本当に出版されるかどうか、心配する方もいました。民問研が出版の約束を守り、その方々に信頼を与えられたことを誇りに思っています。事典が出ると、日本の筆者の皆さんがとても喜んでいました」

2022-03-23 11:46:15 | 日韓友好親善

「40人以上の韓日の研究者が10年かけて

『在日朝鮮人団体事典』を完成しました」

登録:2022-03-23 06:43 修正:2022-03-23 10:06
 
民族問題研究所のイ・ヨンチャン研究室長
 
 
事典の執筆に参加した民族問題研究所のチョ・ハンソン先任研究員(左から)、イ・ヨンチャン研究室長、イ・ミョンスク先任研究員、クォン・シヨン先任研究員=カン・ソンマン先任記者//ハンギョレ新聞社

 「事典の索引作業だけでも2カ月ほどかかりました。人名が約5400人、団体は2800以上です。今後、『親日(附逆者)人名辞典』の増補改訂版を出したり、新たに独立運動家叙勲を申請する際に活用できると思います」

 民族問題研究所(イム・ホニョン所長、以下民問研)は最近、1895年から1945年まで日本で発足した朝鮮人団体551団体の沿革と活動を辿った『在日朝鮮人団体事典1895~1945』(共同編纂委員長:樋口雄一、水野直樹、キム・グァンヨル)を出した。2012年に韓国と日本の研究者が共同で編纂作業に着手してから10年をかけて完成した。「国内の在日朝鮮人研究者9人と日本の研究者29人が参加しました。日本では在日朝鮮人専門の研究者とともに、その地域を研究する方々も多数参加しました。事典の内容の65%は韓日の研究者たちが、残りは民問研編纂チームの研究員たちが分担して書きました」

 
 
         『在日朝鮮人団体事典 1895~1945』の表紙//ハンギョレ新聞社

 民問研の同僚研究員5人と共に今回の事典編纂の実務を率いたイ・ヨンチャン研究室長の説明だ。中央大学史学科で「東学天道教団の民会設立運動」で博士号を取得したイ室長は、2004年から民問研の常勤研究員として活動してきた。

 今月21日、ソウル龍山区青坡路(ヨンサング・チョンパロ)の民問研事務室でイ室長に会った。

 1200ページを超える同事典は、民問研が創立以来4番目に発行した日帝時代(日本の植民地時代)専門事典だ。最初に『日帝協力団体事典-国内中央編』(2004年)を出版し、続いて『親日人名辞典』(2009)と『日帝植民統治機構事典-統監府・朝鮮総督府編』(2017年)を発刊した。

 「『親日人名辞典』を出す時、日本と中国側の朝鮮人コミュニティの動向が気になりました。『親日人名辞典』は今も客観性や緻密さにおいて認められていますが、海外と国内地域の調査が不十分でした。1945年基準で、日本だけで朝鮮人200万以上が暮らしていました。当時、日本にどのような朝鮮人組織があり、どのような活動を行ったのか、また日本はどのように統治し、そこに朝鮮人たちはいかに対応したのか調べたいと思っていました」。なぜ『在日朝鮮人団体事典』を出したのかという質問に、イ室長はこう答えだ。彼は同事典の編纂が日本の歴史歪曲に対する韓日市民社会の連帯のための共同作業としての意味も大きいと語った。「2000年代に入り、親日人名編纂委員会が本格的に活動する頃、日本でも歴史歪曲問題が浮き彫りになりました。その時、韓国と日本の市民と知識人たちが共同対応を悩んだ末、共に事典を作ればいいと考えるようになったんです」

 同事典は留学生の集まりや親睦・互助団体から独立運動や親日寄りの組職まで、在日朝鮮人たちが作った多様な団体を網羅している。1927年にソウルで創立された左右合作独立運動団体の「新幹会日本支会」の場合、京都、名古屋、東京、大阪まで4カ所の活動を詳述し、天道教と仏教、キリスト教など国内宗教団体とつながっている組織も取り上げた。親日附逆者の朴春琴(パク・チュングム)が1921年に東京で作った「相愛会」と、1937年日中戦争の頃に日本の官主導で結成され、強制動員労働者を統制・抑圧する手段として活用された「協和会」についても、本部と各支部を分けて叙述した。

