虫干し映画MEMO

映画と本の備忘録みたいなものです
映画も本もクラシックが多いです

あらしのよるに(2005/日本)

2007年02月27日 | 映画感想あ行
監督: 杉井ギサブロー
声の出演: 中村獅童 ガブ
     成宮寛貴 メイ

 オオカミとヤギの間に芽生える友情を描いたきむらゆういち作のベストセラー絵本を豪華な声優陣でアニメ映画化。ある嵐の夜、仲間とはぐれ壊れた山小屋に避難したヤギのメイは、闇の中で同じようにあらしを避けて小屋に逃げ込んできたガブという名の友達ができた。そして約束した再会時にあらわれたのは…

 私は少々心が乾き気味の人間かも知れないので念のためおことわりを。この原作は、実は病院の待合室で、呼ばれるのを待っている間に読んでしまったのですが、そのときも環境が環境ですし、さらっと読んでしまって余り涙にくれたりはしませんでした。

 中学1年生の女の子に聞いた感想が実に私の感じたものとピタリだったのでそちらのほうをご紹介します。

「学校で、先生が読み聞かせをしたのね。それで感想書かされたの。
 ウチは『まるで、周囲から反対されてる恋人みたい』って書いたら、そこ赤線引いてあったの(注目という意味らしい)
 あれは、友達より恋人のほうがいいと思う。駆け落ちまでしちゃうし」

 私も、食べる、食べられる宿命の種族を超えるような、魂が響きあうような共感とか、そういうものを納得させてくれるような導入部があれば、というのと、

 雪山でのわかれで終わったほうが悲しいけれど美しい物語として成立したような感じがするけど、アニメの対象年齢が低いようなので、どうしてもハッピーエンドにならざるを得ないのでしょうか?

スパングリッシュ(2004/アメリカ)

2007年02月26日 | 映画感想さ行
SPANGLISH
監督・脚本: ジェームズ・L・ブルックス
出演: アダム・サンドラー     ジョン・クラスキー
   パス・ベガ    フロール
   ティア・レオーニ    デボラ・クラスキー
   クロリス・リーチマン     エヴェリン
   シェルビー・ブルース    クリスティーナ
   サラ・スティール    バーニー
   イアン・ハイランド    ジョージー

 娘のクリスティーナとともにメキシコからロサンジェルスにやってきたシングルマザーのフロール。しばらくはメキシコ人コミュニティの中だけで生活し、英語も話せなかったが、娘のためにより良い賃金を求めて、裕福な家のハウスキーパーとして働くことになった。やがて夏を別荘で過ごす一家に頼まれ、フロールも娘を連れ別荘に住み込むことに。そのことが双方の家族に波乱をもたらすことになる。

 立派に成長した娘が、一流大学への進学のためのエッセイとして綴った文章という形で始められ、彼女の「私は何より母の娘であることに誇りを持つ」というアイデンティティ宣言で締めくくられる。

 ハートウォーミングなよくできた映画なのだけれど、引っ掛かるものの多い映画でもありました。

 移民の母は美しく誇り高く働き者で、娘を何より大事に思っており、押さえるところはきちんと押さえてしかも自分の非を素直に認めることができるし、必要だと思うことを得るために行動する実に理想的な女性像。
 それに対し、アメリカの富裕層の母は、自分の理想「夫は、女性は、娘は、子どもは斯くあらねばならない」という意識に縛られ、女性版マッチョ幻想(美しく、強く、賢く、愛され、一目置かれて当然な私でなくてはいけない)に捉われていて、本来のものを見失っている。身勝手極まりない呆れちゃう人なんだけど、ひたすら一生懸命で周囲へもたれかかってることを全然自覚してない。描き方が可笑しくて哀れに映るように撮ってるし、太刀打ちできないし、憎めない様に感じられる。演じたティア・レオーニがうまいんでしょう。サンドラーも筋肉の人ですが、彼女もすごい。
 その2人に配するにアダム・サンドラー演じる出来過ぎな夫。この人と、クラリス・リーチマンの雰囲気でお話がリアリティを保ってると思う。

