「五月蠅い」と書いて「うるさい」と読みます。
では「九月蠅い」では何と読むのでしょうか? 私は「いとしい」と読みたい。
★ ★ ★
珍しく家の中に一匹の蠅がまぎれ込んできました。
この時期の蠅は、とても人懐こく(?)恐れを知らない大胆な素振りをします。
朝夕かなり寒くなったので、ほどよく発熱している人間の体が大好きなのです。
私の頭の上をぐるぐる飛び回ったり、素肌が出ている部分にしつこくつきまとって煩わしいことこの上ありません。
キッチンに行けば一緒についてくるし、おやつを食べていると物欲しそうに近寄ってくる。
パソコンで遊んでいれば足下で執拗なソフトタッチを繰り返したりと、まさにやりたい放題です。
「いや~ん、も~う、かなわんワ」
私は丸めた新聞紙とアースジェットの二刀流で、敢然と敵に立ち向かいます。
アースジェットは細かな霧を噴射しながら蠅の行方を追いかけますが、私の意図と行動を読み切ったか、素早く姿をくらましてしまいました。
私はもう蠅退治は諦めて、ソファに横になって本を読みながら昼寝をすることにしました。
するとまたどこからか現れて私の読書と昼寝の邪魔を始めるブンちゃん(蠅・仮名)です。
おや、いつの間にか名前までついてしまいました。
私はブンちゃんと戦っているうちに、晩年のももちゃん(愛犬)の姿を思いだしました。
そう言えばももちゃんも、いつも私を求めていました。ひたすら私を求めるだけの一生でした。
こんなに私のことを求めるブンちゃんは、もしかしたらももちゃんの生まれ変わりかもしれない・・・
孤独な(暇な?)私の心の空隙に忍び込んだ小さな一匹の蠅の生命。
もうこれ以上無用な殺生はしたくない。
私はブンちゃんを私のペットにすることに決めました。
そして命ある限りブンちゃんに寄り添ってみようと思ったのです。
二日目の朝がやってきました。
私がリビングに入って30分ほどすると、どこからともなくブンちゃんが現れました。
昨日より元気はないものの、今日も私の後を追いかけてくるブンちゃん。
なんともいじらしい姿です。私を認識しているかのような動作も嬉しい。
ペットにすると決めてからは、どんなにまとわりつかれても不快ではなくなりました。
この日は終日ブンちゃんにつき合って遊びました。
三日目の朝がやってきました。
なかなか起きてこないブンちゃんを起こしてあげようと思いました。
居場所を探すのは簡単です。家の中で、私以外に心地よく発熱しているものを探せばよいのです。
いた!いた!ブンちゃんはテレビの裏側でぐっすりおねんねしていました。
今日も少し元気がなく、動作がちょっと緩慢です。 頑張れ、ブンちゃん!
四日目の朝がやってきました。
テレビの裏側を覗いてもブンちゃんはいません。
ブンちゃんの気配がどこにもないのでとても心配になりました。
外遊びに行って迷子になってしまったのでしょうか・・・イヤな予感。
そこにオットーがやって来て
「夕べ、うるさい蠅が1匹部屋に入り込んできたから、完膚なきまでに叩きのめしておいた」
ああ、やっぱり・・・私は返す言葉もなく呆然と立ち尽くすだけでした。
たとえ百万言費やしても、私の動揺と衝撃がオットーに伝わることはないでしょう。
西の危険区域(オットーの部屋)には魔物が棲んでいるので、近寄らせないように注意しなくてはならなかったのです。
蠅の寿命はたったの6週間、もう少し長生きさせてあげたかった。
蠅をペットにすることの実験的行為はたった三日で終了しました。
そしてまたいつも通り何ごともない日々が過ぎて行く秋です。
では「九月蠅い」では何と読むのでしょうか? 私は「いとしい」と読みたい。
★ ★ ★
珍しく家の中に一匹の蠅がまぎれ込んできました。
この時期の蠅は、とても人懐こく(?)恐れを知らない大胆な素振りをします。
朝夕かなり寒くなったので、ほどよく発熱している人間の体が大好きなのです。
私の頭の上をぐるぐる飛び回ったり、素肌が出ている部分にしつこくつきまとって煩わしいことこの上ありません。
キッチンに行けば一緒についてくるし、おやつを食べていると物欲しそうに近寄ってくる。
パソコンで遊んでいれば足下で執拗なソフトタッチを繰り返したりと、まさにやりたい放題です。
「いや~ん、も~う、かなわんワ」
私は丸めた新聞紙とアースジェットの二刀流で、敢然と敵に立ち向かいます。
アースジェットは細かな霧を噴射しながら蠅の行方を追いかけますが、私の意図と行動を読み切ったか、素早く姿をくらましてしまいました。
私はもう蠅退治は諦めて、ソファに横になって本を読みながら昼寝をすることにしました。
するとまたどこからか現れて私の読書と昼寝の邪魔を始めるブンちゃん(蠅・仮名)です。
おや、いつの間にか名前までついてしまいました。
私はブンちゃんと戦っているうちに、晩年のももちゃん(愛犬)の姿を思いだしました。
そう言えばももちゃんも、いつも私を求めていました。ひたすら私を求めるだけの一生でした。
こんなに私のことを求めるブンちゃんは、もしかしたらももちゃんの生まれ変わりかもしれない・・・
孤独な(暇な?)私の心の空隙に忍び込んだ小さな一匹の蠅の生命。
もうこれ以上無用な殺生はしたくない。
私はブンちゃんを私のペットにすることに決めました。
そして命ある限りブンちゃんに寄り添ってみようと思ったのです。
二日目の朝がやってきました。
私がリビングに入って30分ほどすると、どこからともなくブンちゃんが現れました。
昨日より元気はないものの、今日も私の後を追いかけてくるブンちゃん。
なんともいじらしい姿です。私を認識しているかのような動作も嬉しい。
ペットにすると決めてからは、どんなにまとわりつかれても不快ではなくなりました。
この日は終日ブンちゃんにつき合って遊びました。
三日目の朝がやってきました。
なかなか起きてこないブンちゃんを起こしてあげようと思いました。
居場所を探すのは簡単です。家の中で、私以外に心地よく発熱しているものを探せばよいのです。
いた!いた!ブンちゃんはテレビの裏側でぐっすりおねんねしていました。
今日も少し元気がなく、動作がちょっと緩慢です。 頑張れ、ブンちゃん!
四日目の朝がやってきました。
テレビの裏側を覗いてもブンちゃんはいません。
ブンちゃんの気配がどこにもないのでとても心配になりました。
外遊びに行って迷子になってしまったのでしょうか・・・イヤな予感。
そこにオットーがやって来て
「夕べ、うるさい蠅が1匹部屋に入り込んできたから、完膚なきまでに叩きのめしておいた」
ああ、やっぱり・・・私は返す言葉もなく呆然と立ち尽くすだけでした。
たとえ百万言費やしても、私の動揺と衝撃がオットーに伝わることはないでしょう。
西の危険区域(オットーの部屋)には魔物が棲んでいるので、近寄らせないように注意しなくてはならなかったのです。
蠅の寿命はたったの6週間、もう少し長生きさせてあげたかった。
蠅をペットにすることの実験的行為はたった三日で終了しました。
そしてまたいつも通り何ごともない日々が過ぎて行く秋です。