 相愛会の大阪本部編には、同地域の紡績工場である朝鮮人女性工員100人が同会の追放を要求し、15日間ストを行ったという内容が出てくる。紡績工場側と密着した一部の相愛会員は朝鮮人女性工たちにとって恐怖の対象だったという。北海道や兵庫県などの各地域の協和会編には、日本治安当局が朝鮮人を締めつけるのに協和会を活用した具体的な方法などが書かれている。

民問研4冊目の「日帝時代事典」 
日本の研究者29人なども執筆に参加 
在日朝鮮人団体551団体を調べ 
「索引の人名だけで5400人以上 
親日人名辞典改訂版を出す時や 
叙勲時にも活用できるだろう」

 同事典の編纂で日帝強占期について新たに知った内容があるかと聞くと、イ室長はこのように答えた。「普通、在日朝鮮人と えば、迫害を受けたことだけを思い浮かべますが、今回の作業で各分野で非常に多様な組織と人物が存在していたことが分かりました。天道教だけでも11の団体がありました。無政府主義団体もいくつかありましたし、女性団体や消費組合もありました。住居問題で困難を強いられた朝鮮人たちが『借家人組合』を結成し、似たような境遇の日本人たちと共に闘ったこともありました」と語った。「朝鮮人たちはその時代、日本で朝鮮語を使い、朝鮮の服を着て朝鮮の風習に従いました。朝鮮人のアイデンティティを守り、朝鮮人として生きていたのです」

 事典の編纂においては用語や観点の統一が重要だが、両国の研究者がともに参加したため、困難があったのではないかと尋ねると、イ室長は「日本の研究者も事典を編纂する趣旨に同意する方々なので、事件や人物に対する見解の差はなかった」と答えた。「実は最も悩み、議論を重ねたのは事典の題目です。在日朝鮮人研究者の中には、在日朝鮮人の代わりに日本で在日韓国人と朝鮮人を指す『在日』や『在日コリアン』を使おうと提案した方もいました。しかし、二つの用語が韓国人の我々にとってはあまり聞きなれないため、『在日朝鮮人』にし、その代わり本の表紙に漢字で併記しました」

 
 
前列左から時計回りに、民族問題研究所のイ・ヨンチャン研究室長、チョ・ハンソン先任研究員、クォン・シヨン先任研究員、イ・ミョンスク先任研究員=カン・ソンマン先任記者//ハンギョレ新聞社

 同事典は551の団体ごとに組織の性格を示す一行説明をつけた。例えば、1922年に結成された黒友会は「東京で結成された朝鮮人初のアナキスト思想の団体」と書かれている。民問研が親日団体と見なす相愛会に関する説明は「内鮮融和・親日団体」だ。「日本の執筆者の中には相愛会を親日団体ではなく内鮮融和団体と見るべきだという意見もありました。日本で暮らし、日本文化の中に溶け込むことを目標にした団体だということです。我々は相愛会が韓国と日本精神の結合を追求した点で、親日だと考えています。相愛会の一行説明にはこうした意見の相違が反映されました」

 事典の執筆者らは皆、原稿料を受け取っていない。「お金の問題ではなく、必ずやらなければならない作業だという考えで参加しました。日本の研究者の中には数十団体に関する執筆を担当した方もいます。実際出版が予想より遅く、本当に出版されるかどうか、心配する方もいました。民問研が出版の約束を守り、その方々に信頼を与えられたことを誇りに思っています。事典が出ると、日本の筆者の皆さんがとても喜んでいました」

 イ室長は、当初、韓国版とともに出版しようとした日本版の出版についても悩んでいると話した。「韓国語と日本語の原稿が入る度に、翻訳を進めました。でも、韓国語を日本語に直した時、用語も違うし、文脈も変わってしまい、すぐには日本語版の出版は難しいと思いました。もう少し議論してから決めるつもりです」