 ヒスパニック移民は「不法にやってきて、アメリカの社会保障や教育制度にただ乗りしている」とだんだん排斥機運が高まっているようなのに人口でも役割でもアメリカの重要な部分を占めるようになっている。
 通訳する賢い娘のシーンとか、スペイン語社会で十分用が足りてしまうのとアメリカ人家庭に深入りしすぎないように英語を覚える気のなかったフロールが英語を学ぶこと、二人の女性の設定が、やはり私には今のアメリカ社会へ訴えているように思えました。

コンフェッション(2002/アメリカ)

2007年02月25日 | 映画感想か行
CONFESSIONS OF A DANGEROUS MIND
監督: ジョージ・クルーニー
脚本: チャーリー・カウフマン
出演: サム・ロックウェル    チャック・バリス
   ドリュー・バリモア    ペニー・パチーノ
   ジョージ・クルーニー     ジム・バード
   ジュリア・ロバーツ   パトリシア
   ルトガー・ハウアー    キーラー
   マギー・ギレンホール     デビー

 70年代アメリカにおいて、テレビ番組『ゴング・ショ-』などで一世を風靡し、人気者だったプロデューサー兼司会者のチャック・バリスのは一方でCIAの暗殺担当の秘密工作員だった。

 すごく分かりやすい映画でした。語り口が滑らかで、ストーリーが停滞するところがありません。ジョージ・クルーニーの初監督作品だそうですが、手馴れたもの、って感じがするくらいでした。
 それでまあ、中身なんですが、語り口滑らかで、なんかするっと終わりまで見せられちゃいました。山あり谷ありではない映画でした。工作員だったことの真偽は実はどうでもいいんじゃないかと思いました。だって、ジョージ・クルーニーやジュリア・ロバーツの見てくれから話し方、仕草何もかも「絵に描いたよう」で、いかにもフェイクっぽい。
 しかしまた、主人公自身の誰にも明らかで華やかな実績のほうもまた、空しさが響くようにできている。
 それでラストが人生総括ショーでは、「はあ… やっぱりそうなの…?」と…
 手ごたえのある、幸福な人生って何なんでしょう?
 チャックはペニーがいただけじゃダメだったの?
 虚脱感のある、妙に可笑しい映画でした。
 ジョージ・クルーニーって才人なんですね。

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 あと2,3日でこの恐ろしい追い込み仕事は終わります。今までサボった私が悪いのですが、右肩はガッチガチで冷え切った状態です。同じ人間の身体の左右でよくこれだけ体温から何から違うようになるものだと思います。肩こり過ぎて吐いたりしてます。もうこんな状態を繰り返すのはイヤなので、今後はこつこつ地道に働きます。(と今は決意してます)

ブレイブ ストーリー(2006/日本)

2007年02月21日 | 映画感想は行
監督: 千明孝一
声の出演: 松たか子 大泉洋 常盤貴子 ウエンツ瑛士 今井美樹

 これはちょっとがっかりだったのであら筋は省略。
 ていうか、あれだけ長い物語を映画1本で語るのは難しいのは分かりきったことなんだから、そこのところ-脚本、物語の再構成-を腰すえて練って欲しかったな…と。

 宮部みゆきの本は悲しくて辛いこともいっぱいあるけれど、ひるまずに一生懸命生きていきたいという平凡な人間の勇気に共感を呼び起こしてくれるストーリーテリングが本当にうまい。

 だから、この映画でも、ラストのワタルの決意に共感の涙を思わず流させてくれるように語って欲しかったのでした。

 絵は良かったんで。
 でも、例えばミウの登場シーンとか、もっとメリハリがあればいいのに。
 FFXのユウナちゃんの異界送り初披露シーンなんてけっこう陶然としちゃったので、ああいう「はっとする」ようなのがその辺に散りばめられていたらきっともっと映画が楽しかったのにと思います。

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 ところで、昨日サークル仲間のお一人が若くして(まだ40代半ばくらいでしょう)おばあちゃんになられまして、それなりにお祝いとかしたんですが、思わず私、彼女との歳の差をカウントしてました。
 20歳過ぎてからのお付き合いというのは、特に趣味のサークルなんかでは年齢の差はあまり気にしませんが、う~ん、早い人は素早くいろいろ済ませてるんだなあ…

