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マダムnihaoのフレッシュ搾りたてブログ。お気軽にお立ち寄りください。

介護のオアシス

2010-10-07 10:40:00 | Weblog
 私には歳が離れた兄が三人いる。
ものごころついた頃には長兄と次兄はもう家を離れていたが、三兄とは長く一緒に暮らしていたので思い出がたくさんある。
「お前はまだ海を見たことがないから可哀想だ」
と言って、学校の海水浴の行事に幼い私を連れて行ってくれたこともある。
当時はまだそのようなことが許されていた時代だった

 その三兄が退職して2年後、妻が脳梗塞で半身不随となった。
自宅での介護生活は既に10年目を迎えている。
慣れてきたとは言え、炊事・洗濯・掃除・妻の世話と兄の疲労はかなり蓄積している。
介護生活が長くなると訪ねてくる人の数も段々少なくなってくる。
兄たちの暮らしは、夫婦ふたりだけのひっそりとした孤独な闘いの毎日だ。
帰省した折りだけでも力になりたいと思っているので、今回も数日間兄の家に滞在した。

 しかし几帳面な兄の家は、私の家より掃除が行き届いている。
何か美味しいものをご馳走したかったのだが、二人とも大変ストイックな食欲の持ち主なので、残念ながら私の腕を披露するまでには至らなかった。
ただ一日中寄り添って話し相手をしているだけだった。

 それにしても...「妻の介護を第二の人生とする!」と決意した男の覚悟は、なんと揺るぎがないものだろうと私は感心する。
今まで、兄の口から不平不満や弱音や愚痴を一度も聞いたことがない。
大好きなスキーやゴルフやテニスや飲み会などの未練をすっぱりと断ち切り、闘病生活に疲れて我が儘になりがちな妻の要求を適当に処理しながら、ひたすら介護に専念している。

 嫁と姑ではこうはいかない。
夫婦だから出来るのだろうか?
いや、男だから出来るのだろうか?
家族を守らなければならないという気概を持って生まれた男の場合は、介護にも一途な使命感を持つのだろうか?(ウチは無理だな...)
そう言えば、介護の専門家の友人が「夫に介護されている妻の方が、身だしなみなどが美しく清潔である。」と言っていた。

 もちろん煩悩多き人間のやることだから、いくら頑張っても快適で完璧な介護が実施されているとは言い難い部分はたくさんある。
兄と義姉の間には、時として険悪な感情や諦めの感情が流れることもあり、側にいてその空気を感じることは切ないことだった。
数日間だけでも、私の存在が介護のオアシスとなっていたら幸いなのだが......


 ↓は兄の描いた絵を二枚貰ってきたうちの一枚で、約16㎝×23㎝の小品。
雪解けの白樺林の風景で、色彩、構図とも気に入った。






 そして↓は、織物を趣味とする友人士別さんからいただいたお手製のマフラー。
軽くて暖かくて最高の肌触りだ。







 以上の二点を見比べて面白いことに気がついた。
兄の絵の色を分解して糸に着色して織りあげれば、士別さんのマフラーにならないか?
北の大地の人々の愛する風景、色彩の偶然の共通点に驚いて、なんだかとても嬉しくなった。