虫干し映画MEMO

映画と本の備忘録みたいなものです
映画も本もクラシックが多いです

アレキサンダー(2004/米)

2005年02月16日 | 映画感想あ行
ALEXANDER
監督: オリヴァー・ストーン
出演: コリン・ファレル アンジェリーナ・ジョリー ヴァル・キルマー アンソニー・ホプキンス
 
 新興著しいマケドニアのフィリッポス王の嫡子アレキサンダーは、父と母オリンピアスのいがみ合いの中で育ち、その世継ぎとしての地位も確たるものではない。彼は同年輩の仲間との交流に慰めを見出していたが、20歳になった時に父が暗殺され、彼は国王となった。そしてペルシアを破り東征を続け、大帝国の王となる。

 音楽良かったです。
 映画全体のムードも、ちょっと前までの大作歴史ドラマの雰囲気で、そこそこ風格があって、戦闘シーンも大迫力だし、絵を意識して作ってあったみたいで、例えば、象と向き合うシーンを筆頭に、なかなか考えさせる絵が多かった。これで、私がコリン・ファレルが適役だと思えてさえいたら、かなり満足出来たと思う。

 やっぱりコリン・ファレルが「らしくない」

 そもそもが、絵を見てうっとりとか、はっとするとか、鳥肌立つとか、映画の世界に没入して見ていたのでなくて、考えてばっかりいたので、あまりほかの人にお薦めは出来ません。
 説明不足が多いとおもった。ちょっと前までギリシアだけど「バルバロイ」だったマケドニアの位置も、フィリッポスの偉大さも、ましてや以後300年のヘレニズム世界を生んだアレキサンダーという青年が歴史に果たした役割も見えてこない。部下に2度も暗殺されかけて、なおも兵をまとめて東征を続けられたアレキサンダーの力とカリスマ性も見えてこない。それに現地の方法を取り入れて征服地を馴化しようとした政治家としての力までも印象が薄い。あのダンスじゃ納得できない。
 オリバー・ストーン監督だから当然かもしれないけど、やたら戦いがスプラッタで虚しく見える。それにアレキサンダーの理想も最初から空虚に響くし〈私だけかな?)
 同性愛は、当時としては当然なんだから、そこは当然で押し切っちゃえばいいのに。
 アレキサンダーが魅入られたものを描くのだったら、少年時代でもっときっちり、見るものにわからせるべきではないのか?

 私個人の話だけれど、一応字幕見ながら英語も聞いてるんだが<字幕無しでは全部はわからない)、今回は人名が字幕表示はギリシア読み〈英語読みと混在)が多くて、聞こえるのは英語読み。慣れるまで必死。「トレミー」は特に天動説が連想されてしまうから、あの神話との絡め方ではその点でももやもやして。いやもちろん、プトレマイオス王朝創始者に名前のイチャモン付けてもしょうがないけどさ。
 しかし、プトレマイオスが語り手とは。
 あのアレキサンドリアの大図書館はヘレニズム時代の知の集積の象徴のようなものであった。プトレマイオス王朝の最後の女王クレオパトラの時代にカエサルに破壊され、4世紀にキリスト教によって焼き尽くされた。それこそが、ヘレニズム時代の本当の終焉とも言えるのかもしれない。

 だからね、ほんともっと「らしく見える」主役だったら…

 損したとまでは思わなかったけど、なんか他にやりようは無かったのか?セットやら戦闘シーンにこれだけの物を作っておいてと思った残念な映画。