敏いとうとハッピー&ブルー

2007年02月18日 | 日記・雑記
先日の「ダメな私ね~」からご紹介いただいた同じグループの曲
「わたし祈ってます」
「星降る街角」
歌詞を見てみました。
いやあ、びっくりです。
歌謡曲って、本当に思いがけないものがあります。
こんな歌詞でしたが(下の引用は全部ではありません)

わたし祈ってます
作詞:五十嵐悟 作曲:五十嵐悟  

わたし祈ってます

身体に充分注意をするのよ
お酒もちょっぴりひかえめにして
あなたは男でしょう
強く生きなきゃだめなの
わたしのことなど心配しないで
幸せになってねわたし祈ってます

あなたはちっとも悪くはないのよ
女のわたしがわがままでした
あなたのそばにいて
何もしてあげられずに
サヨナラするのは哀しいものよ
幸せになってねわたし祈ってます

時間が必ず解決するのよ
どんなに苦しい出来事だって
あなたはわたしより
もっといい人見つけて
いいわねお願い泣いちゃおかしいわ
幸せになってねわたし祈ってます


すんごい気の好い女性ですね!
アタシなんか、「よせばいいのに」って言う恋愛経験も、辛い別れも経験無いので、断言は出来ません。がしかし、卒業した学校さえ、さして思い入れとか懐かしさとか感じない、今のアタシが一番かわいいという人間なので、どうも別れてなおも強い恋心なんてピンとこないです。
別れた男なんて思い出したくも無いんじゃないでしょうか。

「22歳の別れ」という曲を聴いたときも、
こういう時には、私だったら
「はっきりしない男はたくさんよ!」と蹴りを入れそうだと思いましたね。
(足上がらないですけど… 私は怒りが別れの原動力になるタイプの人間らしいです)

22歳の別れ   

詞・曲 伊勢正三

あなたに さようならって言えるのは 今日だけ
明日になって またあなたの 暖かい手に
触れたらきっと 言えなくなってしまう  そんな 気がして

私の 誕生日に22本の ローソクを立て
ひとつひとつが みんな君の 人生だね・・・って言って
17本目からは 一緒に火をつけたのが  昨日の ことのように

あなたの 知らないところへ 嫁いで行く 私にとって

ひとつだけ こんな私の わがまま聞いてくれるなら
あなたは あなたのままで 変わらずにいてください 
そのままで・・・・・・・


こういう歌は、男性女性のどちらに受けたのでしょう?
まあ、昔好きになった男がつまらない奴になってたら腹が立つので、できれば幸せで立派になってる方がいいとは思うけど、別に何にも望みませんです、はい。(斯様に乾いた心の私も「時をかける少女」(大林信彦の映画のほう)とか「水鏡綺譚」の深い思いと切ない別れにはちゃんと涙してます)

宮部みゆき讃

2007年02月17日 | 
前回書き足りなかったことの追補です。

 宮部みゆき氏のお仕事については、最近では読むたびに「すごい」と唸ってばかりです。
 軽めのテイストの時代ものは登場人物の性格がちょっと現代的過ぎないかなあ、と思うところはあったりするものの、いつも見事にストーリーに乗せられてしまう。

 今度の「孤宿の人」では、特に彼女の初期短編から感じていた、
「社会的に弱い立場で必死に生きていくもの、馬鹿にされるものの誠実さ」
「人を超えたものへの畏れを知る謙虚さ」
「理不尽な死や不幸への無念への思い」
を、それが結果的に現象的に悲劇であっても、物語のなかで昇華して人間という存在に対する希望さえも奮い起こさせてくれるようだ。

 そういったわけで、本当に脱帽です。
 本当に良く小説家の道を選んでくれました。

 ところで、
『銀行は死体だらけ/ ウィリアム・マーシャル /ハヤカワ文庫』
は、1997年の中国返還直前の香港が舞台。
 返還直前という状況を見事に活写し、かつプロットに実に有効に利用しているので、もうこれはその状況下を描いた単発もの?と思ったのでした。でも解説を読むとなんと続編が続いてるらしいので、是非追っかけてみたいシリーズです。それに登場人物の口から映画の名前やらがドッチャリでてくるのも楽しみです。
 この本では「プラン9 フロム アウタースペース」なんて名前まで出てきて、こういう映画などの薀蓄がどこまで披露されるかそちらのほうでも楽しみです。

最近読んでいる推理小説

2007年02月15日 | 
今年の1月は「お仕事やらねばならぬ」と思いつつどうも手につかなくてためてしまったのです。
ただいましっかりつけ払ってます。
ついオークションでうさ晴らしの買い物しないように、ケーブル引っこ抜いて、ネット接続は一日30分。おかげでメールがたまるたまる…本日も80件ありましたわ、ははは。

でも、やっぱり遊んでしまいます。
先輩の愛唱歌に
「いつまでたってもダメな私ね~」
というフレーズがありますが、実に我がことです。
ところで、これなんていう歌の一節なんでしょうか?

