くヒップです。実にかわいい野川由美子で、「殺し屋」の時のいつもどっか不満!という顔とは大違い。その純朴でかわいい、働いている工場のお坊っちゃんに恋心を抱くやまだし娘がひどい男遍歴を重ねる話。ほんとにひっどい。

 まず村で輪姦される。
 母親は父親を家にもいれずに近所の坊主と浮気。
 大阪では酔って眼が覚めたら客と連れ込みにいる。
 その客は彼女に入れあげて使い込みをした挙句に首になり、ヒモ生活。
 モデルになって、上役のレズの相手にされそうになる。
 初恋の彰とも再会するが、山師になっており、彼の温泉発掘の資金のために金貸しの妾になり、ついには彰と今で言うAVを撮らされる。
 金貸しも彰も死に、故郷へ帰れば父は死に母の浮気相手の破戒僧が妹を毒牙にかけている。
 
 実に実にひっどい話なのに、ズルズル暗いところへ引きずられる感覚がまったくない。
 溝口健二の「雪夫人絵図」もひどい男に翻弄される女の話なのに、何でこんなに違うのでしょう。どっちも不幸のたびに主人公が美しくなっていきますが、かたや雪夫人木暮美千代は生命を削る如くにはかなさを増し、こちらは不幸に鍛えられるが如くに輝いちゃう。陰影濃い画面だというのに、野川由美子はいつも汚れをよせつけない様に翳りなく美しい。思うに、露ちゃんは「これがすき」「これはいや」などの感覚を決して人の判断に委ねない。彼女の根幹が崩壊しないのはそのせいだろうか。
 ひどい男揃いのうえに、お母さんも迫力ありすぎ。しかし、ここまですごいと「香華」(有吉佐和子原作、木下恵介監督)のような愛憎劇とは無縁なのが「河内パワー」の源であろうか。
 不思議な付き合いをする川地民夫もへんないい人だが、佐野浅夫は、こちらが歳を重ねるごとになんか泣けるようになる…