 最後に改訂版を出すとしたら、どの部分を補完したいか聞いた。「今回の事典は、北海道など地域協和会の説明も主に日本中央政府側の資料に多く依存しています。今後、地域の官庁やマスコミ各社、そして民間の資料ももっと探して補っていきたいです。また、文化芸術団体も補完が必要だと思います。演劇や映画、文学関連の朝鮮人団体が多くありましたが、これらは芸術だけでなく、思想運動とも結びついています。こうした点をしっかり指摘しなければならないと思います」

カン・ソンマン先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
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ますますグローバル化し同期化するネットワーク環境において、国家が統制するコンテンツとサービス中心の経済が競争力を維持するのはかなり難しいことだ。

2022-03-23 08:49:21 | 真の解決目指して

世界を一つにしたインターネット、

「バベルの塔以降」のように分割されるのか

登録:2022-03-21 09:21 修正:2022-03-21 10:26
 
ウクライナ侵攻とグローバル・インターネット 
巨大IT企業、ロシアでのサービスを制限 
ロシアは自国ネットワークの分離をテスト 
中国、インド、イラン、ベトナム、北朝鮮など 
グローバルネットワークとは別のネットワークが増加傾向 
 
ICANN、「インターネットは中立なプラットフォーム」 
迂回路があり、統制に成功するかは「未知数」
 
 
ウィーンにある美術史美術館が所蔵するオランダの画家ピーテル・ブリューゲルの「バベルの塔」。インターネットの断片化は、神の怒りで共通の言語を失くし分裂と対立に向かったという旧約聖書のバベルの塔の神話を連想させる//ハンギョレ新聞社

 国境を超えるコミュニケーションの道具であるインターネットが、戦争と対立によって分割され、世界の情報通信の環境について、神話のバベルの塔の崩壊のような状況が懸念されている。

 ロシアのウクライナ侵攻が、21世紀の新冷戦と米国主導の一極体制の解体という新たな国際秩序の到来という評価とともに、インターネットに巨大な亀裂を持ち込んでいるという分析が浮上している。インターネットは、全世界の約3万2000のネットワークが結びつけられたネットワークであり、標準化された通信規約を通じて、全人類が障壁なしにコミュニケーションをとることができる技術的な基盤を提供してきた。インターネットはワールドワイドウェブになり、1990年代中盤以後、全世界を一つに結び、今日のグローバル化と情報化を可能にした技術的土台であり、実質的に実現した空間だ。

 超連結環境の情報技術時代に起きた大規模な戦争は類例のない情報戦となり、ネックワークは激しい戦闘の最前線になっている。ロシアの侵攻に対抗したグローバルIT企業による相次ぐサービスの中止と制限、ロシアの独自化政策によって、単一なネットワークを特徴とするグローバル・インターネットが分割され断片化している。

 
 
ロシアのソーシャルメディアの第1位企業はフェイスブックと機能が似ているフコンタクテだ。創業者のパーヴェル・ドゥーロフ氏はテレグラムの創業者でもある=フコンタクテ提供//ハンギョレ新聞社

■分割されるグローバル・インターネット

 外信によると、先月24日のロシアの侵攻以降、フェイスブックとインスタグラムを運営するメタ(Meta)は、ロシアの宣伝とフェイクニュースを広めるために利用されていると指摘されたロシアの国営放送局「RT」と通信社「スプートニク」のアクセスを遮断した。グーグル、アップル、ネットフリックスなども、ロシアで各種サービスの中断と制限に乗りだした。ロシア政府も、自国民のフェイスブック、ツイッター、インスタグラムへのアクセス遮断などで対抗した。ロシアは2019年末、自国のインターネット網をグローバル・インターネットから分離し、国内ネットワーク(ルネット)で運営するインターネット主権の実験を成功裏に終えたと発表している。ロシアでは、すでに検索とソーシャルメディアの分野では、自国のサービスであるヤンデックスとフコンタクテが圧倒的な1位だ。英国サリー大学のコンピューター工学者のアラン・ウッドワード氏は、最近のBBCのインタビューで「ロシアのインターネット主権の実験当時は、その必要性を理解する人は少なかったが、ウクライナ侵攻と関連させてみれば十分理解できる」と述べた。