今週は映画も封印なので日曜から本ばっかり読んでます。

銀行は死体だらけ/ ウィリアム・マーシャル /ハヤカワ文庫
公爵ロビーの大逃走 /グレゴリー・マクドナルド /サンケイ文庫
恋するA・I探偵 /ドナ・アンドリュース /ハヤカワ文庫


これはどれも面白かった。
マクドナルドの本は第2次大戦中にイギリスの貴族の遺児が疎開したアメリカでどいつもこいつもという大人にひどい目にあうお話で、マルクス映画などのクラシックな皮肉さを思わせる。
「恋するA・I探偵」では、探偵役がなんと人工知能ですよ!それで女性人格持ってるの!感情もある。ここまできたか…って感じ。

孤宿の人/宮部みゆき/人物往来社

もう脱帽です。

カラーパープル /アリス・ウォーカー /集英社文庫

映画も良かったけど、本を読むと、字幕に頼って見ていることで理解に限界があるのが分かってしまいます。


受験期真っ只中でして

2007年02月11日 | 日記・雑記
受験生が大学高校と2人いるもので
家ではなんとなく映画見づらい状況です。

音を絞ってモニターとかで見てるとストレスたまりそうだし
私があと少しなんで、まあもうちょっと我慢しようかと。
確定申告直前なので、そうそう抜け出して劇場通いもできないし。

今読んでいるのが長岡輝子の自伝「二人の夫からの贈り物」
昭和史上の役者がたくさん登場しますが
森雅之さんの高校時代の描写がすごいです。
栴檀は双葉より芳し…と言いますか。

 学生演劇集団で、法政・慶応・文化学院など戦前ではハイソでインテリなサークルだなあ、と思う。
 その中で、まだ成城高校の生徒だったという森雅之について書いていることが、実に彼らしい。
 コーヒースプーンのなかで角砂糖をコーヒーで溶かし、角砂糖が手前に倒れると「きらい」、向こう側なら「好き」という角砂糖占いがその頃流行っていた。彼がそれをして、角砂糖が向こう側に倒れると

長い睫毛で上目遣いに私を見つめて
「ほんとう? ねえ、ほんとう?」
と、問いかけるのだった。


 きゃあ~~~~!!! 高校生時代の森雅之が!くらくらしそう。
 成瀬映画のゾクゾクするような酷薄なすさんだ色気はもちろんないだろうが、実に森雅之は少年時代から森雅之であったのだなあ、なんて思ってしまう…

~~~~~~~~~~~
昨日書きかけで草稿にしたつもりが今日開いたら公開になってました。中途半端なものを公開してお恥ずかしいです。

マーダー・ライド・ショー(2003/アメリカ)

2007年02月08日 | 映画感想ま行
HOUSE OF 1000 CORPSES
監督: ロブ・ゾンビ
出演: シド・ヘイグ      キャプテン・スポールディング
   ビル・モーズリイ    オーティス・ドリフトウッド
   シェリ・ムーン    ベイビー・ファイアフライ
   カレン・ブラック     マザー・ファイアフライ
   マシュー・マッグローリー    タイニー・ファイアフライ
   アーウィン・キーズ   ラヴェリ

 ハロウィン前夜に、4人の若者が、田舎町へとやって来る。旅の案内のネタ探しをしていた彼らは立ち寄ったガソリンスタンドに併設されていた有名な殺人鬼の犯行を再現したショーを見る。店主から殺人鬼ドクター・サタンの伝説を聞き、教えられた場所へ向かって出発した4人は途中で美人のヒッチハイカーを拾うが、その後車は故障。ヒッチハイカーの家に行くことになった4人を待ち受けていたのは…

デビルズ・リジェクト~マーダー・ライド・ショー2~(2005/アメリカ)
THE DEVIL'S REJECTS
監督: ロブ・ゾンビ
出演: シド・ヘイグ     キャプテン・スポールディング
   ビル・モーズリイ    オーティス・ドリフトウッド
   シェリ・ムーン・ゾンビ    ベイビー・ファイアフライ
   ウィリアム・フォーサイス    ジョン・クインシー・ワイデル保安官
    ケン・フォリー     チャーリー・アルタモント
   マシュー・マッグローリー    タイニー
   レスリー・イースターブルック    マザー・ファイアフライ

 大量殺人を繰り返してきたファイアフライ一家は、ついに警察に急襲される。しかし、オーティスとベイビーは逃亡し、父キャプテン・スポールディングと合流、一家は道中で残虐な殺人を重ねながら逃避行を繰り広げる。一方、兄を一家に殺されたワイデル保安官は、彼らを追い続ける。

 つい、続けてみちゃいました。
 見終わってしばし呆然。
 一作目のほうは、過去のホラーやら皮肉をちらつかせたり悪趣味系な映画からのネタをちりばめ、ざらついた画面とチープな色彩で、罠に落ち込んだ一般人が強烈キャラの殺人鬼に悲惨な目にあう気の毒な(この手の映画としてはお約束な展開の)お話が悪趣味全開に繰り広げられる。
 こういうのは、予想される展開としては2作目ではジェイソンなどのようにお約束ホラー街道を行くのかなと思ったらそれがびっくり。前作のキャラクターの性格は継承され(ほぼ)、過去の映画のネタちりばめも同様ながら、映画の持つ質感と湿度がまるで違う。こちらは逃避行の舞台が砂塵の荒野を突っ切る道路で、その乾燥したヒリヒリ感にスプラッタに飛び散る血の色の印象がまるで違うサイコでクライムでバイオレンスでいかれたムービー。
 処置なしの残酷なシリアルキラー一家の行動もさることながら、それを追い詰める方の保安官も聖書の句を呟きながらしっかり壊れている。余りに壊れ方がひどいので、一家の開き直りに快感まで覚えてしまい、そのことにまた不快感を感じるというねじれ状態。

 というわけで、不快感いっぱい、かつ魅力的なデビルズ・リジェクトを見てしまうと、一作目の印象が微妙に変わってきてしまう…
 二作通して一番ビビッたのはあのトラックでした。あれはほんっとに嫌でした。

水鏡綺譚/近藤ようこ

2007年02月06日 | 
青林工芸舎

 中世を舞台に狼に拾われ育てられたワタルと、守りの水鏡をなくしたために記憶をなくした鏡子の旅を描く。

 近藤ようこという漫画家は、時代物はともかくとして、現代ものは強烈にショウもない女性の人生とか、はまり込んで抜けないドツボみたいな気分が落ち込むようなものばかり読んでいた。そのためか余り積極的に手を出す作家ではなく、これは友人が貸してくれるまで知らなかった。そのときにこれも買わなくてはと思ったのに忘れてしまい、最近映画「どろろ」を見て思い出して購入。
 中世版のボーイ・ミーツ・ガールであり、ファンタジーであり、おのれの求めるものを知るための旅の物語である。

 ワタルは狼と育ち、異世界に通じ悪霊などを鎮める力を持ち、鏡子は仏の申し子であり、しかも欠損があるがゆえの力を持っている。