 ロシア固有の状況でもない。中国は2003年から国家レベルでインターネットを検閲するグレート・ファイアウォール(防火長城)を構築し、サービスとコンテンツを遮断している。中国と対立中のインドは、TikTokや微信(WeChat)、微博(ウェイボー)などの中国製アプリを禁止した。イランは国営通信社がネットワークを流れるすべての情報を統制し、制限的に許容している。 ベトナム、リビア、モロッコなども、中国と類似の検閲システムを導入している。北朝鮮は初めから国家レベルでの内部ネットワークを構築運用し、外国との通信を徹底的に遮断している。2011年のアラブの春など、ソーシャルメディアが活用された民主化デモを経験した独裁国家の一貫した選択だ。

 
 
ロシアでヤンデックスは検索や電子商取引、電子メールなどポータルが提供する様々なサービスを提供し、ロシア国内市場を支配している=ヤンデックス提供//ハンギョレ新聞社

■「断片化はインターネットの終末」

 インターネットは標準化された通信規約による開放と共有の原則を通じて、全世界を結ぶ超国境的なネットワークであり、開発段階から、核戦争などの通信網が麻痺した状況でも迂回路を探して通信が行われるよう設計された超連結手段だ。しかし、最近になり、地政学的な対立と一部の国の政策は、インターネットの基本属性に反する断片化現象(スプリンターネット)をあおり立てている。

 インターネット・ガバナンス国際委員会は、2016年に報告書を発行し、「断片化されたインターネット」が現実化する場合、革新や成長、コミュニケーションを阻害して信頼度を落とし、人類は高い代償を払うことになるはずだと警告している。当時、ハーバード大学の国際政治学者のジョセフ・ナイ氏はこれに言及し、インターネットの断片化はインターネットの終末を意味すると懸念した。エリック・シュミット元グーグル会長も「2028年には、インターネットは米国中心と中国中心に割れているだろう」と2018年のセミナーで発表したことがある。

 インターネットの技術構造上、国家単位のネットワークが相互に連結する地点(ノード)とアドレス割当てに対する統制力を利用すれば、統制は可能だ。ウクライナのミハイロ・フェドロフ副首相が、国際インターネットアドレス管理機構(ICANN)にロシアに対する制裁を要請したのもそのような背景からだ。しかし、ICANNのゲラン・マルビー会長は要請を拒否し、「ICANNはインターネットが十分に動作するよう構築された中立的なプラットフォームであり、インターネットを中断させる調停の役割を果たすためのものではない」と主張した。インターネット協会(ISOC)のアンドリュー・サリバン会長も「インターネットを分裂させようとする試みには、全世界が抵抗しなければならず、開放的な一つのグローバル・インターネットを守らなければならない」と強調した。

 インターネット拡大の初期には、物理的な国境のないサイバー空間が、国家単位の各種制約と慣行を飛びこえる脱領土化体制を作りだすはずだという期待を抱かせたが、インターネットが発達するにつれて、国家レベルの介入と統制が拡大する正反対の現実が広がっている状況だ。コロンビア大学のティム・ウー法学教授は、著書『だれがインターネットを支配するのか:ボーダレスな世界の幻想』(Who Controls the Internet?: Illusion df a Borderless World)で、サイバー空間に対する現実世界の影響力の増大にともない、各国政府がインターネットを統治の範囲内に入れようとする試みが増えたためだと説明した。

 インターネットの影響力の増大を懸念した国家権力の介入が成功するかどうかは未知数だ。ロシアは、オンライン統制を強化するため、何年もの間、暗号化メッセージアプリのテレグラムへのアクセスを妨害してきたが、成功しなかった。また、ますますグローバル化し同期化するネットワーク環境において、国家が統制するコンテンツとサービス中心の経済が競争力を維持するのはかなり難しいことだ。

ク・ボングォン|人とデジタル研究所所長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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