 連作短編形式で、彼らは鏡子の家を探す途中で、不幸なもの、妖しい者たちとかかわりあっていく。狐の親子、長いときを生きつづける白比丘尼、切り倒された松の精、龍神、シンデレラ・鉢かづき姫のような境遇の美しい娘…
 そして異世界と人間の世界がもっと近かった時代の、別れを約束されたラブストーリーが進行していく。

 完結編はなんと12年のブランクを経て描かれたそうだけれど、読む回数を重ねるだけ、切なさが深まるラスト。ワタルとの旅の記憶を失った鏡子に、見知らぬ他人として会ったワタルが口にできるのは「いつか会おう」のはかない約束だけ。

 高橋留美子の「犬夜叉」も戦国ボーイ・ミーツ・ガールであり、やはり切ないラストを予感してしまう…「どろろ」も続編あるならラブストーリーは上手に作って欲しいものです。あの二人ではどうも不安ではありますが。

描写

2007年02月04日 | 映画の話題
「蛇イチゴ」という
西川美和監督、是枝裕和製作の映画見たんですが、
この映画、内容に至るまでに
こちらの神経にずきずき引っ掛かることが多くてたまらない映画でした。

主人公が子どもの頃から出来のいい、小学校の女教師なんですが
子どもたちの仲裁のシーンなんか見ていて窓ガラス引っ掻く音聞いてるみたいな気持ちになります。
こういうのが何でも両成敗とか、そういう教条的対処で本質置き去りみたいな処置しやがるんだろうな、とか。

介護老人の世話を妻一人に押し付けて、
我関せずのいいかっこしいの夫
「お互いに支えあってる」とか平気で言い放つ娘とか。

是枝監督の「誰も知らない」でも、細部の描写に神経を盛大に逆撫でされたけど
この監督もキツイ描写します。

グエムル -漢江の怪物-(2006/韓国)

2007年02月03日 | 映画感想か行
監督: ポン・ジュノ
出演: ソン・ガンホ パク・カンドゥ
   ピョン・ヒボン パク・ヒボン
   パク・ヘイル パク・ナミル
   ペ・ドゥナ パク・ナムジュ
   コ・アソン パク・ヒョンソ

 ソウルの中心を流れる漢江(ハンガン)の河川敷で売店を営むパク一家は、家長のヒボン、長男カンドゥ、次男ナミル、長女ナムジュ、そしてカンドゥの娘ヒョンソの5人家族。ある日突然、漢江に正体不明の巨大な生き物が出現、人々を襲う。ヒョンソも犠牲者となった。怪物の持つウィルス感染者として強制的に隔離された一家に死んだと思ったヒョンソから助けを求める電話が入る。取り合わない当局に対し、一家は病院を逃げ出し、ヒョンソの救出に向かうのだったが…。

 韓国映画でこんなに面白かったのはほんとに久々です。
 私はどうも韓国映画は肌に合わない感じで、素直に面白いなあと思ったのはほんとに1,2本なのだけれど、これは最初から最後まで面白かった。
 うまく形容できないのだけれど、どこか突き放したような、というか感情移入をさせないような第三者視点でいられるというか、そういうムードが実にうまくできていて、それが「やった!」というより「う~ん、やるなあ」「やられちゃった」という感覚で見た後にうならせてくれました。
 家族がののしりあいながらも、ヒョンソのために行動することをまったく疑わないし、やることなすことボケだらけながら全く後ろを振り返らず、前進あるのみといった点。韓国の国民なら素直に納得、というかあたりまえで気にも留めない心性なんでしょうか?この辺わかったら面白いのにねえ、と思ったのですが。ヒョンソもヒョンソでとんでもない環境でも、けっこう冷静で彼女なりに戦っている雄々しきヒロインぶり。
 ホラーコメディを見た、というより怪物の出てくる喜劇と悲劇…ものごとの多面性を一度に見た感覚。怪物も画面にとってつけたような違和感無かったし。
 ラストではバトルに拳骨作ってる私と、家族に抱きしめられる少女にジワッとしてる私と、火炎瓶投げる彼とか原始的な戦いにやっぱり笑いたい私が居りました。

 ちょっと「ルナ・パパ」を思い出してしまいました。
 これも劇場で見逃して実に残念でした。リバイバルがあったら絶対いきます。

「どろろ」原作読んで一言

2007年02月01日 | 日記・雑記
「どろろ」今日は原作を探してきました。

原作読んでしまうとますます

・百鬼丸に影とか無頼の気配が無さ過ぎないでしょうか。
・どろろはもっと直情と無垢が無条件に肯定できるような
   やっぱり少年が良かった。
 少女にしてもあれでは大人に過ぎると思う。

という点が気になります。
土屋アンナについては声を鍛えて欲しいかなと。

無理やりラブストーリーにしたいなら
「どろろ」よりも
近藤 ようこの「水鏡綺譚」
の映画化なんてどうでしょうか。

読みたくなったので、明日は 「水鏡綺譚」探してこよう。
あ、また仕事遅れる…